2 / 2
2・マッチョな俺だが、何か?*
チャララ~ララ!ララ!キラキラ~ロマンスタ!
お馴染みのテーマソングが頭の中で鳴り響く…あれっ?もしかしてこれって…「綺羅綺羅ロマンスタ!」か!?
それに気付いて、早速俺は…詰んだ!って理解した。
そして俺って異世界転生者だったのか…と呟いて、目の前に居る婚約者を見つめた。
絹糸のような銀の髪を腰まで伸ばし、それとは対象的に真っ赤な瞳はまるで炎だ!そしてこの華やかなパーティーで、黒一色の衣裳を身に纏い異彩を放っている。それから俺を見て、その端正な顔でニッコリと微笑む…
コイツは綺羅綺羅ロマンスタ!で、攻略対象人気No.2の公爵家令息、ガゼル・デリラその人だ。
だけどさ、何で俺がコイツの婚約者なんだ?
普通だったら小柄で可愛いくて、いかにも「受け」みたいな子がそのポジションじゃねぇの?なのに…
──俺はムキムキだよ?腹だって、シックスパックならぬエイトパックで。
俺は伯爵家令息の、シーン・エクリュー。
おまけに何で詰んだのかというと、俺はコイツと身体の関係がある…だって、婚約者同士だよ?そういう事だってあるだろう?
そして一つの結論にぶち当たる…俺は、悪役令息なんだって。さしずめ俺は、婚約者であるガゼルに行為を強要する悪役なんだろうな?
「だって知らなかったし…ガゼルが攻略対象だって。おまけにこの世界がBLゲームの中だって…」
そんな俺が何故自分が転生者だと気付いたかというと…あの柱の陰にいる人物、アンジー・ホワイトを見たからだ。
あの特徴的な桃色の髪とグリーンの瞳、そんな派手な組み合わせはゲームの中でしか有り得ない!なんて思ったら、瞬時に頭の中にゲームの情報が流れ込んで来た!
そのアンジーの視線の先にいるのは、攻略対象者人気No.1のデイビス王子で。
だけど、ありゃダメだ…なんかアンジーと同じようなピンク頭と、アハハキャッキャやっている。
あれは確か…デイビス王子の婚約者のロビンだったかな?
──あれは悪役令息の魅力に落ちたな?でもそれがゲームの面白いところだ!
でも、ロビンは可愛いから…アンジーより可愛いくない?だったら仕方ないなって思う。
俺なんてさ、このド派手なゲームの世界で茶髪にありふれた茶色の瞳だよ?茶&茶なんて、有り得ねぇ!
それで次の俺のオススメは?と言うと、この公爵家令息のガゼルだ。
この完璧な見た目とアンニュイな雰囲気!皆んなこういうの大好きだよね?んで、変な性癖もないし~頭もヨワヨワじゃない。性癖の件では俺が実証済みだし、全力でオススメ致します!
「ねえ、シーン!君また何か変なこと考えているだろう?」
ガゼルが目を細めて、俺をじっと見つめている。
(だからホントヤメて?俺、割り切ろうとしてるのに!諦めようとしてんだって~)
前から思っていた…ゲームだと気付く前から。ガゼルには、本当はもっと可愛くてピッタリな人がいるんじゃないか?って。こんなムキムキ野郎じゃなくて、ふわふわキラキラしている人が…
俺だって、自分のことは分かっている。
昔から何故か身体を鍛えることに執着してて。それにただのムキムキマッチョじゃない!しなやかで美しい筋肉を付ける事を目指しているんだ。
そんな渇望がどこからくるんだ?って不思議だった…
でも、前世を思い出して納得がいった。
俺は前世は日本人の身体の弱い男子学生だった…健康的で生命力に溢れている人に憧れて。だからなんだな!って思う。それから何で死んだのかな?って思うけど、きっと病気なんだろうなって。
当時、病床でやっていたのがこのゲーム「綺羅綺羅ロマンスタ!」だ。俺は現実では実現不可能なゲームの中の恋に夢中になる。
その攻略対象の中で特に好きだったのは…ガゼルだ。
ガゼルは「自分」というものを持っている。誰に媚びる訳でもなく、流行にも左右されない。だからこその黒一色!色なんかに惑わされない姿が小気味いい!好きだ!!
──おっと、好きだ…って言っちゃったぜ!俺も未練タップリだな…
「シーン!聞いてる?もうパーティー嫌なんだったら抜け出さない?庭園でも見に行こう!ライトアップされて綺麗らしいよ?」
そんな俺の気持ちなど知らないガゼルは、俺をそう言って誘う。それに笑顔で頷く俺…
(神様!もう少し…少しだけ一緒に居てもいいですか?必ずガゼルの為に離れて行きますから!)
心の中でそう詫びながら、ガゼルと肩を並べて庭園へと歩いて行く。
「わあ、綺麗だな!凄いよ」
そう言って驚く俺に、ガゼルは優しい微笑みを向ける。その顔にズキリと心が痛むけど、努めて明るく振る舞った。
庭園は沢山の樹木や花々、そして噴水などが綺麗にライトアップされていた。
その中で目を引いたのは、イチイや月桂樹の木を模様や動物などの形に刈り込んでトピアリーにしてある。それを下からライトアップされていて、とっても可愛い。
それを眺めながら俺達はベンチに座り、どちらともなくシルエットグイスを始める。
「あれ、ダンベルかな?」
「ん…リボンじゃないか?」
「あれはプッシュアップバーだね!」
「……あれはただのアーチじゃないか?」
「絶対ケトルベルだろ?」
「ちょっと何言ってんのか分かんない…」
そんなふうに二人で楽しく時を過ごす。
そして改めて思うのは、俺はガゼルが好きなんだってこと…だからこそ、ガゼルを自由にしてあげなくては!って。
そう心に誓って、今までの二人の事を思い出す…
子供の頃俺は、前世同様に病弱で身体もガリガリで。いっつも皆んなから誂われていた。
それをいつも庇ってくれたのがガゼルで…
だから俺は、ガゼルとの婚約が決まった時、天にも昇る気持ちだったんだ。こんな俺、ガゼルに似合わないのは知ってる…だけど、愛されなくても側にだけはいたい!って…
だけど、まさかゲームの中だったなんて…もう直ぐ俺は、悪役令息として退場する。そしたらガゼルは本当の意味で幸せになれるんだ!
「ねえシーン、今夜も私の所に来るだろ?そろそろ帰ろうか!」
それに俺は動揺してしまう…。ガゼルに抱かれるのは嬉しい…だけど、もう無理だ!セフレだって、割り切れないよ。それで…
「ガゼル話しがあるんだ…。もう俺達、別れた方がいい!ガゼルにはもっと相応しい人がいると思うんだ…アンジー・ホワイトとかさぁ。ああいう可愛い子、いいだろ?俺みたいなのに何時までもくっついてると誤解されるよ?だから…」
そんな事を言わなければならないのが悲しい!だけど…ガゼルの為なんだからって、震える心を自ら宥める。
「それ、本心?シーンの本心なの?それは…」
俺はドキッとした…ガゼルが本当に悲しい顔をしていたから…
そんな顔をさせてしまった俺は、泣きそうになった。
──違う!悲しませたかった訳じゃない!ガゼルには、いつだって笑っていて欲しいのに…
そう思ったら目の端に涙が滲んでくる。
(好きだ…やっぱりガゼルが好きなんだよ?それがイケナイ事だって、分かっているけど…)
俺は堪らず、その場から逃げ出した。いきなり駆け出した弾みで右足の靴が脱げて転がる。だけど、そんな事は構わずに…
どれだけ走っただろう?気が付くと、いつの間にか城の端にある塔の前まで来ていた。もう裸足だった右足は傷だらけで血まみれで…
俺はそれを見て、フッと笑った…随分滑稽だな?って。ガゼルの幸せを願いながらも、浅ましく未だ彼を望んでしまっている俺がいる。
だって、この塔にはガゼルに与えられている部屋があり、時々この場所で会っているから。
天才的な頭脳を持つ公爵家令息ガゼル・デリラは、普段薬の研究をしている。その筆頭研究者のガゼルは、いつでも研究が出来るようにと、王から特別にこの塔の部屋を与えられているという訳だ。
だからさっきチラッと見た、この国の王子のデイビスとも親友で気の置けない付き合いをしているんだ。
そんなハイスペックなガゼル…なのに自分は何をしてるんだ?
思わず走って来たのが、ガゼルの部屋があるこの方角とは…。おまけに塔まで来るまで気付かないなんてあるか?と、自分の事ながら嫌になる…
そう思いながら愕然と立ち尽くしていると、誰かが後ろから俺の肩をそっと抱く。それにビクリときて振り向くと…そこにはガゼル。
「何してるの?足、血だらけだよ!全く…ハァ」
そう言って溜め息をついて、俺を抱き上げる。
「わっ!ガゼル、重いよ!俺…」
「うるさい!シーンの一人や二人、私だって抱き上げられるよ!」
即座にガゼルのそんなキツイ言葉が返ってきて俺は震えた…
「ん…グスッ。ハッ…あぁ、グ…スン」
とうとう俺は、堪らず泣き出してしまった。
もうこうなると、哀しくて涙が止まらない!
ガゼルは困った顔をして、俺を抱いたまま部屋へと塔を上がって行く。
そして部屋に入ってから、そっとソファに座らせてくれた。
「だってシーンが悪いんでしょ?違う?別れようなんて言って…勝手だよね?」
「だ…って、ハァ…俺なんて似合わないじゃん!グスッ、かっこいいし頭も良くて…グシュ。完璧なガゼルに!ウッ…勿体なくない?わぁ~ん」
顔をグシャグシャにして泣きじゃくる俺を、ガゼルが真剣な顔をして見つめている。
それから無言で、俺の傷だらけの足を手早く消毒して包帯を巻く。それから再び俺を見た。
「誰が言ったの?それ。そんな事、一言たりとも言った?私が…。いつもシーンが好きだって言ってるよね?言い足りなかった?」
(ううん。いつも言ってくれてた!何度も俺が好きだって。一番だって…それなのに、自分に自信がなくて信じる事が出来なかったんだ…)
「ごめんね…ガゼル。俺、馬鹿だった。自分じゃない方がガゼルを幸せに出来るんじゃないか?って思っちゃって…。だけど、分かった!俺がこの世で一番、ガゼルのことが好きだって」
そう言った瞬間、ガゼルが俺をキツく抱き締めて来る…
「んぁ、っ…ちゅ…ン゙」
俺達はお互いの気持ちをぶつけ合うように激しく口付ける。ガゼルは舌を奥まで差し入れて絡ませ、じゅっと俺の唾液を啜る。まるで甘い蜜を吸うように何度も繰り返されて頭の芯から痺れてきた…
そして耐えきれずにソファに倒れ込む。
「はぁん…来て、ガゼル…」
「そんな悪い子は、裸に剥かないと…ね?」
ガゼルはいつものように、あっという間に俺の服を脱がして一糸まとわぬ姿にする。
それから鮮やかな笑みを浮かべた…
ガゼルの銀の髪が俺の身体の上で散る。まるで一本一本が意志を持っているかのように、俺の汗ばんだ身体に巻き付いている。
──ツプッ…
いきなり後孔にガゼルの長く綺麗な指が入る。昨夜もその指で翻弄された覚えのあるそこは、簡単に侵入を赦し指を奥へと誘い込む。
「シーン…ここ、こんなになってるのに私から離れようとするなんて…もうそんなお馬鹿な考え、捨ててよ?」
俺は早く欲しくて、何度も…何度も頷いた。もう無理だ…ガゼルは誰にも譲れない。そんな事、始めから無理だったのだと思い知る。
「ごめんてばぁ~。早くぅ…欲しい。はぁん!」
いつの間にかはち切れんばかりになったガゼルの猛々しいものを、ブスリと奥まで一気に突かれ息が出来ない。
それからじっくりと腰を打ち付け始めるガゼル…
ギラギラと輝く赤い目に見つめられ、まるで自分が獲物になったかのように硬直してしまう。何度も奥に貫かれ喘がされて、息も絶えになったその時…
「クッ、ハァ…ハァ」
頭の中が真っ白になった瞬間、俺の腹にドクドクとしたものが広がる。ガゼルの…と思ったら、思わず腹に手を当てていた。
──幸せだ…愛する人との行為に多幸感で満たされる。
「ここ、一杯送り込んでおいたから。逃げられないように」
そう言ってガゼルは、俺の腹を独特のタッチでなぞる。その瞬間ゾクゾク~って。
(エイトパックをアミダクジみたいになぞるのヤメて~)
それから俺達は、再び身なりを整えてパーティー会場に向かう。靴、置いてきちゃった…探しに行かなきゃ!
借りた靴を履いて戻ると、パーティーももう佳境に入っていて、ダンスしたり話し込んだりそれぞれが楽しく過ごしていた。
「外探したけど…なかったね。誰かが持って行ったのかも?落とし物だと思って」
もう靴諦めようかな…って思っていた時、俺達に声を掛けてくる人達が…
デイビス王子と、その婚約者のロビンだ。
「やあ、ガゼル。上手くいったようだね?仲良さそうでなにより!」
デイビス王子がそう声を掛けてきた。
そう言えば、さっき二人で話し込んでいたようだったけど…何を話してたんだろ?上手くって…?
そう思ってガゼルをチラッと見る。
「お互いの婚約者についてちょっとね…。鈍いから苦労するね?って言ってて」
そう言われて、俺とロビンは顔を見合わせる。
「鈍い…かな?」
思わず二人で同時にそう言ってしまう。
「ガゼル、それで結婚はいつ?早急にするんだろ?」
「デイビスこそ!国を上げての慶事になるよね」
──ん!結婚!?
もう一度ロビンと顔を見合わせて驚いたけど、まあ…したいよね?結婚。もう逃げないって決めたから!
「そう言えばさ、この靴外に落ちてたんだけど知らない?」
ロビンがテーブルの上の靴を指差す。見ると、装飾のターンテーブルの上で俺の靴がクルクルと回っている。あっ、あんな所に~!
「ありがとう!探してたんだよ。俺、さっき落としちゃって…」
やっと見つかった事に安堵する。この靴実は特注品なんだよね。
「シーンのだったの!?だけど重くない?これ…」
「うん。鉛入りだから。足を鍛えるパワーシューズだから」
それにはここにいる皆んなが驚く。えっ…履かないの?普通は。
「だけどさ、こんなの足ムキムキにならない?太ももパーン!って土偶みたいにさ」
そう言って、俺の脚をまじまじと見ている。
「あれ?カモシカみたいな脚だ…カッコイイ!流石、綺麗で細マッチョのシーンだね」
──うん?俺ってカッコイイの?綺麗なの!?
全く知らなかった自分への評価にビックリで…嘘?
そう思って唖然としているとガゼルが耳元で囁く。
「だから言ったでしょ?シーンはいつだってカッコイイんだよ!私にお似合いだよ。シーン・デリラ」
まだ気が早いでしょ?それは…って二人で笑う。それには何故か目の前のロビンが固まっている。あれ?何でだろう…
「シーン・デリラ?鉛の靴?」
ロビンがそう呟いて、何かを一生懸命考えている。
「あっ、シンデレラとガラスの靴…もしかして?」
──はっ?BLゲームの中じゃなかったの!?俺って、シンデレラだったの?
シーン・デリラがシンデレラ?鉛の靴がガラスの靴?嘘でしょ!知らんがな…
結局は何だが分からない。だけど、幸せを掴むのは本人次第…それだけは間違いないよね!
そんな2カップルを柱の影から見つめる人物が…アンジー・ホワイトだ!
「また僕、関係ない…モブじゃん!」
──The end.
お馴染みのテーマソングが頭の中で鳴り響く…あれっ?もしかしてこれって…「綺羅綺羅ロマンスタ!」か!?
それに気付いて、早速俺は…詰んだ!って理解した。
そして俺って異世界転生者だったのか…と呟いて、目の前に居る婚約者を見つめた。
絹糸のような銀の髪を腰まで伸ばし、それとは対象的に真っ赤な瞳はまるで炎だ!そしてこの華やかなパーティーで、黒一色の衣裳を身に纏い異彩を放っている。それから俺を見て、その端正な顔でニッコリと微笑む…
コイツは綺羅綺羅ロマンスタ!で、攻略対象人気No.2の公爵家令息、ガゼル・デリラその人だ。
だけどさ、何で俺がコイツの婚約者なんだ?
普通だったら小柄で可愛いくて、いかにも「受け」みたいな子がそのポジションじゃねぇの?なのに…
──俺はムキムキだよ?腹だって、シックスパックならぬエイトパックで。
俺は伯爵家令息の、シーン・エクリュー。
おまけに何で詰んだのかというと、俺はコイツと身体の関係がある…だって、婚約者同士だよ?そういう事だってあるだろう?
そして一つの結論にぶち当たる…俺は、悪役令息なんだって。さしずめ俺は、婚約者であるガゼルに行為を強要する悪役なんだろうな?
「だって知らなかったし…ガゼルが攻略対象だって。おまけにこの世界がBLゲームの中だって…」
そんな俺が何故自分が転生者だと気付いたかというと…あの柱の陰にいる人物、アンジー・ホワイトを見たからだ。
あの特徴的な桃色の髪とグリーンの瞳、そんな派手な組み合わせはゲームの中でしか有り得ない!なんて思ったら、瞬時に頭の中にゲームの情報が流れ込んで来た!
そのアンジーの視線の先にいるのは、攻略対象者人気No.1のデイビス王子で。
だけど、ありゃダメだ…なんかアンジーと同じようなピンク頭と、アハハキャッキャやっている。
あれは確か…デイビス王子の婚約者のロビンだったかな?
──あれは悪役令息の魅力に落ちたな?でもそれがゲームの面白いところだ!
でも、ロビンは可愛いから…アンジーより可愛いくない?だったら仕方ないなって思う。
俺なんてさ、このド派手なゲームの世界で茶髪にありふれた茶色の瞳だよ?茶&茶なんて、有り得ねぇ!
それで次の俺のオススメは?と言うと、この公爵家令息のガゼルだ。
この完璧な見た目とアンニュイな雰囲気!皆んなこういうの大好きだよね?んで、変な性癖もないし~頭もヨワヨワじゃない。性癖の件では俺が実証済みだし、全力でオススメ致します!
「ねえ、シーン!君また何か変なこと考えているだろう?」
ガゼルが目を細めて、俺をじっと見つめている。
(だからホントヤメて?俺、割り切ろうとしてるのに!諦めようとしてんだって~)
前から思っていた…ゲームだと気付く前から。ガゼルには、本当はもっと可愛くてピッタリな人がいるんじゃないか?って。こんなムキムキ野郎じゃなくて、ふわふわキラキラしている人が…
俺だって、自分のことは分かっている。
昔から何故か身体を鍛えることに執着してて。それにただのムキムキマッチョじゃない!しなやかで美しい筋肉を付ける事を目指しているんだ。
そんな渇望がどこからくるんだ?って不思議だった…
でも、前世を思い出して納得がいった。
俺は前世は日本人の身体の弱い男子学生だった…健康的で生命力に溢れている人に憧れて。だからなんだな!って思う。それから何で死んだのかな?って思うけど、きっと病気なんだろうなって。
当時、病床でやっていたのがこのゲーム「綺羅綺羅ロマンスタ!」だ。俺は現実では実現不可能なゲームの中の恋に夢中になる。
その攻略対象の中で特に好きだったのは…ガゼルだ。
ガゼルは「自分」というものを持っている。誰に媚びる訳でもなく、流行にも左右されない。だからこその黒一色!色なんかに惑わされない姿が小気味いい!好きだ!!
──おっと、好きだ…って言っちゃったぜ!俺も未練タップリだな…
「シーン!聞いてる?もうパーティー嫌なんだったら抜け出さない?庭園でも見に行こう!ライトアップされて綺麗らしいよ?」
そんな俺の気持ちなど知らないガゼルは、俺をそう言って誘う。それに笑顔で頷く俺…
(神様!もう少し…少しだけ一緒に居てもいいですか?必ずガゼルの為に離れて行きますから!)
心の中でそう詫びながら、ガゼルと肩を並べて庭園へと歩いて行く。
「わあ、綺麗だな!凄いよ」
そう言って驚く俺に、ガゼルは優しい微笑みを向ける。その顔にズキリと心が痛むけど、努めて明るく振る舞った。
庭園は沢山の樹木や花々、そして噴水などが綺麗にライトアップされていた。
その中で目を引いたのは、イチイや月桂樹の木を模様や動物などの形に刈り込んでトピアリーにしてある。それを下からライトアップされていて、とっても可愛い。
それを眺めながら俺達はベンチに座り、どちらともなくシルエットグイスを始める。
「あれ、ダンベルかな?」
「ん…リボンじゃないか?」
「あれはプッシュアップバーだね!」
「……あれはただのアーチじゃないか?」
「絶対ケトルベルだろ?」
「ちょっと何言ってんのか分かんない…」
そんなふうに二人で楽しく時を過ごす。
そして改めて思うのは、俺はガゼルが好きなんだってこと…だからこそ、ガゼルを自由にしてあげなくては!って。
そう心に誓って、今までの二人の事を思い出す…
子供の頃俺は、前世同様に病弱で身体もガリガリで。いっつも皆んなから誂われていた。
それをいつも庇ってくれたのがガゼルで…
だから俺は、ガゼルとの婚約が決まった時、天にも昇る気持ちだったんだ。こんな俺、ガゼルに似合わないのは知ってる…だけど、愛されなくても側にだけはいたい!って…
だけど、まさかゲームの中だったなんて…もう直ぐ俺は、悪役令息として退場する。そしたらガゼルは本当の意味で幸せになれるんだ!
「ねえシーン、今夜も私の所に来るだろ?そろそろ帰ろうか!」
それに俺は動揺してしまう…。ガゼルに抱かれるのは嬉しい…だけど、もう無理だ!セフレだって、割り切れないよ。それで…
「ガゼル話しがあるんだ…。もう俺達、別れた方がいい!ガゼルにはもっと相応しい人がいると思うんだ…アンジー・ホワイトとかさぁ。ああいう可愛い子、いいだろ?俺みたいなのに何時までもくっついてると誤解されるよ?だから…」
そんな事を言わなければならないのが悲しい!だけど…ガゼルの為なんだからって、震える心を自ら宥める。
「それ、本心?シーンの本心なの?それは…」
俺はドキッとした…ガゼルが本当に悲しい顔をしていたから…
そんな顔をさせてしまった俺は、泣きそうになった。
──違う!悲しませたかった訳じゃない!ガゼルには、いつだって笑っていて欲しいのに…
そう思ったら目の端に涙が滲んでくる。
(好きだ…やっぱりガゼルが好きなんだよ?それがイケナイ事だって、分かっているけど…)
俺は堪らず、その場から逃げ出した。いきなり駆け出した弾みで右足の靴が脱げて転がる。だけど、そんな事は構わずに…
どれだけ走っただろう?気が付くと、いつの間にか城の端にある塔の前まで来ていた。もう裸足だった右足は傷だらけで血まみれで…
俺はそれを見て、フッと笑った…随分滑稽だな?って。ガゼルの幸せを願いながらも、浅ましく未だ彼を望んでしまっている俺がいる。
だって、この塔にはガゼルに与えられている部屋があり、時々この場所で会っているから。
天才的な頭脳を持つ公爵家令息ガゼル・デリラは、普段薬の研究をしている。その筆頭研究者のガゼルは、いつでも研究が出来るようにと、王から特別にこの塔の部屋を与えられているという訳だ。
だからさっきチラッと見た、この国の王子のデイビスとも親友で気の置けない付き合いをしているんだ。
そんなハイスペックなガゼル…なのに自分は何をしてるんだ?
思わず走って来たのが、ガゼルの部屋があるこの方角とは…。おまけに塔まで来るまで気付かないなんてあるか?と、自分の事ながら嫌になる…
そう思いながら愕然と立ち尽くしていると、誰かが後ろから俺の肩をそっと抱く。それにビクリときて振り向くと…そこにはガゼル。
「何してるの?足、血だらけだよ!全く…ハァ」
そう言って溜め息をついて、俺を抱き上げる。
「わっ!ガゼル、重いよ!俺…」
「うるさい!シーンの一人や二人、私だって抱き上げられるよ!」
即座にガゼルのそんなキツイ言葉が返ってきて俺は震えた…
「ん…グスッ。ハッ…あぁ、グ…スン」
とうとう俺は、堪らず泣き出してしまった。
もうこうなると、哀しくて涙が止まらない!
ガゼルは困った顔をして、俺を抱いたまま部屋へと塔を上がって行く。
そして部屋に入ってから、そっとソファに座らせてくれた。
「だってシーンが悪いんでしょ?違う?別れようなんて言って…勝手だよね?」
「だ…って、ハァ…俺なんて似合わないじゃん!グスッ、かっこいいし頭も良くて…グシュ。完璧なガゼルに!ウッ…勿体なくない?わぁ~ん」
顔をグシャグシャにして泣きじゃくる俺を、ガゼルが真剣な顔をして見つめている。
それから無言で、俺の傷だらけの足を手早く消毒して包帯を巻く。それから再び俺を見た。
「誰が言ったの?それ。そんな事、一言たりとも言った?私が…。いつもシーンが好きだって言ってるよね?言い足りなかった?」
(ううん。いつも言ってくれてた!何度も俺が好きだって。一番だって…それなのに、自分に自信がなくて信じる事が出来なかったんだ…)
「ごめんね…ガゼル。俺、馬鹿だった。自分じゃない方がガゼルを幸せに出来るんじゃないか?って思っちゃって…。だけど、分かった!俺がこの世で一番、ガゼルのことが好きだって」
そう言った瞬間、ガゼルが俺をキツく抱き締めて来る…
「んぁ、っ…ちゅ…ン゙」
俺達はお互いの気持ちをぶつけ合うように激しく口付ける。ガゼルは舌を奥まで差し入れて絡ませ、じゅっと俺の唾液を啜る。まるで甘い蜜を吸うように何度も繰り返されて頭の芯から痺れてきた…
そして耐えきれずにソファに倒れ込む。
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「そんな悪い子は、裸に剥かないと…ね?」
ガゼルはいつものように、あっという間に俺の服を脱がして一糸まとわぬ姿にする。
それから鮮やかな笑みを浮かべた…
ガゼルの銀の髪が俺の身体の上で散る。まるで一本一本が意志を持っているかのように、俺の汗ばんだ身体に巻き付いている。
──ツプッ…
いきなり後孔にガゼルの長く綺麗な指が入る。昨夜もその指で翻弄された覚えのあるそこは、簡単に侵入を赦し指を奥へと誘い込む。
「シーン…ここ、こんなになってるのに私から離れようとするなんて…もうそんなお馬鹿な考え、捨ててよ?」
俺は早く欲しくて、何度も…何度も頷いた。もう無理だ…ガゼルは誰にも譲れない。そんな事、始めから無理だったのだと思い知る。
「ごめんてばぁ~。早くぅ…欲しい。はぁん!」
いつの間にかはち切れんばかりになったガゼルの猛々しいものを、ブスリと奥まで一気に突かれ息が出来ない。
それからじっくりと腰を打ち付け始めるガゼル…
ギラギラと輝く赤い目に見つめられ、まるで自分が獲物になったかのように硬直してしまう。何度も奥に貫かれ喘がされて、息も絶えになったその時…
「クッ、ハァ…ハァ」
頭の中が真っ白になった瞬間、俺の腹にドクドクとしたものが広がる。ガゼルの…と思ったら、思わず腹に手を当てていた。
──幸せだ…愛する人との行為に多幸感で満たされる。
「ここ、一杯送り込んでおいたから。逃げられないように」
そう言ってガゼルは、俺の腹を独特のタッチでなぞる。その瞬間ゾクゾク~って。
(エイトパックをアミダクジみたいになぞるのヤメて~)
それから俺達は、再び身なりを整えてパーティー会場に向かう。靴、置いてきちゃった…探しに行かなきゃ!
借りた靴を履いて戻ると、パーティーももう佳境に入っていて、ダンスしたり話し込んだりそれぞれが楽しく過ごしていた。
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もう靴諦めようかな…って思っていた時、俺達に声を掛けてくる人達が…
デイビス王子と、その婚約者のロビンだ。
「やあ、ガゼル。上手くいったようだね?仲良さそうでなにより!」
デイビス王子がそう声を掛けてきた。
そう言えば、さっき二人で話し込んでいたようだったけど…何を話してたんだろ?上手くって…?
そう思ってガゼルをチラッと見る。
「お互いの婚約者についてちょっとね…。鈍いから苦労するね?って言ってて」
そう言われて、俺とロビンは顔を見合わせる。
「鈍い…かな?」
思わず二人で同時にそう言ってしまう。
「ガゼル、それで結婚はいつ?早急にするんだろ?」
「デイビスこそ!国を上げての慶事になるよね」
──ん!結婚!?
もう一度ロビンと顔を見合わせて驚いたけど、まあ…したいよね?結婚。もう逃げないって決めたから!
「そう言えばさ、この靴外に落ちてたんだけど知らない?」
ロビンがテーブルの上の靴を指差す。見ると、装飾のターンテーブルの上で俺の靴がクルクルと回っている。あっ、あんな所に~!
「ありがとう!探してたんだよ。俺、さっき落としちゃって…」
やっと見つかった事に安堵する。この靴実は特注品なんだよね。
「シーンのだったの!?だけど重くない?これ…」
「うん。鉛入りだから。足を鍛えるパワーシューズだから」
それにはここにいる皆んなが驚く。えっ…履かないの?普通は。
「だけどさ、こんなの足ムキムキにならない?太ももパーン!って土偶みたいにさ」
そう言って、俺の脚をまじまじと見ている。
「あれ?カモシカみたいな脚だ…カッコイイ!流石、綺麗で細マッチョのシーンだね」
──うん?俺ってカッコイイの?綺麗なの!?
全く知らなかった自分への評価にビックリで…嘘?
そう思って唖然としているとガゼルが耳元で囁く。
「だから言ったでしょ?シーンはいつだってカッコイイんだよ!私にお似合いだよ。シーン・デリラ」
まだ気が早いでしょ?それは…って二人で笑う。それには何故か目の前のロビンが固まっている。あれ?何でだろう…
「シーン・デリラ?鉛の靴?」
ロビンがそう呟いて、何かを一生懸命考えている。
「あっ、シンデレラとガラスの靴…もしかして?」
──はっ?BLゲームの中じゃなかったの!?俺って、シンデレラだったの?
シーン・デリラがシンデレラ?鉛の靴がガラスの靴?嘘でしょ!知らんがな…
結局は何だが分からない。だけど、幸せを掴むのは本人次第…それだけは間違いないよね!
そんな2カップルを柱の影から見つめる人物が…アンジー・ホワイトだ!
「また僕、関係ない…モブじゃん!」
──The end.
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かつて類い稀な魔術の才能を持っていたセシルは、魔物との戦いに負け、魔力と片足の自由を失ってしまった。伯爵家の下働きとして置いてもらいながら雑用すらまともにできず、日々飢え、昔の面影も無いほど惨めな姿となっていたセシルの唯一の癒しは、むかし弟のように可愛がっていた伯爵家次男のジェフリーの成長していく姿を時折目にすることだった。
こんなみすぼらしい自分のことなど、完全に忘れてしまっているだろうと思っていたのに、ある夜、ジェフリーからその世話係に仕事を変えさせられ……
※ムーンライトノベルズにも掲載しています
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
記憶喪失になったら弟の恋人になった
天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。
そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。
そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。
見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。
トラド×ギウリ
(ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
助けた犬が婚約者?!
🤣🤣🤣🤣🤣
では猫は…って思ったらやっぱりヒロインだった🤭
面白かったです🐶😺ニャン
nicoさん、こちらも感想ありがとうございます😊
長々とお付き合い下さいまして、ありがとうございました🙇
一応フェア参加として、あっという間に書いたのでどころどころ甘いところがあったかも?ですが読み切りとしてはそれもいいかな!と思います😆
一応、犬と猫が一般的なイメージとは逆で、ドSとドМになっております〜😂