7 / 95
7.重力調整室
しおりを挟む
目を開けると、何もない金属製の天井が、薄明りに照らされている。灯は、間接照明が二ヵ所あるだけで、スペースとしては六畳程の広さがある。また、この部屋には家具や窓、小物類が何もない。しいて言えば、自分の寝ているベッドと吊るされた点滴のチュウブが、左腕につながっているくらいだ。
どうやら、怪我でもして寝かされているようだな。
だけど、この部屋には何にもないな……
十日もいたら、気でも狂いそうだ。
響が、辺りを見回していると、足元の壁がスライドして開き。黒いメイド服を着た、ショ-トカットのティス・メイリンが入ってくる。
あんな所に、出入口があったんだ!
「気が付かれたようですね。ご気分はいかがですか?」
ティス・メイリンが、背筋を伸ばして入って来る姿は、何処か高貴な所に仕えているであろうことを、感じさせる雰囲気がある。
「はい、少し体が怠いくらいです」
響は、返事をしながら、ティス・メイリンから目が離せなかった。
それはそうであろう、美人にメイド服、メイド喫茶にも行ったことのない響にとっては、ある意味『楽園』なのだ。
「ああ、それはこの部屋が、重力調整室だから怠いのだと思います」
「重力調整室?」
目お覚ましたばかりの、響の目は『点』である。
「そうでした。事情が分かりませんよね」
響の表情からティス・メイリンは、話が通じていない事を悟ったようだ。
「はい、よければ教えてもらえますか?」
「かしこまりました」
二人は名前を交わし、これまでの話を始めた。
十日前の夜、国の特産品の確認に、出向いていたオルレオン皇国第五皇女ブロッサム姫一向が、倉庫街に突然現れた、巨大トカゲに襲われている所に響が駆けつけ、ガーディアンの一撃で巨大トカゲを倒したが、響が大怪我をして治療のために、『再生強化』を受けた事を説明された。
「すみませんが、いくつか質問してもいいですか?」
日本人の癖なのであろう、響は手を挙げて質問する。
「はい」
少し笑顔で返事をする、ティス・メイリンは可愛い。
「オルレオン皇国とは、どこの国でしょうか? ここは日本ではないのですか?」
見覚えが多少あるとは言え、あそこまで違えば一番に聞いてみたいと、響は思った。
「オルレオン皇国は、他の銀河系にあり太陽系にはありません。そしてここは、日本ではなく『宇宙戦艦メモリア』の艦内です。日本はあちらです」
壁を指さし、ティス・メイリンは、左腕のリストコントロールを操作して、防壁を開く。
そこには、衛星軌道上から見える、日本があった。
「はぁ~」
この景色を見て感動しない者はいないだろう。
アメリカの宇宙飛行士でさえ、この景色を見て人生観が変わり、宗教家になった宇宙飛行士もいたぐらいだ。
響は、その景色からもう目が離せない。
「大丈夫ですか?」
暫く様子を見ていた、ティス・メイリンも気になり、声をかけて来た。
「はい、大丈夫です」
気を取り直した響は、ティス・メイリンに質問の続きを聞く。
「今は、何年ですか?」
「地球歴で言うと、二八九三年です」
「えっ……八〇〇年以上も、たっているって事か……」
八〇〇年と言う数字を聞くと、ここが地球であれば、家族は生きていないだろう。
響は落胆した。
もう一度気を取り直した響は、八〇〇年前からの地球の歴史を尋ねてみたが、あまり詳しくないので、自分で調べてみるように言われた。
「それじゃ、『再生強化』って、何ですか?」
「身体強化により身体能力のベクトルが『千倍』になり、寿命延長によって五千年以上生きられます。身体能力のベクトルが『千倍』と言うのは、今までジャンプ力が一メートルとすると、これからは一〇〇〇メートルジャンプ出来るという事です。走るのも、泳ぐのも、パンチ力も全てです」
「それって危なくないですか? 体が、バラバラになるような」
身体能力が、言われた通りなら。飛行機から飛び降りても、車で壁に激突しても大丈夫なのか?
「だから今、重力調整室で負荷を掛けている訳です」
「ここから出ると……死んじゃいません?」
「死にます! ……ですから今、胸にあるクリスタルのリミッター調整をしています。調整後には、クリスタルからエネルギーバリアが、体の表面を覆ってくれるので、ある程度の衝撃は防いでくれます。それに、力の使い方に慣れれば、完全防御出来るようになるので大丈夫です」
「慣れるには、どのくらいかかるものなんでしょうか?」
「そうですね、完全防御出来るのようになるには……五百年から千年くらいでしょうか。ですからここを出るのはリミッター調整が終わってからになりますし、出る時には身を守る装備一式を支給します。後、寿命五千年以上と言っても,不死身ではありませんから。特に年に一度のメンテナンスで、胸のクリスタルを外している時に、攻撃されると危険ですのでお気を付け下さい」
「はい……」
身体能力のベクトルが『千倍』。
クリスタルからエネルギーバリア。
完全防御出来るのようになるまでは、五千年生きられるにしても死ぬ事もある。
俺、どうなるんだろう……
話の内容に付いて行けない響は、もう一度寝る事にした。
どうやら、怪我でもして寝かされているようだな。
だけど、この部屋には何にもないな……
十日もいたら、気でも狂いそうだ。
響が、辺りを見回していると、足元の壁がスライドして開き。黒いメイド服を着た、ショ-トカットのティス・メイリンが入ってくる。
あんな所に、出入口があったんだ!
「気が付かれたようですね。ご気分はいかがですか?」
ティス・メイリンが、背筋を伸ばして入って来る姿は、何処か高貴な所に仕えているであろうことを、感じさせる雰囲気がある。
「はい、少し体が怠いくらいです」
響は、返事をしながら、ティス・メイリンから目が離せなかった。
それはそうであろう、美人にメイド服、メイド喫茶にも行ったことのない響にとっては、ある意味『楽園』なのだ。
「ああ、それはこの部屋が、重力調整室だから怠いのだと思います」
「重力調整室?」
目お覚ましたばかりの、響の目は『点』である。
「そうでした。事情が分かりませんよね」
響の表情からティス・メイリンは、話が通じていない事を悟ったようだ。
「はい、よければ教えてもらえますか?」
「かしこまりました」
二人は名前を交わし、これまでの話を始めた。
十日前の夜、国の特産品の確認に、出向いていたオルレオン皇国第五皇女ブロッサム姫一向が、倉庫街に突然現れた、巨大トカゲに襲われている所に響が駆けつけ、ガーディアンの一撃で巨大トカゲを倒したが、響が大怪我をして治療のために、『再生強化』を受けた事を説明された。
「すみませんが、いくつか質問してもいいですか?」
日本人の癖なのであろう、響は手を挙げて質問する。
「はい」
少し笑顔で返事をする、ティス・メイリンは可愛い。
「オルレオン皇国とは、どこの国でしょうか? ここは日本ではないのですか?」
見覚えが多少あるとは言え、あそこまで違えば一番に聞いてみたいと、響は思った。
「オルレオン皇国は、他の銀河系にあり太陽系にはありません。そしてここは、日本ではなく『宇宙戦艦メモリア』の艦内です。日本はあちらです」
壁を指さし、ティス・メイリンは、左腕のリストコントロールを操作して、防壁を開く。
そこには、衛星軌道上から見える、日本があった。
「はぁ~」
この景色を見て感動しない者はいないだろう。
アメリカの宇宙飛行士でさえ、この景色を見て人生観が変わり、宗教家になった宇宙飛行士もいたぐらいだ。
響は、その景色からもう目が離せない。
「大丈夫ですか?」
暫く様子を見ていた、ティス・メイリンも気になり、声をかけて来た。
「はい、大丈夫です」
気を取り直した響は、ティス・メイリンに質問の続きを聞く。
「今は、何年ですか?」
「地球歴で言うと、二八九三年です」
「えっ……八〇〇年以上も、たっているって事か……」
八〇〇年と言う数字を聞くと、ここが地球であれば、家族は生きていないだろう。
響は落胆した。
もう一度気を取り直した響は、八〇〇年前からの地球の歴史を尋ねてみたが、あまり詳しくないので、自分で調べてみるように言われた。
「それじゃ、『再生強化』って、何ですか?」
「身体強化により身体能力のベクトルが『千倍』になり、寿命延長によって五千年以上生きられます。身体能力のベクトルが『千倍』と言うのは、今までジャンプ力が一メートルとすると、これからは一〇〇〇メートルジャンプ出来るという事です。走るのも、泳ぐのも、パンチ力も全てです」
「それって危なくないですか? 体が、バラバラになるような」
身体能力が、言われた通りなら。飛行機から飛び降りても、車で壁に激突しても大丈夫なのか?
「だから今、重力調整室で負荷を掛けている訳です」
「ここから出ると……死んじゃいません?」
「死にます! ……ですから今、胸にあるクリスタルのリミッター調整をしています。調整後には、クリスタルからエネルギーバリアが、体の表面を覆ってくれるので、ある程度の衝撃は防いでくれます。それに、力の使い方に慣れれば、完全防御出来るようになるので大丈夫です」
「慣れるには、どのくらいかかるものなんでしょうか?」
「そうですね、完全防御出来るのようになるには……五百年から千年くらいでしょうか。ですからここを出るのはリミッター調整が終わってからになりますし、出る時には身を守る装備一式を支給します。後、寿命五千年以上と言っても,不死身ではありませんから。特に年に一度のメンテナンスで、胸のクリスタルを外している時に、攻撃されると危険ですのでお気を付け下さい」
「はい……」
身体能力のベクトルが『千倍』。
クリスタルからエネルギーバリア。
完全防御出来るのようになるまでは、五千年生きられるにしても死ぬ事もある。
俺、どうなるんだろう……
話の内容に付いて行けない響は、もう一度寝る事にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる