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第四章・運命の歯車
36・有り得ない告白
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全てをそのまま信じる事は出来ない┉。出来ないが、オスカーを救い出して私の元まで連れて来てくれたのは間違いない。
オスカーも二人には慣れている様子で、怯えていることはまずない。
それを考えれば、ほんの少しだけ警戒を解いてもよいのでは?と。
だから私は、まず感謝を伝えることにした。
「まずは辺境伯家の次男、オスカーを助けていただいてありがとうございます。尽力していただいたこと、感謝致します。」
頭を下げながらそう感謝を口にする私に、ガルド王は温かな微笑みを見せる。
「良いのだ。宿屋でそなたに会った時、相当に動揺していたからな┉。気になって調べてみると、依頼を受けて王都まで子供を運んだと言う者がいて。そいつを問いただすとロベルトが浮かび上がり、元アンダシア家の屋敷に居るオスカーを見つけたのだ。」
王はマッケランに同意を求めるように頷いて、その後は代わりにマッケランが話し始める。
「ですが┉申し訳ありません。その犯人のロベルト・アンダシアなのですが、我々が屋敷に踏み込んだ際、オスカー様お一人を残して逃げ出してしまいました┉。ですから行方は分かっていないのです。今、全力で捜索させていますので」
──ロベルト┉あの者の顔を思い出すと、苦い思いが胸を突く。何故こんな事を┉?
それに王を呼び出した理由だが、まだ私に対して未練があると思っていたのか?
あれから何年も経っていて、マクスとの間に子供までいると言うのに┉。
オスカーを使って、私を王都までおびき寄せたかったのだろうが┉。
「ロベルトにはどうしてこんな事をしたのかを問いただしたい思いは有りますが、無理はなさらないで下さい。恐らく┉逆恨みというのか、アンダシア家が取り潰しになった原因に私がいると以前から思っていたのかもしれませんね。確かに部外者ではありませんから┉」
私がそう言うと、王はマッケランの方をちらりと見て、何事かを言いたいような素振りをしていた。
そして、意を決したような表情で私の方に向き直す。
「実は、アンダシア家が取り潰しになったあの件なんだが┉あれは元王妃が仕組んだ事だったのだ。王妃がシルバに嫌がらせする為にあの妃を使ってそうさせた。前にも伝えたが、シルバに毒を盛って、次は嫌がらせを。そうすることによって、自分から後宮を出ると言い出すと思っていたようだ。」
──毒の次は嫌がらせ!どうして?
何故そこまで執拗に私を狙うのだ!?王妃たる者が一妃にそこまでする必要がどこにあるというのだろう?そこまで恨まれる理由など┉
「でも何故です?何故そこまでの事をされなければならなかったのでしょうか?┉王からも冷遇されていた、取るに足らない存在の私をそこまで┉?」
私がそう呟いた瞬間、ガルド王は身体をガタリと揺らす。それから鎮痛な面持ちで私を見る。
「そ、そんなふうに思っていたのか┉?シルバは、自分の存在が取るに足らないと?そのように┉」
王は愕然とした様子で、声を震わせる。
私は王の顔を不思議そうに見つめて唖然とする。
何を┉?あの城に居た者、ほぼ全てが私をそう思っていたであろう┉。
そして何を今更そのような┉という困惑した気持ちと、そうさせたのはあなたではないのか?という遣る瀬ない感情とで揺れ動く。
「すまない!そこまで私が追い込んでいたのか┉。もっと早くと思っているうちに時間だけがどんどん経ってしまって┉」
そして私を真剣な顔をして、じっと見つめた。それから一言、一言、まるで私の心に刻み込ませるように語り始める。
「あの日カリシュの王宮で初めて見た時から、ずっとそなただけを求めてきた。あの時の年齢で信じられないかもしれないが、初恋だったのだと思う。三年待ってやっと我が手に入れた時、私の気持ちを知りその座を危惧した王妃と、その父である宰相ロハスがシルバの命を狙ったのだ┉。だからわざとそなたに近づかないようにした┉これ以上狙われないように。」
──な、何を┉言われてるのか。
ガルド王が私を求めていたと?こ、恋だと?
ルイス兄上が既に嫁いでいて、半性身で残っているのは私だけ┉だから嫌々ながら迎えたのではなかったのか?
そして、私を守る為に遠ざけた┉と!?
オスカーも二人には慣れている様子で、怯えていることはまずない。
それを考えれば、ほんの少しだけ警戒を解いてもよいのでは?と。
だから私は、まず感謝を伝えることにした。
「まずは辺境伯家の次男、オスカーを助けていただいてありがとうございます。尽力していただいたこと、感謝致します。」
頭を下げながらそう感謝を口にする私に、ガルド王は温かな微笑みを見せる。
「良いのだ。宿屋でそなたに会った時、相当に動揺していたからな┉。気になって調べてみると、依頼を受けて王都まで子供を運んだと言う者がいて。そいつを問いただすとロベルトが浮かび上がり、元アンダシア家の屋敷に居るオスカーを見つけたのだ。」
王はマッケランに同意を求めるように頷いて、その後は代わりにマッケランが話し始める。
「ですが┉申し訳ありません。その犯人のロベルト・アンダシアなのですが、我々が屋敷に踏み込んだ際、オスカー様お一人を残して逃げ出してしまいました┉。ですから行方は分かっていないのです。今、全力で捜索させていますので」
──ロベルト┉あの者の顔を思い出すと、苦い思いが胸を突く。何故こんな事を┉?
それに王を呼び出した理由だが、まだ私に対して未練があると思っていたのか?
あれから何年も経っていて、マクスとの間に子供までいると言うのに┉。
オスカーを使って、私を王都までおびき寄せたかったのだろうが┉。
「ロベルトにはどうしてこんな事をしたのかを問いただしたい思いは有りますが、無理はなさらないで下さい。恐らく┉逆恨みというのか、アンダシア家が取り潰しになった原因に私がいると以前から思っていたのかもしれませんね。確かに部外者ではありませんから┉」
私がそう言うと、王はマッケランの方をちらりと見て、何事かを言いたいような素振りをしていた。
そして、意を決したような表情で私の方に向き直す。
「実は、アンダシア家が取り潰しになったあの件なんだが┉あれは元王妃が仕組んだ事だったのだ。王妃がシルバに嫌がらせする為にあの妃を使ってそうさせた。前にも伝えたが、シルバに毒を盛って、次は嫌がらせを。そうすることによって、自分から後宮を出ると言い出すと思っていたようだ。」
──毒の次は嫌がらせ!どうして?
何故そこまで執拗に私を狙うのだ!?王妃たる者が一妃にそこまでする必要がどこにあるというのだろう?そこまで恨まれる理由など┉
「でも何故です?何故そこまでの事をされなければならなかったのでしょうか?┉王からも冷遇されていた、取るに足らない存在の私をそこまで┉?」
私がそう呟いた瞬間、ガルド王は身体をガタリと揺らす。それから鎮痛な面持ちで私を見る。
「そ、そんなふうに思っていたのか┉?シルバは、自分の存在が取るに足らないと?そのように┉」
王は愕然とした様子で、声を震わせる。
私は王の顔を不思議そうに見つめて唖然とする。
何を┉?あの城に居た者、ほぼ全てが私をそう思っていたであろう┉。
そして何を今更そのような┉という困惑した気持ちと、そうさせたのはあなたではないのか?という遣る瀬ない感情とで揺れ動く。
「すまない!そこまで私が追い込んでいたのか┉。もっと早くと思っているうちに時間だけがどんどん経ってしまって┉」
そして私を真剣な顔をして、じっと見つめた。それから一言、一言、まるで私の心に刻み込ませるように語り始める。
「あの日カリシュの王宮で初めて見た時から、ずっとそなただけを求めてきた。あの時の年齢で信じられないかもしれないが、初恋だったのだと思う。三年待ってやっと我が手に入れた時、私の気持ちを知りその座を危惧した王妃と、その父である宰相ロハスがシルバの命を狙ったのだ┉。だからわざとそなたに近づかないようにした┉これ以上狙われないように。」
──な、何を┉言われてるのか。
ガルド王が私を求めていたと?こ、恋だと?
ルイス兄上が既に嫁いでいて、半性身で残っているのは私だけ┉だから嫌々ながら迎えたのではなかったのか?
そして、私を守る為に遠ざけた┉と!?
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