【完結】初恋のあの人との結婚。だけど私のこと覚えてないんですね？

第六章・御使いの秘密

53・神の御使いアラン

　だけど、どうしてなんだ…私が御使いになど。この国の者でもないのに…

　「もしや、グラン聖国に血縁者が？それも王家に近い血筋では？」

　私のそんな思いを察したような御使い長が、不敵な笑みを浮かべながらそう言う。

　「母上がグラン聖国出身だ。それも公爵家の令嬢だった」

　「なるほど…そうなのですね？それならば資格は充分かと。何故あなたが選ばれたと思いますか？誇っていいですよ、あなたは御使い長になるべく選ばれし御方だから」

　──御使い長…だって？

　「御使い長は、他の御使いとは全く違うんですよ？その人の頭脳と行動力によって選ばれるんです。今まで何十人、何百人と選ばれてきた御使いの中でも、ほんの一握りです」

　でも私が？ラシア王国の王子である私が…神殿に？それもこんな子供の身で…
　その事に愕然としながらも、気になっている先程見た光景のことを聞いてみる。

　「さっき女神の像の後ろで何をしていたんだ？そしてあの…朱色の玉は一体何なんだ…？」

　それにはやっぱり見てましたか？と諦めた様子の御使い長は、事の顛末を静かに話し始めた。


　「なるほど…そういう事なんだな。でも、あなたが言っている事が全てなのか？私には御使いの存在が意味がないものだとは思えない…。実際私も助けられた身だ。何か判明していないことがあるような気がするが…」
　
　そう言って御使い長を見ると、何か思いあたる様子で考え込んでいる。

　「どうせ私は、今は御使い長になるつもりはない！ラシア王国に帰らねばならない。他国の王子という立場では、神殿側だって強制は出来ないだろう？だから…あなたが続けてはどうだろう？御使い長を。その間に真実を探っては？」

　それに御使い長は了承し、その場は別れた。


　◇◇◇◇

　
　「これはこれは御使い長様。まさかこんな所でお会いするとは！九年ぶり…でしょうか？こちらにいらっしゃる方が御使い長様なんですよ？もう私は九年も前に役目を終えています…完全に」
　私はあくまで…元御使い長なんです。

　──アラン王子が…御使い長だって？

　「私は９年前にグラン聖国に行っています。その時に御使いに選ばれていました。私の母はグランの出身なのです。実は…スリジャ様に会った事があるのですよ？忘れてしまいましたか？」そう言ってアランは、ある事を考えていた。

　──再びスリジャ様に合ってから、ずっと気になっていたんだ。確かに９年も前の事であるし、子供だったから…
　だけどこの白金の髪…普通ならばラシア王国の王族の色だと気が付くのでは？そう思うが…？

　「そ、それに…は訳が、ある、のです…」

　そう、かぼそい声が聞こえて驚く。その声の方を見ると…気を失っていたはずのアルジェが目を覚ましていた。