NineRing~捕らわれし者たち~

吉備津 慶

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80.ナルミ・エスタニアの初陣-1

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 コタン村へ上る道の手前。
 その平原の草むらに、ワーウルフ達は潜んでいた。
 コタン村襲撃以来、村人の行方が何処を捜索しても分からなかったため。
 情報収取の為に、その関係者を待ち伏せ、捕らえるのが目的だった。
 彼らの一番の気掛りは、秘密機関タンバのメンバ-が、何処に潜んでいるのかと言う事だ。

 今、『ヒビキアイランド』に居るコタン村の村人以外に、ガズール帝国内及び他国で生活し、情報収集活動をしているタンバのメンバ-が、二百名以上いる。
 この事に付いて、響だけはアクラ族長から聞かされていた。

 そんなワーウルフ達が待ち受ける所に、ナルミ・エスタニア率いる、ブラッド騎士団二個小隊が現れた。
 ワーウルフは二手に分かれて、ブラッド騎士団の先頭を行く。
 第一小隊の隊長を狙い隊列の両側から襲い掛かる。
 ブラッド騎士団の騎士達も、警戒していたとは言え、自国の領地でワーウルフに襲われるとは、思ってもいなかった。
 ワーウルフの最初の一撃で、第一小隊の隊長を含む十八人の騎士が倒される。

 「下馬して、隊列を組め! 相手はワーウルフだ! 銀装備用意! 四人一組で当たれ! ナルミ様は、中央へ!」

 第二小隊の小隊長が戦闘状況から、騎士達に指示を与えて行く。
 第一小隊の半数がやられて、第二小隊の方に第一小隊の生き残りが後退する頃には、第二小隊の戦闘態勢は整っていた。

 「第一小隊! 後方へ急げ~」

 後退して来る第一小隊を後方へ逃がし、追って来るワーウルフの一団を、盾と銀の穂先を付けた槍で食い止める。
 足の止まったワーウルフに後方から、鉄の容器に保存した水銀を、ワーウルフに振り掛ける。
 水銀の毒気にひるんだスキを突き、槍で突き、銀の穂先が付いた弓矢で、ワーウルフをって行く。
 槍か弓矢が刺さったワーウルフは、もがき苦しんで倒れて行く。
 しかし、ワーウルフも『ただで死んでたまるか』と、騎士を一人二人と道連れにして行くのだった。

 ワーウルフもバカではない、仲間が倒されて行くのを見て、足を止めてしまうと弓矢の餌食になる事を悟る。
 足の早いワーウルフ達も連携して、左右から攻撃を仕掛けて来る。
 ワーウルフの攻撃力は強く、騎士達の足並みも乱れて行く。

 「第一小隊は、右側を守って下さい!」
 
 小隊長を失った第一小隊を、ナルミは後方で編成し直し、第一小隊を指揮し始める。
 ナルミは、父に付いて軍事を学び始めて、まだ日が浅い。
 まだまだ、的確な指示が出せないでいた。   



 山側の高みに、響達は現れた。
 ここなら見通しもよく、作戦も立てやすいはずだ。
 しかし、響はティスの事が気になるのだった。
 これまで、戦闘らしい戦闘の経験がなく。 
 行き成り戦場に、付いて来たのだ。
 心配するのは当たり前である。
 
 ティス大丈夫かな~。
 今まで、オペレ-タ-しかした事ないのに、戦闘になったら………
 傷付いて欲しくない~。

 響の本音である。

 好きな子が、武器を持ち傷付く姿等、見たい男がいるだろうか。
 響のヒュ-マニズムは、この世界とはチョット違っていた。
 この世界では、女性も普通に武器を持ち戦っている。
 ある意味、生きるための男女平等な世界なのだ。

 「ティス、今回は、ここで後方支援を頼む!」

 響は、ティスの安全を考えて、今回は見学させようと思った。
 ここなら、余程の事が起きない以上、危険にさらされる事はない。
 響も心置きなく戦えるのである。

 「はい、分かりました」

 「………」

 響の目が釘付けになる。

 ティスは、『クリスタルガン』をホルスタ-から抜くと、コートの内側からストック、スコ-プ、銃身を取出して、組み立て始める。
 
 んっ………スナイパ-ライフル?
 『クリスタルガン』て、そんなふうにもなるんだ~。

 「ティス、それって~」 

 響は、『クリスタルガン』を指差して、ティスに問いかけようとする。

 「響さん、早く行かないと全滅してしまいますよ!」

 『クリスタルガン』を、スナイパ-モードに組み上げたティスは、地面に座るとバイポッド代わりに、左片膝を立てスコ-プを覗き込む。

 そこには、かよわいティスの感じはなく。 
 ベテランのスナイパ-の風格さえ、感じられるティスが居た。

 なんか、違う!

 響は、忘れている。
 装備一式を受け取った時に『宇宙戦艦メモリア』で、戦闘訓練を受けた事を………。
 
 ティスが、同じ装備一式を所持しているのだから、戦闘訓練を受けている事は、容易に分かりそうなものなのだが、響は気が付かないでいた。

 響は顔を隠すと、ナルミ達の元に向かうのであった。
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