【完結】お別れするあなたに一言だけ。あなたの恋は、叶うことはないのだと…

MEIKO

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第二章・新しい私

16・ランドン家の激震

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 その日、ランドン伯爵家に激震が走る!
 夕食を取る為にダイニングルームに集まった時、突然屋敷が騒然とする。それに当主であるノア・ランドンは、何ごとがあったのかと慌てふためく。そして妻であるエリザベスは叫んだ…

 「あ、あなた!イェガー公爵…様が、いらっしゃっていると…」

 途端に二人の顔色は青褪め、もう食事どころではない。今このガレリア帝国での話題は…公爵家に嫁いだ娘であるクリスティーヌに関することだ。そして近い内に会うことになるだろうと思っていた相手…娘の夫であるロベルト・イェガーの訪問を知る。そして…

 「お前たち、余計なことは言うな!命が惜しければそうするのだぞ?」

 ランドン伯爵は、妻エリザベスと娘ミランダに対してそうくれぐれもと注意をする。それにエリザベスは怯えながら頷き、ミランダはフフン…と挑戦的な笑みを浮かべて。その意味を問いたいが、今はそんなことをしている場合ではない!そして応接室に向かうと…

 「久しぶりではないか?伯爵…いや、義父ちちと呼ぼうか?」
 
 そんなロベルトの物言いに、伯爵は顔を歪める。明らかなその挑戦的な言動…そして今この応接室には、公爵家の騎士達が犇めいていて…    
 そして自分の気弱な性格が災いして起きた数々の失態…その最たるものは、この男と関わったことだと密かに思う。そして…

 「ク、クリスティーヌの…こと、でしょう…か?」

 伯爵の口元は震え、そして緊張で話すことも覚束ない。それでも何とかそう口にすると…

 「分かってるのではないか…そうだ!クリスティーヌのことだ。何処にいる?」

 「は、はいっ?ど、どこにいるとは…」

 この場には困惑した空気が流れる。それに更にイライラしだすのはやはりロベルト。すると…

 「ここにはいません!公爵様との結婚以来、クリスティーヌはこの家には寄り付きもしないのですよ?なのに何処にとは…私共もそれを聞きたいくらいですわ」

 夫人も夫と同じように震えてはいるが、元々勝ち気な性格…そしていくらなんでも義母に手を上げることはないと、夫の代わりにそう答える。だけどかつて公爵がクリスティーヌの頰を打ったと聞いたのを思い出し、途端に怖くなってトーンダウンする。それからは口を閉じて…
 
 「間違いないな?それは…だが一応クリスティーヌの部屋を見せろ!居る様子がなければ、それを信じてやってもよい」

 相変わらず表情を変えず、淡々と話すロベルト。それが余計恐怖を煽られる。おまけに大きな身体に、それに似つかわしくない美丈夫さ。美しいと言っても、まるで氷のように冷たい!そしてランドン家の面々には、そのことが一番触れて欲しくないことだった。それを知らないロベルトは…

 「早く案内しろ!それで見当たらなければ、今日のところはこれで引こう…」

 そうロベルトが提案するが、ランドン家の三人は動揺した様子を見せる。そんな態度を不思議に思うロベルト…何故なのか意味が分からない。すると…

 「あ、あの子の部屋は、もう片付けてしまったのです…もう必要ではごさいませんでしょう?」

 ランドン夫人が焦った様子でそう答える。だが違和感を覚えるロベルトは、それを信じることはない。そして…

 「なら、残った荷物を見せろ!結婚時に全てを持って行くことなど出来なかっただろう。それに…この家から持って来たクリスティーヌの荷物は、殆ど無かったと記憶してるが…どういうことか?」

 「そ、それは…」

 お茶を濁したまま、話すことはない夫人。そこに今まで一度も話していなかったランドン家の次女ミランダが、突然声を上げて…

 「別邸に住んでいたのです!私達とは住みたくないと言って…酷いんですのよ?お姉様って…」

 令嬢とも思えぬギラついた瞳で、そう伝えるミランダ。底意地の悪さが滲み出ている。

 そしてその内容に驚いたロベルトは、この応接室の窓から遠くに見える小屋のような建物に目を向ける。そして信じられないという表情をして…

 「馬鹿な…ランドン家の嫡女があのようなところで…?」

 そう暫し呆然としていると、なおも話すことを止めないミランダは、誰もが驚くような爆弾発言をする。

 「公爵様…姉などもう、捨て置けはいいのです。その代わりに…私などいかがでしょう?あんな地味な姉とは離婚して、是非私と…その方がいいと思いませんか?」

 そう自信満々に話すミランダ。ブルネットの髪に藍色の瞳のクリスティーヌとは違い、金髪に緑目の派手な見た目。そこに姉妹らしさなど欠片もない…それには流石のロベルトも声も出なかった。だが、それを窘めたのは意外な人物で…

 「馬鹿を言うんじゃない!何を言ってるんだ?姉を心配するどころか、そんなことを言うとは…」

 ミランダの暴言にショックを隠せないランドン伯爵。だけどその時…

 「そうなさると良いと思いますわ!二年前はまだ結婚出来る年齢ではなかったこの娘も、今では適齢期です!それだと全てが丸くおさまるとお思いになりますでしょ?」

 母子でそんなことを言うのを心底呆れるロベルト。そんなに我が家との縁を望むとは…もしかしてお金か?と訝しむ。そして…

 「お前のような乳臭い小娘を誰が!馬鹿も休み休み言え。もういい!こんなところにクリスティーヌがいるとは思えぬからな。そして覚悟しろ?ランドン家との縁はここまで…資金の援助も今日限りで打ち切る!勝手に落ちぶれるがいい…」

 そう冷酷な目で言い捨てるロベルト。そして騎士達と共にランドン邸を出て行った。そこに残ったのは、ランドン家の者達で…

 「ああ、もう!最初から私が結婚してたら良かったのよ。そしたら今頃は公爵夫人…悔しい!」

 「ああ困ったわ…宝石とドレスの支払いがあるのに」

 そんな自分のことだけしか考えていない妻と娘を見ながら伯爵は思う。私の判断は間違っていたのか?と…

 ランドン家の嫡女だった妻が亡くなり、遠縁とはいえ入婿だった自分。そして虎視眈々とこの座を狙う親族達…
 とてもじゃないがクリスティーヌにこの家を残してやれないと、打ちひしがれていた時…近付いて来たのが有力者の娘であるエリザベスだった。それで甘言に乗せられ再婚することに…

 そして娘がもう一人生まれると、途端にクリスティーヌを疎み出したエリザベス。だけどこの女の父親の持つ力は大きい…それに逆らうことは出来なかった。
 そして何年か経った後、イェガー公爵家から縁談がくる。伯爵がまず思ったのは…これでクリスティーヌをしがらみから解放してやれる!嫌な噂はあるものの、クリスティーヌだったらきっと大丈夫。そう思ってしまった伯爵が…

 自分勝手に騒ぐ二人を見ながら思い知った伯爵。自分の判断の間違いにより、クリスティーヌをより不幸にしてしまったことを…
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