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68.アリシア誘拐
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悪魔ガルニアは、ランベル支部を任される秘密結社アーネストの幹部である。
ランベル王国乗っ取り及びナインリングの一つ、精霊シルフ・キャンディーが封印された風属性のリングを、人間の手に渡さない様に手下と魔物を付けて守っていたのだが、先のダンジョンでの騒動で、手下共々失っていた。
その前には、ランゲルンを新たに治める事になった。
ヘン・タイリン男爵に、手下のガンド大臣を付けてやったものの、ガンド大臣は死亡。
そして、ランゲルンの町ごと住人達が消えると言った事態になり、その立場は危ういものとなっていた。
「ガルニア様、ズルガ侯爵より、ガズール帝国で元秘密機関タンバの村を急襲した所、村の者達が突如消えたとの報告が入って参っております。兵八百とアイスウォ-カ-まで出して、作戦は失敗したようでございます」
「アイスウォ-カ-まで出したか………フッフッ」
悪魔ガルニアは、執事の報告にまだ自分にも汚名返上のチャンスがある事に、心が揺さぶられる思いであった。
「町や人間達が消えるか………そう言えば、クロエが姿を見せたシ-ドル公爵の屋敷も消えたなぁ~」
「ガルニア様、シ-ドル公爵家の娘でしたら、王都内の料理屋で働いているようでございます」
「そうか………その者に聞くのが、一番早いかも知れぬな! 配下の者を連れて、そのシ-ドル公爵の娘を連れて参れ! あそこは冒険者の溜まり場所ゆへ、荒手を連れて行け」
「畏まりました!」
悪魔ガルニアの命を受けた執事が、急ぎ部屋を後にすると、入れ替わるように新たな執事が部屋に入り、悪魔ガルニアの次の命を待っていた。
「念のため、ム-ス公爵の屋敷へアジトを移すのだ! 奴が上手く娘を連れてくれば良いが、敵が上手ならば必ず策を講じて来る………その裏をかくのだ。もしも失敗するようであれば、この家ごと燃やせばよい。その段取りはお前に任せたぞ!」
「お任せ下さい。あの執事諸共あの世へ葬ってやります」
悪魔ガルニアの執事同士は、互いに競い合っており仲が悪い。
殺風景なアジトは、こういった時の為に物が殆ど無い。
何かあれば、そのアジトを捨て次のアジトへ移動し、痕跡を消す目的があった。
夕方の食堂『サミット』は出前で忙しい。
だが、あのアリシアが襲われる事件があって以来、出前は近所だけになっていた。
「アリシアさん、次の出前もう少しで出来上がります。」。
「はいよ!」
野人に両親を殺されたマギーは、妹ルシアと二人で生活するためにここで働いていた。
ここでは、店の売上に応じてランベル王国の通貨で、給金が支払われる。
マギーは、その給金を幼い妹のために貯めている。
ヒビキアイランドで生活するのであれば、今は金の心配は要らないが、妹ルシアが成長して行けば何時金銭が必要になるか分からないのだ。
「おい、冒険者組合が襲われているぞ~ 皆、手助けをたむっ………」
加勢を呼びに来た冒険者が、意識を失い暫くして事切れる。
「皆行くぞ~!」
食堂『サミット』にいた三十人の冒険者達は、次々と店を飛び出して行く。
冒険者組合を襲うと言う事は、自分達の家族が襲われるに等しいのである。
日頃は、まとまりが無いように見えて、実際は団結力が固いのが冒険者なのである。
「マギー、サンドイッチとスープを、大量に作っておくれ! 事が済んだら皆帰って来るよ!」
そんな、冒険者達の後姿を見ると、アリシアクロエも熱い物が込み上げて来るのであった。
「アリシアさん! 出前の準備が出来たんですけど………」
厨房から出て来たメイドが、辺りを見回しながら話しかける。
いつもなら、店に居る冒険者が護衛をしてくれるのだが、その冒険者が一人も店に居ないのだ。
「ああ、三軒先の雑貨屋のとこだろ。直ぐだから大丈夫だよ! アタシに任せておきな」
アリシアクロエは、メイドからオカモチを受け取ると、雑貨屋に出前の配達へと向かって行った。
店を出ると小雨が降っており、アリシアクロエは足早に歩き出す。
「傘を作って売れば、一儲け出来そうだね~」
ここで、雨具と言えば『ローブ』である。
まだ、傘や雨ガッパは登場していない。
店を預かるようになって、アリシアクロエも儲ける事を覚えたのであった。
「お待たせ~」
雑貨屋の扉を開き中へ入ると、そこには雑貨屋夫婦と四歳になる少女が、椅子に縄で縛りあげられていた。
そして、その後ろの暗闇の中には、紳士風の男と武器を持った男達が、アリシアクロエを迎え入れるのであった。
「待っていましたよ。アリシア様、大人しく付いて来ていただければ、この者達に危害は加えません。よろしいですネ!」
紳士風の男の横にいる仲間が、雑貨屋の主の首にナイフを突き付けながら、薄ら笑いを浮かべている。
「分かったよ………」
「それでは、外の馬車に乗ってもらいましょうか。おい、お連れしろ!」
アリシアクロエは、後ろ手に縛られて外に連れ出されて行く。
「奴らはどうします?」
雑貨屋親子は、その手下の人を斬るような鋭い目付きに脅え、少女は大粒の涙を流しながら泣きじゃくる。
「顔を見られています。私達が出た後、お前が残って始末しなさい」
「帰りは、朝になってもよろしんで?」
紳士風の男は、『好きにしろ』と言った仕草を見せて、店から出て行き馬車に乗る。
残された男は、馬車が走り去るのを見届けると、雑貨屋親子の方に振り返り、三人の元にゆっくりと近づいて来る。
「さあ、楽しもうか………………ウッ!」
「そうはさせないよ!」
雑貨屋親子の目の前で、男の首にダガ-ナイフが突き刺さり、男は自分に起きた出来事を、考える余裕もなく絶命してその場に倒れ込む。
その後ろには、マリア組合長が立っていた。
ランベル王国乗っ取り及びナインリングの一つ、精霊シルフ・キャンディーが封印された風属性のリングを、人間の手に渡さない様に手下と魔物を付けて守っていたのだが、先のダンジョンでの騒動で、手下共々失っていた。
その前には、ランゲルンを新たに治める事になった。
ヘン・タイリン男爵に、手下のガンド大臣を付けてやったものの、ガンド大臣は死亡。
そして、ランゲルンの町ごと住人達が消えると言った事態になり、その立場は危ういものとなっていた。
「ガルニア様、ズルガ侯爵より、ガズール帝国で元秘密機関タンバの村を急襲した所、村の者達が突如消えたとの報告が入って参っております。兵八百とアイスウォ-カ-まで出して、作戦は失敗したようでございます」
「アイスウォ-カ-まで出したか………フッフッ」
悪魔ガルニアは、執事の報告にまだ自分にも汚名返上のチャンスがある事に、心が揺さぶられる思いであった。
「町や人間達が消えるか………そう言えば、クロエが姿を見せたシ-ドル公爵の屋敷も消えたなぁ~」
「ガルニア様、シ-ドル公爵家の娘でしたら、王都内の料理屋で働いているようでございます」
「そうか………その者に聞くのが、一番早いかも知れぬな! 配下の者を連れて、そのシ-ドル公爵の娘を連れて参れ! あそこは冒険者の溜まり場所ゆへ、荒手を連れて行け」
「畏まりました!」
悪魔ガルニアの命を受けた執事が、急ぎ部屋を後にすると、入れ替わるように新たな執事が部屋に入り、悪魔ガルニアの次の命を待っていた。
「念のため、ム-ス公爵の屋敷へアジトを移すのだ! 奴が上手く娘を連れてくれば良いが、敵が上手ならば必ず策を講じて来る………その裏をかくのだ。もしも失敗するようであれば、この家ごと燃やせばよい。その段取りはお前に任せたぞ!」
「お任せ下さい。あの執事諸共あの世へ葬ってやります」
悪魔ガルニアの執事同士は、互いに競い合っており仲が悪い。
殺風景なアジトは、こういった時の為に物が殆ど無い。
何かあれば、そのアジトを捨て次のアジトへ移動し、痕跡を消す目的があった。
夕方の食堂『サミット』は出前で忙しい。
だが、あのアリシアが襲われる事件があって以来、出前は近所だけになっていた。
「アリシアさん、次の出前もう少しで出来上がります。」。
「はいよ!」
野人に両親を殺されたマギーは、妹ルシアと二人で生活するためにここで働いていた。
ここでは、店の売上に応じてランベル王国の通貨で、給金が支払われる。
マギーは、その給金を幼い妹のために貯めている。
ヒビキアイランドで生活するのであれば、今は金の心配は要らないが、妹ルシアが成長して行けば何時金銭が必要になるか分からないのだ。
「おい、冒険者組合が襲われているぞ~ 皆、手助けをたむっ………」
加勢を呼びに来た冒険者が、意識を失い暫くして事切れる。
「皆行くぞ~!」
食堂『サミット』にいた三十人の冒険者達は、次々と店を飛び出して行く。
冒険者組合を襲うと言う事は、自分達の家族が襲われるに等しいのである。
日頃は、まとまりが無いように見えて、実際は団結力が固いのが冒険者なのである。
「マギー、サンドイッチとスープを、大量に作っておくれ! 事が済んだら皆帰って来るよ!」
そんな、冒険者達の後姿を見ると、アリシアクロエも熱い物が込み上げて来るのであった。
「アリシアさん! 出前の準備が出来たんですけど………」
厨房から出て来たメイドが、辺りを見回しながら話しかける。
いつもなら、店に居る冒険者が護衛をしてくれるのだが、その冒険者が一人も店に居ないのだ。
「ああ、三軒先の雑貨屋のとこだろ。直ぐだから大丈夫だよ! アタシに任せておきな」
アリシアクロエは、メイドからオカモチを受け取ると、雑貨屋に出前の配達へと向かって行った。
店を出ると小雨が降っており、アリシアクロエは足早に歩き出す。
「傘を作って売れば、一儲け出来そうだね~」
ここで、雨具と言えば『ローブ』である。
まだ、傘や雨ガッパは登場していない。
店を預かるようになって、アリシアクロエも儲ける事を覚えたのであった。
「お待たせ~」
雑貨屋の扉を開き中へ入ると、そこには雑貨屋夫婦と四歳になる少女が、椅子に縄で縛りあげられていた。
そして、その後ろの暗闇の中には、紳士風の男と武器を持った男達が、アリシアクロエを迎え入れるのであった。
「待っていましたよ。アリシア様、大人しく付いて来ていただければ、この者達に危害は加えません。よろしいですネ!」
紳士風の男の横にいる仲間が、雑貨屋の主の首にナイフを突き付けながら、薄ら笑いを浮かべている。
「分かったよ………」
「それでは、外の馬車に乗ってもらいましょうか。おい、お連れしろ!」
アリシアクロエは、後ろ手に縛られて外に連れ出されて行く。
「奴らはどうします?」
雑貨屋親子は、その手下の人を斬るような鋭い目付きに脅え、少女は大粒の涙を流しながら泣きじゃくる。
「顔を見られています。私達が出た後、お前が残って始末しなさい」
「帰りは、朝になってもよろしんで?」
紳士風の男は、『好きにしろ』と言った仕草を見せて、店から出て行き馬車に乗る。
残された男は、馬車が走り去るのを見届けると、雑貨屋親子の方に振り返り、三人の元にゆっくりと近づいて来る。
「さあ、楽しもうか………………ウッ!」
「そうはさせないよ!」
雑貨屋親子の目の前で、男の首にダガ-ナイフが突き刺さり、男は自分に起きた出来事を、考える余裕もなく絶命してその場に倒れ込む。
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