夕陽を映すあなたの瞳

葉月 まい

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懐かしい仲間

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 (はあ、今日も疲れたー)

 仕事帰りの満員電車で揉みくちゃにされながら、こころは吊革に掴まって、ふうと小さく息を吐く。

 スプリングコートのポケットからスマートフォンを取り出して見ると、思いがけない友人からメッセージが届いていた。

 (愛理あいりだ!懐かしいー)

 高校時代の同級生、愛理からのメッセージを早速開いてみる。

 "こっころー、久しぶり!元気にしてる?高3の時のクラスのみんなと、同窓会しようって盛り上がっててさ。グループ作ったから、心も招待するね"

 へえ同窓会か、と思いながら、メッセージのグループに参加する。

 (わっ、もう33人もいる?)
 メンバーの人数に驚きつつ、心は"こんばんは"のスタンプを押す。
 すると次々とメッセージが届いた。

 "あ、こころ来たー!"
 "ほんとだ!久しぶり、こっころーん"
 "懐かしい!コロコロこころんー"

 (やだ、みんな)

 心は思わず頬を緩めて文字を打つ。

 "お久しぶり!みんな、元気だった?"

 元気元気ー!と、数人から矢継ぎ早に返事が来る。

 仕事の疲れも忘れ、心は嬉しくなった。

 "よーし、これで大体揃ったよな?"

 そう送ってきたのは、クラスのムードメーカーだった慎也しんやだ。
 どうやら、同窓会をしようと話を持ち出したのも彼らしい。

 "えー、久しぶりにみんなで集まらないか?ゴールデンウィーク明けとか、どう?"

 いいね!と、一気にたくさんのスタンプが付く。

 "じゃあ、まずは幹事決めるか!"
 "え、慎也がやるんじゃないの?"

 皆も、ウンウンとスタンプを押す。

 "俺がやってもいいんだけどさ。それだと俺の意見ばっかりになっちまうから。誰か二人くらい幹事になってもらって、俺は手伝う感じにするよ"
 "ははっ、なんか韻踏んでるな。手伝う幹事?"

 大笑いするスタンプが、いくつか続く。

 "そっ!俺は手伝う幹事で(笑)"
 "オッケー!じゃあ、どうやって幹事決める?誰かやりたいやついる?"

 うーん…、と悩むスタンプ。

 "じゃあさ、当時の出席番号で決める?"
 "お、いいね。そうしよう"
 "何番にするー?"
 "そしたら、今日の日付けとかどう?"
 "うんうん。いいんじゃない?"
 "今日は4月15日だから…。4番と15番ね"
 "了解ー!って、4番と15番って誰?"

 それな!とスタンプが付く。

 (あはは!ほんと、誰なんだろう?誰も覚えてないよね)

 "おーい!誰か卒業アルバム持ってないかー?"
 "実家にあるけど、今ひとり暮らしだから、すぐには分かんなーい"
 "あ、私、実家暮らしだから、これから見てみるね!"

 よろしく!お願い!と、いくつかのスタンプが並んだ時、自宅の最寄り駅に電車が到着し、心はスマートフォンを閉じた。

*****

 「ただいまー」

 誰もいない部屋に小さく呟き、心は靴を脱いでワンルームマンションの部屋に上がる。

 (お腹空いたなー、何食べよう)

 うがいと手洗いを済ませて、冷蔵庫を覗き込む。

 作り置きしておいた、かぼちゃと鶏そぼろの煮物、春キャベツとしらすと厚揚げのピリ辛炒めを取り出して温めると、タイマーで炊いてあったご飯をよそった。

 ローテーブルに並べて、なんとなくテレビを眺めながら食べる。

 食後のお茶を淹れてから、何気なくスマートフォンを手にした心は、そういえば…と思い出してメッセージを確認する。

 (出席番号、分かったのかなー?お、麻美あさみちゃん、名簿を写真に撮って載せてくれてる!えーっと、確か今日の日付けだっけ。4番は…)

 心は、写真を大きく伸ばして目を凝らす。  
 名簿の上から4番目に、伊吹いぶきすばるとあった。

 (伊吹くんか。懐かしいなー)

 顔を上げて遠くに目をやりながら思い出す。
 心の記憶の中では、伊吹 昴は、成績が良く物静かな優等生だった。

 (大学も、確か京都だっけ?凄い所に行ったんだったよね。今頃どうしてるんだろうな)

 そして再び画面に目をやる。

 (えーっと、もう一人は15番。15…って、え?)

 思わず手が止まり、何度もまばたきを繰り返す。

 15の数字の横に書かれていた名前は…
 【久住くずみ 心】

 「え、わ、私ー?!」

 思わず仰け反って驚く。

 「ちょ、ちょっと待って。わ、私が幹事?伊吹くんと?」

 今までのほほんと構えていたのが、一気に落ち着かなくなる。

 呆然としていると、次々とメッセージの着信があった。

 慌てて未読のメッセージに目を通す。

 "という訳で、幹事は昴と心でーす!"

 わーい!や、よろしくー!のスタンプがいくつか並んでいた。

 "おーい、二人とも大丈夫ー?"
 "無理だったら言えよー"
 "そうだぞ。その時は手伝う幹事がいるからなー"

 あはは!と、何人かが笑いのスタンプを押している。

 "あれ?二人とも、まだ見てないのか"
 "読んだら返事してねー!"

 心は、急いでメッセージを打つ。

 "今、読みました!私で大丈夫かなー?"

 するとすぐに返信が続く。

 "お!心が気付いた"
 "もちろん!心と昴なら、めちゃくちゃ頼もしい!"
 "心、お願いしてもいい?"
 "仕事が忙しくて無理なら言ってね!"

 少し考えてから、心はまたメッセージを打つ。

 "大丈夫、やってみるね!でもあんまり自信ないから、色々相談させてもらってもいいかな?"

 もちろん!や、グーッ!の皆のスタンプのあと、慎也からの返信があった。

 "俺も手伝うから、何でも言ってくれ。昴も大丈夫かー?って、返事ないな。またあいつ、飛行機の中かも"

 飛行機…?と、心が首をかしげていると、
 "相変わらず、世界中飛び回ってるのか"
 "さすがはグローバルな商社マン!"
 "去年会った時、一年の半分は海外に行ってる、とか言ってたなー"
 と、数人の男子が書き込む。

 (ひえー、そんなに?!じゃあ、幹事なんてやる暇ないんじゃ…)

 "ま、昴が無理なら俺がやるからさ。とりあえず心、あいつに聞いておいてくれる?まだこのグループの招待に気付いてないみたいだけど、あいつもメンバーには入ってるから"

 慎也のメッセージに、うん!わかったと返事をして、今夜のところはやり取りを終えた。
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