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番外編
番外編1・追憶③(終)
「な、何を?陛下…何をおっしゃっているのです。このような罪人に大事な遺物をなど!」
思わずそう叫ぶアルフォンソを尻目に、皇帝陛下とカレンは見つめ合ったまま。カレンは三年もその目に誰も映していなかったのが嘘のように、瞳をパチパチと瞬かせている。それを信じられない思いで見ているアルフォンソとカレンの父親である元侯爵。すると…
「な、何を…言っているの、です…ブ、ブロン様」
三年ぶりに発するカレンの声は酷くしゃがれていて、まるで老婆のそれ。使っていない声帯は衰え、まだ二十代だとはとても思えない状態になっているのが分かる。だけど皇帝はそれにも動揺することはなく、カレンをじっと見つめている。そして…
「君への罪滅ぼしに、遺物をあげようと言っているんだ。本当だよ?君が望めばこの場で渡そう」
「そ、んな…本気な、のです…か?」
どこまで本気なんだろう?そんな空気がこの場に流れる。アルフォンソと元侯爵は、二人の攻防をただ見つめているしかない。すると…
「この像を手にするだけでいいんだよ?そして願い事を口にするだけでいい。君が念願だった、幸せだったあの時に還ればいい…そうだろう?」
真剣な顔でそう伝える皇帝に、カレンはブルブルと震え出す。アルフォンソはというと、それを意外だと思えた。カレンがあれほどに手に入れたいと執着していた遺物。それが目の前にあり、尚且つ手にしていいという…それなら一も二もなく、直ぐに受け取るだろうと。だけどカレンは手を前に出そうともしない。するとそれを見兼ねたあの人が声を掛けて…
「カレン…手に取るんだ。そうすれば母親と二人で、幸せになれるのだぞ?その時の私は何も覚えてはいないだろうが、殴ってもいいから二人で侯爵家を出なさい。私の目の届かないところで…どうか幸せになってくれ!」
ポロポロと涙を流しながら、カレンにそう告げる元侯爵。それが父親としてやれる精一杯なのだろう。カレンはといえば既にその無表情な仮面を外し、素が出てまるで子供のように怯えている。口元は震えしきりに口が渇くのか、何度も唾を飲み込んでいて…
そして皇帝もそれを後押しするように遺物が入った箱をカレンの前にと差し出している。すると…
「…が、たの。私に…だって!」
カレンは何かを必死に訴えようとしているが、長い間喋っていない為に声にはなっていない。そして口の端に血の泡を吹いているのが痛々しい。それを皆は、喉の奥が切れたのか…と凝視する。そして三人は何とか聴き取ろうと耳を澄ますと…
「ク、クリスティーヌが、わ、私に言ったの。そん、な古の遺物になん、か頼っちゃダ…メだ、って!幸せに、な…る方法はある、って。それを、信じてみないか、って!」
そう言い切ったカレンは、ワッと泣き出す。それはあの事件以来初めてのことだ…
心を閉ざして自分だけの殻に閉じ籠もり、一切何も聞こうとも伝えようともしてこなかった。そんなカレンの本音が…
「ロベル…トを、殺す、つもり…なんてなかったの。ただ、クリス…ティーヌが羨ましくって!あ、愛されて…私には、手に入ら、ないもの。ごめん…なさい!ロベル…ト、クリス…ティーヌ…あああっ!」
それはあの日母を亡くして以来のカレンの本音…あれから一切の本音を隠して生きていた。微笑みながらも心では血を流し続け、自分自身を呪ってきた。そんなかつて一人の少女だった者の悲しい叫びが響く!
そう頭を抱えるカレンに泣きながら近付くのは、元侯爵である父親。そして何度も…何度も「すまない」と詫びている。それからカレンの痩せ細った身体を、精一杯抱き締める。するとそれを見ていた皇帝は…
「君は赦されないことをした。だけどそれは私にも責任がある…だから一緒にそれを背負うよ。私は一生を懸けて、この帝国の全ての者が幸せになれるように手を尽くすと誓う。それが私の使命であり償いだ。君はここで罪を償ってくれ…いいかい?」
その皇帝の言葉にカレンは素直に頷く。そしてそれこそが皇帝の今回の目的の、真の意味で贖罪の気持ちを起こさせること…それに唸るアルフォンソが。泣いて抱き締め合うカレンとその父親を見ながら、目配せしてここから去ろうとする二人。その時アルフォンソには、ある感情がわき起こっていた。これはここに着いた時には考えられないもので…
「ロベルトの息子のロランはとっても元気で可愛い子なんだ。それからクリスティーヌも元気に暮らしている。そして…ロリーがあなたに会いたいと言っていた。まだ弟を殺されて恨む気持ちはあるが、最近思い出すのは幼馴染みとして楽しく過ごした子供の頃だと。俺から言えるのはそれだけだ…」
アルフォンソはそれだけ伝えると、何事もなかったかのようにクルリと踵を返す。決して赦した訳ではない…ちょっとした気の迷いだ!そう自分に言い聞かせながら。
そんなアルフォンソに隣に立つ皇帝は、意外そうな顔で見つめる。すると…
「カレンはロリーを本当の姉だと…いや、母上を亡くしてからは、母親のように思っていたのだろう?気が向いたら会ってみるといい。例え叱られても罵られてもいいじゃないか…幼馴染みなんだから!」
二人はそう言い残して、振り返らずに部屋を出る。すると二人の目には気の遠くなるほどの階段が!
「まあ、今度は下りだから…大丈夫ですよね?」
そう自分を慰めながら手摺りに手を掛けるアルフォンソ。そして思いだしたように呟く。
「そう言えばこの監獄塔…一番上はどんな凶悪犯がいるのです?よっぽど悪いことをした人物なのでしょうね」
アルフォンソはその答えを期待した訳ではなく、興味だけでそう言ったようだった。それから階段を一歩、一歩と下りて行く。すると皇帝は立ち止まったまま上を見上げて…
「母上…これよりは心穏やかにお過ごし下さい。あなたを責めたり、追い込んだりする者はもうおりませんよ?重い荷物はおろして…それも私が代わりに背負います」
そう悲しげに呟いて最上階から目を離せないでいる。前皇后もまた、子供の頃から皇后になる為に外出も許されず、なってみれば孤独に苛まれた人生であった。それをただただ哀れむことしか出来なかった息子である皇帝は、せめてもと母のそれ以上の凶行を止めた。それを後悔はしていないが、最後まで相容れなかった自分達のことを哀しいと思う。
「えっ…何かおっしゃいましたか?」
一人で先に進んでいたアルフォンソが、後ろに皇帝がいないことに気付きそう声を掛ける。それに笑いながら…
「いいや、何でもないさ!ただ、この帝国に纏わる悪しき慣習をなくすことを考えていたんだ。今の時代に皇后になる者に一生残る傷があるのが許されないなど…ばかばかしい!まずはそれを廃止することから始めよう」
「まことにそうですよ!そんなあり得ない条件は、無くしてしまえばいいと思います」
そう意気投合した二人は、笑いながら果てしなく続く階段を下りて行った。そして帰路につく馬車の中では、これから本格的に帝国をより発展させるべく討論を始める。そして思う…お互いがいて幸運だったと。
思わずそう叫ぶアルフォンソを尻目に、皇帝陛下とカレンは見つめ合ったまま。カレンは三年もその目に誰も映していなかったのが嘘のように、瞳をパチパチと瞬かせている。それを信じられない思いで見ているアルフォンソとカレンの父親である元侯爵。すると…
「な、何を…言っているの、です…ブ、ブロン様」
三年ぶりに発するカレンの声は酷くしゃがれていて、まるで老婆のそれ。使っていない声帯は衰え、まだ二十代だとはとても思えない状態になっているのが分かる。だけど皇帝はそれにも動揺することはなく、カレンをじっと見つめている。そして…
「君への罪滅ぼしに、遺物をあげようと言っているんだ。本当だよ?君が望めばこの場で渡そう」
「そ、んな…本気な、のです…か?」
どこまで本気なんだろう?そんな空気がこの場に流れる。アルフォンソと元侯爵は、二人の攻防をただ見つめているしかない。すると…
「この像を手にするだけでいいんだよ?そして願い事を口にするだけでいい。君が念願だった、幸せだったあの時に還ればいい…そうだろう?」
真剣な顔でそう伝える皇帝に、カレンはブルブルと震え出す。アルフォンソはというと、それを意外だと思えた。カレンがあれほどに手に入れたいと執着していた遺物。それが目の前にあり、尚且つ手にしていいという…それなら一も二もなく、直ぐに受け取るだろうと。だけどカレンは手を前に出そうともしない。するとそれを見兼ねたあの人が声を掛けて…
「カレン…手に取るんだ。そうすれば母親と二人で、幸せになれるのだぞ?その時の私は何も覚えてはいないだろうが、殴ってもいいから二人で侯爵家を出なさい。私の目の届かないところで…どうか幸せになってくれ!」
ポロポロと涙を流しながら、カレンにそう告げる元侯爵。それが父親としてやれる精一杯なのだろう。カレンはといえば既にその無表情な仮面を外し、素が出てまるで子供のように怯えている。口元は震えしきりに口が渇くのか、何度も唾を飲み込んでいて…
そして皇帝もそれを後押しするように遺物が入った箱をカレンの前にと差し出している。すると…
「…が、たの。私に…だって!」
カレンは何かを必死に訴えようとしているが、長い間喋っていない為に声にはなっていない。そして口の端に血の泡を吹いているのが痛々しい。それを皆は、喉の奥が切れたのか…と凝視する。そして三人は何とか聴き取ろうと耳を澄ますと…
「ク、クリスティーヌが、わ、私に言ったの。そん、な古の遺物になん、か頼っちゃダ…メだ、って!幸せに、な…る方法はある、って。それを、信じてみないか、って!」
そう言い切ったカレンは、ワッと泣き出す。それはあの事件以来初めてのことだ…
心を閉ざして自分だけの殻に閉じ籠もり、一切何も聞こうとも伝えようともしてこなかった。そんなカレンの本音が…
「ロベル…トを、殺す、つもり…なんてなかったの。ただ、クリス…ティーヌが羨ましくって!あ、愛されて…私には、手に入ら、ないもの。ごめん…なさい!ロベル…ト、クリス…ティーヌ…あああっ!」
それはあの日母を亡くして以来のカレンの本音…あれから一切の本音を隠して生きていた。微笑みながらも心では血を流し続け、自分自身を呪ってきた。そんなかつて一人の少女だった者の悲しい叫びが響く!
そう頭を抱えるカレンに泣きながら近付くのは、元侯爵である父親。そして何度も…何度も「すまない」と詫びている。それからカレンの痩せ細った身体を、精一杯抱き締める。するとそれを見ていた皇帝は…
「君は赦されないことをした。だけどそれは私にも責任がある…だから一緒にそれを背負うよ。私は一生を懸けて、この帝国の全ての者が幸せになれるように手を尽くすと誓う。それが私の使命であり償いだ。君はここで罪を償ってくれ…いいかい?」
その皇帝の言葉にカレンは素直に頷く。そしてそれこそが皇帝の今回の目的の、真の意味で贖罪の気持ちを起こさせること…それに唸るアルフォンソが。泣いて抱き締め合うカレンとその父親を見ながら、目配せしてここから去ろうとする二人。その時アルフォンソには、ある感情がわき起こっていた。これはここに着いた時には考えられないもので…
「ロベルトの息子のロランはとっても元気で可愛い子なんだ。それからクリスティーヌも元気に暮らしている。そして…ロリーがあなたに会いたいと言っていた。まだ弟を殺されて恨む気持ちはあるが、最近思い出すのは幼馴染みとして楽しく過ごした子供の頃だと。俺から言えるのはそれだけだ…」
アルフォンソはそれだけ伝えると、何事もなかったかのようにクルリと踵を返す。決して赦した訳ではない…ちょっとした気の迷いだ!そう自分に言い聞かせながら。
そんなアルフォンソに隣に立つ皇帝は、意外そうな顔で見つめる。すると…
「カレンはロリーを本当の姉だと…いや、母上を亡くしてからは、母親のように思っていたのだろう?気が向いたら会ってみるといい。例え叱られても罵られてもいいじゃないか…幼馴染みなんだから!」
二人はそう言い残して、振り返らずに部屋を出る。すると二人の目には気の遠くなるほどの階段が!
「まあ、今度は下りだから…大丈夫ですよね?」
そう自分を慰めながら手摺りに手を掛けるアルフォンソ。そして思いだしたように呟く。
「そう言えばこの監獄塔…一番上はどんな凶悪犯がいるのです?よっぽど悪いことをした人物なのでしょうね」
アルフォンソはその答えを期待した訳ではなく、興味だけでそう言ったようだった。それから階段を一歩、一歩と下りて行く。すると皇帝は立ち止まったまま上を見上げて…
「母上…これよりは心穏やかにお過ごし下さい。あなたを責めたり、追い込んだりする者はもうおりませんよ?重い荷物はおろして…それも私が代わりに背負います」
そう悲しげに呟いて最上階から目を離せないでいる。前皇后もまた、子供の頃から皇后になる為に外出も許されず、なってみれば孤独に苛まれた人生であった。それをただただ哀れむことしか出来なかった息子である皇帝は、せめてもと母のそれ以上の凶行を止めた。それを後悔はしていないが、最後まで相容れなかった自分達のことを哀しいと思う。
「えっ…何かおっしゃいましたか?」
一人で先に進んでいたアルフォンソが、後ろに皇帝がいないことに気付きそう声を掛ける。それに笑いながら…
「いいや、何でもないさ!ただ、この帝国に纏わる悪しき慣習をなくすことを考えていたんだ。今の時代に皇后になる者に一生残る傷があるのが許されないなど…ばかばかしい!まずはそれを廃止することから始めよう」
「まことにそうですよ!そんなあり得ない条件は、無くしてしまえばいいと思います」
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