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クリスマスイブ
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12月24日、クリスマスイブがやって来た。
ショーの開始時間まで、めぐと弦は残業しながら待つ。
定時を30分過ぎたところで環奈が立ち上がった。
「それでは、お先に失礼します」
「あれ?環奈ちゃん、ナイトショー観ていかないの?」
「行きますよー。実は待ち合わせしてるんです。ふふっ」
ふふっ?とめぐは首を傾げる。
「もしかして!環奈ちゃん、彼氏出来たの?」
「よくぞ聞いてくれましたー!そうなんです。この間の合コンで」
「そうなのね、おめでとう!じゃあこれで晴れてジングルベルだね。素敵なクリスマスイブを」
「ありがとうございます!」
ウキウキと事務所を出て行く環奈を、良かったなーとめぐは見送る。
すると隣のデスクで弦も「幸せそうだな、環奈」と呟いた。
「うん、本当に。環奈ちゃんは可愛くて明るくて優しい、いい子だもん。絶対にいつか素敵な彼氏が現れるって思ってた。どんな人なんだろうなー、お相手は。あ!ねえ、ショーを観に行くって言ってたよね?バッタリお会いしちゃうかも?」
「おいおい、邪魔するなよ?」
「もちろんしないよー。物陰からこっそり覗くだけよ」
「それも怖いわ」
やれやれと腕を組み、弦は時計を確認する。
「少し早めに行こうか。ホテルのチェックインもしなきゃいけないから」
「そうだね。あ!私ね、グッズ販売のワゴン見たいんだ」
「そっか。なら、そろそろ出よう」
「うん」
帰り支度をすると、二人でパークに向かった。
「わあ、すごいね。平日なのにこの混雑具合」
「ああ。夜の方が昼間より混んでるな。仕事帰りのカップルも多そうだ」
いつもなら5分ほどで到着するキャナルガーデンだが、今夜はなかなかたどり着けない。
ギュウギュウと人波にもまれながら進む。
「氷室くん、背が高いから頭ひとつ出てて涼しげだね。……わっ!」
隣の男性に寄りかかられて、めぐはバランスを崩す。
弦が腕を伸ばし、めぐを自分の胸の前に抱き寄せた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
「危ないから離れるな」
弦はめぐを腕の中にかばいながら、少しずつ前へと進む。
だがキャナルガーデンが見えてくると、あまりの人の多さに驚いた。
「これ、かなり危険だな。もっと大勢のスタッフが仕切らないとドミノ倒しになる。事務所に連絡してくるから、めぐはホテルで待ってろ」
そう言ってめぐの肩を抱いたままホテルに向かおうとした弦は、更に驚いて目を見開く。
「ホテルにも人が殺到してる」
「本当だ。あ、長谷部さんが誘導してる」
「ああ、だけど追いついてないな。めぐ、俺から離れるなよ」
「うん」
弦はしっかりとめぐの肩を抱くと、人の間を縫うようにして長谷部に近づいた。
「長谷部さん!」
「氷室さん!雪村さんも」
「長谷部さん、スピーカーとスタッフジャンパーを貸してください。今、事務所に連絡して応援を要請します」
「分かりました」
弦と長谷部はそれぞれスマートフォンを取り出して電話をかける。
しばらくすると、スタッフジャンパーとワイヤレススピーカーを手にしたホテルスタッフが、必死の形相で近づいてきた。
受け取った長谷部が、弦に手渡す。
「氷室さん!これを」
「ありがとうございます。長谷部さん、ホテルのロビーを半分開放してください。逃がしスペースにします」
「分かりました」
弦はスタッフジャンパーを羽織り、スピーカーのヘッドセットをつけるとめぐを振り返った。
「めぐ、危ないから長谷部さんのそばにいろ」
「でも……。氷室くん一人で大丈夫なの?」
「当たり前だ。いい子で待ってろ」
めぐの頭をクシャッとなでてから、弦は人の間をすり抜けてキャナルガーデンの中央に向かう。
「お客様にご案内します。これよりキャナルガーデン周辺は一方通行とさせていただきます。時計回りにご移動をお願いいたします」
ひときわ背の高い弦が大きく手で誘導しながらマイクで呼びかけると、ゲストは弦に注目した。
「押し合うと危険ですので、ゆっくりとお進みください。また、後方のホテルロビーを開放しております。身動きが取れない方は、後ろの方から順にホテルへとお進みください」
少しずつ人の流れが動き出し、ホテルのロビーに入って来た人達はホッと息をつく。
「あー、すごかった。もみくちゃだったよね」
「うん。両方からグイグイ押されて、なんか怖かった」
「良かったね、あのスタッフの人が仕切り出してくれて」
そんな話を聞いていると、めぐのスマートフォンに弦から電話がかかってきた。
「もしもし、氷室くん?」
めぐは遠くに見える弦の姿を見つめながら電話に出た。
「めぐ、ショーの開始時間を遅らせた方がいいかもしれない。連絡してくれるか?」
「分かった。すぐかけるね」
めぐは一旦電話を切ると、ショーを取り仕切る企画課に電話をかける。
「もしもし、広報課の雪村です。今キャナルガーデンにいますが、ゲストが多すぎて危険な状況です。ショーの開始を遅らせることをご検討ください」
「えー、そんなこと気安く出来ないよ。それにあと5分で始まるよ?」
電話口の相手は、恐らく事務所にいて現場の状況を知らない。
めぐは意を決してスマートフォンを握りしめた。
「何かあってからでは遅いです。直ちに場内アナウンスを入れて、開始を5分遅らせてください。広報課の雪村の判断だと言ってくださって結構ですから。お願いします!」
「うーん、分かったよ。部長に言ってみる」
「はい、お願いします」
電話を切ると、祈るように手を組んだ。
弦は必死に声を張り、ゲストの流れをスムーズに取り仕切っている。
だがここでショーが始まれば、皆は一斉にショーに見とれてまた押し合いが始まるかもしれない。
落ち着いて整列した状態でなければ、ショーの開催は危険だ。
「お願い、遅らせて……」
めぐは祈るように時計を見つめる。
開始時間まで1分を切った。
(どうしよう、このままじゃ……)
その時、ふいに園内のスピーカーからアナウンスの声が聞こえてきた。
「お客様にご案内申し上げます。本日20時より開催予定のクリスマスナイトショーは、会場内混雑の為、開始を5分遅らせていただきます。お客様の安全の為、どうぞご理解ください。スタッフの誘導に従って、ゆっくりとお進みください。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます」
めぐは顔を上げて弦を見る。
(氷室くん!やった!)
弦もめぐに視線を向けると、親指を立てて頷いた。
応援のスタッフも駆けつけ、ゲストは綺麗に列を作って立ち止まる。
雰囲気も落ち着いた頃、5分遅れでショーが始まった。
ゲストはその場に佇んだまま、ショーに見とれる。
その間も危険な動きがないか、弦もめぐもあちこちに目を向けていた。
やがて10分間のショーが無事に終わり、人の流れが動き出す。
弦は再びマイクで呼びかけ、時計回りでゲストを誘導していった。
「氷室くん!」
ショーが終わって30分ほど経った頃ようやくゲストがまばらになり、弦がホテルのロビーに入って来た。
「大丈夫だった?」
めぐが駆け寄って声をかける。
「ああ、もちろん。めぐは?」
「平気。長谷部さんが落ち着いて誘導してくれたから、ゲストも無事だったよ」
「良かった。めぐ、ショーを遅らせてくれてありがとう。大英断だったな」
「ううん、氷室くんがそう言ってくれたから……」
するとふいにめぐの目に涙が込み上げてきた。
「めぐ?どうした?」
心配そうに弦が顔を覗き込む。
「ごめん。なんだかホッとして……」
「そっか」
弦は明るく笑うと、めぐの頭にポンと手をやった。
◇
「氷室さん、雪村さん」
やがてホテルのロビーも落ち着きを取り戻し、長谷部が近づいてきた。
「長谷部さん、色々ありがとうございました。これ、お返しします」
弦がスピーカーとジャンパーを手渡す。
「こちらこそ、ありがとうございました。あっと言う間に混雑が増してきて収集がつかなくなり、肝を冷やしました。氷室さんがいてくださって、本当に助かりました」
「いえ。長谷部さんがロビーをすぐに開放してくださったおかげです。とにかく何事もなくて良かった。明日からはきちんと事前対策を取ります」
「そうですね、ホテルでもスタッフを割り当てて通路や逃がしスペースを確保します。早速これから導線を考えますね」
すると弦は少し考える素振りのあと、長谷部に尋ねた。
「長谷部さん、このあとお時間ありますか?実は私、今夜のショーをホテルから撮影しようとひと部屋予約していたんです。客室で明日のショーの対策についてお話し出来ればと」
「そうなのですね!かしこまりました。すぐにチェックインの手続きをします。夕食もお部屋にご用意しますので」
そう言うと長谷部はすぐさまフロントへと踵を返す。
「めぐも残ってくれるか?出来れば今日中に対策を決めて、明日の朝には企画課に話をしに行きたい」
弦に聞かれてめぐは頷く。
「うん、大丈夫。でも結局、今日は撮影出来なかったね」
「そうだな。明日、ホテルの通路から撮影させてもらえるか、長谷部さんに聞いてみよう」
「そうね」
しばらくすると、ルームキーを手に長谷部が戻って来た。
「お待たせいたしました。本日より2泊でご用意しております」
え?と弦は首を傾げる。
「1泊しか予約していませんけど」
「氷室さん、今夜はゲストの誘導でショーの撮影が出来なかったですよね?私の権限でもう1泊ご用意しました。明日、お部屋から撮影してください」
「でも、クリスマスで満室では?」
「実はクリスマスはトラブルが予測される為、予備の部屋を確保していたんです。氷室さんのおかげで、ホテルのゲストも怪我やトラブルなく無事でした。お礼も兼ねてどうぞお使いください」
「えっ、本当にいいんですか?」
「もちろんです。ではお部屋にご案内しますね」
スタスタと歩き始めた長谷部に、弦とめぐも顔を見合わせてからついて行った。
「こちらです、どうぞ」
「ありがとうございます」
ドアを開けてくれる長谷部にお礼を言って、めぐと弦は部屋に足を踏み入れる。
ちょうど正面にキャナルガーデンが見えるツインルームだった。
「今、コーヒーを淹れますね。ソファへどうぞ」
「いえ、私がやります。長谷部さんこそ座っててください」
「雪村さんはゲストですから」
結局互いに譲らず、一緒にドリップコーヒーを淹れる。
「長谷部さん、すごく丁寧に淹れるんですね。私、せっかちだからお湯をギリギリまでどんどん注いじゃいます」
「ホテルでは研修通りに淹れますから。時間をかけてじっくり淹れると美味しくなりますよ。なんて言って、私もうちではインスタンスの粉にお湯を一気に注いで飲んでますけどね」
「へえ。長谷部さんはプライベートでもきちんと振る舞ってそうに見えます」
「とんでもない。うちではかなりダラダラしてますよ」
「そうなんですね、ふふっ。想像出来ないですけど」
そんなことを話しながらコーヒーを3人分淹れて、ソファに座る。
「早速ですが、ホテルのロビーの見取り図がこちらです。エントランスを出て、この辺りがキャナルガーデンですね」
長谷部がローテーブルに広げた図を、めぐと弦も覗き込む。
「宿泊ゲストのフロントへの導線を確保しつつ、ショーの時間に合わせてこのエリアを開放しましょう」
そう言って長谷部が赤ペンで図に書き込んだ。
「ありがとうございます。この逃がしスペースも一方通行に出来ますか?」
弦が尋ねると長谷部は頷いてまたペンを走らせる。
「はい。このドアを入り口専用、こちらを出口専用にします。スタッフを配置して誘導させますね」
「助かります。そうするとキャナルガーデン周辺は今日と同じく時計回りにして、ゲストは横一列に並んで鑑賞してもらいましょう。これを何列か作って、一番後ろのスペースは立ち止まらず移動する為の場所に」
「そうですね。そこも時計回りの一方通行で」
長谷部が赤ペンで矢印を書き込んでいくのを見て、めぐが口を開いた。
「でも今夜の混雑状況から言って、開始時間前にはこのエリアは埋まってしまいますよね?」
「そうなると思います。安全の為にも、入場はストップすることになるかと」
「そのあとゲストにはなんてご案内すれば?キャナルガーデンに入れなければ、ショーは花火しか見えなくなりますよね?」
「うーん、それは致し方ないかと」
長谷部の言葉に「そうなんですけど……」と言って、めぐは考え込む。
「氷室くん。明日企画課にこの対策を伝えに行く時に提案してもいい?ショーを20時と21時の2回公演に増やしてくれないかって」
えっ!と、弦と長谷部が驚く。
「めぐ、本気で言ってる?」
「もちろん。だってゲストはこのショーを楽しみに来てくれるのよ?それを『満員だから観られません』なんて門前払いしたくない。考えてみて。環奈ちゃんみたいに初めてのデートでわくわくしながら来てくれるカップルもいる。二人の大切なクリスマスを台無しにしたくないの。お願い!氷室くんは何も言わなくていい。私が企画課に頼むから」
シンと沈黙が広がる。
めぐが真剣に弦を見つめていると、やがて弦はふっと頬を緩めた。
「分かった。俺も一緒に頼み込む」
「ほんと!?」
「ああ。ゲストのクリスマスの思い出がかかってるもんな。やれることは全部やろう」
「うん!」
嬉しそうな笑顔を浮かべるめぐに、弦も大きく頷いてみせた。
「私も陰ながら応援しています」
長谷部はそう言うと、腕時計に目を落とす。
「もう10時なんですね。すっかり遅くなってしまいました。すぐに夕食をご用意しますね」
内線電話をかけてムールサービスを手配すると、長谷部は二人を振り返る。
「それでは私は業務に戻ります。明日のショーも無事に終えられるよう、お二人にはお力を貸していただきたい。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。長谷部さん、色々ありがとうございました」
弦の横でめぐも頭を下げた。
「それでは氷室さん、雪村さん、また明日。おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
長谷部が出て行ってしばらくすると、フルコースのフランス料理が運ばれて来た。
「わあ、すごく豪華だね。ワインにケーキも!これって長谷部さんの計らいなのかな?」
「ああ、そうだろうな」
「いいのかな?いただいちゃって」
「食べない訳にもいかないだろ?それにもしかすると、ちゃっかりチェックアウトの時に請求されたりして」
えっ?とめぐが声を上げると、弦は楽しそうに笑う。
「ま、それならそれでいいから。とにかく食べよう」
「うん、いただきます」
二人で美味しく料理を味わうと、時刻は23時を回った。
「めぐ。この部屋今夜はめぐが使って。俺は帰るから」
弦はそう言いながら荷物をまとめる。
「そんな!氷室くんが予約したんだから、氷室くんが泊まって」
「いや、長谷部さんのおかげで明日も泊まれることになったから、俺は明日でいいよ。それにもう夜遅い。めぐはこのままここに泊まれ」
「でも……」
めぐはうつむいて躊躇する。
すると弦は手を止めて、めぐと正面から向き合った。
「めぐ」
「え、なに?」
「今の俺とめぐは友達同盟で、何でも素直な気持ちを伝える約束だったよな?」
「うん」
「だから伝える。めぐ、俺はやっぱりめぐが好きだ」
めぐは思わず息を呑む。
弦の真っ直ぐな視線に吸い寄せられるように目をそらせなかった。
「どうやっても諦められない。どんなに気持ちを抑え込もうとしても、めぐが好きでたまらない。だから必ずめぐを振り向かせてみせる。本気でめぐの心を奪いに行く」
そして弦は、ふっと不敵な笑みを浮かべてめぐの頭をクシャッとなでた。
「覚悟しとけよ?」
耳元でそうささやくとスッとめぐのそばを通り過ぎ、弦はそのまま部屋を出て行った。
◇
「氷室さん?」
ロビーに下りてエントランスに向かう弦を、いつぞやのように長谷部が呼び止めた。
「お帰りですか?」
「ええ。今夜は雪村だけ泊まります。よろしくお願いします」
お辞儀をすると、長谷部のため息が聞こえてきて弦は顔を上げる。
「クリスマスイブですよ?そんな夜に彼女を一人にするなんて……。いくら何でも酷すぎます。いいんですか?彼女が他の男に取られても」
いつもの温和な長谷部とは違う。
一人の男としての顔を見せる長谷部に、弦は真剣に口を開いた。
「私の気持ちは彼女に伝えています」
「……それなのにクリスマスイブを一人で過ごさせるんですか?彼女がどんなに寂しい思いをするか、考えたら分かるでしょう?私は耐えられません。あなたがこのまま帰ると言うのなら、私が彼女に想いを伝えてそばにいます」
弦はハッと目を見開く。
長谷部は一歩弦に詰め寄ると、低い声で尋ねた。
「いいんですね、私が彼女を奪っても」
グッと拳を握りしめてから、弦は冷静に答えた。
「たとえあなたがめぐを奪っても、私は必ず奪い返します。めぐだけは、誰にも譲らない。絶対に」
きっぱり言い切ると長谷部に背を向け、弦は足早にホテルをあとにした。
ショーの開始時間まで、めぐと弦は残業しながら待つ。
定時を30分過ぎたところで環奈が立ち上がった。
「それでは、お先に失礼します」
「あれ?環奈ちゃん、ナイトショー観ていかないの?」
「行きますよー。実は待ち合わせしてるんです。ふふっ」
ふふっ?とめぐは首を傾げる。
「もしかして!環奈ちゃん、彼氏出来たの?」
「よくぞ聞いてくれましたー!そうなんです。この間の合コンで」
「そうなのね、おめでとう!じゃあこれで晴れてジングルベルだね。素敵なクリスマスイブを」
「ありがとうございます!」
ウキウキと事務所を出て行く環奈を、良かったなーとめぐは見送る。
すると隣のデスクで弦も「幸せそうだな、環奈」と呟いた。
「うん、本当に。環奈ちゃんは可愛くて明るくて優しい、いい子だもん。絶対にいつか素敵な彼氏が現れるって思ってた。どんな人なんだろうなー、お相手は。あ!ねえ、ショーを観に行くって言ってたよね?バッタリお会いしちゃうかも?」
「おいおい、邪魔するなよ?」
「もちろんしないよー。物陰からこっそり覗くだけよ」
「それも怖いわ」
やれやれと腕を組み、弦は時計を確認する。
「少し早めに行こうか。ホテルのチェックインもしなきゃいけないから」
「そうだね。あ!私ね、グッズ販売のワゴン見たいんだ」
「そっか。なら、そろそろ出よう」
「うん」
帰り支度をすると、二人でパークに向かった。
「わあ、すごいね。平日なのにこの混雑具合」
「ああ。夜の方が昼間より混んでるな。仕事帰りのカップルも多そうだ」
いつもなら5分ほどで到着するキャナルガーデンだが、今夜はなかなかたどり着けない。
ギュウギュウと人波にもまれながら進む。
「氷室くん、背が高いから頭ひとつ出てて涼しげだね。……わっ!」
隣の男性に寄りかかられて、めぐはバランスを崩す。
弦が腕を伸ばし、めぐを自分の胸の前に抱き寄せた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
「危ないから離れるな」
弦はめぐを腕の中にかばいながら、少しずつ前へと進む。
だがキャナルガーデンが見えてくると、あまりの人の多さに驚いた。
「これ、かなり危険だな。もっと大勢のスタッフが仕切らないとドミノ倒しになる。事務所に連絡してくるから、めぐはホテルで待ってろ」
そう言ってめぐの肩を抱いたままホテルに向かおうとした弦は、更に驚いて目を見開く。
「ホテルにも人が殺到してる」
「本当だ。あ、長谷部さんが誘導してる」
「ああ、だけど追いついてないな。めぐ、俺から離れるなよ」
「うん」
弦はしっかりとめぐの肩を抱くと、人の間を縫うようにして長谷部に近づいた。
「長谷部さん!」
「氷室さん!雪村さんも」
「長谷部さん、スピーカーとスタッフジャンパーを貸してください。今、事務所に連絡して応援を要請します」
「分かりました」
弦と長谷部はそれぞれスマートフォンを取り出して電話をかける。
しばらくすると、スタッフジャンパーとワイヤレススピーカーを手にしたホテルスタッフが、必死の形相で近づいてきた。
受け取った長谷部が、弦に手渡す。
「氷室さん!これを」
「ありがとうございます。長谷部さん、ホテルのロビーを半分開放してください。逃がしスペースにします」
「分かりました」
弦はスタッフジャンパーを羽織り、スピーカーのヘッドセットをつけるとめぐを振り返った。
「めぐ、危ないから長谷部さんのそばにいろ」
「でも……。氷室くん一人で大丈夫なの?」
「当たり前だ。いい子で待ってろ」
めぐの頭をクシャッとなでてから、弦は人の間をすり抜けてキャナルガーデンの中央に向かう。
「お客様にご案内します。これよりキャナルガーデン周辺は一方通行とさせていただきます。時計回りにご移動をお願いいたします」
ひときわ背の高い弦が大きく手で誘導しながらマイクで呼びかけると、ゲストは弦に注目した。
「押し合うと危険ですので、ゆっくりとお進みください。また、後方のホテルロビーを開放しております。身動きが取れない方は、後ろの方から順にホテルへとお進みください」
少しずつ人の流れが動き出し、ホテルのロビーに入って来た人達はホッと息をつく。
「あー、すごかった。もみくちゃだったよね」
「うん。両方からグイグイ押されて、なんか怖かった」
「良かったね、あのスタッフの人が仕切り出してくれて」
そんな話を聞いていると、めぐのスマートフォンに弦から電話がかかってきた。
「もしもし、氷室くん?」
めぐは遠くに見える弦の姿を見つめながら電話に出た。
「めぐ、ショーの開始時間を遅らせた方がいいかもしれない。連絡してくれるか?」
「分かった。すぐかけるね」
めぐは一旦電話を切ると、ショーを取り仕切る企画課に電話をかける。
「もしもし、広報課の雪村です。今キャナルガーデンにいますが、ゲストが多すぎて危険な状況です。ショーの開始を遅らせることをご検討ください」
「えー、そんなこと気安く出来ないよ。それにあと5分で始まるよ?」
電話口の相手は、恐らく事務所にいて現場の状況を知らない。
めぐは意を決してスマートフォンを握りしめた。
「何かあってからでは遅いです。直ちに場内アナウンスを入れて、開始を5分遅らせてください。広報課の雪村の判断だと言ってくださって結構ですから。お願いします!」
「うーん、分かったよ。部長に言ってみる」
「はい、お願いします」
電話を切ると、祈るように手を組んだ。
弦は必死に声を張り、ゲストの流れをスムーズに取り仕切っている。
だがここでショーが始まれば、皆は一斉にショーに見とれてまた押し合いが始まるかもしれない。
落ち着いて整列した状態でなければ、ショーの開催は危険だ。
「お願い、遅らせて……」
めぐは祈るように時計を見つめる。
開始時間まで1分を切った。
(どうしよう、このままじゃ……)
その時、ふいに園内のスピーカーからアナウンスの声が聞こえてきた。
「お客様にご案内申し上げます。本日20時より開催予定のクリスマスナイトショーは、会場内混雑の為、開始を5分遅らせていただきます。お客様の安全の為、どうぞご理解ください。スタッフの誘導に従って、ゆっくりとお進みください。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます」
めぐは顔を上げて弦を見る。
(氷室くん!やった!)
弦もめぐに視線を向けると、親指を立てて頷いた。
応援のスタッフも駆けつけ、ゲストは綺麗に列を作って立ち止まる。
雰囲気も落ち着いた頃、5分遅れでショーが始まった。
ゲストはその場に佇んだまま、ショーに見とれる。
その間も危険な動きがないか、弦もめぐもあちこちに目を向けていた。
やがて10分間のショーが無事に終わり、人の流れが動き出す。
弦は再びマイクで呼びかけ、時計回りでゲストを誘導していった。
「氷室くん!」
ショーが終わって30分ほど経った頃ようやくゲストがまばらになり、弦がホテルのロビーに入って来た。
「大丈夫だった?」
めぐが駆け寄って声をかける。
「ああ、もちろん。めぐは?」
「平気。長谷部さんが落ち着いて誘導してくれたから、ゲストも無事だったよ」
「良かった。めぐ、ショーを遅らせてくれてありがとう。大英断だったな」
「ううん、氷室くんがそう言ってくれたから……」
するとふいにめぐの目に涙が込み上げてきた。
「めぐ?どうした?」
心配そうに弦が顔を覗き込む。
「ごめん。なんだかホッとして……」
「そっか」
弦は明るく笑うと、めぐの頭にポンと手をやった。
◇
「氷室さん、雪村さん」
やがてホテルのロビーも落ち着きを取り戻し、長谷部が近づいてきた。
「長谷部さん、色々ありがとうございました。これ、お返しします」
弦がスピーカーとジャンパーを手渡す。
「こちらこそ、ありがとうございました。あっと言う間に混雑が増してきて収集がつかなくなり、肝を冷やしました。氷室さんがいてくださって、本当に助かりました」
「いえ。長谷部さんがロビーをすぐに開放してくださったおかげです。とにかく何事もなくて良かった。明日からはきちんと事前対策を取ります」
「そうですね、ホテルでもスタッフを割り当てて通路や逃がしスペースを確保します。早速これから導線を考えますね」
すると弦は少し考える素振りのあと、長谷部に尋ねた。
「長谷部さん、このあとお時間ありますか?実は私、今夜のショーをホテルから撮影しようとひと部屋予約していたんです。客室で明日のショーの対策についてお話し出来ればと」
「そうなのですね!かしこまりました。すぐにチェックインの手続きをします。夕食もお部屋にご用意しますので」
そう言うと長谷部はすぐさまフロントへと踵を返す。
「めぐも残ってくれるか?出来れば今日中に対策を決めて、明日の朝には企画課に話をしに行きたい」
弦に聞かれてめぐは頷く。
「うん、大丈夫。でも結局、今日は撮影出来なかったね」
「そうだな。明日、ホテルの通路から撮影させてもらえるか、長谷部さんに聞いてみよう」
「そうね」
しばらくすると、ルームキーを手に長谷部が戻って来た。
「お待たせいたしました。本日より2泊でご用意しております」
え?と弦は首を傾げる。
「1泊しか予約していませんけど」
「氷室さん、今夜はゲストの誘導でショーの撮影が出来なかったですよね?私の権限でもう1泊ご用意しました。明日、お部屋から撮影してください」
「でも、クリスマスで満室では?」
「実はクリスマスはトラブルが予測される為、予備の部屋を確保していたんです。氷室さんのおかげで、ホテルのゲストも怪我やトラブルなく無事でした。お礼も兼ねてどうぞお使いください」
「えっ、本当にいいんですか?」
「もちろんです。ではお部屋にご案内しますね」
スタスタと歩き始めた長谷部に、弦とめぐも顔を見合わせてからついて行った。
「こちらです、どうぞ」
「ありがとうございます」
ドアを開けてくれる長谷部にお礼を言って、めぐと弦は部屋に足を踏み入れる。
ちょうど正面にキャナルガーデンが見えるツインルームだった。
「今、コーヒーを淹れますね。ソファへどうぞ」
「いえ、私がやります。長谷部さんこそ座っててください」
「雪村さんはゲストですから」
結局互いに譲らず、一緒にドリップコーヒーを淹れる。
「長谷部さん、すごく丁寧に淹れるんですね。私、せっかちだからお湯をギリギリまでどんどん注いじゃいます」
「ホテルでは研修通りに淹れますから。時間をかけてじっくり淹れると美味しくなりますよ。なんて言って、私もうちではインスタンスの粉にお湯を一気に注いで飲んでますけどね」
「へえ。長谷部さんはプライベートでもきちんと振る舞ってそうに見えます」
「とんでもない。うちではかなりダラダラしてますよ」
「そうなんですね、ふふっ。想像出来ないですけど」
そんなことを話しながらコーヒーを3人分淹れて、ソファに座る。
「早速ですが、ホテルのロビーの見取り図がこちらです。エントランスを出て、この辺りがキャナルガーデンですね」
長谷部がローテーブルに広げた図を、めぐと弦も覗き込む。
「宿泊ゲストのフロントへの導線を確保しつつ、ショーの時間に合わせてこのエリアを開放しましょう」
そう言って長谷部が赤ペンで図に書き込んだ。
「ありがとうございます。この逃がしスペースも一方通行に出来ますか?」
弦が尋ねると長谷部は頷いてまたペンを走らせる。
「はい。このドアを入り口専用、こちらを出口専用にします。スタッフを配置して誘導させますね」
「助かります。そうするとキャナルガーデン周辺は今日と同じく時計回りにして、ゲストは横一列に並んで鑑賞してもらいましょう。これを何列か作って、一番後ろのスペースは立ち止まらず移動する為の場所に」
「そうですね。そこも時計回りの一方通行で」
長谷部が赤ペンで矢印を書き込んでいくのを見て、めぐが口を開いた。
「でも今夜の混雑状況から言って、開始時間前にはこのエリアは埋まってしまいますよね?」
「そうなると思います。安全の為にも、入場はストップすることになるかと」
「そのあとゲストにはなんてご案内すれば?キャナルガーデンに入れなければ、ショーは花火しか見えなくなりますよね?」
「うーん、それは致し方ないかと」
長谷部の言葉に「そうなんですけど……」と言って、めぐは考え込む。
「氷室くん。明日企画課にこの対策を伝えに行く時に提案してもいい?ショーを20時と21時の2回公演に増やしてくれないかって」
えっ!と、弦と長谷部が驚く。
「めぐ、本気で言ってる?」
「もちろん。だってゲストはこのショーを楽しみに来てくれるのよ?それを『満員だから観られません』なんて門前払いしたくない。考えてみて。環奈ちゃんみたいに初めてのデートでわくわくしながら来てくれるカップルもいる。二人の大切なクリスマスを台無しにしたくないの。お願い!氷室くんは何も言わなくていい。私が企画課に頼むから」
シンと沈黙が広がる。
めぐが真剣に弦を見つめていると、やがて弦はふっと頬を緩めた。
「分かった。俺も一緒に頼み込む」
「ほんと!?」
「ああ。ゲストのクリスマスの思い出がかかってるもんな。やれることは全部やろう」
「うん!」
嬉しそうな笑顔を浮かべるめぐに、弦も大きく頷いてみせた。
「私も陰ながら応援しています」
長谷部はそう言うと、腕時計に目を落とす。
「もう10時なんですね。すっかり遅くなってしまいました。すぐに夕食をご用意しますね」
内線電話をかけてムールサービスを手配すると、長谷部は二人を振り返る。
「それでは私は業務に戻ります。明日のショーも無事に終えられるよう、お二人にはお力を貸していただきたい。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。長谷部さん、色々ありがとうございました」
弦の横でめぐも頭を下げた。
「それでは氷室さん、雪村さん、また明日。おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
長谷部が出て行ってしばらくすると、フルコースのフランス料理が運ばれて来た。
「わあ、すごく豪華だね。ワインにケーキも!これって長谷部さんの計らいなのかな?」
「ああ、そうだろうな」
「いいのかな?いただいちゃって」
「食べない訳にもいかないだろ?それにもしかすると、ちゃっかりチェックアウトの時に請求されたりして」
えっ?とめぐが声を上げると、弦は楽しそうに笑う。
「ま、それならそれでいいから。とにかく食べよう」
「うん、いただきます」
二人で美味しく料理を味わうと、時刻は23時を回った。
「めぐ。この部屋今夜はめぐが使って。俺は帰るから」
弦はそう言いながら荷物をまとめる。
「そんな!氷室くんが予約したんだから、氷室くんが泊まって」
「いや、長谷部さんのおかげで明日も泊まれることになったから、俺は明日でいいよ。それにもう夜遅い。めぐはこのままここに泊まれ」
「でも……」
めぐはうつむいて躊躇する。
すると弦は手を止めて、めぐと正面から向き合った。
「めぐ」
「え、なに?」
「今の俺とめぐは友達同盟で、何でも素直な気持ちを伝える約束だったよな?」
「うん」
「だから伝える。めぐ、俺はやっぱりめぐが好きだ」
めぐは思わず息を呑む。
弦の真っ直ぐな視線に吸い寄せられるように目をそらせなかった。
「どうやっても諦められない。どんなに気持ちを抑え込もうとしても、めぐが好きでたまらない。だから必ずめぐを振り向かせてみせる。本気でめぐの心を奪いに行く」
そして弦は、ふっと不敵な笑みを浮かべてめぐの頭をクシャッとなでた。
「覚悟しとけよ?」
耳元でそうささやくとスッとめぐのそばを通り過ぎ、弦はそのまま部屋を出て行った。
◇
「氷室さん?」
ロビーに下りてエントランスに向かう弦を、いつぞやのように長谷部が呼び止めた。
「お帰りですか?」
「ええ。今夜は雪村だけ泊まります。よろしくお願いします」
お辞儀をすると、長谷部のため息が聞こえてきて弦は顔を上げる。
「クリスマスイブですよ?そんな夜に彼女を一人にするなんて……。いくら何でも酷すぎます。いいんですか?彼女が他の男に取られても」
いつもの温和な長谷部とは違う。
一人の男としての顔を見せる長谷部に、弦は真剣に口を開いた。
「私の気持ちは彼女に伝えています」
「……それなのにクリスマスイブを一人で過ごさせるんですか?彼女がどんなに寂しい思いをするか、考えたら分かるでしょう?私は耐えられません。あなたがこのまま帰ると言うのなら、私が彼女に想いを伝えてそばにいます」
弦はハッと目を見開く。
長谷部は一歩弦に詰め寄ると、低い声で尋ねた。
「いいんですね、私が彼女を奪っても」
グッと拳を握りしめてから、弦は冷静に答えた。
「たとえあなたがめぐを奪っても、私は必ず奪い返します。めぐだけは、誰にも譲らない。絶対に」
きっぱり言い切ると長谷部に背を向け、弦は足早にホテルをあとにした。
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