10 / 95
10.個室で一杯
しおりを挟む
訓練を初めて二十日が過ぎた。
クリスタルのリミッター調整が終わったので、今日の訓練後、響はケリーに案内されて『重力調整室』から個室に移った。
ここは『重力調整室』とは違い、家具やシャワールームと小さいが窓もある。
響は、シャワーを浴びようとしたが、裸になると身体能力調節が、効かないのではないかと不安になる。
だが実際には、服にそのような機能は無く、『重力調整室』や連絡通路に、重力調整の負荷が掛かっていただけなのだ。
「あら、どうしたの?」
食事を運んで来たケリーが、服を脱ごうとして固まつている。
様子がおかしい響を見て話しかけてくる。
「いや、この服を脱ぐと不味いのかなと思って」
響は、コ-トの襟を持ち上げて、ケリーを見返す。
「ああ、もう大丈夫よ、リミッターの調整は終わったから。それに服には、リミッター機能はないわよ。後はリストコントロールで操作をすれば、力の出力調整は出来るから。防御の方は、当面服に頼らないといけないでしょうけどね」
ケリ-の話は、響にとって分かりやすかった。
リストコントロールで、力の出力操作が出来る。
防御は、響自身の経験値を上げる事で、防御力が上がって行くと言うことだ。
んっ! と言う事は、今はまだ裸の時に襲われると、危ないのか?
響は、シャワーを浴びた後、部屋へ戻るとケリーの姿はなかった。
ケリーの用意してくれた料理を見てみると、そこには、『カレイの煮つけ』と『カレーライス』と言った。
奇妙な取り合わせの、料理が用意されていた。
そして飲み物は、冷えたビ-ルが……ダメでしょ!
そう言えば、姫様が『この世界では、お酒は十五歳から』って、言ってたな……なるほど。
響は、ビ-ルから行くのであった。
食事を終えた響は、ベッドに横になりながら、一人考え事をしていた。
「そう言えば……おい、クロエ! 随分おとなしいなぁ」
ここ数日、話しかけても来ないクロエが、不気味であった。
「そりゃあ、アンタが酷い怪我をしていたし、この世界には珍し物が色々とあるからね」
体の中から優しい口調で聞こえて来るクロエの声は、響の事を気遣っているようだ。
「巨大トカゲの時は、ありがとうな。お前が居てくれて助かった」
「今さら、どうって事ないさぁ。アンタに死なれるとアタイも困るからね」
盟友と会話しているような、一時が流れる。
こんなに、まったりした雰囲気で、クロエと話すのも初めてのことだ。
「そうだ、前はお前のステ-タスが見えていたのに、今は見えないのは何故だ?」
『再生強化』を受けてから、響には見えなくなっていたからだ。
「あんたが『再生強化』を、受けたからじゃないかい? 多分、上書きされたんだろうよ」
ステ-タスって、上書きされるんだ……
「上書き……かぁ。お前は、これからどうするんだ? こんな所に飛ばされて、もうお前の世界には帰れないんじゃあないのか?」
響は、クロエがおとなしいのは、異世界へ帰れなくなったせいだと考えていた。
「アタイは、当分おとなしく見ているよ。外に出ても、魔素を消費するだけだからね」
この言葉を聞き、響は先程の考えを改めた。
今までの、クロエの行動を考えると、何か善からぬことを考えているな!
「そうだな、この世界の事も知りたいし、これからの事も考えないとな・・・・・・」
話を合わせる、響であった。
今さら、皆の前に出て来られても、騒動の元だからな。
小窓から見える地球は、テレビ番組で見ていた景色とは違い、海の青さが何処にも見当たらない。資源の枯渇、水不足、食糧不足、資源戦争、宇宙移民、宇宙侵略、この数百年の間に、どれほど愚かな行為が行われて来たのであろうか。世の中を変える力を持ち、元の世界へ戻れるのであれば、世直しも悪くはない。
響は、知らぬ内に究極の目的を、この時掴んだのかもしれない。
覚えていれば……
その後十日間は、同じメニューを繰り返しこなして来た。
響は、『再生強化』を受けた事もあり、『剣技』『射撃』ともに、プログラムの計画レベル以上の成果を上げている。身体能力調節の方も、リストコントロールを操作して、ほぼ自己管理が出来るようになり、補助要員も必要ないと判断されて、現在は一人でこの演習場の利用が、許可されている。
響は、演習場に入りガンベルトを外して、場内に設置されているテ-ブルに置いた。
そして、使って空になったマガジンへクリスタル弾を装填する。前日の演習後、疲れて装填していなかったのだ。
「メリンダさんに、知られたら怒るだろうなぁ~」
響は、メリンダに『武器の手入れと準備を怠るな』と、毎回言われていたのだ。
響は、ガンベルトをテ-ブルに置いたまま、リストコントロールを操作して、剣技演習用ガ-ディアンを呼び出し演習を始める。
クリスタルのリミッター調整が終わったので、今日の訓練後、響はケリーに案内されて『重力調整室』から個室に移った。
ここは『重力調整室』とは違い、家具やシャワールームと小さいが窓もある。
響は、シャワーを浴びようとしたが、裸になると身体能力調節が、効かないのではないかと不安になる。
だが実際には、服にそのような機能は無く、『重力調整室』や連絡通路に、重力調整の負荷が掛かっていただけなのだ。
「あら、どうしたの?」
食事を運んで来たケリーが、服を脱ごうとして固まつている。
様子がおかしい響を見て話しかけてくる。
「いや、この服を脱ぐと不味いのかなと思って」
響は、コ-トの襟を持ち上げて、ケリーを見返す。
「ああ、もう大丈夫よ、リミッターの調整は終わったから。それに服には、リミッター機能はないわよ。後はリストコントロールで操作をすれば、力の出力調整は出来るから。防御の方は、当面服に頼らないといけないでしょうけどね」
ケリ-の話は、響にとって分かりやすかった。
リストコントロールで、力の出力操作が出来る。
防御は、響自身の経験値を上げる事で、防御力が上がって行くと言うことだ。
んっ! と言う事は、今はまだ裸の時に襲われると、危ないのか?
響は、シャワーを浴びた後、部屋へ戻るとケリーの姿はなかった。
ケリーの用意してくれた料理を見てみると、そこには、『カレイの煮つけ』と『カレーライス』と言った。
奇妙な取り合わせの、料理が用意されていた。
そして飲み物は、冷えたビ-ルが……ダメでしょ!
そう言えば、姫様が『この世界では、お酒は十五歳から』って、言ってたな……なるほど。
響は、ビ-ルから行くのであった。
食事を終えた響は、ベッドに横になりながら、一人考え事をしていた。
「そう言えば……おい、クロエ! 随分おとなしいなぁ」
ここ数日、話しかけても来ないクロエが、不気味であった。
「そりゃあ、アンタが酷い怪我をしていたし、この世界には珍し物が色々とあるからね」
体の中から優しい口調で聞こえて来るクロエの声は、響の事を気遣っているようだ。
「巨大トカゲの時は、ありがとうな。お前が居てくれて助かった」
「今さら、どうって事ないさぁ。アンタに死なれるとアタイも困るからね」
盟友と会話しているような、一時が流れる。
こんなに、まったりした雰囲気で、クロエと話すのも初めてのことだ。
「そうだ、前はお前のステ-タスが見えていたのに、今は見えないのは何故だ?」
『再生強化』を受けてから、響には見えなくなっていたからだ。
「あんたが『再生強化』を、受けたからじゃないかい? 多分、上書きされたんだろうよ」
ステ-タスって、上書きされるんだ……
「上書き……かぁ。お前は、これからどうするんだ? こんな所に飛ばされて、もうお前の世界には帰れないんじゃあないのか?」
響は、クロエがおとなしいのは、異世界へ帰れなくなったせいだと考えていた。
「アタイは、当分おとなしく見ているよ。外に出ても、魔素を消費するだけだからね」
この言葉を聞き、響は先程の考えを改めた。
今までの、クロエの行動を考えると、何か善からぬことを考えているな!
「そうだな、この世界の事も知りたいし、これからの事も考えないとな・・・・・・」
話を合わせる、響であった。
今さら、皆の前に出て来られても、騒動の元だからな。
小窓から見える地球は、テレビ番組で見ていた景色とは違い、海の青さが何処にも見当たらない。資源の枯渇、水不足、食糧不足、資源戦争、宇宙移民、宇宙侵略、この数百年の間に、どれほど愚かな行為が行われて来たのであろうか。世の中を変える力を持ち、元の世界へ戻れるのであれば、世直しも悪くはない。
響は、知らぬ内に究極の目的を、この時掴んだのかもしれない。
覚えていれば……
その後十日間は、同じメニューを繰り返しこなして来た。
響は、『再生強化』を受けた事もあり、『剣技』『射撃』ともに、プログラムの計画レベル以上の成果を上げている。身体能力調節の方も、リストコントロールを操作して、ほぼ自己管理が出来るようになり、補助要員も必要ないと判断されて、現在は一人でこの演習場の利用が、許可されている。
響は、演習場に入りガンベルトを外して、場内に設置されているテ-ブルに置いた。
そして、使って空になったマガジンへクリスタル弾を装填する。前日の演習後、疲れて装填していなかったのだ。
「メリンダさんに、知られたら怒るだろうなぁ~」
響は、メリンダに『武器の手入れと準備を怠るな』と、毎回言われていたのだ。
響は、ガンベルトをテ-ブルに置いたまま、リストコントロールを操作して、剣技演習用ガ-ディアンを呼び出し演習を始める。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる