NineRing~捕らわれし者たち~

吉備津 慶

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7.重力調整室

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 目を開けると、何もない金属製の天井が、薄明りに照らされている。灯は、間接照明が二ヵ所あるだけで、スペースとしては六畳程の広さがある。また、この部屋には家具や窓、小物類が何もない。しいて言えば、自分の寝ているベッドと吊るされた点滴のチュウブが、左腕につながっているくらいだ。

 どうやら、怪我でもして寝かされているようだな。
 だけど、この部屋には何にもないな……
 十日もいたら、気でも狂いそうだ。

 響が、辺りを見回していると、足元の壁がスライドして開き。黒いメイド服を着た、ショ-トカットのティス・メイリンが入ってくる。

 あんな所に、出入口があったんだ!

 「気が付かれたようですね。ご気分はいかがですか?」

 ティス・メイリンが、背筋を伸ばして入って来る姿は、何処か高貴な所に仕えているであろうことを、感じさせる雰囲気がある。

 「はい、少し体が怠いくらいです」

 響は、返事をしながら、ティス・メイリンから目が離せなかった。

 それはそうであろう、美人にメイド服、メイド喫茶にも行ったことのない響にとっては、ある意味『楽園』なのだ。

 「ああ、それはこの部屋が、重力調整室だから怠いのだと思います」

 「重力調整室?」

 目お覚ましたばかりの、響の目は『点』である。

 「そうでした。事情が分かりませんよね」

 響の表情からティス・メイリンは、話が通じていない事を悟ったようだ。

 「はい、よければ教えてもらえますか?」

 「かしこまりました」

 二人は名前を交わし、これまでの話を始めた。

 十日前の夜、国の特産品の確認に、出向いていたオルレオン皇国第五皇女ブロッサム姫一向が、倉庫街に突然現れた、巨大トカゲに襲われている所に響が駆けつけ、ガーディアンの一撃で巨大トカゲを倒したが、響が大怪我をして治療のために、『再生強化』を受けた事を説明された。

 「すみませんが、いくつか質問してもいいですか?」

 日本人の癖なのであろう、響は手を挙げて質問する。

 「はい」

 少し笑顔で返事をする、ティス・メイリンは可愛い。

 「オルレオン皇国とは、どこの国でしょうか? ここは日本ではないのですか?」

 見覚えが多少あるとは言え、あそこまで違えば一番に聞いてみたいと、響は思った。

 「オルレオン皇国は、他の銀河系にあり太陽系にはありません。そしてここは、日本ではなく『宇宙戦艦メモリア』の艦内です。日本はあちらです」
 壁を指さし、ティス・メイリンは、左腕のリストコントロールを操作して、防壁を開く。
 そこには、衛星軌道上から見える、日本があった。

 「はぁ~」

 この景色を見て感動しない者はいないだろう。
 アメリカの宇宙飛行士でさえ、この景色を見て人生観が変わり、宗教家になった宇宙飛行士もいたぐらいだ。

 響は、その景色からもう目が離せない。

 「大丈夫ですか?」

 暫く様子を見ていた、ティス・メイリンも気になり、声をかけて来た。

 「はい、大丈夫です」

 気を取り直した響は、ティス・メイリンに質問の続きを聞く。

 「今は、何年ですか?」

 「地球歴で言うと、二八九三年です」

 「えっ……八〇〇年以上も、たっているって事か……」

 八〇〇年と言う数字を聞くと、ここが地球であれば、家族は生きていないだろう。
 響は落胆した。

 もう一度気を取り直した響は、八〇〇年前からの地球の歴史を尋ねてみたが、あまり詳しくないので、自分で調べてみるように言われた。


 「それじゃ、『再生強化』って、何ですか?」

 「身体強化により身体能力のベクトルが『千倍』になり、寿命延長によって五千年以上生きられます。身体能力のベクトルが『千倍』と言うのは、今までジャンプ力が一メートルとすると、これからは一〇〇〇メートルジャンプ出来るという事です。走るのも、泳ぐのも、パンチ力も全てです」

 「それって危なくないですか? 体が、バラバラになるような」

 身体能力が、言われた通りなら。飛行機から飛び降りても、車で壁に激突しても大丈夫なのか?

 「だから今、重力調整室で負荷を掛けている訳です」

 「ここから出ると……死んじゃいません?」

 「死にます! ……ですから今、胸にあるクリスタルのリミッター調整をしています。調整後には、クリスタルからエネルギーバリアが、体の表面を覆ってくれるので、ある程度の衝撃は防いでくれます。それに、力の使い方に慣れれば、完全防御出来るようになるので大丈夫です」

 「慣れるには、どのくらいかかるものなんでしょうか?」

 「そうですね、完全防御出来るのようになるには……五百年から千年くらいでしょうか。ですからここを出るのはリミッター調整が終わってからになりますし、出る時には身を守る装備一式を支給します。後、寿命五千年以上と言っても,不死身ではありませんから。特に年に一度のメンテナンスで、胸のクリスタルを外している時に、攻撃されると危険ですのでお気を付け下さい」

 「はい……」

 身体能力のベクトルが『千倍』。
 クリスタルからエネルギーバリア。
 完全防御出来るのようになるまでは、五千年生きられるにしても死ぬ事もある。

 俺、どうなるんだろう……

 話の内容に付いて行けない響は、もう一度寝る事にした。
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