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94.子供達の救出

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 「幾ら倒しても、切りが無いね!」

 クロエは、教会の前に立ちふさがり、向って来る騎士達を次々と倒して行く。
 魔法攻撃で一掃してしまえば楽なのだが、人間に対して手加減している分、どうしても隙が出来てしまう。
 騎士に化けているワーウルフ達も、クロエの行動に気付いたのか、騎士達を盾にして攻撃してくるようになって来た。
 クロエも、そんな攻撃を避けてはいるものの、徐々に細かな切り傷を負って来ていた。
 
 「なに!」
 
 クロエに倒された一人の騎士が意識を取り戻し、近付いて来たクロエの足にしがみ付き、クロエの回避行動を妨げる。
 この機を逃すまいと、騎士を盾にしていた二匹のワーウルフが、クロエにいっせいに飛び掛かる。
 一匹目のワーウルフの攻撃を、かろうじて左手で避けたものの、二匹目のワーウルフが繰り出した剣の穂先は、クロエの右肩を撫でるように捕らえる。
 普通であれば、クロエの着る防刃機能付きの服を、切り裂く事は出来ないはずであった。
しかし、ワーウルフが持っていた剣は魔剣であったため、クロエの服を切り裂き、剣から赤い鮮血が舞い散るのだった。

 「くッ!」

 ワーウルフの繰り出す剣を避けそこなったクロエは、右膝を付いてよろけてしまう。
 その隙を突いて、騎士達が一斉にクロエに斬りかかって来る。

 「しまった!」

 一瞬の油断であった。
 この状況では、魔法攻撃で撃退する事も出来ない。
 クロエは、自分に降りかかる事態を、受け入れるしかなかった。
 
 『ダ-クオ-ラ!』

 クロエに、四方から斬りかかった騎士達の刃は、ダ-クオ-ラによって弾き飛ばされる。

 「何、悲劇のヒロインやっているんだ?」

 クロエの窮地を救ったのは、響であった。
 響は現れるなり、クロエにダ-クオ-ラをかけると、魔剣を片手に騎士達の中に飛び込んで行く。
 今の響にとって、ワーウルフ等ものの数ではない。
 クロエの苦労を知ってか知らずか。
 響は騎士諸共、ワーウルフを片っ端から倒して行くのであった。

 「ティス、今の内に子供達を助け出せ! クロエ、教会の上から魔法攻撃だ!」

 「かしこまりました!」

 ティスは、援護射撃を止めて、教会の中へと向かう。

 「アタイの苦労も知らずに~。指図してんじゃないよ!」

 クロエは、強がりと腹立たしさをよそに、嬉しそうに教会の屋根に飛び上がると、間接的に魔法攻撃を行い。
 後続の騎士達の接近を妨げて行く。
 これまでの戦闘経験から、響達各自の連携は、言葉が少なくても取れるようになっていた。

 ティスが教会に掛け込むと、三人のシスタ-が子供達をかばうように、ティスの前に立ち塞がっていた。

 「助けに来ました! 子供達はこれで全員ですか?」

 「貴方は何方ですか?」

 初めて見るティスに、年長者のシスタ-が問いかける。
 今まで何人もの子供達が、教会へ定期的に連れて来られては、騎士達によって何処かに連れて行かれていた。
 子供達を何処に連れて行くのか騎士に尋ねても、口を閉ざして返答は無かった。
 そんな事が続き、今、外では騎士達と何者かが戦っている。
 そんな所へティスが駆け込んで来て、『助けに来た』と言われても、誰が信用出来るであろうか。
 
 ティスは、そんなシスタ-達の気持ちには、お構いなしに教会の中を見回すと、琴祢と連絡を取り始める。
 暫くすると、教会の中に居たシスタ-と子供達は、有無も言わせずに琴祢によって、いつものように『レオン』へと転送されて行ったのであった。

 ティスは、教会内に取り残された者が居ないか確認すると、響に連絡を入れる。

 「響さん、子供達は『レオン』へ転送しました」

 「分かった! クロエ! いったんティスと『レオン』へ引き上げろ。そして、ジュリアン達の援護を頼む。ティス! ナルミ・エスタニアを、姉のタ-ニャに会わせてやってくれ」

 「響、アンタはどうするんだい?」

 クロエは、響の声のト-ンから、クロエ達とは違う行動を取ろうとしている事を察した。

 「もう一度、あの城に潜入する!」

 響は、騎士達と戦いながら、クロエとティスに指示を出して行く。
 
 先程潜入した時とは違い、この騒ぎに奴らも気付いておるぞ! 
 
 「ああ! 分かってる………。だけど早い所、第二王子を倒さないと、より多くの血がながれる。ほっては置けないだろ!」

 フンッ! お人好しよのう~。だが、あの城には気を付けるのだ。我の配下の者を含め、多くの者が城の奥に入って無事に出て来た者は、今だ一人としておらん。あの城には何かある。 

 魔王のその言葉を聞いた時。響は、一つの疑問を抱いた。

 「何でその事を、さっき城に潜入する前に、言わなかったんだ?」

 ………………

 コイツ、忘れてたんだな!

 

 ランベル王国の王都サリュースでは、ジュリアン達冒険者と王国警備隊の少人数で、魔物や死人の襲撃を撃退していた。
 今までの戦闘経験から、魔物や死人に対する戦闘は、前ほど難しい物では無くなっていたが、ジュリアン達よりも魔物の数は多く、体力自慢の冒険者達も徐々に体力を消耗して行くのだった。

 「リーダ-! 商店街に死人の群が現れた。応援が必要!」

 「分かったモカ。ア-リン! 店の従業員の非難はどうなっている?」

 響に、店の警護を頼まれていたジュリアンは、ア-リンを店の警護に残していた。
 しかし、敵の襲撃をア-リン一人で防ぐのは、無理と判断したジュリアンは、従業員を非難させる事にしたのだった。

 「今、全員をアイランドの方に、転送して貰いました。これからモカさんの応援に向かいます」

 「ア-リン………。頼みがある。ティタニアの事を頼む」

 ジュリアンは、商店街に現れた死人の群が気になっていた。
 こう言った時の、ジュリアンの感はよく当たる。
 
 「任せて下さい!」

 ジュリアンの思いを察したア-リンは、商店街に向かって走って行くのだった。

 「頼んだぞ………」
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みんなの感想(1件)

Rian
2018.12.20 Rian

更新、楽しみにしています。

吉備津 慶
2018.12.20 吉備津 慶

ありがとうございます。すごく、励みになります。
ただ、毎日更新は文才がないので、今後、間が空くことがあるかと思います。
見捨てないで、下さいね。

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