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涙と笑顔のフライト
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それから5日後のことだった。
その日は珍しく、恵真と大和は福岡往復の便を一緒に担当することになっていた。
「恵真と一緒に飛ぶなんて、いつ以来だ?」
「さあ、もう思い出せません」
「だよな。あー、俺、今日はかなり浮かれてる」
「キャプテン、仕事中ですよ?」
翼と舞を保育園に送り届けたあと、恵真は大和と肩を並べてShow Up(出社)し、出社確認表にサインする。
「あら? 珍しいですね。夫婦フライトですか?」
顔なじみのディスパッチャーの女性が、フライトプランを差し出しながら笑いかけてきた。
「そうなんですよ、久しぶりに」
「ふふっ、キャプテン嬉しそう。でもあいにくの空模様なんです」
「なんのこれしき。お任せください」
得意げに胸をそらす大和に構わず、恵真はフライトプランに目を走らせる。
いつもは機長よりも1時間ほど早く来て情報の確認や準備をしておく恵真だったが、今日は大和と一緒に出社した為、一人の時間が取れなかった。
その分、集中してパソコンに向かう。
(復路の羽田で空がかなり荒れるかも……)
雨と風はそれほどでもないが、雷が予想されていた。
(今の時点ではなんとも言えないわね。とにかくまずは往路をしっかり飛ぶこと)
頭の中で飛行ルートや高度、燃料などの情報を整理すると、大和と一緒にブリーフィングを行う。
「よし、じゃあシップに向かうか」
「はい」
フライトバッグを引きながらオフィスを出ると、ちょうど野中と伊沢が同じように並んで歩いて来るのが見えた。
「おっ? 佐倉と藤崎ちゃん、仲良くお揃いで。珍しいな。もしかして夫婦で飛ぶのか?」
「よくぞ聞いてくれました、野中さん。そうなんですよ」
大和はまたもやご満悦で答える。
「これから天気荒れるみたいだぞ。まあ、二人なら平気だろうけどさ」
野中の言葉に、横にいる伊沢も頷いた。
「この二人なら最強ですよ。パイロットの腕前も、愛のパワーも」
伊沢くん!と、恵真は小声で諌める。
だが大和は真面目な顔で口を開いた。
「おっしゃる通り。お客様にはベストフライトをお約束し、必ずや快適な空の旅を……」
「あの、それではそろそろ失礼します。キャプテン、行きますよ」
大和を遮り、恵真は強引に背中を押して歩き始めた。
◇
シップに乗り込むと、コックピットのコンピュータにデータを入力し、外部点検も済ませる。
往路は恵真がPF(Pilot Flying)を務め、操縦桿を握ることにしていた。
CAとのブリーフィングでも、チーフパーサーの佐々木がにこにこと恵真と大和に笑顔を向ける。
言わんとすることが分かり、恵真はなるべく大和が口を開かないよう、淡々とブリーフィングを進めた。
「離陸後は、割りと早めにシートベルトサイン切れると思います。ただ、1時間ほど飛んだところでTB2(中程度の乱気流)があるかもしれません。ご注意ください。キャプテンからは何か、ないですよね?」
「ん? ああ」
「ではよろしくお願いいたします」
お願いします、とCAたちも声を揃え、恵真はくるりと踵を返してコックピットへ向かう。
大和は何か言いたげだったが、恵真は「仕事中です!」のオーラを出し続けた。
福岡へは順調なフライトで、恵真は大和と息を合わせて無事にランディングする。
最後まで気を抜かず、ブロック・インしてから、ようやく恵真はホッと息をついた。
「ナイスランディング。さすがは恵真だな。思い出したよ、無駄な力みが一切ない、恵真らしいランディング」
「サポートありがとうございました。フライト中は何かありましたか?」
「いや、ベストを尽くしたいいフライトだった。問題は復路だな」
「はい。オフィスでブリーフィングお願いします」
乗客の降機を終え、整備士へシップの引き継ぎを済ませると、二人でオフィスに向かった。
「そう言えば、俺たちの最初のフライトも福岡だったよな」
「はい。あの時も復路の天候が荒れて、マイクロバーストの中をキャプテンが一発でランディングさせてくれましたよね」
「ああ、そうだった。懐かしいな」
二人でしばし思い出に浸る。
「俺、出会ったあの日のうちに、もう恵真に惹かれてたんだと思う。初めて女の子のコーパイと飛んで、見かけによらないランディングの腕前に驚いて……。帰りの車の中で色んな話をして、最後に明るく笑ってくれた恵真の笑顔が目に焼きついた。コーパイを恋愛対象にするなんてあり得ないって、無意識に自分の気持ちを抑え込んでたけど、あの時から俺の運命の人は恵真に決まってたんだ」
恵真は照れたようにうつむいた。
「私もです。パイロットの大先輩として雲の上の存在だった大和さんと一緒に飛んで、マイクロバーストの中を見事にランディングさせた操縦スキルに感銘を受けて……。車の中で私の悩みを聞いてくれて、力強く励ましてもらいました。どんなに心が救われたか。あの日から、パイロットとしての私も、私自身も、新たな気持ちで前を向けるようになったんです。そんなあなたに、心惹かれないなんて無理」
そう言って恵真は、ふふっと笑う。
「だけど私の方こそ、優秀なキャプテンに恋心を抱くなんてあり得ない。考えるのもおこがましいって、自分の気持ちに気づこうともしませんでした。だからあの日、ウイングローをホテルの部屋で教わった時、大和さんに好きだと言われてどれほど嬉しかったか……。抑えていた想いが一気に溢れました。私の運命の人も、出会った時からあなたです。ううん、あなたと出会うことが私の運命だったの」
「恵真……」
二人で微笑みながら見つめ合う。
「俺の人生、奇跡みたいだって思うよ。パイロットになる夢を叶えて、最愛の人と結ばれて。可愛い子どもたちを授かって、毎日が幸せで愛おしい」
「私もです。ずっとずっと、この幸せを守りたい」
「ああ。俺が必ず守るよ、恵真と翼と舞を」
「はい。ありがとう、大和さん」
何年経っても色褪せない、お互いの恋心。
時を重ねるにつれて深まる、お互いの愛情。
そしていつまでも揺るぎない、家族の絆。
二人は改めて、胸いっぱいに広がる温かい幸せを噛みしめていた。
◇
復路のJWA 256便、福岡発羽田行きは、定刻に出発した。
無事に離陸してクルージングに入ると、二人で最新の気象情報を確認しながら、慎重にランディングブリーフィングをする。
羽田空港に近づくにつれて、前方に積乱雲が発達し、稲妻が光っているのが見て取れた。
「ルートからは逸れている。このままアプローチするぞ」
「はい」
順調に高度を下げ、最終着陸態勢に入ったところで、モニターを確認した恵真は眉根を寄せる。
「キャプテン。たった今、TSスリー発令です」
TS3とは、サンダーストームのフェーズ3のことで、活発な雷雲が間近に迫っていることを指す。
落雷のリスクが高く、グランドハンドリングスタッフの身の安全を守るため、外に出る作業が中断される。
パッセンジャーボーディングブリッジなどの操作も出来なくなり、飛行機のドアを開けて乗客を降ろすことが出来なくなる。
つまり、着陸しても缶詰め状態になるのだ。
「……了解」
大和も顔をしかめるが、二人で気持ちを切り替えてランディングに集中した。
やがて着陸決心高度の100フィート手前に到達し、恵真がコールする。
「Approaching minimum」
「Checked」
大和も確認して呼応する。
「Minimum」
「Landing」
無事に滑走路に下り立ち、地上走行に入ったが、やはり管制官から待機指示が出た。
「JW(ジェイウイング)256. Hold position. All ground handling operations are currently suspended, due to thunderstorm activity.」
「Roger. Hold position. JW 256」
恵真が応答し、大和はゆっくりと機体を静止させた。
「キャプテン、キャビンに連絡入れます」
「頼む」
恵真はインターホンでCAを呼び出した。
『はい、L1佐々木です』
「コックピット藤崎です。TS3発令により、待機指示が出ました。このあとコックピットからPA入れますが、お客様への対応をよろしくお願いします」
『了解しました』
通話を終えると、大和が機内アナウンスを入れる。
「機長の佐倉より、お客様にご案内申し上げます。当機は無事に羽田空港に着陸いたしましたが、上空に雷雲が発生しており、落雷の危険性があります。地上作業員とお客様の安全のため、警報が解除されるまでは機内にてお席にお座りのままお待ちいただきますよう、お願い申し上げます。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしますが、どうぞご理解とご協力をよろしくお願いいたします。尚、飛行機には雷を空気中に逃がす放電装置が翼に備えられており、機内は安全に保たれています。どうぞご安心ください」
そのあとは、ただひたすら雷が遠ざかるのを待つのみだった。
「どれくらいかかるんでしょう」
「そうだな。風が強ければすぐに雷雲も流れてくれるが、今日はそこまで強風でもない。1時間ほどかかるかもな」
「はい。でもランディングのあとでよかったです」
「確かに。空の上は大渋滞だろうな」
管制官も大わらわで、空港周辺の飛行機をさばくのに必死だろう。
パイロットも、燃料を気にしつつルートの変更を余儀なくされているはずだった。
「キャビンの様子が気になります。CAさんたち、大変ですよね」
「ああ。こまめに様子を聞いて、必要であれば再度PAを入れよう」
「了解です」
そんなことを話していると、コックピットのドアがノックされた。
「佐々木です。お飲物をお持ちしました」
「はい、今開けます」
恵真が立ち上がって、ドアを開けに行く。
「佐々木さん、お気遣いいただいてありがとうございます。キャビンの様子はどうですか?」
コーヒーを受け取りながら恵真が尋ねると、佐々木はにこやかに答えた。
「比較的落ち着いていますよ。今日はインファントもゼロで大人の方が多いですし、無事に着陸出来ただけでもありがたいと。搭乗前に、ダイバートやエアターンバックの可能性もアナウンスされていましたから」
「それならよかったです。何かあれば、すぐにお知らせくださいね」
「かしこまりました」
佐々木が出て行くと、二人でコーヒーを飲みながら空を見上げる。
「わっ、すごい稲妻」
ピカッと光ったあと、ドーンと地響きも轟いた。
「翼と舞、怖がってないかな」
恵真がぽつりと呟くと、大和はそっと恵真の手を握る。
「大丈夫だ。翔一くんや美羽ちゃん、それに先生たちもいてくれる」
「ええ。でも特に舞は雷が苦手だから……」
「翼もそれは分かってて、きっといつもみたいに、怖くないよって舞を励ましてるさ」
「そうですね」
そうは言ってみたものの、やはり恵真は気がかりだった。
(もし私が仕事をしていなかったら、こんな時ずっと二人のそばにいてあげられたのに)
先日、舞と一緒に出かけたことを思い出す。
あんなにも楽しそうにしていた舞。
もしかしたら、普段寂しさを我慢していた反動なのかもしれなかった。
(私が毎日一緒にいられたら、舞は今よりもっと笑顔でいられたのかな?)
そう思った途端、涙が込み上げてきて懸命に堪える。
「恵真? どうした?」
大和が心配そうに顔を覗き込んできた。
「何でもないです。仕事中にすみません」
慌てて顔を背けて、さり気なく目尻を拭う。
「恵真、今この状況で俺たちパイロットに為す術はない。それにコーパイの様子を気にするのはキャプテンの義務だ。話して」
「でも、仕事には関係ないので」
「あるよ。恵真のことだ。パイロットをやっていなければ、もっと子どもたちと一緒にいられたのにって思ったんじゃないか?」
えっ、と恵真は思わず顔を上げる。
大和が優しい眼差しでじっと見つめていた。
「恵真はあの子たちにとって、最高の母親だ。俺が保証する。妊娠も出産も、パイロットのキャリアには大きく影響するのに、恵真は子どもたちの為に飛ばない選択をしてくれた。今だって、乗務日数を8割に抑えている。それがなければ、今頃恵真は機長昇格訓練に入っていたはずだ」
「えっ! そんなことは……」
「いや、恵真の実力なら間違いなくそうなっていた。俺が知る限り、こんなにも優秀なコーパイはいない。だけど恵真は、いつだって翼と舞を最優先してくれている。自分のキャリアなんて気にもしないでね。その気持ちは必ずあの子たちにも伝わっている。自分たちはお母さんに愛されていると。父親として、恵真の夫として、俺はそう断言する」
「大和さん……」
恵真の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「私、あの子たちを寂しがらせてたんじゃないかって、不安だったの。 家族旅行にも連れて行ってあげられないし、雷が鳴っても大丈夫って抱きしめてあげられない。働いていないお母さんはいつも一緒にいてあげられるし、子どもが悩んだり落ち込んでいたら、すぐに気づいてあげられる。だから舞は……。先週私と出かけた時、舞があんなに嬉しそうだったのは、普段寂しい思いをしているからじゃないかって、私……」
恵真、と大和が優しく名を呼ぶ。
「あの子たちは大丈夫だ。翼も舞も、保育園で色んなことを吸収してぐんぐん成長している。友だちや先生と過ごすことで、大切なことを学んでいる。うちに帰れば、優しいお母さんがいてくれる。それに恵真は、ちゃんと舞の気持ちに寄り添っていられたじゃない。二人で帰って来た時の舞の表情を見ればすぐに分かった。抱えていた気持ちを、恵真が全部受け止めてくれたんだって。俺は恵真を心から尊敬する。ありがとう、恵真。翼と舞のお母さんでいてくれて。いつも俺のそばにいてくれて」
「大和さん……」
大粒の涙をこぼす恵真を、大和は右手でそっと抱き寄せた。
「恵真は俺たち家族を幸せにしてくれる太陽だよ。みんな恵真が大好きだ。それだけは忘れないで。いい?」
「はい」
「よし。あとは俺が恵真をもっと幸せにしなきゃな。恵真、明日ってオフか?」
「え? はい、そうですけど」
キョトンと顔を上げると、大和は何やらニヤリと笑う。
「明日は俺、千歳ステイだからショーアップは17時なんだ。朝、保育園に子どもたちを送って行ったら、そのまま二人でデートな」
途端に恵真の顔は真っ赤になる。
「キャプテン、あの、コックピットでなんてことを……」
「早く返事しないと何度でも言うぞ? 明日はデート、恵真とデー……」
「わ、分かりましたから!」
よし、と大和はほくそ笑み、早速何やら考え始めた。
◇
それから30分後。
TS3はようやくTS2にダウングレードし、大和が機内アナウンスを入れる。
ボーディングブリッジが取り付けられ、乗客が無事に降機を終えると、クルーの皆でホッと息をついた。
「CAの皆さん、長丁場本当にお疲れ様でした」
「いいえ。お二人も悪天候のフライト、お疲れ様でした。久しぶりに無敵の夫婦フライトに同乗出来て、嬉しかったです」
佐々木の言葉に、他のCAも頷く。
「お二人の操縦は安心感が違いますよね。お客様に『雷鳴ってるけど大丈夫?』って聞かれても『ご安心ください』ってドヤ顔しちゃいましたよ、私」
あはは!と明るい笑い声が上がり、そんなCAたちの様子に大和も恵真も安堵した。
二人でフライトバッグを手に、シップをあとにする。
「恵真、見て。空が晴れたよ」
「え、本当だ」
分厚い雲が遠くに去り、青空が少しずつ広がり始めていた。
まるで悩みを抱えていた恵真の気持ちが晴れたかのように……
雲間から真っ直ぐに射し込む陽の光も、恵真の心を明るく照らしてくれる。
「さてと。デブリーフィングしたら双子を迎えに行くぞ」
「はい!」
恵真は笑顔で大和に頷いた。
その日は珍しく、恵真と大和は福岡往復の便を一緒に担当することになっていた。
「恵真と一緒に飛ぶなんて、いつ以来だ?」
「さあ、もう思い出せません」
「だよな。あー、俺、今日はかなり浮かれてる」
「キャプテン、仕事中ですよ?」
翼と舞を保育園に送り届けたあと、恵真は大和と肩を並べてShow Up(出社)し、出社確認表にサインする。
「あら? 珍しいですね。夫婦フライトですか?」
顔なじみのディスパッチャーの女性が、フライトプランを差し出しながら笑いかけてきた。
「そうなんですよ、久しぶりに」
「ふふっ、キャプテン嬉しそう。でもあいにくの空模様なんです」
「なんのこれしき。お任せください」
得意げに胸をそらす大和に構わず、恵真はフライトプランに目を走らせる。
いつもは機長よりも1時間ほど早く来て情報の確認や準備をしておく恵真だったが、今日は大和と一緒に出社した為、一人の時間が取れなかった。
その分、集中してパソコンに向かう。
(復路の羽田で空がかなり荒れるかも……)
雨と風はそれほどでもないが、雷が予想されていた。
(今の時点ではなんとも言えないわね。とにかくまずは往路をしっかり飛ぶこと)
頭の中で飛行ルートや高度、燃料などの情報を整理すると、大和と一緒にブリーフィングを行う。
「よし、じゃあシップに向かうか」
「はい」
フライトバッグを引きながらオフィスを出ると、ちょうど野中と伊沢が同じように並んで歩いて来るのが見えた。
「おっ? 佐倉と藤崎ちゃん、仲良くお揃いで。珍しいな。もしかして夫婦で飛ぶのか?」
「よくぞ聞いてくれました、野中さん。そうなんですよ」
大和はまたもやご満悦で答える。
「これから天気荒れるみたいだぞ。まあ、二人なら平気だろうけどさ」
野中の言葉に、横にいる伊沢も頷いた。
「この二人なら最強ですよ。パイロットの腕前も、愛のパワーも」
伊沢くん!と、恵真は小声で諌める。
だが大和は真面目な顔で口を開いた。
「おっしゃる通り。お客様にはベストフライトをお約束し、必ずや快適な空の旅を……」
「あの、それではそろそろ失礼します。キャプテン、行きますよ」
大和を遮り、恵真は強引に背中を押して歩き始めた。
◇
シップに乗り込むと、コックピットのコンピュータにデータを入力し、外部点検も済ませる。
往路は恵真がPF(Pilot Flying)を務め、操縦桿を握ることにしていた。
CAとのブリーフィングでも、チーフパーサーの佐々木がにこにこと恵真と大和に笑顔を向ける。
言わんとすることが分かり、恵真はなるべく大和が口を開かないよう、淡々とブリーフィングを進めた。
「離陸後は、割りと早めにシートベルトサイン切れると思います。ただ、1時間ほど飛んだところでTB2(中程度の乱気流)があるかもしれません。ご注意ください。キャプテンからは何か、ないですよね?」
「ん? ああ」
「ではよろしくお願いいたします」
お願いします、とCAたちも声を揃え、恵真はくるりと踵を返してコックピットへ向かう。
大和は何か言いたげだったが、恵真は「仕事中です!」のオーラを出し続けた。
福岡へは順調なフライトで、恵真は大和と息を合わせて無事にランディングする。
最後まで気を抜かず、ブロック・インしてから、ようやく恵真はホッと息をついた。
「ナイスランディング。さすがは恵真だな。思い出したよ、無駄な力みが一切ない、恵真らしいランディング」
「サポートありがとうございました。フライト中は何かありましたか?」
「いや、ベストを尽くしたいいフライトだった。問題は復路だな」
「はい。オフィスでブリーフィングお願いします」
乗客の降機を終え、整備士へシップの引き継ぎを済ませると、二人でオフィスに向かった。
「そう言えば、俺たちの最初のフライトも福岡だったよな」
「はい。あの時も復路の天候が荒れて、マイクロバーストの中をキャプテンが一発でランディングさせてくれましたよね」
「ああ、そうだった。懐かしいな」
二人でしばし思い出に浸る。
「俺、出会ったあの日のうちに、もう恵真に惹かれてたんだと思う。初めて女の子のコーパイと飛んで、見かけによらないランディングの腕前に驚いて……。帰りの車の中で色んな話をして、最後に明るく笑ってくれた恵真の笑顔が目に焼きついた。コーパイを恋愛対象にするなんてあり得ないって、無意識に自分の気持ちを抑え込んでたけど、あの時から俺の運命の人は恵真に決まってたんだ」
恵真は照れたようにうつむいた。
「私もです。パイロットの大先輩として雲の上の存在だった大和さんと一緒に飛んで、マイクロバーストの中を見事にランディングさせた操縦スキルに感銘を受けて……。車の中で私の悩みを聞いてくれて、力強く励ましてもらいました。どんなに心が救われたか。あの日から、パイロットとしての私も、私自身も、新たな気持ちで前を向けるようになったんです。そんなあなたに、心惹かれないなんて無理」
そう言って恵真は、ふふっと笑う。
「だけど私の方こそ、優秀なキャプテンに恋心を抱くなんてあり得ない。考えるのもおこがましいって、自分の気持ちに気づこうともしませんでした。だからあの日、ウイングローをホテルの部屋で教わった時、大和さんに好きだと言われてどれほど嬉しかったか……。抑えていた想いが一気に溢れました。私の運命の人も、出会った時からあなたです。ううん、あなたと出会うことが私の運命だったの」
「恵真……」
二人で微笑みながら見つめ合う。
「俺の人生、奇跡みたいだって思うよ。パイロットになる夢を叶えて、最愛の人と結ばれて。可愛い子どもたちを授かって、毎日が幸せで愛おしい」
「私もです。ずっとずっと、この幸せを守りたい」
「ああ。俺が必ず守るよ、恵真と翼と舞を」
「はい。ありがとう、大和さん」
何年経っても色褪せない、お互いの恋心。
時を重ねるにつれて深まる、お互いの愛情。
そしていつまでも揺るぎない、家族の絆。
二人は改めて、胸いっぱいに広がる温かい幸せを噛みしめていた。
◇
復路のJWA 256便、福岡発羽田行きは、定刻に出発した。
無事に離陸してクルージングに入ると、二人で最新の気象情報を確認しながら、慎重にランディングブリーフィングをする。
羽田空港に近づくにつれて、前方に積乱雲が発達し、稲妻が光っているのが見て取れた。
「ルートからは逸れている。このままアプローチするぞ」
「はい」
順調に高度を下げ、最終着陸態勢に入ったところで、モニターを確認した恵真は眉根を寄せる。
「キャプテン。たった今、TSスリー発令です」
TS3とは、サンダーストームのフェーズ3のことで、活発な雷雲が間近に迫っていることを指す。
落雷のリスクが高く、グランドハンドリングスタッフの身の安全を守るため、外に出る作業が中断される。
パッセンジャーボーディングブリッジなどの操作も出来なくなり、飛行機のドアを開けて乗客を降ろすことが出来なくなる。
つまり、着陸しても缶詰め状態になるのだ。
「……了解」
大和も顔をしかめるが、二人で気持ちを切り替えてランディングに集中した。
やがて着陸決心高度の100フィート手前に到達し、恵真がコールする。
「Approaching minimum」
「Checked」
大和も確認して呼応する。
「Minimum」
「Landing」
無事に滑走路に下り立ち、地上走行に入ったが、やはり管制官から待機指示が出た。
「JW(ジェイウイング)256. Hold position. All ground handling operations are currently suspended, due to thunderstorm activity.」
「Roger. Hold position. JW 256」
恵真が応答し、大和はゆっくりと機体を静止させた。
「キャプテン、キャビンに連絡入れます」
「頼む」
恵真はインターホンでCAを呼び出した。
『はい、L1佐々木です』
「コックピット藤崎です。TS3発令により、待機指示が出ました。このあとコックピットからPA入れますが、お客様への対応をよろしくお願いします」
『了解しました』
通話を終えると、大和が機内アナウンスを入れる。
「機長の佐倉より、お客様にご案内申し上げます。当機は無事に羽田空港に着陸いたしましたが、上空に雷雲が発生しており、落雷の危険性があります。地上作業員とお客様の安全のため、警報が解除されるまでは機内にてお席にお座りのままお待ちいただきますよう、お願い申し上げます。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしますが、どうぞご理解とご協力をよろしくお願いいたします。尚、飛行機には雷を空気中に逃がす放電装置が翼に備えられており、機内は安全に保たれています。どうぞご安心ください」
そのあとは、ただひたすら雷が遠ざかるのを待つのみだった。
「どれくらいかかるんでしょう」
「そうだな。風が強ければすぐに雷雲も流れてくれるが、今日はそこまで強風でもない。1時間ほどかかるかもな」
「はい。でもランディングのあとでよかったです」
「確かに。空の上は大渋滞だろうな」
管制官も大わらわで、空港周辺の飛行機をさばくのに必死だろう。
パイロットも、燃料を気にしつつルートの変更を余儀なくされているはずだった。
「キャビンの様子が気になります。CAさんたち、大変ですよね」
「ああ。こまめに様子を聞いて、必要であれば再度PAを入れよう」
「了解です」
そんなことを話していると、コックピットのドアがノックされた。
「佐々木です。お飲物をお持ちしました」
「はい、今開けます」
恵真が立ち上がって、ドアを開けに行く。
「佐々木さん、お気遣いいただいてありがとうございます。キャビンの様子はどうですか?」
コーヒーを受け取りながら恵真が尋ねると、佐々木はにこやかに答えた。
「比較的落ち着いていますよ。今日はインファントもゼロで大人の方が多いですし、無事に着陸出来ただけでもありがたいと。搭乗前に、ダイバートやエアターンバックの可能性もアナウンスされていましたから」
「それならよかったです。何かあれば、すぐにお知らせくださいね」
「かしこまりました」
佐々木が出て行くと、二人でコーヒーを飲みながら空を見上げる。
「わっ、すごい稲妻」
ピカッと光ったあと、ドーンと地響きも轟いた。
「翼と舞、怖がってないかな」
恵真がぽつりと呟くと、大和はそっと恵真の手を握る。
「大丈夫だ。翔一くんや美羽ちゃん、それに先生たちもいてくれる」
「ええ。でも特に舞は雷が苦手だから……」
「翼もそれは分かってて、きっといつもみたいに、怖くないよって舞を励ましてるさ」
「そうですね」
そうは言ってみたものの、やはり恵真は気がかりだった。
(もし私が仕事をしていなかったら、こんな時ずっと二人のそばにいてあげられたのに)
先日、舞と一緒に出かけたことを思い出す。
あんなにも楽しそうにしていた舞。
もしかしたら、普段寂しさを我慢していた反動なのかもしれなかった。
(私が毎日一緒にいられたら、舞は今よりもっと笑顔でいられたのかな?)
そう思った途端、涙が込み上げてきて懸命に堪える。
「恵真? どうした?」
大和が心配そうに顔を覗き込んできた。
「何でもないです。仕事中にすみません」
慌てて顔を背けて、さり気なく目尻を拭う。
「恵真、今この状況で俺たちパイロットに為す術はない。それにコーパイの様子を気にするのはキャプテンの義務だ。話して」
「でも、仕事には関係ないので」
「あるよ。恵真のことだ。パイロットをやっていなければ、もっと子どもたちと一緒にいられたのにって思ったんじゃないか?」
えっ、と恵真は思わず顔を上げる。
大和が優しい眼差しでじっと見つめていた。
「恵真はあの子たちにとって、最高の母親だ。俺が保証する。妊娠も出産も、パイロットのキャリアには大きく影響するのに、恵真は子どもたちの為に飛ばない選択をしてくれた。今だって、乗務日数を8割に抑えている。それがなければ、今頃恵真は機長昇格訓練に入っていたはずだ」
「えっ! そんなことは……」
「いや、恵真の実力なら間違いなくそうなっていた。俺が知る限り、こんなにも優秀なコーパイはいない。だけど恵真は、いつだって翼と舞を最優先してくれている。自分のキャリアなんて気にもしないでね。その気持ちは必ずあの子たちにも伝わっている。自分たちはお母さんに愛されていると。父親として、恵真の夫として、俺はそう断言する」
「大和さん……」
恵真の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「私、あの子たちを寂しがらせてたんじゃないかって、不安だったの。 家族旅行にも連れて行ってあげられないし、雷が鳴っても大丈夫って抱きしめてあげられない。働いていないお母さんはいつも一緒にいてあげられるし、子どもが悩んだり落ち込んでいたら、すぐに気づいてあげられる。だから舞は……。先週私と出かけた時、舞があんなに嬉しそうだったのは、普段寂しい思いをしているからじゃないかって、私……」
恵真、と大和が優しく名を呼ぶ。
「あの子たちは大丈夫だ。翼も舞も、保育園で色んなことを吸収してぐんぐん成長している。友だちや先生と過ごすことで、大切なことを学んでいる。うちに帰れば、優しいお母さんがいてくれる。それに恵真は、ちゃんと舞の気持ちに寄り添っていられたじゃない。二人で帰って来た時の舞の表情を見ればすぐに分かった。抱えていた気持ちを、恵真が全部受け止めてくれたんだって。俺は恵真を心から尊敬する。ありがとう、恵真。翼と舞のお母さんでいてくれて。いつも俺のそばにいてくれて」
「大和さん……」
大粒の涙をこぼす恵真を、大和は右手でそっと抱き寄せた。
「恵真は俺たち家族を幸せにしてくれる太陽だよ。みんな恵真が大好きだ。それだけは忘れないで。いい?」
「はい」
「よし。あとは俺が恵真をもっと幸せにしなきゃな。恵真、明日ってオフか?」
「え? はい、そうですけど」
キョトンと顔を上げると、大和は何やらニヤリと笑う。
「明日は俺、千歳ステイだからショーアップは17時なんだ。朝、保育園に子どもたちを送って行ったら、そのまま二人でデートな」
途端に恵真の顔は真っ赤になる。
「キャプテン、あの、コックピットでなんてことを……」
「早く返事しないと何度でも言うぞ? 明日はデート、恵真とデー……」
「わ、分かりましたから!」
よし、と大和はほくそ笑み、早速何やら考え始めた。
◇
それから30分後。
TS3はようやくTS2にダウングレードし、大和が機内アナウンスを入れる。
ボーディングブリッジが取り付けられ、乗客が無事に降機を終えると、クルーの皆でホッと息をついた。
「CAの皆さん、長丁場本当にお疲れ様でした」
「いいえ。お二人も悪天候のフライト、お疲れ様でした。久しぶりに無敵の夫婦フライトに同乗出来て、嬉しかったです」
佐々木の言葉に、他のCAも頷く。
「お二人の操縦は安心感が違いますよね。お客様に『雷鳴ってるけど大丈夫?』って聞かれても『ご安心ください』ってドヤ顔しちゃいましたよ、私」
あはは!と明るい笑い声が上がり、そんなCAたちの様子に大和も恵真も安堵した。
二人でフライトバッグを手に、シップをあとにする。
「恵真、見て。空が晴れたよ」
「え、本当だ」
分厚い雲が遠くに去り、青空が少しずつ広がり始めていた。
まるで悩みを抱えていた恵真の気持ちが晴れたかのように……
雲間から真っ直ぐに射し込む陽の光も、恵真の心を明るく照らしてくれる。
「さてと。デブリーフィングしたら双子を迎えに行くぞ」
「はい!」
恵真は笑顔で大和に頷いた。
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