【完結】お別れするあなたに一言だけ。あなたの恋は、叶うことはないのだと…

MEIKO

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第四章・真実の告白

41・罪と懺悔

 ブロン皇太子の補佐官アルフォンソ・クリミナは、浮かぬ顔をしていた。今首都中に…いや、この大陸中を駆け巡っている新しい皇子の名を聞く度に、まさかあのオリヴァーが!?と戸惑いを隠せないでいた。

 『オリフェルト・ルード・アーガソン』

 ミンチェスター家にお世話になった約二週間の間、毎日のように会っていたのがそのオリヴァー。アルフォンソはその顔を思い浮かべて…

 眩しいほどの金髪に、どことなく品の良い顔。そして目を引くのはオリヴァーが持つ紫眼!てことは…

 「ああーっ!どう考えたって皇帝陛下とそっくりだろ?どうして気付かなかったんだ…」

 知る人ぞ知る皇家だけが持つ特徴というのがある。ブロン皇子もそうだが、ブロンドとプラチナブロンドの間くらいの髪色が皇家だけが持つ特色。だから普通の金髪よりも、光の粒が散りばめられているように煌めく。それはオリヴァーも…
 
 「そうだったら決まりなんだよな」

 そう呟きながらアルフォンソは、ノースブルグで過ごした日々を思い出す。何度かメイソン邸にもお邪魔したけど、クリスティーヌは疑うことを知らない人だから…全く気付いてなかったよな。メイソン邸の人々は元騎士だというのに鍛錬を欠かさず、筋肉隆々の屈強な者達ばかりだった。そんなのちょっと考えれば不自然だって!

 「クリスティーヌは、運動不足解消にあそこまでやるのね?なーんて言ってたけどさ、そんな訳ないだろうって!だけどそんなところがクリスティーヌの良い所でもあるよな?」

 長々と独り言を呟いて、それから目の前の執務室の扉を叩く。すると…

 「早く入れ!」

 待ちかねたようなブロン皇子の声が…おまけに凄く不機嫌な様子だ。

 「遅い!ロベルトがいないんだぞ?早く仕事しろ」

 ロベルトか…アルフォンソはあの仏頂面を思い浮かべる。そして思う…あの時は心底肝が冷えたと。
 一週間前、クリスティーヌのことを皇子と話し合っていた時、いつもはゆっくりと昼休みを過ごすロベルトが、あっという間に休みを終えて帰って来た。そんなの普段だったらあり得ないことなんだが…

 「ロベルトは着いたでしょうか?ノースブルグに…」

 思わずそう呟くと皇子は、山積みの書類に向けていた視線をこちらに向ける。そして…

 「さあな!だけど…心配だな。そして私の弟か…全てはノースブルグで起きたこと」

 ブロン皇子の弟が現れた…それに驚き狼狽えた皇子だったが、直ぐにいつもの落ち着き払った態度に戻る。アルフォンソは密かに、やはり凄い人だと感じていた。そんなことを声に出したなら、嬉しがるというより嫌がられるだろうけど。そして自分達が犯した致命的な失敗に思いを巡らせる。

 「クリスティーヌ…すまない。乗り越えてくれ!」

 アルフォンソはそう謝りながらも、それは避けられなかったことだと思っていた。自分が勘違いしていたことによって避け続けるべきだと思っていたが、そうではなかったことを知る。あの瞬間は殺されるかも!なんて焦ったが、意外にもロベルトは、自分の気持ちを正直に話し始めた。二人は、その不器用で悪手過ぎるロベルトの行動に心底呆れたが、クリスティーヌを危険に晒すことはないだろうことは分かった。

 「だけどもう遅い。振られてくればいいんだ…」
 
 アルフォンソのそんな本音に、ブロン皇子も無言で大きく頷いている。

 「そうだな…だが懸念すべきはカレンのことだ。調べてみると母親が亡くなり、そして父親とは修正不能なほど険悪な間柄。これまであんな家で過ごしていたとは…気付かず申し訳なかったと思う。だが…私は心配だ!絶対にこのままでは終わらない。そしてロリーもノースブルグにいて…」

 ブロン皇子とアルフォンソは、大切な人達の無事を祈る。そしてまた会いたいと…


 +++++


 「父上、お聞きしたいことがあります。その為に遥々とノースブルグにまで…」

 ノースブルグの領主カルデアス・イェガーは、久しぶりに見る息子ロベルトに目を向ける。まだ若いというのに眉間に刻まれた深々とした皺…これが自分のせいだということは分かっていた。それが己の罪だということも…

 「何だ?私に答えられることなら全て答えよう。それが必要なのが今か…」

 自分に似て、不器用過ぎるほど不器用な息子。後ろめたさから愛情を掛けられずにいた。自分のせいで不幸になった人達がいて、それを告白することすら出来なかった。そんな幼い頃の記憶は自身の心を蝕んできた。自分が不幸になることで、その罪を償おうとしていたのかも知れない。だが…それは、何の罪もない息子にとって同じ不幸を背負わせることになった。それは幸せにするつもりで息子の妻にと望んだ、クリスティーヌにさえも…
 
 罪深さにブルッと身震いしながら息子ロベルトを真正面から見つめる。懺悔する思いで…
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