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第二章・辺境伯夫人へ
14・辺境の地へ
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この広大な大地に白い靄がかかっている。
夏から秋へと季節が移り変わったばかりだというのに、早朝のこの寒さは、やはり辺境の地だというのに相応しい。
ハーッ!と勢いよく息を吐くと、まるで白い煙を吐いたように見えて、此処はどれだけ気温が低いのだろうか┉と呟く。
私は昨晩、生まれて初めて野宿というものを体験した。
カリシュから大帝国までの道のりでさえもした事がないそれを経験してみると、意外な事にそれほど抵抗がないのだと知った。
このような景色を見られるのも、またこの経験があってこそだ┉。
「シルバ┉寒いですか?」
いつの間にか後ろに立っていたマクシミリアンが、私の肩にそっとマントを掛けてくれる。
その温かさに幸せを噛み締めるが、それではマクシミリアンが風邪を引いてしまうのでは?と心配になった。
「ありがとうございます┉でもこれではマクシミリアン様が┉」
私の表情から、この言葉の意味を感じ取ったであろうこの人は、優しい笑顔を見せながら首を横に振った。
「私は大丈夫です。生まれも育ちも辺境ですからね。それに┉戦場ではいつも、寒さとの戦いですから。」
私を得る為に、先の戦では素晴らしい戦果を上げたと聞いた。かなり無理されたのでは┉と心配になったが、元々『戦場の銀狼』と呼ばれるこの人の事だ┉。
きっと、私の事がなくとも勇猛果敢な戦いぶりだったのだろうと思う。
大帝国との戦いには、金と銀の戦神が存在するのだと他国からは恐れられているから。
金┉とは、もちろんガルド王の事だが最後の最後になって、私を惜しむようなあの態度は、心に引っ掛かっていた。
だけど、もう忘れてしまおう!もう過ぎた事ではないか┉。
今、私の隣には愛するマクシミリアンが居て、こうやっていつも気遣ってくれる。
後宮にすっかりと閉じ籠もっていた私には自信はないけれど、辺境伯夫人としての務めを出来る限り果たしていきたいと思っている。
もう王子でもないし妃でもない、一貴族の夫人としてまずは心持ちから変えていこうと思う。
そして直ぐには難しいだろうが、この堅苦しい口調から変えていかなくては┉と、私最大の悩みを思い浮かべる。
──まあ、こんな悩みも幸せであるが故か┉いや!幸せだからだ┉な┉か?
慣れない言葉を口にしようとすると、思考が追い付かずに混乱するけど。
そんな私の思いを知ってか知らずか、隣のマクシミリアンはその顔を見ながら笑っている。
「シルバは意外に、思っている事が顔に出ますね!私の為だと思うと嬉しいけど。」
私は恥ずかさで思わず顔が熱くなって、それは言わないで欲しい┉と思う。
さらに笑みを深めたマクシミリアンが、遠くの山々を指差す。
「この平原の先に高い山々がずっと連なっているのが見えますね?あれは神の山ムスヒ連峰と呼ばれるものですが、あの麓にあるのが我がベルード辺境伯領です。」
永遠に続くような広大な平原の先に、この時期でも既に天頂が雪で覆われている高山がずっと連なっている。
──あそこが?あの山々の麓が、私が目指す場所なのか┉。
そう思うと少し緊張するが、その何倍もわくわくとした心情が拡がり、今私の腰をぎゅっと抱いて笑うこの人との新しい人生に胸を躍らせた──。
夏から秋へと季節が移り変わったばかりだというのに、早朝のこの寒さは、やはり辺境の地だというのに相応しい。
ハーッ!と勢いよく息を吐くと、まるで白い煙を吐いたように見えて、此処はどれだけ気温が低いのだろうか┉と呟く。
私は昨晩、生まれて初めて野宿というものを体験した。
カリシュから大帝国までの道のりでさえもした事がないそれを経験してみると、意外な事にそれほど抵抗がないのだと知った。
このような景色を見られるのも、またこの経験があってこそだ┉。
「シルバ┉寒いですか?」
いつの間にか後ろに立っていたマクシミリアンが、私の肩にそっとマントを掛けてくれる。
その温かさに幸せを噛み締めるが、それではマクシミリアンが風邪を引いてしまうのでは?と心配になった。
「ありがとうございます┉でもこれではマクシミリアン様が┉」
私の表情から、この言葉の意味を感じ取ったであろうこの人は、優しい笑顔を見せながら首を横に振った。
「私は大丈夫です。生まれも育ちも辺境ですからね。それに┉戦場ではいつも、寒さとの戦いですから。」
私を得る為に、先の戦では素晴らしい戦果を上げたと聞いた。かなり無理されたのでは┉と心配になったが、元々『戦場の銀狼』と呼ばれるこの人の事だ┉。
きっと、私の事がなくとも勇猛果敢な戦いぶりだったのだろうと思う。
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金┉とは、もちろんガルド王の事だが最後の最後になって、私を惜しむようなあの態度は、心に引っ掛かっていた。
だけど、もう忘れてしまおう!もう過ぎた事ではないか┉。
今、私の隣には愛するマクシミリアンが居て、こうやっていつも気遣ってくれる。
後宮にすっかりと閉じ籠もっていた私には自信はないけれど、辺境伯夫人としての務めを出来る限り果たしていきたいと思っている。
もう王子でもないし妃でもない、一貴族の夫人としてまずは心持ちから変えていこうと思う。
そして直ぐには難しいだろうが、この堅苦しい口調から変えていかなくては┉と、私最大の悩みを思い浮かべる。
──まあ、こんな悩みも幸せであるが故か┉いや!幸せだからだ┉な┉か?
慣れない言葉を口にしようとすると、思考が追い付かずに混乱するけど。
そんな私の思いを知ってか知らずか、隣のマクシミリアンはその顔を見ながら笑っている。
「シルバは意外に、思っている事が顔に出ますね!私の為だと思うと嬉しいけど。」
私は恥ずかさで思わず顔が熱くなって、それは言わないで欲しい┉と思う。
さらに笑みを深めたマクシミリアンが、遠くの山々を指差す。
「この平原の先に高い山々がずっと連なっているのが見えますね?あれは神の山ムスヒ連峰と呼ばれるものですが、あの麓にあるのが我がベルード辺境伯領です。」
永遠に続くような広大な平原の先に、この時期でも既に天頂が雪で覆われている高山がずっと連なっている。
──あそこが?あの山々の麓が、私が目指す場所なのか┉。
そう思うと少し緊張するが、その何倍もわくわくとした心情が拡がり、今私の腰をぎゅっと抱いて笑うこの人との新しい人生に胸を躍らせた──。
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