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未来の妃への指輪
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「ルナ! カイルと走る?」
王宮の厩舎に向かったフィオナとルシアスは、ルナとカイルを馬場に連れて行く。
二頭は並んで楽しそうにのびのびと走り出した。
「ふふっ、相変わらず仲良しですね」
「ああ、そうだな。もう少しルナが大きくなったら一緒に遠出させられるが、今回はまだ早いか」
ルシアスは5日後に、フィオナを連れてジャイラを訪れることになっている。
あのあとジャイラでは、ルシアスの呪いがとけると同時に、悪魔とその手先となった預言者は国王に成敗されたらしい。
更には、かねてより国王の暴君ぶりに怒りを抱えていた市民達がクーデターを起こし、新たにそのリーダーが総裁として政権を握ることになった。
王政は廃止され、新たにジャイラ共和国となると、総裁のサージャリーがアレクシア王国に遣いをよこした。
ルシアスが示した平和協定を全面的に受け入れ、改めて友好条約を結び直したい、とのことで、ルシアスはフィオナを連れて再度ジャイラを訪れることにした。
自分も一緒に?と戸惑うフィオナに、ルシアスは「婚約者なのだから当然だ」と言い切り、フィオナは顔を真っ赤にしてそれ以上はなにも言えずにいた。
ローラもついて来てくれることになり、フィオナの準備をあれこれと整えてくれる。
「フィオナ様、ドレスはどちらの色がお好みですか?」
「いえ、あの。しきたりとかもよく分からないから、全てローラにお願いしてもいいかしら?」
「もちろんですわ。お任せください!」
嬉しそうに笑って、ローラはドレスやアクセサリーを大量に用意していた。
◇
出発が3日後に迫ると、ルシアスは国民に「ジャイラ共和国を婚約者と共に訪れる」と発表した。
驚きと共に、国民は祝福ムード一色となる。
「なんとおめでたい!」
「王妃となられる方は、村の出身だそうだ」
「まあ、ルシアス様は村娘を王妃に? 身分の差もあるのに、なんとお優しいのかしら」
「ルシアス様は、おごり高ぶるようなところが一切ないお方だ。慈悲深く、我々国民の為に尽くしてくださる」
「この国はますます明るく豊かな国になるだろう」
「ああ、結婚の儀が待ち切れないわ」
二人の結婚の儀は前国王の崩御から1年経ったあとにと聞いて、その前にひと目だけでもルシアスとフィオナの姿を見たいと、国民はジャイラ共和国に出発する二人を、沿道に並んで見送ろうと盛り上がった。
「ユーリ、馬車も豪華に飾りつけましょうよ」
「そうだな。ルシアス様とフィオナ様の装いも、格式高く整えてくれ」
「もちろんよ」
ローラとユーリは、張り切って準備を進める。
出発の前夜、ルシアスは夕食後にフィオナをバルコニーに促した。
◇
「今夜も綺麗な月ですね」
「ああ、そうだな」
二人で肩を並べて、静かに夜空を見上げる。
その胸に、様々な想いが込み上げてきた。
今、二人で一緒にいられることの奇跡。
これからも共に生きていけることへの感謝。
家族に分け与えてもらった命の尊さ。
そして必ず互いを幸せにしてみせるという決意。
「フィオナ」
やがてルシアスは優しく、愛する人の名を呼んだ。
「はい」
フィオナも真っ直ぐにルシアスを見つめ返す。
「王家に代々受け継がれてきた『神の恵みの結晶』を、今そなたに贈る。フィオナ、左手を」
ルシアスはフィオナの左手をすくい上げると、細く長いその薬指にゆっくりと指輪をはめた。
「まあ、なんて美しいの……」
まばゆく輝く透明な輝きに、フィオナはうっとりと魅入る。
だが、王家の歴史と共にとてつもない重みが伝わってきて、フィオナは戸惑いながらルシアスを見上げた。
「ルシアス様。わたくしのような者が、こんなにも大切な指輪を受け取る訳には……」
「フィオナ、そなたは俺の目が節穴だと言いたいのか? 俺がそなたを選んだんだ。生涯でたった一人の、全てを捧げる相手に」
「ルシアス様……」
フィオナの瞳から涙がこぼれ落ちる。
ルシアスは優しくフィオナに微笑んで、そっとその涙を指先で拭った。
「王家の力を宿したこの指輪がそなたをいつも守るだろう。そして俺も、命をかけてそなたを守り抜くとこの指輪に誓う」
「ルシアス様……。わたくしは、あなたになにを差し上げればいいのでしょう? お渡しできる宝石も金貨も、なにも持ち合わせていないのです」
「なにも望まない。ただそなたがそばにいてくれるだけでいい。フィオナ、どんな時も俺と一緒に生きてくれるか?」
「はい。わたくしの命はあなたと共にあります。どうかおそばにいさせてください、ルシアス様」
「ありがとう、フィオナ」
ルシアスは大きな右手でフィオナの左頬を包むと、そっと上を向かせる。
潤んだ瞳で見つめられ、ルシアスの胸は切なく痛んだ。
「フィオナ、心から愛している」
「ルシアス様、わたくしもあなたを愛しています」
ルシアスの胸に幸せが広がる。
その想いを伝えるように、ルシアスはフィオナを抱き寄せて口づけた。
王宮の厩舎に向かったフィオナとルシアスは、ルナとカイルを馬場に連れて行く。
二頭は並んで楽しそうにのびのびと走り出した。
「ふふっ、相変わらず仲良しですね」
「ああ、そうだな。もう少しルナが大きくなったら一緒に遠出させられるが、今回はまだ早いか」
ルシアスは5日後に、フィオナを連れてジャイラを訪れることになっている。
あのあとジャイラでは、ルシアスの呪いがとけると同時に、悪魔とその手先となった預言者は国王に成敗されたらしい。
更には、かねてより国王の暴君ぶりに怒りを抱えていた市民達がクーデターを起こし、新たにそのリーダーが総裁として政権を握ることになった。
王政は廃止され、新たにジャイラ共和国となると、総裁のサージャリーがアレクシア王国に遣いをよこした。
ルシアスが示した平和協定を全面的に受け入れ、改めて友好条約を結び直したい、とのことで、ルシアスはフィオナを連れて再度ジャイラを訪れることにした。
自分も一緒に?と戸惑うフィオナに、ルシアスは「婚約者なのだから当然だ」と言い切り、フィオナは顔を真っ赤にしてそれ以上はなにも言えずにいた。
ローラもついて来てくれることになり、フィオナの準備をあれこれと整えてくれる。
「フィオナ様、ドレスはどちらの色がお好みですか?」
「いえ、あの。しきたりとかもよく分からないから、全てローラにお願いしてもいいかしら?」
「もちろんですわ。お任せください!」
嬉しそうに笑って、ローラはドレスやアクセサリーを大量に用意していた。
◇
出発が3日後に迫ると、ルシアスは国民に「ジャイラ共和国を婚約者と共に訪れる」と発表した。
驚きと共に、国民は祝福ムード一色となる。
「なんとおめでたい!」
「王妃となられる方は、村の出身だそうだ」
「まあ、ルシアス様は村娘を王妃に? 身分の差もあるのに、なんとお優しいのかしら」
「ルシアス様は、おごり高ぶるようなところが一切ないお方だ。慈悲深く、我々国民の為に尽くしてくださる」
「この国はますます明るく豊かな国になるだろう」
「ああ、結婚の儀が待ち切れないわ」
二人の結婚の儀は前国王の崩御から1年経ったあとにと聞いて、その前にひと目だけでもルシアスとフィオナの姿を見たいと、国民はジャイラ共和国に出発する二人を、沿道に並んで見送ろうと盛り上がった。
「ユーリ、馬車も豪華に飾りつけましょうよ」
「そうだな。ルシアス様とフィオナ様の装いも、格式高く整えてくれ」
「もちろんよ」
ローラとユーリは、張り切って準備を進める。
出発の前夜、ルシアスは夕食後にフィオナをバルコニーに促した。
◇
「今夜も綺麗な月ですね」
「ああ、そうだな」
二人で肩を並べて、静かに夜空を見上げる。
その胸に、様々な想いが込み上げてきた。
今、二人で一緒にいられることの奇跡。
これからも共に生きていけることへの感謝。
家族に分け与えてもらった命の尊さ。
そして必ず互いを幸せにしてみせるという決意。
「フィオナ」
やがてルシアスは優しく、愛する人の名を呼んだ。
「はい」
フィオナも真っ直ぐにルシアスを見つめ返す。
「王家に代々受け継がれてきた『神の恵みの結晶』を、今そなたに贈る。フィオナ、左手を」
ルシアスはフィオナの左手をすくい上げると、細く長いその薬指にゆっくりと指輪をはめた。
「まあ、なんて美しいの……」
まばゆく輝く透明な輝きに、フィオナはうっとりと魅入る。
だが、王家の歴史と共にとてつもない重みが伝わってきて、フィオナは戸惑いながらルシアスを見上げた。
「ルシアス様。わたくしのような者が、こんなにも大切な指輪を受け取る訳には……」
「フィオナ、そなたは俺の目が節穴だと言いたいのか? 俺がそなたを選んだんだ。生涯でたった一人の、全てを捧げる相手に」
「ルシアス様……」
フィオナの瞳から涙がこぼれ落ちる。
ルシアスは優しくフィオナに微笑んで、そっとその涙を指先で拭った。
「王家の力を宿したこの指輪がそなたをいつも守るだろう。そして俺も、命をかけてそなたを守り抜くとこの指輪に誓う」
「ルシアス様……。わたくしは、あなたになにを差し上げればいいのでしょう? お渡しできる宝石も金貨も、なにも持ち合わせていないのです」
「なにも望まない。ただそなたがそばにいてくれるだけでいい。フィオナ、どんな時も俺と一緒に生きてくれるか?」
「はい。わたくしの命はあなたと共にあります。どうかおそばにいさせてください、ルシアス様」
「ありがとう、フィオナ」
ルシアスは大きな右手でフィオナの左頬を包むと、そっと上を向かせる。
潤んだ瞳で見つめられ、ルシアスの胸は切なく痛んだ。
「フィオナ、心から愛している」
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ルシアスの胸に幸せが広がる。
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