【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

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第三章・予期せぬ計略

25・望まぬ再会

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 私はガタガタと身体を震わせ、目の前のガルド王を凝視した。

 ──ど、どうして此処に?こんな寂れた宿に偶然居るなど有り得ない!それに┉皆はどうしたのだ?
 ここには私とガルド王、二人しか居ないような気がしてならない!まさか┉

 「へ、陛下┉なぜこちらにおられるのです?それに辺境伯家の護衛の者や使用人はどこへ┉もちろんご存知なのですね?」

 ガルド王はじっと私を見つめていたが、そう言葉を発した途端、嬉しそうに微笑んだ。

 「シルバ┉美しくなったな。本当に輝くばかりだ┉それもあの男、ベルードの愛を受けてか?」

 「な、何をおっしゃって┉あ、の┉」

 あれから三年以上だ┉城でマクシミリアンと一緒に婚姻の書状に署名して、王からの了承をいただいて。
 それから速やかに城を去った┉。

 城から辺境伯家の馬車に乗り、王都邸まで馬車を進めている間、ずっとどこからか王の視線を感じていた。
 きっとどこかの窓から、私を見ているのだろう┉と、その視線を感じなくなるまで気が抜けない思いがした。

 ──私はこの方からの視線が苦手だ┉じっと見られていると全てを見透かされている気がする。そして、あの微笑み。

 いつもは厳しい表情の王が、私に向かって優しく微笑まれると気持ちが落ち着かない。
 まるで、あの時の┉初夜の時に私に微笑まれた、あのお顔を思い出してしまうから┉。

 ──だけどしっかりしなくては。マクスに会うまで!そしてオスカーを取り戻すまで!

 「単刀直入に申し上げます。ベルード辺境伯家の次男、オスカー・ベルードを連れ去ったのは┉陛下なのですか?もしもそうなら┉返答次第では赦せません!」

 この国の王に対して、そのような言動を取るなど、どのような処罰を与えられても仕方のない事だ。場合によっては命を取られることだって┉。
 だけど、それでも言わずにはいられない!

 もしも私をおびき寄せる目的で、あの子を利用したんだとしたら┉到底赦せることではない!早くあの愛し子をこの手に取り戻さなければ。

 「次男の┉オスカーを┉だと?居なくなったのか!?」

 王の反応は意外なものだった。この有り得ない状況は、間違いなくオスカーの事と関係している┉そう思った。
 
 ──だけど┉違うのか?それでは何故ここに居る?どうして┉

 「シルバ、お前は次男のオスカーの行方を追ってここまで来たのか?辺境の地からこんな所まで。」

 王は明らかに動揺している。揺れ動く赤い瞳がそれを物語っていた。この方ではないのか┉と思った時、いつの間にか私の背後に誰か立っている気配に気付く。

 誰か?┉と振り向こうとした瞬間、口元に布のような物を当てられた。

 ──うっ、何だ?この匂い!な、何か変な香りが┉

 やがてその布が取り除かれると、途端に意識が朦朧としてくる。
 ぐらぐらと天井が揺れて、とてもじゃないが立って居られない!

 目の前に居る王が、驚いたように目を見開き、咄嗟にそんな私を抱き抱える。
 その逞しい胸に抱かれて、これがマクシミリアンだったなら┉と思ってしまった。

 意識が途切れそうになる私の後ろから誰かが囁く。

 「シルバ様、この薬品は身体には影響ございませんので安心なさって下さい。このまま王の腕に抱かれて王都まで。その方が┉楽でございますよ?」

 ──誰だ!?この男は?マ、マクス┉私を助けて!

 そう呟いた瞬間、私は意識を手放した。
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