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第四章・運命の歯車
34・一つの賭け(ルイスSide)
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「アルベルト様、この前の私のお願い┉お考えいただけましたか?」
今日は珍しく執務室に籠もって、何やら書状を書き連ねている王に、そっと擦り寄り尋ねる。
その問いに、直ぐには思い当たらなかった様子だったが、ああ┉と呟いてそれから私の方を見た。
「ルイスの弟に会いたいという事だったか。確か、七年ほど会っていないのだったな?うーん┉いくら国境の街でと言っても、他国であるし。ルイスが行くには危険ではないか?それに安全に会う為には大帝国側の了承がいるだろう。」
──で、あろうな┉。王はもちろん反対するだろうと思ってはいた。
では、この手ならどう出るのだ?
「お許しいただけるのなら、私が了承を求める手紙をしたためましょう。それならばいかがです?」
王は少し渋い顔をしながら、駄々をこねる子を相手するように説得の次の手を考えている。
だが、どうにも私のその決心が固いと理解する。
「それならば┉出してみたらいい。だが、今の夫の辺境伯は許可するのか?今はもう、ガルド王の妃ではないのだろう?王からは冷遇されていた┉と聞いているが。」
私は思っていたような、その話しの展開に満足気に微笑む。
「ええ┉そう聞いています。ガルド王と結婚した時は、まだ子供のような姿でしたから┉お気に召さなかったのでしょう。けれど、どこかしらで弟を見掛けた辺境伯ベルード卿は、なんとか弟を手に入れようと、先の戦で目覚ましい戦果を上げ、それを実現しました。」
私は王が、ピクリと反応した事を見逃さない。さらに┉
「今は二十歳を過ぎて、輝くような美しさでしょうね?私と同じ半性身で、今はベルード卿に溺愛されていると聞いています。どのような姿になっているのか┉会うのが楽しみなのです。」
面倒な様子で、私の話しを聞きながらも執務を続けていたアルベルト王の動きが完全に止まる。
と同時に、持っているペンを反対の指先でくるくると回し始める。
──ああ┉完全に。
そうして私は、アルベルトの腕にしなだれかかる。
その腕は、服の上からも分かるゴツゴツとした隆起が┉。
アルベルト王は、周りの者には決して肌を見せない。心を赦す僅かな者だけで┉。
私も結婚してから分かった事だが、王の身体には幾つもの火傷の跡があるのだ。
理由を尋ねた事はないが、それが間違いなくこの人の人格に影を落としている。もしかして先代の王から?と思うが┉。
だから「美しい」というものに異常な執着を見せる。その中の一つが私だろう。
そんなこの人を理解し愛そうとしたのだが、一つの小さな綻びが、もう取り返しがつかないくらい大きくなるのは、あっという間で┉。
そしてそれを利用して、私は一つ賭けに出た。
──すまない!シルバ┉
今すぐにお前に伝えなければならない大事な話しがあるのだ。
だからどうしても私達は会う必要がある。
それが例えお前を困惑させ、そして私にはもう二度と会いたくない┉と恨まれることになったとしても┉。
今日は珍しく執務室に籠もって、何やら書状を書き連ねている王に、そっと擦り寄り尋ねる。
その問いに、直ぐには思い当たらなかった様子だったが、ああ┉と呟いてそれから私の方を見た。
「ルイスの弟に会いたいという事だったか。確か、七年ほど会っていないのだったな?うーん┉いくら国境の街でと言っても、他国であるし。ルイスが行くには危険ではないか?それに安全に会う為には大帝国側の了承がいるだろう。」
──で、あろうな┉。王はもちろん反対するだろうと思ってはいた。
では、この手ならどう出るのだ?
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王は少し渋い顔をしながら、駄々をこねる子を相手するように説得の次の手を考えている。
だが、どうにも私のその決心が固いと理解する。
「それならば┉出してみたらいい。だが、今の夫の辺境伯は許可するのか?今はもう、ガルド王の妃ではないのだろう?王からは冷遇されていた┉と聞いているが。」
私は思っていたような、その話しの展開に満足気に微笑む。
「ええ┉そう聞いています。ガルド王と結婚した時は、まだ子供のような姿でしたから┉お気に召さなかったのでしょう。けれど、どこかしらで弟を見掛けた辺境伯ベルード卿は、なんとか弟を手に入れようと、先の戦で目覚ましい戦果を上げ、それを実現しました。」
私は王が、ピクリと反応した事を見逃さない。さらに┉
「今は二十歳を過ぎて、輝くような美しさでしょうね?私と同じ半性身で、今はベルード卿に溺愛されていると聞いています。どのような姿になっているのか┉会うのが楽しみなのです。」
面倒な様子で、私の話しを聞きながらも執務を続けていたアルベルト王の動きが完全に止まる。
と同時に、持っているペンを反対の指先でくるくると回し始める。
──ああ┉完全に。
そうして私は、アルベルトの腕にしなだれかかる。
その腕は、服の上からも分かるゴツゴツとした隆起が┉。
アルベルト王は、周りの者には決して肌を見せない。心を赦す僅かな者だけで┉。
私も結婚してから分かった事だが、王の身体には幾つもの火傷の跡があるのだ。
理由を尋ねた事はないが、それが間違いなくこの人の人格に影を落としている。もしかして先代の王から?と思うが┉。
だから「美しい」というものに異常な執着を見せる。その中の一つが私だろう。
そんなこの人を理解し愛そうとしたのだが、一つの小さな綻びが、もう取り返しがつかないくらい大きくなるのは、あっという間で┉。
そしてそれを利用して、私は一つ賭けに出た。
──すまない!シルバ┉
今すぐにお前に伝えなければならない大事な話しがあるのだ。
だからどうしても私達は会う必要がある。
それが例えお前を困惑させ、そして私にはもう二度と会いたくない┉と恨まれることになったとしても┉。
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