Good day ! 3

葉月 まい

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新鮮な日々

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いよいよ退院の日を迎えた。

朝、恵真は最後に木村先生の診察を受ける。

「うん!お腹の傷もきれいね。子宮も問題なし。赤ちゃん達も小児科の先生に診てもらいました。二人とも健康そのものよ」
「ありがとうございます!」

恵真はホッとして、先生にお礼を言う。

「木村先生、今まで本当にお世話になりました」
「いいえ。佐倉さんこそ、妊娠中大変だったでしょう?よく頑張ったわね。双子ちゃん育児、頑張り過ぎないように頑張ってね。まあ、あのパパさんが一緒なら大丈夫そうね」

先生の言葉に、あはは…と恵真は苦笑いする。

面会時間になり、大和が赤ちゃんの着替えを持って病室に入って来た。

「恵真!いよいよ退院だな。あー、もう俺、嬉しくて嬉しくて。恵真の入院中、夜は一人で寂しかったけど、今日からは四人一緒だぞ!ずーっとずーっと一緒だからな!」
「あ、はい。大和さん、荷物を先に車に運んで来てもらえますか?」
「え?あ、うん」

ハグしてきそうな勢いの大和に、恵真は冷静にバッグを渡す。

仕方なく大和が荷物を手に病室を出ると、恵真は翼と舞を、真っ白なベビードレスに着替えさせた。

戻って来た大和が、おお!と驚く。

「可愛いなあ。まさに天使!」

早速何枚も写真を撮る大和の横で、恵真は忘れ物がないかを確認する。

「よし、大丈夫。じゃあ大和さん、翼をお願いします」
「分かった。さあ、おうちに帰るぞー!」

大和が翼を抱き、恵真が舞を抱いて最後にナースステーションの前で挨拶する。

「皆様、本当にお世話になりました」
「わー、ついに双子ちゃん退院なのね!寂しくなるなあ」

手の空いている看護師達が、双子を見に集まった。

「あ、木村先生!ちょうど良かった。佐倉さん、退院されます」

廊下を通りかかった先生に気づき、手招きした看護師が記念写真を撮ってくれた。

「先生、妻と子ども達がお世話になりました。本当にありがとうございました」
「退院、おめでとうございます!パパさん、これからもしっかりママと赤ちゃん達を守ってあげてくださいね」
「はい!」

皆に見送られ、四人はお世話になった病院を感慨深くあとにした。



「着いたぞー。ここが翼と舞のおうちだ」

ベビーシートも嫌がる事なく、無事にマンションに到着する。

リビングの一角には、キングサイズのマットレスを置き、その上に布団が敷いてあった。

「大和さん、ありがとうございました。これ、セッティングするの大変だったでしょう?」
「ぜーんぜん!それより恵真、双子と一緒にここで休みな。洗濯と食事の用意は俺がやるから」
「はい、ありがとうございます」

お言葉に甘えて、と、恵真は部屋着に着替えてから双子と一緒に横になる。

「うわー、リビングで寝るのってなんだか新鮮!でもいいですね。こうやって、大和さんの様子も見られるし」
「そうだな。ここなら双子が泣いても気づけるし、夜のミルク作りもすぐ出来る。いいアイデアだよ」
「ええ。佐々木さんから聞いておいて良かった」
「恵真、とにかく少し眠りな」
「はい」

大和は、部屋の照明を落とす。

双子に添い寝しながら、恵真はしばらく身体を休ませた。

しばらくして、恵真は翼の泣き声で目を覚ます。

添い寝したまま母乳をあげていると、今度は舞が泣き始めた。

「大丈夫。俺がやるよ」

大和がキッチンでミルクを用意してから、舞を抱いて飲ませる。

げっぷをさせてからおむつを替え、少し抱っこであやしていると、二人ともまたスヤスヤと眠り始めた。

「うちの様子にも慣れたかな?」
「そうですね。安心してるみたいです」
「良かった。恵真も何か飲む?」
「はい」

二人で久しぶりにソファに並んで座る。

「恵真、本当にお疲れ様。妊娠も出産も、一人で大変だったよね。本当にありがとう。これからは、しばらく俺も休暇もらってるから、ゆっくり身体を休めてね」 
「ありがとうございます。はあ、やっぱり我が家が一番!」

笑顔の恵真を、大和はそっと抱き寄せる。

「俺さ、恵真の入院中、ここで考えてたんだ。もう絶対一人には戻れない。俺には恵真が必要なんだ。恵真のいない生活なんて考えられない。翼と舞が産まれて来てくれたことも、もちろん嬉しいよ。でも二人を産んでくれたのも恵真だ。俺の幸せの全ては恵真なんだ。二人で大切に翼と舞を育てて、もっともっと楽しい毎日を過ごそう」

恵真はにっこりと大和に笑いかける。

「私も、大好きな大和さんとの赤ちゃんが来てくれたことが何より嬉しいです。大和さんとなら、どんな毎日も楽しく過ごせる。この先の人生も、大和さんと一緒なら絶対大丈夫。そう思えるんです。翼と舞と私達四人で、たくさんの思い出を一緒に作っていきたいです」
「恵真…」

二人は微笑むと顔を寄せ合い、互いを慈しむように長い長いキスをした。



「おはよう、恵真」

翌朝、目が覚めると大和が翼を抱いてミルクを飲ませていた。

「おはようございます。ごめんなさい、翼、泣いてましたか?」
「ううん。ご機嫌で起きてたよ。でも必死に俺の人差し指に吸いついてくるから、お腹減ってるだろうと思ってミルク作ったんだ」
「そうだったんですね」

すると隣で舞も、ホギャーと泣き始める。

「舞、おはよう。お腹空いたね」

恵真は舞に母乳をあげる。

夜中は、少し眠っては翼か舞のどちらかが起き、その度に恵真は母乳を、大和はミルクをあげていた。

細切れにしか眠れず、おそらく大和も疲れているだろう。

そう思って聞いてみると、大和はあっさり首を振った。

「全然!海外フライトで時差に振り回されるのに慣れてるからかな?あー、この感覚は朝ロスに着くフライトと同じだなーとか思ってた」
「あはは!確かに。あの、頭は動くのに身体は気だるいっていう感覚。独特ですよね」
「そう。これなら毎晩、色んな世界旅行気分を味わえそうだな」

ふふっと恵真も笑う。

「それに俺、今朝目が覚めてふと横を見たら、翼と目が合ってさ。その途端、翼がにこって笑って手足パタパタさせてくれたんだ。まるで、パパ起きたー!って喜んでくれてるみたいだった。もう、どんな高級ホテルのスイートルームで目が覚めるよりも幸せな気分だったよ」

へえーと恵真は感心する。

「そうなんですね。翼、もうすっかりパパのこと認識してるのかしら。凄いなあ」
「うん。俺、翼にめちゃくちゃ愛されてる気がする」

あはは!と恵真は、真顔の大和に笑い出す。

「大和さんたら、おかしい!」
「そう?でもほんと、こんな気持ちは初めてだよ」
「あら、そしたら私のライバルは翼?どうしよう、大和さんを翼に取られちゃったら」
「ははは!恵真こそ何を言ってるの?本気で翼と張り合うの?」
「だって…。大和さんが私に目を向けてくれなくなっちゃったら、寂しいもん」

いじける恵真に、大和はクスッと笑う。

「恵真、かーわいい!あとでゆっくり二人の時間を過ごそうな」

恵真は耳まで真っ赤になってうつむいた。



毎日があっという間に過ぎていく。

双子育児はどんなに大変なのだろうと身構えていたが、いざ始まってみると、なんだかんだと楽しい毎日だった。

「なんかさ、修学旅行みたいだよな」

赤ちゃん枕を並べて眠る翼と舞を挟んで、布団に横になり、大和は恵真に話しかける。

「こうやって、みんなが寝たあと、起きてるやつでヒソヒソ話するの」
「ありましたねー、そういうの」
「でさ、大抵話題は、誰が好きなの?みたいな」
「あはは!そうそう」
「えっ?!恵真もそういう話したの?誰が好きだったの?」
「誰って…。名前言ったら分かるんですか?」
「な、何ー?!一体、誰なんだよ?」
「いませんよ。その時に好きな人は」
「ほんとに?」
「本当です。たとえいたとしても、名前言っても分からないでしょ?」
「ムーッ!でもなんか嫌だ!」

大和はガバッと起き上がると、翼と舞を通り越して恵真の隣に寝る。

「ちょっ、大和さん?」

戸惑う恵真を、大和はぎゅっと抱きしめた。

「恵真。いつまでも、恵真は俺だけの恵真だ」

そう言って、恵真の頭を抱き寄せてキスをする。

「や、大和さん、翼と舞がいるのに…」

恵真は顔を赤くして、大和の胸を押し返す。

「パパとママが仲良くして何が悪い?二人とも、俺達の愛の結晶だぞ」
「そうだけど、あの、教育上よろしくないかと…」
「恵真。先に言っておくけど、俺はずっと、『行ってきます』と『ただいま』のキスはやめないぞ。あと、『おはよう』と『おやすみ』のキスもな」

ヒー!と恵真は仰け反る。

「じゃ、じゃあ、今のこのキスは?」
「これは、『愛してる』のキス」
「まだあるんですか?!」
「まだまだあるよ。あるに決まってる」

翼と舞を気にしてソワソワする恵真を、大和はぎゅっと抱きしめて何度もキスをする。

身を固くしていた恵真は、やがてうっとりと大和の腕に身体を預けていった。



「ねえ、大和さん」

夜中に起きてきた双子に、それぞれ母乳とミルクをあげてから、スノードームのオルゴールを鳴らして寝かしつけていた。

気持ち良さそうにぐっすり眠る双子を見ながら、恵真が話し出す。

「ん?何?」
「あのね、このオルゴール。妊娠中もよく聴いてたから、やっぱり二人とも覚えてるみたいで。これを鳴らすとじーっと聴き入ってるの」
「そうだね。さっきもこれを聴きながら寝ちゃったし」
「ええ。それでね、入院中に改めて思ったの。このオルゴールの男の子と女の子、翼と舞だったんだなって」
「そうか、確かにそうだね」

くるくるとクリスマスツリーの周りを踊るように回る人形は、そう思うと、もう翼と舞にしか見えない。

「来るべくしてうちに来てくれたのかな?翼も舞も」
「そうだね。なんだか運命的な感じがする」

恵真は、胸元の羽のネックレスに手をやった。

「私達四人で、ようやく一つの家族なんですね」
「ああ。誰一人欠けてもいけない。俺達は四人で一つだ」
「ええ」

ネックレスに並んだ4つの誕生石を、恵真と大和は二人で見つめる。

「ずっとずっと、四人で幸せに暮らせますように」 
「幸せにしてみせるよ。俺はみんなといると、とてつもなく強くなれる気がするんだ。恵真とこの子達を、必ず俺が守ってみせる」
「はい」

恵真は、目を潤ませながら微笑んだ。
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