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番外編
番外編1・追憶①
「ブロン皇太子殿下…いえ、失礼致しました。皇帝陛下、本当に塔へ行かれるのですか?」
皇帝の筆頭補佐官であるアルフォンソは、そう言って皇帝を見上げる。皇帝といってもまだ年若く、その座を継いだばかりの御身だ。それなのに突然、罪人を収容している塔まで赴くと言う。それにアルフォンソは何故だと訝しんで…
「おい…お前だけは二人の時にまで、皇帝と呼ぶな。そして塔には皇帝になったからこそ行かねばならない。ある事実を伝えに…」
「ええっ…それってもしかして、イェガー公爵ロベルトを殺したあの女に会いに行くということですか?どういうことなのです…ブロン様」
アルフォンソのその問いに、難しい顔でコックリと頷く皇帝。それから遠くを見つめる…亡くした人を懐かしむように。そして…
「ロベルト、お前の息子は二歳になったぞ。賢くて元気な子だ…将来楽しみだな」
そんな皇帝の言葉にはアルフォンソも微笑む。つい先週会いに行ったばかりで、自分を「おじちゃま!」と呼んで抱きついて来た姿を思い浮かべながら…
「もうすぐあれから三年ですね。ですが何故今なのです?おまけに皇帝になったからこそ罪人に会いに行くなど…危険ではないですか?全く理解出来ません!」
そう注進しながらもアルフォンソは、カレンについての噂を思い出していた。ロベルトを殺してしまって以来、一言も声を発していないという。狂っているのか、それとも…
おまけに誰を一番恨んでいるのかと考えると、もしかしてその相手は皇帝陛下では?と危ぶんでいる。そしてそれは陛下自身が一番よく分かっていることだと思っていた。なのに?と、その行動が理解出来ない。
「どうしても行かねばならないのなら、俺も是非お連れください!危険があってはいけませんので」
それに一瞬真顔になる皇帝。だけど次の瞬間フフフと笑いだす。それから…
「もちろんそうしようと思っていたよ。君が来ないでどうする?最側近なのに」
そう言われて誇らしい気持ちと同時に胸がズキリと痛むアルフォンソ。本来ならこの地位はロベルトものだったから。ロベルトが亡くなった為に自分が筆頭補佐官の地位に就き、おまけに男爵から子爵へと陞爵されている。そして今更ながらに思う…爵位の重さを。お前もそうだったんだな…とロベルトを少しだけ理解出来るようになったアルフォンソ。そしてもう既に準備万端に整えられていた馬車に二人で乗り込む。そして軽快に走り出すと…
「私だと分からないように小さい馬車にした。公式的な訪問じゃないからな…となると三日ほどかかるかな?」
ぼんやりと車窓を眺めている皇帝はそうアルフォンソに尋ねる。そして暫く考えている様子の後…
「そうですね、塔がある場所は国境に面する北の外れです。三日は間違いなく掛かるでしょう。まあ、一週間ほどなら陛下が居なくても大丈夫じゃないですか?皇帝陛下とはいえども休みも必要です。ところで…その大事そうに抱えている箱は何でしょうか?」
「これかい?それはちょっと教えられないな…」
皇帝が膝の上に大事そうに抱えているその箱。両手に収まるくらいの小さなものだが、何故だがそれが気になりだすアルフォンソ。だけど当の本人は「いいから、いいから!」と言いながら、それが何かを話してくれる訳でもなく、手からは離すこともない。結局その後も同じ疑問を抱いたまま旅を続けることになる。そして三日後…
二人の目の前には巨大な塔が聳え立つ。それは北部の山岳地帯にほど近い寒さの厳しい土地に建っている。ここは重罪を犯した者達が収容される場所。貴族だということで処刑まではされないが、それに準ずる罪を犯した者が死ぬまで囚われることになる監獄だ。ひとたびここから逃げ出そうとすれば、寒さであっという間に凍え死ぬことになる。そして山の方へ逃げるとなると険し過ぎる山道が待っている。その先にある隣国に辿り着くなど夢のまた夢。だからどのみち死ぬことになるのだと、収容されている者は大人しく刑に服しているのが大半だ。この中には当然カレンも…そして二人は塔を見上げる。
「この三年で、少しは罪の意識を感じているのだろうか?誰とも話さないと聞いたがな…」
そんな皇帝の呟きにアルフォンソは、それを知っていた上で来たのかと不思議に思う。何をしに来たのかは分からないが、そんな状態では目的が空振りになる恐れもあるのにと…
「ええっ、誰ともですか?確か平民になった父親が世話をしていると聞いていますが。その父親とも話さないんでしょうか…」
それに皇帝は「かも知れないな…」と小さく頷いて、塔の警備をしている兵に声を掛けている。その兵達は突然の皇帝の訪問に「は、はいっ!」と上ずった声で敬礼し直立不動になる。そんな兵士をちょっと気の毒に思いながら、横を通り過ぎて塔の中へと入って行く。
塔の中の中心にあるのはガランとした広間で、螺旋状にずっと上まで階段が続いている。その階段の途中にいくつもの扉が付いており、外側に向かって部屋がある造りだ。その独立した監房に犯罪者達が収容されているよう。アルフォンソは初めて見る監獄塔に、ゾクリと背中が寒くなる感覚に襲われる。どれだけの者達が入っているのだろうかと…
またこの階段を登るとなると、相当骨が折れるだろうと溜め息を吐く。すると…少し離れた所から、一人の薄汚れた老人が近付いて来る。それに警戒したアルフォンソは、サッと皇帝の前に立つ。すると…
「大丈夫だよ、アルフォンソ。久しぶりだねシュタイン侯爵…あっ、今は平民だな」
そんな皇帝の言葉に、膝に顔が付くのではないかと思えるくらいに深々と頭を下げるその老人。そんな姿にアルフォンソはギョッとする。そして信じられないと…
「シュタイン侯爵だって?どこからどう見ても老人だと…」
カレンの父親はまだ五十代の筈…それなのにたった三年でこれ程までに変わるのかと驚きを隠せないアルフォンソ。髪は白髪だらけで、毎日の階段の昇り降りが負担なのか、腰は曲がり脚を引き摺って歩いている。そんなあり得ない程の変化に慄く。
「今は平民とはいえ、元侯爵にそれは失礼だぞ?」
皇帝はアルフォンソをそう嗜めるが、元侯爵はそれに顔を横に振る。そして今は運命を全て受け入れたかのように、昔の印象とは真逆の静かな笑みを浮かべている。そして…
「いいえ、本当のことですから。ところで皇帝陛下…今日はカレンに会いに来てやって下さったのでしょうか?娘もさぞかし喜ぶことでしょう。ただ、反応は無いかも知れませんが…」
そう言いながら元侯爵は、脚をズリズリと引摺りながら天まで続くような階段の手摺りに手をかける。そしてもう一度二人の方へと顔を向け頭を下げ、付いて来いとばかりに階段を登り始める。
──カッン…コン。
時々振り返りながら登り続けるその人の後に続く二人。そんな中アルフォンソは奇妙な感覚に囚われていた。恐怖と好奇心…それから永遠に続く階段を、どこまで登るのかと見上げていた。
皇帝の筆頭補佐官であるアルフォンソは、そう言って皇帝を見上げる。皇帝といってもまだ年若く、その座を継いだばかりの御身だ。それなのに突然、罪人を収容している塔まで赴くと言う。それにアルフォンソは何故だと訝しんで…
「おい…お前だけは二人の時にまで、皇帝と呼ぶな。そして塔には皇帝になったからこそ行かねばならない。ある事実を伝えに…」
「ええっ…それってもしかして、イェガー公爵ロベルトを殺したあの女に会いに行くということですか?どういうことなのです…ブロン様」
アルフォンソのその問いに、難しい顔でコックリと頷く皇帝。それから遠くを見つめる…亡くした人を懐かしむように。そして…
「ロベルト、お前の息子は二歳になったぞ。賢くて元気な子だ…将来楽しみだな」
そんな皇帝の言葉にはアルフォンソも微笑む。つい先週会いに行ったばかりで、自分を「おじちゃま!」と呼んで抱きついて来た姿を思い浮かべながら…
「もうすぐあれから三年ですね。ですが何故今なのです?おまけに皇帝になったからこそ罪人に会いに行くなど…危険ではないですか?全く理解出来ません!」
そう注進しながらもアルフォンソは、カレンについての噂を思い出していた。ロベルトを殺してしまって以来、一言も声を発していないという。狂っているのか、それとも…
おまけに誰を一番恨んでいるのかと考えると、もしかしてその相手は皇帝陛下では?と危ぶんでいる。そしてそれは陛下自身が一番よく分かっていることだと思っていた。なのに?と、その行動が理解出来ない。
「どうしても行かねばならないのなら、俺も是非お連れください!危険があってはいけませんので」
それに一瞬真顔になる皇帝。だけど次の瞬間フフフと笑いだす。それから…
「もちろんそうしようと思っていたよ。君が来ないでどうする?最側近なのに」
そう言われて誇らしい気持ちと同時に胸がズキリと痛むアルフォンソ。本来ならこの地位はロベルトものだったから。ロベルトが亡くなった為に自分が筆頭補佐官の地位に就き、おまけに男爵から子爵へと陞爵されている。そして今更ながらに思う…爵位の重さを。お前もそうだったんだな…とロベルトを少しだけ理解出来るようになったアルフォンソ。そしてもう既に準備万端に整えられていた馬車に二人で乗り込む。そして軽快に走り出すと…
「私だと分からないように小さい馬車にした。公式的な訪問じゃないからな…となると三日ほどかかるかな?」
ぼんやりと車窓を眺めている皇帝はそうアルフォンソに尋ねる。そして暫く考えている様子の後…
「そうですね、塔がある場所は国境に面する北の外れです。三日は間違いなく掛かるでしょう。まあ、一週間ほどなら陛下が居なくても大丈夫じゃないですか?皇帝陛下とはいえども休みも必要です。ところで…その大事そうに抱えている箱は何でしょうか?」
「これかい?それはちょっと教えられないな…」
皇帝が膝の上に大事そうに抱えているその箱。両手に収まるくらいの小さなものだが、何故だがそれが気になりだすアルフォンソ。だけど当の本人は「いいから、いいから!」と言いながら、それが何かを話してくれる訳でもなく、手からは離すこともない。結局その後も同じ疑問を抱いたまま旅を続けることになる。そして三日後…
二人の目の前には巨大な塔が聳え立つ。それは北部の山岳地帯にほど近い寒さの厳しい土地に建っている。ここは重罪を犯した者達が収容される場所。貴族だということで処刑まではされないが、それに準ずる罪を犯した者が死ぬまで囚われることになる監獄だ。ひとたびここから逃げ出そうとすれば、寒さであっという間に凍え死ぬことになる。そして山の方へ逃げるとなると険し過ぎる山道が待っている。その先にある隣国に辿り着くなど夢のまた夢。だからどのみち死ぬことになるのだと、収容されている者は大人しく刑に服しているのが大半だ。この中には当然カレンも…そして二人は塔を見上げる。
「この三年で、少しは罪の意識を感じているのだろうか?誰とも話さないと聞いたがな…」
そんな皇帝の呟きにアルフォンソは、それを知っていた上で来たのかと不思議に思う。何をしに来たのかは分からないが、そんな状態では目的が空振りになる恐れもあるのにと…
「ええっ、誰ともですか?確か平民になった父親が世話をしていると聞いていますが。その父親とも話さないんでしょうか…」
それに皇帝は「かも知れないな…」と小さく頷いて、塔の警備をしている兵に声を掛けている。その兵達は突然の皇帝の訪問に「は、はいっ!」と上ずった声で敬礼し直立不動になる。そんな兵士をちょっと気の毒に思いながら、横を通り過ぎて塔の中へと入って行く。
塔の中の中心にあるのはガランとした広間で、螺旋状にずっと上まで階段が続いている。その階段の途中にいくつもの扉が付いており、外側に向かって部屋がある造りだ。その独立した監房に犯罪者達が収容されているよう。アルフォンソは初めて見る監獄塔に、ゾクリと背中が寒くなる感覚に襲われる。どれだけの者達が入っているのだろうかと…
またこの階段を登るとなると、相当骨が折れるだろうと溜め息を吐く。すると…少し離れた所から、一人の薄汚れた老人が近付いて来る。それに警戒したアルフォンソは、サッと皇帝の前に立つ。すると…
「大丈夫だよ、アルフォンソ。久しぶりだねシュタイン侯爵…あっ、今は平民だな」
そんな皇帝の言葉に、膝に顔が付くのではないかと思えるくらいに深々と頭を下げるその老人。そんな姿にアルフォンソはギョッとする。そして信じられないと…
「シュタイン侯爵だって?どこからどう見ても老人だと…」
カレンの父親はまだ五十代の筈…それなのにたった三年でこれ程までに変わるのかと驚きを隠せないアルフォンソ。髪は白髪だらけで、毎日の階段の昇り降りが負担なのか、腰は曲がり脚を引き摺って歩いている。そんなあり得ない程の変化に慄く。
「今は平民とはいえ、元侯爵にそれは失礼だぞ?」
皇帝はアルフォンソをそう嗜めるが、元侯爵はそれに顔を横に振る。そして今は運命を全て受け入れたかのように、昔の印象とは真逆の静かな笑みを浮かべている。そして…
「いいえ、本当のことですから。ところで皇帝陛下…今日はカレンに会いに来てやって下さったのでしょうか?娘もさぞかし喜ぶことでしょう。ただ、反応は無いかも知れませんが…」
そう言いながら元侯爵は、脚をズリズリと引摺りながら天まで続くような階段の手摺りに手をかける。そしてもう一度二人の方へと顔を向け頭を下げ、付いて来いとばかりに階段を登り始める。
──カッン…コン。
時々振り返りながら登り続けるその人の後に続く二人。そんな中アルフォンソは奇妙な感覚に囚われていた。恐怖と好奇心…それから永遠に続く階段を、どこまで登るのかと見上げていた。
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