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第四章・真実の告白
39・悪い予感
殆ど知らないお祖母様の半生…そのことに触れるのは初めてで。無理に聞き出すことはしたくないと、話してくれるのを待っていた…それにドノバン卿が関わっているなんて!
「メイソン家とは隣同士だけど交流はなかったの。両親が早く亡くなったドノバンは、騎士になる為に単身首都へと向かって。それで我が家が隣だという理由だけでメイソン邸の管理を頼まれたという訳。それからあなたの母、ルナの誘拐が起きて…」
淡々とそう話すお祖母様。だけどメイソン家と交流がなかったなんて驚きで…
「私はルナが居なくなって、まず誘拐を疑った。ミンチェスター家は資産家だと有名だから、それを狙う者がいたとしても不思議じゃない。だけどどこをどう探しても見つからなかった。それで領主様…あなたの夫の祖父にあたる方に捜索を頼もうと、首都まで出掛けたの。そこで偶然ドノバンと再会して…」
「ええっ…偶然に?ではドノバン卿は騎士になっていたのね」
お祖母様はそれにコックリと頷く。そして…
「当時ドノバンは第一騎士団に所属していてね。娘のことを話したら、とても親身になってくれて…そしてもう一人、ドノバンの同僚が同じように捜索に協力してくれたの。それこそ私に付きっきりで、寝ずに捜す私を心配してくれて…」
「その人がもしや、お祖母様の旦那様になった方かしら?」
私がそう尋ねるとお祖母様は…花がほころぶように笑う。愛しいその人を懐かしむように…
「あの人は私を残して直ぐ死んじゃったけど、思い出は残してくれたの。婿としてこの家に入ってくれて、家門の仕事も一緒に…娘を失って心にぽっかりと空いた穴を埋めてくれた。でなければ私は、こうやって生きてはいなかったのかも…」
私はもう会うことは出来ないその人に、心から感謝をする。お祖母様を助けてくれてありがとう。そして生きる意味を与えてくださって…
「それでね、ドノバンは休暇の度に訪ねてくるようになった。それは夫が亡くなった後もその関係は継続して…。そして何年か経った後、突然生まれたばかりのオリヴァーを連れてドノバンは現れた。あれはビックリしたわ!息子夫婦の忘れ形見だなんて言って…」
ああ…きっと、お祖母様を頼って来たのね?そんな小さな子を男一人では、どうにも出来ない。お祖母様だったら子育て経験者だから…
「ドノバン卿は一体、どういう経緯でオリヴァーを預かることになったのかしら?それも生まれたばかりの皇子を…奥様が乳母だったってことはないのよね?」
それにお祖母様は無言でフルフルと首を振って難しい顔をする。その意味は何だろうと思っていると…
「ドノバンは結婚は元より、子供がいるなんて話も聞いたこともなかった。だから結婚歴はないと思うの。となると相当ワケアリなんだと思って…だけど娘の件で恩義があったから、それ以上は聞かないと決めて…」
そう聞いた時、先程の噂を思い出す。確かオリヴァーは側妃様の子じゃないかって言っていたわね?
「さっき、オリヴァーが側妃様の子じゃないかって噂を聞いたの。もちろん、本人の口から聞かないことには信じられないけど。それに一時期理由があって、幽閉された方だって言ってた」
会場で聞いたその噂は信憑性はない。だけどそれを話すとお祖母様はハッと目を見開く。すると…
「ああ、そうだわ!確かドノバン…側妃様の護衛をしていると言っていた。ではその方の産んだ子がオリヴァーなのね?」
お祖母様は自分で言い聞かせるようにそう呟く。それから私は、今夜どうしても伝えないといけないことを話すことにする。でなければ…
「私が帰る前に領主様が言ったの。ミンチェスター家はオリフェルト殿下の同調者になったと。だから気を付けなさいとおっしゃって…それはどういう意味なのかしら?」
それにお祖母様の顔はサッと曇る。その途端に言ってはいけなかったことだったのかと身構える。そして放心したように呟いて…
「オリヴァーと舞踏会のパートナーになったという事が、そういう意味に取られても仕方がないのかも。そしてクリスティーヌはオリヴァーと共に会場から出たのよね?」
「ええっ、そのことが関係があると!」
そうか…行動を共にしているということ自体が同調…つまり協力者だと捉えられる。あれっ?それって…
──待って!それって…オリヴァーがわざと私をパートナーにしたってことはない?
ミンチェスター家という後ろ盾を得る為に…そして今回のことは、私の目の前で行われた。それって偶然なの?
心がざわつく…ざわざわと大きな音をたてて、私を呑み込む得体のしれないものに襲われる。私は自ら、足を踏み入れてしまったのかしら…
そんなことを考えてしまって、まさか違うわよね?って否定する。心臓がバクバクとして、胸が苦しい!するとグラリと足元が揺れ動いて…
──あれっ、何だろう?クラクラする。立っていられないほどに…
「えっ、クリスティーヌ!だ、誰か来ておくれー!」
お祖母様のそんな焦った声…そんな大きな声を聞いたのは初めてだと、どこか他人事のように思う。そして私は意識を手放した。
「メイソン家とは隣同士だけど交流はなかったの。両親が早く亡くなったドノバンは、騎士になる為に単身首都へと向かって。それで我が家が隣だという理由だけでメイソン邸の管理を頼まれたという訳。それからあなたの母、ルナの誘拐が起きて…」
淡々とそう話すお祖母様。だけどメイソン家と交流がなかったなんて驚きで…
「私はルナが居なくなって、まず誘拐を疑った。ミンチェスター家は資産家だと有名だから、それを狙う者がいたとしても不思議じゃない。だけどどこをどう探しても見つからなかった。それで領主様…あなたの夫の祖父にあたる方に捜索を頼もうと、首都まで出掛けたの。そこで偶然ドノバンと再会して…」
「ええっ…偶然に?ではドノバン卿は騎士になっていたのね」
お祖母様はそれにコックリと頷く。そして…
「当時ドノバンは第一騎士団に所属していてね。娘のことを話したら、とても親身になってくれて…そしてもう一人、ドノバンの同僚が同じように捜索に協力してくれたの。それこそ私に付きっきりで、寝ずに捜す私を心配してくれて…」
「その人がもしや、お祖母様の旦那様になった方かしら?」
私がそう尋ねるとお祖母様は…花がほころぶように笑う。愛しいその人を懐かしむように…
「あの人は私を残して直ぐ死んじゃったけど、思い出は残してくれたの。婿としてこの家に入ってくれて、家門の仕事も一緒に…娘を失って心にぽっかりと空いた穴を埋めてくれた。でなければ私は、こうやって生きてはいなかったのかも…」
私はもう会うことは出来ないその人に、心から感謝をする。お祖母様を助けてくれてありがとう。そして生きる意味を与えてくださって…
「それでね、ドノバンは休暇の度に訪ねてくるようになった。それは夫が亡くなった後もその関係は継続して…。そして何年か経った後、突然生まれたばかりのオリヴァーを連れてドノバンは現れた。あれはビックリしたわ!息子夫婦の忘れ形見だなんて言って…」
ああ…きっと、お祖母様を頼って来たのね?そんな小さな子を男一人では、どうにも出来ない。お祖母様だったら子育て経験者だから…
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それにお祖母様は無言でフルフルと首を振って難しい顔をする。その意味は何だろうと思っていると…
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そう聞いた時、先程の噂を思い出す。確かオリヴァーは側妃様の子じゃないかって言っていたわね?
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「ああ、そうだわ!確かドノバン…側妃様の護衛をしていると言っていた。ではその方の産んだ子がオリヴァーなのね?」
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「私が帰る前に領主様が言ったの。ミンチェスター家はオリフェルト殿下の同調者になったと。だから気を付けなさいとおっしゃって…それはどういう意味なのかしら?」
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そうか…行動を共にしているということ自体が同調…つまり協力者だと捉えられる。あれっ?それって…
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