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4.魔封じの水晶
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意識が朦朧とする。
ゆっくり目を開くと、目の焦点が合うのに、多少の時間を必要とする。
徐々に記憶をたどるかのように、空を見つめると星は見えるが、暗くあったはずの月がない。
どうやら、家で横になっているのではなく、外に居るようだ。
体の方は、学校でマラソンをした、翌日のよにだるい。
ついでに、頭も痛い。
耳を澄ませば、子供の頃から聞き慣れているはずの、波の音もしない。
暫く横になったまま空を見上げていると、一つの流れ星が右の空から流れてくる。
このようにハッキリとした、流れ星を見るのは初めてだ。
響は、プラネタリウムで見るよりも、鮮明な流れ星に見とれていた。
初めは小さく輝いていた流れ星が、白い光りの尾を輝かせはじめ、徐々に赤みを帯びてスピ-ドを上げて来る。
……来るのである。
「おいおい、隕石じゃねえか、こっちに来るなよ~」
響は、重だるい体を起こし、急いで逃げる。
冷静に考えれば、普通の人間がなぜ隕石を、こうもハッキリと目視出来るのか。
隕石などから走って逃げたところで、逃げ切れるわけもなく、せいぜい何処か遮蔽物の後ろか、地下へ逃げるくらいだろう。
「うぉ~」
しかし、響は走った。
ただただ走った。
サンダルを脱ぎ捨てて……
突如、響が走る前方の地面が開く。
地下からクリスタルの砲塔が付いた、透き通った半円形の砲台がせり上がる。
砲台の後ろには、数本のチュ-ブが繋がり、エネルギーを送っているのであろう。
砲塔が光り輝き始め、発射が近い事を知らせている。
響は、危険を感じヘッドスライディングで、その前に滑り込む。
砲台は照準を合わせ、隕石に向けて三発のエネルギ-弾が発射された。エネルギ-弾の一発目は隕石の前を通過して外れたが、続く二発は見事に命中し、隕石は溶けるようにその姿を消していった。
これが、迎撃ミサイルなどであれば、隕石を破壊しても粉砕された無数の破片が響を襲い、無傷ではいられなかっただろう。
「ふぅ~、助かったぁー」
響は、初めて見る砲台を、目に焼き付けるほど、見据えながら起き上がると、砲台は地下へと消えてしまった。
響は、立ち上がり腰に手お当て周りを見回す。
そこには、海も砂浜も木々も何一つ無く、黒く光沢のある大理石のような地面が広がる。反対側にはクリスタルのような素材で造られた倉庫のような建物が立ち並び。その先には薄明りを発している、高層ビル.の街並みが広がっていた。
響は、見慣れない景色に困惑したが、ただ一つあきらかに見覚えの有る物があった。
それは、小高い丘の上にある、八幡様の社だった。社の素材はクリスタルのような物になっているが、形はまぎれもなく社その物だった。
「ここは……俺の家は……妹達は、何処へ行ったんだ」
響は、自分に起きている異変について、辺りを再度見回し徐々に思い出していった。
「海辺でリングを見付けて、サキュバスに抱き付かれて、光りに取り込まれて……そう言えば、あのサキュバスは……クロエとか言ってたな、何処へ行ったんだ?」
これだけ訳が分からない事が続くと、魔王であろうとサキュバスであろうと、誰でもいいから説明して欲しと思うのは、響だけではないだろう。
「クロエ、どこだ……いるのか?」
響は、とりあえずサキュバスの名前を読んでみる。
「……」
「いないのか? ……そういえば!」
呼んでも答えがない。
ため息を一つ漏らした響は、ある事を思い出す。
「締まれ!」
響は、目を閉じて叫ぶ。
「ぐぅぇ、ぐるじぃ……」
耳鳴りのように、クロエの苦しむ声が、何処からか聞こえる。
「解除、出て来い!」
「あぁ~、急に何してくれるんだい」
クロエは、しゃべりにくそうに、文句を言ってくる。
声はするけど、クロエの姿は見えない。
「声だけじゃなく、出て来い。……さもないと……」
響は、ゆっくりと目をつむる。
「たんま、たんまぁー、今はアンタの中から出れないんだよ。ここには魔素が無いからね。今出て行くとアタイの内部魔素が無くなるんだよ」
クロエは、首が締まるのが嫌なのだろう、かなり焦っている。
「俺の中に居るのか! その内部魔素が、無くなるとまずいのか?」
響は、クロエの言っている事が分からない、だから理解しようと必死である。
「内部魔素が無くなると、いざって時に魔法が使えないだろ」
クロエは、少し口調がたどたどしい。
こいつ、何か隠してるな。
響の感は、結構鋭いのである。
「本当の事なんて、言えるわけ無いでしょ……」
クロエは、響に聞こえないように呟く。
「クロエ、ここは異世界じゃないよな?」
響は、社を見ながらクロエに問いかける。
「そうだね、多分アンタの元居た世界だよ」
実は、長い間魔法を使っていなかったクロエは、焦っていた事もあり、魔法の呼称を『異空転移』と唱える所、間違って『時空転移』と、唱えていたのである。
「たぶん『魔封じの水晶』が、劣化してたんだろうよ。」
クロエは、響に真実を話さなかった。
「『魔封じの水晶』て言うのは、何なんだ?」
「魔王様が復活した時に、一個だけ一緒に創り出される秘宝で、魔王様が持つ魔法と魔力が、封印されたクリスタルさ」
クロエは、響にまた真実を話さなかつた。魔王復活で創り出された秘宝は、実際には二個であり。もう一つはクロエが、右太ももの内側に隠し持っているのである。
「俺が、そのクリスタルを持って魔法を発動したら、魔法が使えるってことか?」
自分でも魔法が使えると言う事に、心躍る響であった。
「ハハハ……それは無理だね。『魔封じのクリスタル』を使えるのは、五十レベル以上の魔力容量が必要なのさ。あんたは今レベルが一。使えっこないよ!」
クロエは、鼻で笑いながら説明する。
この『魔封じの水晶』は、魔素が無くてもクリスタルを破壊した時に、魔法発動に必要な魔力を圧縮して内部に取り込み、魔法を唱えると即発動すると言うアイテムである。ただ、このアイテムを一度使うと、二十日あけないと、次が使えない。
魔法が使えないと、あっさり否定された響は、気を取り直して辺りをもう一度見まわす。
「とりあえずあっちの方へ、行って見るか」
響は、一番近い倉庫らしい建物へ、裸足のまま歩き出す。
ゆっくり目を開くと、目の焦点が合うのに、多少の時間を必要とする。
徐々に記憶をたどるかのように、空を見つめると星は見えるが、暗くあったはずの月がない。
どうやら、家で横になっているのではなく、外に居るようだ。
体の方は、学校でマラソンをした、翌日のよにだるい。
ついでに、頭も痛い。
耳を澄ませば、子供の頃から聞き慣れているはずの、波の音もしない。
暫く横になったまま空を見上げていると、一つの流れ星が右の空から流れてくる。
このようにハッキリとした、流れ星を見るのは初めてだ。
響は、プラネタリウムで見るよりも、鮮明な流れ星に見とれていた。
初めは小さく輝いていた流れ星が、白い光りの尾を輝かせはじめ、徐々に赤みを帯びてスピ-ドを上げて来る。
……来るのである。
「おいおい、隕石じゃねえか、こっちに来るなよ~」
響は、重だるい体を起こし、急いで逃げる。
冷静に考えれば、普通の人間がなぜ隕石を、こうもハッキリと目視出来るのか。
隕石などから走って逃げたところで、逃げ切れるわけもなく、せいぜい何処か遮蔽物の後ろか、地下へ逃げるくらいだろう。
「うぉ~」
しかし、響は走った。
ただただ走った。
サンダルを脱ぎ捨てて……
突如、響が走る前方の地面が開く。
地下からクリスタルの砲塔が付いた、透き通った半円形の砲台がせり上がる。
砲台の後ろには、数本のチュ-ブが繋がり、エネルギーを送っているのであろう。
砲塔が光り輝き始め、発射が近い事を知らせている。
響は、危険を感じヘッドスライディングで、その前に滑り込む。
砲台は照準を合わせ、隕石に向けて三発のエネルギ-弾が発射された。エネルギ-弾の一発目は隕石の前を通過して外れたが、続く二発は見事に命中し、隕石は溶けるようにその姿を消していった。
これが、迎撃ミサイルなどであれば、隕石を破壊しても粉砕された無数の破片が響を襲い、無傷ではいられなかっただろう。
「ふぅ~、助かったぁー」
響は、初めて見る砲台を、目に焼き付けるほど、見据えながら起き上がると、砲台は地下へと消えてしまった。
響は、立ち上がり腰に手お当て周りを見回す。
そこには、海も砂浜も木々も何一つ無く、黒く光沢のある大理石のような地面が広がる。反対側にはクリスタルのような素材で造られた倉庫のような建物が立ち並び。その先には薄明りを発している、高層ビル.の街並みが広がっていた。
響は、見慣れない景色に困惑したが、ただ一つあきらかに見覚えの有る物があった。
それは、小高い丘の上にある、八幡様の社だった。社の素材はクリスタルのような物になっているが、形はまぎれもなく社その物だった。
「ここは……俺の家は……妹達は、何処へ行ったんだ」
響は、自分に起きている異変について、辺りを再度見回し徐々に思い出していった。
「海辺でリングを見付けて、サキュバスに抱き付かれて、光りに取り込まれて……そう言えば、あのサキュバスは……クロエとか言ってたな、何処へ行ったんだ?」
これだけ訳が分からない事が続くと、魔王であろうとサキュバスであろうと、誰でもいいから説明して欲しと思うのは、響だけではないだろう。
「クロエ、どこだ……いるのか?」
響は、とりあえずサキュバスの名前を読んでみる。
「……」
「いないのか? ……そういえば!」
呼んでも答えがない。
ため息を一つ漏らした響は、ある事を思い出す。
「締まれ!」
響は、目を閉じて叫ぶ。
「ぐぅぇ、ぐるじぃ……」
耳鳴りのように、クロエの苦しむ声が、何処からか聞こえる。
「解除、出て来い!」
「あぁ~、急に何してくれるんだい」
クロエは、しゃべりにくそうに、文句を言ってくる。
声はするけど、クロエの姿は見えない。
「声だけじゃなく、出て来い。……さもないと……」
響は、ゆっくりと目をつむる。
「たんま、たんまぁー、今はアンタの中から出れないんだよ。ここには魔素が無いからね。今出て行くとアタイの内部魔素が無くなるんだよ」
クロエは、首が締まるのが嫌なのだろう、かなり焦っている。
「俺の中に居るのか! その内部魔素が、無くなるとまずいのか?」
響は、クロエの言っている事が分からない、だから理解しようと必死である。
「内部魔素が無くなると、いざって時に魔法が使えないだろ」
クロエは、少し口調がたどたどしい。
こいつ、何か隠してるな。
響の感は、結構鋭いのである。
「本当の事なんて、言えるわけ無いでしょ……」
クロエは、響に聞こえないように呟く。
「クロエ、ここは異世界じゃないよな?」
響は、社を見ながらクロエに問いかける。
「そうだね、多分アンタの元居た世界だよ」
実は、長い間魔法を使っていなかったクロエは、焦っていた事もあり、魔法の呼称を『異空転移』と唱える所、間違って『時空転移』と、唱えていたのである。
「たぶん『魔封じの水晶』が、劣化してたんだろうよ。」
クロエは、響に真実を話さなかった。
「『魔封じの水晶』て言うのは、何なんだ?」
「魔王様が復活した時に、一個だけ一緒に創り出される秘宝で、魔王様が持つ魔法と魔力が、封印されたクリスタルさ」
クロエは、響にまた真実を話さなかつた。魔王復活で創り出された秘宝は、実際には二個であり。もう一つはクロエが、右太ももの内側に隠し持っているのである。
「俺が、そのクリスタルを持って魔法を発動したら、魔法が使えるってことか?」
自分でも魔法が使えると言う事に、心躍る響であった。
「ハハハ……それは無理だね。『魔封じのクリスタル』を使えるのは、五十レベル以上の魔力容量が必要なのさ。あんたは今レベルが一。使えっこないよ!」
クロエは、鼻で笑いながら説明する。
この『魔封じの水晶』は、魔素が無くてもクリスタルを破壊した時に、魔法発動に必要な魔力を圧縮して内部に取り込み、魔法を唱えると即発動すると言うアイテムである。ただ、このアイテムを一度使うと、二十日あけないと、次が使えない。
魔法が使えないと、あっさり否定された響は、気を取り直して辺りをもう一度見まわす。
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