37 / 64
第四章・真実の告白
36・オリヴァーの真実
※皇族の名前(苗字)が国名と似すぎていて紛らわしいので、変更しております。すみません!ご了承下さいませ。
〈以下本編〉
オリフェルト・ルード・アーガソン。それはどう考えても皇族の名前…
以前少しだけ考えたことがあった。ドノバン卿の名前がメイソンであり、その孫であるオリヴァーは、果たして本当に同じなのかと。だからやっぱりそうだったというのが正直な感想だったと思う。それだけだったなら…
なのに今、流石に想像も出来なかったことが起きる…実はオリヴァーが皇族だったなんて!
シンと静まり返っている中、参加者達はどうしてよいのか分からず辺りを見回す。そんな中、いきなり響く声が…
「オリフェルト殿下、おめでとうございます!」
誰が発したのかは分からない。だけど聞いたことがある声のような気がする…
気のせいなのかとも思うけど、余りの衝撃に茫然とし、深く考えることも出来ずにいた。それからこの場がワッと沸く。堰を切ったように鳴り響く拍手と祝いの言葉。そして私の近くではこんな会話が…
「二十年前くらいに側妃様が死産されて、そのままお亡くなりになられたよな?その時のお子様が実は生きていて、オリフェルト殿下なのか…?」
「そうそう、何か理由があって幽閉された方だったわよね?その後疑いは晴れたんだけど、その心労で体調を崩されて…それでお亡くなりになったと聞いたけど」
私がまるで知らない、そんな噂に愕然とする…
オリヴァーの身に起きたことは、本人の口から聞くまでは全てを信じることは出来ない。だけど…あながち間違っている訳でもなさそうで。そして私がデビュタント中に感じたあの違和感…その意味は、このことだったのね?
デビュタントが進むにつれ、オリヴァーの様子がおかしくなっていった。緊張が酷くなるというのか、思い詰めているような顔で。初めての社交の場で、気負い過ぎているのだと思っていたけど…それで全てが納得がいく。
オリヴァーは、このノースブルグから出なかったのではなく、出られなかったのね?その理由は皇族だったから。おまけに今の噂の殆どが事実だったとして、かなりの曰くがありそうだわ…
本来の身分が明かされたオリヴァーは、領主様からの指示なのか警備の騎士達に囲まれる。そして安全の為に騎士達と共に会場から出て行くようで、案内の者が慌てて近付いている。
私一人残され寂しいけど、そんなことを言っている場合ではない。だけどオリヴァーを残して帰るのも後で後悔しそう!どうしたらいいのか…
「クリスティーヌ、一緒に行こう」
その声に振り向くと、少し離れたところにいるオリヴァーが、私に向かって手を差し出している。そんなオリヴァーの行動で私は注目を浴び、ええっ?と躊躇するけど…後悔するよりマシ!と勇気を振り絞ってその手を取る。するとオリヴァーは私をグッと引き寄せたかと思うと、マントの中に隠すように抱き寄せる。そんな行動に私はドギマギして…
──ち、近いわよ!密着し過ぎる…
人目に晒されないようにというオリヴァーなりの配慮だと思うけど、ぴったりと密着する身体は熱を帯びて…
一つ下で弟みたいだと思っていたのに、意外にもガッチリとした体格が触れる。おまけに私の腰に回された腕と大きな手が熱い!すると途端に恥ずかしくなってくる。真っ赤に染まる顔を見られたくないと、俯きながら移動することに。そして…
「オリフェルト殿下…まずはこれからのご意向をお聞きしたい。皇帝陛下にお報せしてよろしいですか?」
そうオリヴァーに聞くのは領主様。先程まで私は会いたくないと、避けまくっていたけど今はそれどころではない。それに領主様だって私が居ても見向きも出来ない状況で…
領主城の応接室に通された私達。オリヴァーの向かいには領主様とロウ男爵がおり、そして貴族家の当主らしき人達が取り囲んでいる。そして私はというと、応接室内ではあるけど少し離れて座っている。今は邪魔にならないように、静かに成り行きを見守る他はないから…
「もう既に陛下はご存知だ」
それには騒然とする!信じられないと皆が顔を見合わせて…だけど当のオリヴァーはそれに、凄く落ち着いている。
──皇帝陛下が…オリヴァーの存在を知っているですって?
それならこうやってノースブルグに隠れるように暮らしていたのは、皇帝陛下の指示だったということになる。他には一切知らせず、そして当然皇族の方々も知らないのだと思う。ごくごく僅かな人達以外は…
「それでは今回のデビュタントで殿下の身分を明らかにし、そしてその存在をガレリア帝国は元より、この大陸中に知らしめようとなさったこと、その全てを陛下がご了承されているということでしょうか?」
領主様に続きロウ男爵も、恐る恐るオリヴァーに尋ねている。そしてそれは誰もが気になっていること…その答え次第では騒動が起こることを意味している。すると…
「ああ、そうだ。これまで未成人だった私が皇居にいたなら、安全に暮らすなど夢のまた夢だ…。だが成人になった今なら自軍を持つことも可能。なにより自分の身は自分で守れることになる。それまではこの地で、待たせてもらったという訳だ」
その言葉に胸がズキリと痛む!その真なる意味は言わなくても分かる…皇居に居たなら、命を狙われるということ。そしてそれが可能な人物は一人しかあり得ない…皇后様。
私も何度かお茶会で招待を受けたが、美しくも厳しい御方だった。失敗を犯せば二度と呼ばれない…そしてその後、その者の家門が消えることすらあったこと。オリヴァーはそんな恐ろしい方から狙われていたの?
「それでは今後は、首都の方に向かわれるということですね。そうでなければ今日身分を明らかにされることは無かった筈です」
流石領主様…核心を突いてくる。さっきオリヴァーが言った軍を率いる…それだけだったら、今日明かす必要はない。それも今夜はこの領地の有力貴族や、貴族でなくともそれに準ずるほどの力を持つ者…そんな人達が一同に集まっている。おまけに領地外の貴族だって…これは思った以上に計画的だったのね。これだけの大勢の人達に知られていたら明日…もしかして今夜中にその噂は首都にまで届くでしょう。そしてそんな中、新しい皇族が堂々と到着したとしたら…人々から熱狂的に迎えられることに。そう思うと複雑な気持ちになって…
──そうなると、オリヴァーがここからいなくなる?そんなの私、耐えられるかしら…
もう既に私の隣には、オリヴァーがいて当たり前になっている。最初は隣人として仲良くなり、その後は昔からの幼馴染みのように…楽しいことも嬉しいことも、苦しいことだって一緒に過ごしてきた。それなのにオリヴァーが居なくなるですって?そんなの無理だわ!だけどそれって…
──私はただ、オリヴァーを家族みたいに思っていただけ?だから嫌なのかしら…
私は今気付いてしまった。オリヴァーという存在が、私の心の大きな部分を占めていたことを。心のどこかでいつかオリヴァーとなら、本物の家族になれるんじゃないかと思っていたことを…
〈以下本編〉
オリフェルト・ルード・アーガソン。それはどう考えても皇族の名前…
以前少しだけ考えたことがあった。ドノバン卿の名前がメイソンであり、その孫であるオリヴァーは、果たして本当に同じなのかと。だからやっぱりそうだったというのが正直な感想だったと思う。それだけだったなら…
なのに今、流石に想像も出来なかったことが起きる…実はオリヴァーが皇族だったなんて!
シンと静まり返っている中、参加者達はどうしてよいのか分からず辺りを見回す。そんな中、いきなり響く声が…
「オリフェルト殿下、おめでとうございます!」
誰が発したのかは分からない。だけど聞いたことがある声のような気がする…
気のせいなのかとも思うけど、余りの衝撃に茫然とし、深く考えることも出来ずにいた。それからこの場がワッと沸く。堰を切ったように鳴り響く拍手と祝いの言葉。そして私の近くではこんな会話が…
「二十年前くらいに側妃様が死産されて、そのままお亡くなりになられたよな?その時のお子様が実は生きていて、オリフェルト殿下なのか…?」
「そうそう、何か理由があって幽閉された方だったわよね?その後疑いは晴れたんだけど、その心労で体調を崩されて…それでお亡くなりになったと聞いたけど」
私がまるで知らない、そんな噂に愕然とする…
オリヴァーの身に起きたことは、本人の口から聞くまでは全てを信じることは出来ない。だけど…あながち間違っている訳でもなさそうで。そして私がデビュタント中に感じたあの違和感…その意味は、このことだったのね?
デビュタントが進むにつれ、オリヴァーの様子がおかしくなっていった。緊張が酷くなるというのか、思い詰めているような顔で。初めての社交の場で、気負い過ぎているのだと思っていたけど…それで全てが納得がいく。
オリヴァーは、このノースブルグから出なかったのではなく、出られなかったのね?その理由は皇族だったから。おまけに今の噂の殆どが事実だったとして、かなりの曰くがありそうだわ…
本来の身分が明かされたオリヴァーは、領主様からの指示なのか警備の騎士達に囲まれる。そして安全の為に騎士達と共に会場から出て行くようで、案内の者が慌てて近付いている。
私一人残され寂しいけど、そんなことを言っている場合ではない。だけどオリヴァーを残して帰るのも後で後悔しそう!どうしたらいいのか…
「クリスティーヌ、一緒に行こう」
その声に振り向くと、少し離れたところにいるオリヴァーが、私に向かって手を差し出している。そんなオリヴァーの行動で私は注目を浴び、ええっ?と躊躇するけど…後悔するよりマシ!と勇気を振り絞ってその手を取る。するとオリヴァーは私をグッと引き寄せたかと思うと、マントの中に隠すように抱き寄せる。そんな行動に私はドギマギして…
──ち、近いわよ!密着し過ぎる…
人目に晒されないようにというオリヴァーなりの配慮だと思うけど、ぴったりと密着する身体は熱を帯びて…
一つ下で弟みたいだと思っていたのに、意外にもガッチリとした体格が触れる。おまけに私の腰に回された腕と大きな手が熱い!すると途端に恥ずかしくなってくる。真っ赤に染まる顔を見られたくないと、俯きながら移動することに。そして…
「オリフェルト殿下…まずはこれからのご意向をお聞きしたい。皇帝陛下にお報せしてよろしいですか?」
そうオリヴァーに聞くのは領主様。先程まで私は会いたくないと、避けまくっていたけど今はそれどころではない。それに領主様だって私が居ても見向きも出来ない状況で…
領主城の応接室に通された私達。オリヴァーの向かいには領主様とロウ男爵がおり、そして貴族家の当主らしき人達が取り囲んでいる。そして私はというと、応接室内ではあるけど少し離れて座っている。今は邪魔にならないように、静かに成り行きを見守る他はないから…
「もう既に陛下はご存知だ」
それには騒然とする!信じられないと皆が顔を見合わせて…だけど当のオリヴァーはそれに、凄く落ち着いている。
──皇帝陛下が…オリヴァーの存在を知っているですって?
それならこうやってノースブルグに隠れるように暮らしていたのは、皇帝陛下の指示だったということになる。他には一切知らせず、そして当然皇族の方々も知らないのだと思う。ごくごく僅かな人達以外は…
「それでは今回のデビュタントで殿下の身分を明らかにし、そしてその存在をガレリア帝国は元より、この大陸中に知らしめようとなさったこと、その全てを陛下がご了承されているということでしょうか?」
領主様に続きロウ男爵も、恐る恐るオリヴァーに尋ねている。そしてそれは誰もが気になっていること…その答え次第では騒動が起こることを意味している。すると…
「ああ、そうだ。これまで未成人だった私が皇居にいたなら、安全に暮らすなど夢のまた夢だ…。だが成人になった今なら自軍を持つことも可能。なにより自分の身は自分で守れることになる。それまではこの地で、待たせてもらったという訳だ」
その言葉に胸がズキリと痛む!その真なる意味は言わなくても分かる…皇居に居たなら、命を狙われるということ。そしてそれが可能な人物は一人しかあり得ない…皇后様。
私も何度かお茶会で招待を受けたが、美しくも厳しい御方だった。失敗を犯せば二度と呼ばれない…そしてその後、その者の家門が消えることすらあったこと。オリヴァーはそんな恐ろしい方から狙われていたの?
「それでは今後は、首都の方に向かわれるということですね。そうでなければ今日身分を明らかにされることは無かった筈です」
流石領主様…核心を突いてくる。さっきオリヴァーが言った軍を率いる…それだけだったら、今日明かす必要はない。それも今夜はこの領地の有力貴族や、貴族でなくともそれに準ずるほどの力を持つ者…そんな人達が一同に集まっている。おまけに領地外の貴族だって…これは思った以上に計画的だったのね。これだけの大勢の人達に知られていたら明日…もしかして今夜中にその噂は首都にまで届くでしょう。そしてそんな中、新しい皇族が堂々と到着したとしたら…人々から熱狂的に迎えられることに。そう思うと複雑な気持ちになって…
──そうなると、オリヴァーがここからいなくなる?そんなの私、耐えられるかしら…
もう既に私の隣には、オリヴァーがいて当たり前になっている。最初は隣人として仲良くなり、その後は昔からの幼馴染みのように…楽しいことも嬉しいことも、苦しいことだって一緒に過ごしてきた。それなのにオリヴァーが居なくなるですって?そんなの無理だわ!だけどそれって…
──私はただ、オリヴァーを家族みたいに思っていただけ?だから嫌なのかしら…
私は今気付いてしまった。オリヴァーという存在が、私の心の大きな部分を占めていたことを。心のどこかでいつかオリヴァーとなら、本物の家族になれるんじゃないかと思っていたことを…
あなたにおすすめの小説
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・