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11.またかぁ~

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 ブロッサム姫、メリンダ、ケリーの三人は、姫の執務室に集まり、お茶を飲みながらの連絡会議をしていた。

 「次に、巨大トカゲのその後の調査ですが、ある組織から我が皇国の貴族に、四匹の巨大トカゲが売り渡された事までは掴めたのですが、調査にあたっていた者が消息を絶ちました。」
 ケリーが、姫に報告をする。

 ケリー・ライアン 二十五歳。軍師として知られた父を持ち。ブロッサム姫が生まれた時より、十歳と幼かった彼女は、その文才と父譲りの軍略の知識を買われて、ブロッサム姫付きのメイドとなり、現在は、表向きメイド兼文官、裏ではブロッサム姫直轄の情報部のトップの仕事をしている。
 響に料理などを運び、メイドの仕事をしているのも、情報活動の一環である。

 急に艦内に警告音が鳴りびびく。

 姫達三人とも、艦内に警告音が鳴るなど、演習以外で経験したことがない。
 一瞬、顔を見合わせて、オペレーションルームへと向かうのだった。

 「艦長どうしました?」
 ブロッサム姫が、メリンダとケリーを連れて、オペレーションルームへ入ってくる。

 「姫様、艦内に三体の生物が現れました。これらは生物兵器かと思われます。現在二体と交戦しております」

 艦長は、姫が巨大トカゲに襲われた事を知らない。何故ならば、敵の正体がまだ掴めていないからだ。教えていなければ、知っている相手は敵と言う事になる。

 艦長の前にあるモニター画面には、先日の巨大トカゲと警備隊が、戦っている姿が映し出されていた。

 「もう一体はどちらですか?」
 「オペレーター」
 姫の問いに、艦長は即座にオペレーターに、声を掛ける。
 オペレーターに対して、細かい指示は必要ない。声をかけるだけで、ある程度の意思の疎通は取れるからだ。

 「はい、もう一体は……演習場です」

 姫様達三人は、顔を見合わせる。
 今、演習場に響が一人でいることを、三人とも知っているからだ。
 姫は、慌てて艦長に、向き直る。

 「艦長、演習場の状況は?」

 姫の慌てように驚いた艦長は、オペレーターを見る。
 オペレーターは艦長と目が合い、急いで状況の確認作業を始める。

 「はい、演習場への全操作制御不能、出入口開閉不能、何者かが破壊した可能性があります。現在、警備隊が侵入を試みるも失敗。扉の破壊作業に入ります」
 モニター画面には、演習場内の様子が映らず。そのわきには、演習場内に入ろうとしている、警備隊の姿が映し出されていた。

 「騒がしいですね」
 「お母さま……何者かが生物兵器を、送り込んで来たようです」
 女王陛下自ら供を連れ、事の内容を確認しに来る。

 「警備隊が生物二体を撃破、残るは演習場のみです」
 オペレーターの報告に、静まり返り黙っていた。オペレーションルームいた乗組員達が、いっせいに立ち上がり歓喜した。

 「演習場のモニター、一部戻ります。映像をメインモーターに出します」
 オペレーターの報告に、また乗組員達が静まり返り、モニター画面にくぎ付けとなる。
 オペレーションルームのメインモーターには、先日、姫様を襲った巨大トカゲと、響が戦っている姿が映し出される。

 「姫様、あれは……」
 メリンダが指した先には、小さくではあるがその姿はあきらかに、グウ・ウノ・ネ-デルであった。

 「あいつトカゲを、響にけしかけていますね」
 ケリーのこの一言で、今回の『姫様襲撃事件』の首謀者が、確定したのである。



 響は、ガ-ディアンと剣技演習をしていた。このガ-ディアンはよく出来た物で、データーさえあれば、外見がなんにでも擬態出来る。だから響はケリーに教えて貰い、自分の思念をデーター化して、響の高校の野球部にいる嫌われ者、名前を口にするのも腹立たしい、トドの顔に似た奴の姿を、擬態かさせていた。

 コイツなら、思い切り行ける!

 その時、ドド顔のガ-ディアンが突如、砂の中に飲み込まれる。砂が盛り上がったかと思うと、ドド顔のガ-ディアンを加えた、黄色い巨大トカゲがその姿を現し、ドド顔のガ-ディアンは、巨大トカゲにかみ砕かれて、バラバラに四散して散って行った。ナンマイダぁ~

 そして、巨大トカゲのその後には、グウ・ウノ・ネ-デルの姿が……
 偉そうに響を指さして、何かを叫んでいた。

 「お前がいけないのじゃ、姫を助けるのは私だったのに……お前が邪魔をしたのじゃ!」

 「何を言っているんだ?」

 「どうやらこの前の事件は、あいつがトカゲに姫様を襲わせたみたいだね。どうせ自分で助ける事で、姫様と一緒にでもなれるとか、思っていたんじゃないのかい」
 クロエは的確に、グウ・ウノ・ネ-デルの思惑を言い当てていた。

 「なるほど! アイツあれじゃだめだよな」

 「あの者を、攻撃せよ!」
 響があわれんだ、グウ・ウノ・ネ-デルは、胸を張りながら響を指さし、巨大トカゲに攻撃を指示するのだった。

 巨大トカゲは響へ突進するなり、噛みつこうと大口を開けるが、響はジャンプして巨大トカゲを飛び越え、攻撃をかわす。背中から『ソ-ドブレ-ド』を抜き放ち、巨大トカゲのシッポを切り飛ばす。流石は皇族用の再生強化、貴族用では切り飛ばすのは、不可能だったであろう。
 この『ソ-ドブレ-ド』で、生身の相手を切ったのは始めてだったので、その切れ味に巨大トカゲよりも響の方が、驚いて戦闘中にもかかわらず『ソ-ドブレ-ド』をマジマジと見つめてしまう。

 「スッゲー!」

 「早く、そやつを殺せ! ウゲェ~」
 砂煙の中、響の切り落とした巨大トカゲのシッポが、地面を跳ねながらグウ・ウノ・ネ-デルに直撃する。
 グウ・ウノ・ネ-デルが倒れたのを見て、響はダシュで巨大トカゲの横を抜けて、左手でグウ・ウノ・ネ-デルの首根っこを掴み、巨大トカゲへの盾にする。

 「何をするか~」
 皇族用と貴族用の再生強化が、ここまで力の差があるとは、グウ・ウノ・ネ-デルは思ってもいなかった。
 差があるとは聞かされていても、実際に皇族にたてつく者など、今まではいなかったからだ。

 「食われるのが嫌なら、あのトカゲを止めろ!」

 「わぁ、分かった~もうよい止まれ」
 シッポを切られていらつく巨大トカゲは、もうグウ・ウノ・ネ-デルの言う事など聞かないのである。
 だってトカゲだから……

 響とグウ・ウノ・ネ-デルは、お互い目お合わせて、合唱するのであった。

 「うっそおぉぉ~」
 巨大トカゲが、舌を出し頭を左右に振りながら、二人に向かって来る。
 響とグウ・ウノ・ネ-デルは、一緒に何故だか逃げ始める。
 響は、逃げなくてもいいと思うのだが……

 その時、白いもやが響から流れ出す。

 「復活!」

 「クロエ……」
 響とグウ・ウノ・ネ-デルは、逃げるのをやめお互いに振り返る。

 響は、前回のように助けられるのかと思い安堵した。
 が! クロエは、響を見て『ニコリ』と微笑みかけ、右太ももの内側に隠し持った。『魔封じのクリスタル』を地面に叩き付ける。

 「超常魔法、異空転移」
 地面に光が沸き起こる。

 「またかぁー……お前も来い!」
 響は、グウ・ウノ・ネ-デルが、首から下げるショルダーバッグを掴む。
 そして、三人の姿が、光りの中へと消えていった。



 「今の光りは、何ですか? 艦長!」

 「まだ分かりません。女王陛下」

 巨大トカゲと交戦中に、ヒト型の靄が響から現れて、光り輝いたかと思うと、姿が消えていたのだ。
 モニターの映像だけでは、説明の付けようもない。

 「警備隊、突破口を開き、突入します」
 オペレーターの声に続くように、モニターに二十人程の警備隊員の姿が現れる。

 「こちらデルタ、演習場に人影はなし。首のない巨大トカゲの胴体と、切られたシッポのみです」
 その報告に、全員困惑して言葉が出ない。
 モニターには、ピッチピッチ跳ねる、巨大トカゲのシッポが映っていた。

 「ティス・メイリンに、連絡をして下さい」

 「はい、姫様」
 ブロッサム姫は、何かに気が付いたように、オペレーターに指示を出す。
 命令系統から言えば、艦長を通すべきなのだが、みんな動揺しているのである。

 「システムに、強制侵入を試みましたが、繫がりません。と言うよりも……存在確認がとれません」

 「消えたという事ですか?」
 メリンダまでも、ルール無視であった。

 「そっそうです!」
 オペレーターの答えは簡潔なものだったが、慌てようは可哀そうでもあった。

 「お母さま、響様達は何処に消えたのでしょうか?」

 「分かりませんが、ティス・メイリンが一緒なのですから、何とかなるでしょう……信じましょう」

 「はい……お母さま」

 分からない時は、信じて待つほかないのである。
 これこそ、一番の答えかもしれない。
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