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第四章・真実の告白
40・忍び寄る悪魔(ロベルトSide)
「ねぇロベルト。私、皇后様から命を脅かされてるの…だから手伝ってくれない?」
幼馴染みであるシュタイン侯爵家の令嬢カレンが、突如そんなことを言う。それに俺は目を剥いて…
「な、何を言うんだ…口には気を付けろ!誰が聞いてるのか分からないんだぞ?」
そうカレンを嗜めるが、当のカレンはどこ吹く風…周りを気にする様子もない。急にカレンから会いたいと連絡があった俺は、皇居からほど近いカフェにやって来た。
カレンは幼い頃から知っている…可愛らしい顔をしているが言い出したら聞かない。そんな勝ち気な性格だったけど、今では何かが違うような気がする。例の事件以来カレンは、どこか諦めているように見える。そんな性格になったのは、俺のせいだとも言えるが…
「ロベルトだって皇后様の恐ろしさは知っているでしょう?キズモノの私が愛する息子の婚約者候補だなんて許せないのよ。だから…私達、付き合っていることにしない?フリだけでいいんだから」
キズモノ…そう言われて俺は、あの苦い記憶を呼び醒ます。あの時、俺が敵を避けなければカレンが怪我をすることなんてなかったのだろう。そして名実ともに皇太子妃になって、いずれこの帝国の最高の女性になっていたのかも…そうなれないのはやはり、俺のせいだな…
そう思ってしまうと、そんな無意味と思える提案も断れなくなってしまう。久しぶりに会いたいだなんて言われて来てみれば、そんなことを言い出すとは…だけどいいさ!まだ結婚するつもりもないし、ある意味悪い話ではないのかもと思う。
それから俺はカレンと、付き合っているフリをする。父はそのことで憂慮した者から注進を受け、珍しく気をもんでいると家令から聞いた。そのことは幼い頃から俺のことを一切顧みない父に、してやったりという気持ちも正直ある。それがあんなことになるとは思わずに…
「ロベルト、結婚するんだ。相手はランドン伯爵家のクリスティーヌ令嬢。いいな?」
──いいなって…そんなに簡単に決めるのか!?
俺は大いに憤る。自分の結婚相手を、そんな勝手に決められたくはないと…だけどそんな気持ちも、クリスティーヌをひと目見た時からガラッと変わってしまう。
無理矢理言い渡された結婚だが、案外悪くない…そう思っていた。俺は口下手で気の利いたこと一つ言ってやれないが、それでも自分の中では愛情が、どんどん育っていくように感じていた。そもそも俺にそんな感情があったなんて、恥ずかしくも新しい発見だった。だが、そんな俺を嘲笑う者が…カレンだ。
カレンは俺が思っている以上の執着を見せる。俺のことが好き?馬鹿な!そんなのある筈がない…
そして俺は、クリスティーヌを騙していることに罪悪感を抱き、そもそもカレンとは恋人同士ではないことを告白しようと決める。そんな中、再びカレンが会いたいと言ってくる。それならこちらとしても丁度いいと、会う約束をする。
もう愛してるフリは無理だと言うつもりで出掛け俺に、カレンは衝撃的なことを言ってくる。
「ロベルトあなた…妻を愛しているから付き合っているフリを止めたいですって?何を馬鹿なことを…それなら良いことを教えてあげる。きっと私に感謝するはずよ?」
そう嬉々として話してくるカレン。恐らくだがクリスティーヌのことを調べ上げている。それは何故だ?
「何のことだか知らないが、それが本当だという証拠があるのか?自分の思い通りにならないからといって、口からでまかせを言うつもりでは…」
そう言いながらも何かおかしい…そう感じる。どうしてカレンが、クリスティーヌのことを調べる必要があるのだろうと。すると…
「あら、そんなの私に何の得があるというの?失礼ね…ではあなたも調べてみるといいのよ。それでもし、本当だったら…ロリーを私にくれない?」
「ロ、ロリーをだと?確かにイェガー家の使用人ではあるが、そんなことを強制出来ない。馬鹿を言うな!」
そう嗜めると、カレンは面白くないのか膨れっ面になる。そんな顔を見ていたら、俺達がまだ幼馴染みとして過ごしていた頃を思い出した。俺やブロン殿下よりも歳下だったカレンは、気に入らないことがあるとこうやって膨れっ面になっていた。あのままの関係でいられたなら、また違う人生があったのか?
だけどそれは言うまい…俺にはクリスティーヌがいる。愛する人が居ると言うだけで、見るもの全てが変わる。孤独に打ち震えていたあの時の俺はもういないんだ…
「あなたの母親の死と関係があると言ったらどうする?愛してもいない相手に抱かれて、あなたなんかを産んで…さぞかし無念だったでしょうね?それもこれもあなたの父親がそんなことを言い出さなかったとしたら起きなかったこと。どうしてそうなったと思う?」
「な、何?クリスティーヌが俺の生みの母の不幸と関係があるだと?それこそ馬鹿げている。おまけにクリスティーヌが生まれた時、母は既に無くなっているんだ!関係なんてある筈が…」
そう反論すると、カレンはフフンと鼻を鳴らす。何を知っている?どこまで調べたんだ!そもそも何の為にそれを…
「だからロリーをちょうだいよ!あの人ずるいのよ…元々ロリーは私の幼馴染みなのに。クリスティーヌなんかに仕えるより、私と一緒にいた方が楽しいのに。だから…特別に教えてあげるわね?」
そんなカレンには不安になる。あのブロン皇子が襲われた一件から、殆ど顔を会わせることはなくなった。それでも幼馴染みとしてや贖罪の意味で、会えば挨拶くらいはしていたけど…カレンは一体、どうしてしまったんだ?そしてロリーに見せる強い執着…
「クリスティーヌの母親が幼い頃に誘拐されたんだけど、それはあなたの父親のせいなの。だからね、ご自分は幸せなる資格がないと思ってらっしゃるみたいよ?だけど跡継ぎは必要だから、結婚はせずにあなたの母親に依頼して…」
──待ってくれ!とてもじゃないが信じられない。
それが本当だったとしたら、根本的に何もかもが違ってくる。それでは父がクリスティーヌを俺の妻に選んだのは、偶然ではないということか?
「ねっ?だから本来ならあなた達が結ばれるなんて赦されないことなのよ。お互い関わっちゃいけないの!だからこのままフリを続けて別れるといいわ。そしてロリーを…」
俺はそんなカレンに心底ゾッとする。カレンに何があったのかということよりも、クリスティーヌのことが心配になる。このまま俺の側にいたら…危険なのではないか?だけど離したくはない!だがカレンを刺激すると何をしでかすか分からない。
それから重苦しい気持ちでカレンの顔を見ると、楽しそうに笑っている。俺は悪魔に魅入られたような気がした…
幼馴染みであるシュタイン侯爵家の令嬢カレンが、突如そんなことを言う。それに俺は目を剥いて…
「な、何を言うんだ…口には気を付けろ!誰が聞いてるのか分からないんだぞ?」
そうカレンを嗜めるが、当のカレンはどこ吹く風…周りを気にする様子もない。急にカレンから会いたいと連絡があった俺は、皇居からほど近いカフェにやって来た。
カレンは幼い頃から知っている…可愛らしい顔をしているが言い出したら聞かない。そんな勝ち気な性格だったけど、今では何かが違うような気がする。例の事件以来カレンは、どこか諦めているように見える。そんな性格になったのは、俺のせいだとも言えるが…
「ロベルトだって皇后様の恐ろしさは知っているでしょう?キズモノの私が愛する息子の婚約者候補だなんて許せないのよ。だから…私達、付き合っていることにしない?フリだけでいいんだから」
キズモノ…そう言われて俺は、あの苦い記憶を呼び醒ます。あの時、俺が敵を避けなければカレンが怪我をすることなんてなかったのだろう。そして名実ともに皇太子妃になって、いずれこの帝国の最高の女性になっていたのかも…そうなれないのはやはり、俺のせいだな…
そう思ってしまうと、そんな無意味と思える提案も断れなくなってしまう。久しぶりに会いたいだなんて言われて来てみれば、そんなことを言い出すとは…だけどいいさ!まだ結婚するつもりもないし、ある意味悪い話ではないのかもと思う。
それから俺はカレンと、付き合っているフリをする。父はそのことで憂慮した者から注進を受け、珍しく気をもんでいると家令から聞いた。そのことは幼い頃から俺のことを一切顧みない父に、してやったりという気持ちも正直ある。それがあんなことになるとは思わずに…
「ロベルト、結婚するんだ。相手はランドン伯爵家のクリスティーヌ令嬢。いいな?」
──いいなって…そんなに簡単に決めるのか!?
俺は大いに憤る。自分の結婚相手を、そんな勝手に決められたくはないと…だけどそんな気持ちも、クリスティーヌをひと目見た時からガラッと変わってしまう。
無理矢理言い渡された結婚だが、案外悪くない…そう思っていた。俺は口下手で気の利いたこと一つ言ってやれないが、それでも自分の中では愛情が、どんどん育っていくように感じていた。そもそも俺にそんな感情があったなんて、恥ずかしくも新しい発見だった。だが、そんな俺を嘲笑う者が…カレンだ。
カレンは俺が思っている以上の執着を見せる。俺のことが好き?馬鹿な!そんなのある筈がない…
そして俺は、クリスティーヌを騙していることに罪悪感を抱き、そもそもカレンとは恋人同士ではないことを告白しようと決める。そんな中、再びカレンが会いたいと言ってくる。それならこちらとしても丁度いいと、会う約束をする。
もう愛してるフリは無理だと言うつもりで出掛け俺に、カレンは衝撃的なことを言ってくる。
「ロベルトあなた…妻を愛しているから付き合っているフリを止めたいですって?何を馬鹿なことを…それなら良いことを教えてあげる。きっと私に感謝するはずよ?」
そう嬉々として話してくるカレン。恐らくだがクリスティーヌのことを調べ上げている。それは何故だ?
「何のことだか知らないが、それが本当だという証拠があるのか?自分の思い通りにならないからといって、口からでまかせを言うつもりでは…」
そう言いながらも何かおかしい…そう感じる。どうしてカレンが、クリスティーヌのことを調べる必要があるのだろうと。すると…
「あら、そんなの私に何の得があるというの?失礼ね…ではあなたも調べてみるといいのよ。それでもし、本当だったら…ロリーを私にくれない?」
「ロ、ロリーをだと?確かにイェガー家の使用人ではあるが、そんなことを強制出来ない。馬鹿を言うな!」
そう嗜めると、カレンは面白くないのか膨れっ面になる。そんな顔を見ていたら、俺達がまだ幼馴染みとして過ごしていた頃を思い出した。俺やブロン殿下よりも歳下だったカレンは、気に入らないことがあるとこうやって膨れっ面になっていた。あのままの関係でいられたなら、また違う人生があったのか?
だけどそれは言うまい…俺にはクリスティーヌがいる。愛する人が居ると言うだけで、見るもの全てが変わる。孤独に打ち震えていたあの時の俺はもういないんだ…
「あなたの母親の死と関係があると言ったらどうする?愛してもいない相手に抱かれて、あなたなんかを産んで…さぞかし無念だったでしょうね?それもこれもあなたの父親がそんなことを言い出さなかったとしたら起きなかったこと。どうしてそうなったと思う?」
「な、何?クリスティーヌが俺の生みの母の不幸と関係があるだと?それこそ馬鹿げている。おまけにクリスティーヌが生まれた時、母は既に無くなっているんだ!関係なんてある筈が…」
そう反論すると、カレンはフフンと鼻を鳴らす。何を知っている?どこまで調べたんだ!そもそも何の為にそれを…
「だからロリーをちょうだいよ!あの人ずるいのよ…元々ロリーは私の幼馴染みなのに。クリスティーヌなんかに仕えるより、私と一緒にいた方が楽しいのに。だから…特別に教えてあげるわね?」
そんなカレンには不安になる。あのブロン皇子が襲われた一件から、殆ど顔を会わせることはなくなった。それでも幼馴染みとしてや贖罪の意味で、会えば挨拶くらいはしていたけど…カレンは一体、どうしてしまったんだ?そしてロリーに見せる強い執着…
「クリスティーヌの母親が幼い頃に誘拐されたんだけど、それはあなたの父親のせいなの。だからね、ご自分は幸せなる資格がないと思ってらっしゃるみたいよ?だけど跡継ぎは必要だから、結婚はせずにあなたの母親に依頼して…」
──待ってくれ!とてもじゃないが信じられない。
それが本当だったとしたら、根本的に何もかもが違ってくる。それでは父がクリスティーヌを俺の妻に選んだのは、偶然ではないということか?
「ねっ?だから本来ならあなた達が結ばれるなんて赦されないことなのよ。お互い関わっちゃいけないの!だからこのままフリを続けて別れるといいわ。そしてロリーを…」
俺はそんなカレンに心底ゾッとする。カレンに何があったのかということよりも、クリスティーヌのことが心配になる。このまま俺の側にいたら…危険なのではないか?だけど離したくはない!だがカレンを刺激すると何をしでかすか分からない。
それから重苦しい気持ちでカレンの顔を見ると、楽しそうに笑っている。俺は悪魔に魅入られたような気がした…
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