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妻として、母として
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「恵真。天気もいいし、少しベビーカーで散歩しない?」
今日も大和はオフ。
12月にしてはポカポカと温かい陽気で、なかなか寝ない双子を見て、大和が提案する。
「いいですね。二人とも、外の空気に触れさせてあげたいし」
「じゃあ、授乳終わったら行こうか」
「はい」
暖かい服を着せ、ベビーカーに乗せてからブランケットをかける。
二人とも、外に出た途端に眩しそうに目を細め、手をパタパタさせた。
「お外は気持ちいいねー」
双子に声をかけながら、のんびりと近所を歩く。
「恵真。ここで待ってるから、好きな物買っておいで」
カフェの前で、大和が立ち止まる。
「あ、はい。じゃあすぐ戻ります」
恵真は店内のカウンターに行くと、ディカフェのモカと、オリジナルブレンドをテイクアウトした。
「はい、大和さん」
「お、ありがとう」
温かい飲み物を片手にまた歩き始めると、ポツポツと並ぶショップは、どこもきれいにクリスマスの飾り付けがされていた。
近くの公園のベンチに座って、ドリンクを飲む。
「はあー、なんかいいな。こんなふうに時間をのんびり使うのって」
「そうですね。のどかでゆったりしてて、なんだかおばあちゃんになった気分」
「おいおい、勘弁してくれよ」
ふふっと恵真は笑う。
「そうですよね。これから双子が大きくなったら、一緒にブランコに乗ったり、滑り台滑ったりしないといけませんよね」
「ああ、そうだよ。俺達、子ども時代をもう一度やり直す感じだな」
「確かに。体力つけておかないと!」
恵真は張り切ってガッツポーズをする。
「楽しみだな。この子達の成長」
「ええ」
二人で双子の顔を覗き込む。
元気いっぱいに手足を動かす双子に、大和と恵真は顔を見合わせて微笑んだ。
◇
「大和さん。今夜は寝室で寝てください」
お風呂上がりに白湯を飲ませていると、ふいに恵真が声をかけてきた。
「え?寝室って、俺が?」
「はい。明日フライトですよね?キャプテンが寝不足で飛ぶ訳にはいきません。双子のお世話は私一人で大丈夫なので、大和さんは寝室でしっかり睡眠を取ってください」
でも…と大和はためらう。
「私はパイロットの妻です。きちんとその役目も果たさなければいけません。それに寝不足で乗務するのが、どんなに危険な事かも理解しています。大和さん、しっかり身体を休めてください。もしどうしても私一人では無理だったら、その時は少しお願いさせてください」
真剣な恵真の表情に、大和も最後は頷いた。
「分かった。いつでも呼んでね」
夜、双子は一度眠ってから、23時に泣き始めた。
二人に授乳し、寝かしつけてから大和は寝室へ向かう。
「じゃあ、恵真。いつでも声かけてね」
「はい、おやすなさい」
「おやすみ」
大和は優しく恵真にキスをしてから、リビングをあとにした。
◇
翼の泣き声が聞こえてきて、恵真は目を覚ます。
「はーい、今ミルク作るね」
翼にミルクをあげながら時計を見ると、明け方の4時だった。
(4時間はまとめて寝てくれるようになったかな)
すると舞も、ホワーホワーと泣き始める。
(うっ、手が足りない…)
恵真は授乳クッションに寝かせた翼にミルクを上げながら、もう一つの授乳クッションを腰にはめ、舞を寝かせて母乳をあげる。
(一人でもなんとかなるもんよね、ふふ)
なんだか自分が逞しくなったような気がして、恵真は嬉しくなった。
◇
「おはよう、恵真」
翌朝、目が覚めると大和が舞にミルクをあげていた。
「おはようございます。今何時ですか?」
「7時だよ。俺がこっちに来たら、舞も目を開けたから、ミルクあげてたんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
恵真は洗顔と着替えをしてから、キッチンに行き朝食の支度をする。
ついでに翼のミルクも作っていると、タイミング良く泣き始めた。
「俺がやるよ。舞も飲み終えたし」
大和にミルクを渡し、恵真はソファのローテーブルに朝食を並べた。
ベビーキャリーをソファのそばに置き、双子を寝かせて顔を見ながら朝食を食べる。
「恵真、夜中は大丈夫だった?」
「ええ。一度起きただけだったの。大和さんも、良く眠れましたか?」
「ああ、お陰でぐっすり。でもなんだか寂しかったよ。いつもなら目が覚めてすぐ、隣に寝てる翼が変顔してくれて、朝から楽しかったのに」
変顔?!と恵真は笑い出す。
「確かに。翼ってなんだかこう、アピールが凄いですよね」
「そう。ねえねえ、見て見てー!って」
あはは!と恵真は笑いながら翼を見る。
翼は、キョトンとした目で手足をばたつかせた。
「楽しみだなあ。どんな子になるんだろう、翼も舞も」
「そうですね。早く大きくなって欲しい気もするけど、まだまだ赤ちゃんのままでいて欲しい気もします」
「そうだね。一日一日が宝物だな」
「はい」
日に日に家族の絆が深まっていく。
その事を恵真はしみじみと感じていた。
◇
双子にとって、初めてのクリスマスとお正月を迎えた。
双方の祖父母から、たくさんのクリスマスプレゼントをもらい、ツリーの前で写真を撮る。
お正月には、両家の両親がマンションに来て、皆で賑やかに新年を迎えた。
母親達は手作りのおせち料理を持って来てくれ、父親達は代わる代わる翼と舞にミルクをあげてくれる。
お陰で恵真も大和も、ゆっくり休む事が出来た。
すくすくと大きくなっていく翼と舞。
身体もしっかりしてきて、うつ伏せにすると、両手を広げてブーンと飛行機のポーズをする。
「おっ、翼も舞も上手いぞ!Fly heading 180. Climb and maintain 3000」
一緒にうつ伏せになった大和が、隣で興奮気味に声をかける。
そんな大和に苦笑いしながら、恵真は三人の写真を撮った。
ある日、恵真が手に持ったガラガラを振って見せていると、手を伸ばした翼がコロンと寝返りを打った。
「あっ!翼、寝返り出来たね!やったー!凄い凄い」
コツを掴んだのか、仰向けに戻すと、すぐまたコロンとうつ伏せになる。
隣の舞に手が当たりそうで、恵真は二人の間に大きなイルカのぬいぐるみを置いた。
すると今度は、イルカに手を伸ばした舞が、コロンと寝返りを打つ。
「わー!舞も出来たね!二人とも凄い!」
恵真は早速、乗務に行っている大和に動画を送った。
「ふふ、パパびっくりするよー、きっと」
翼と舞は、自分で動けるのが楽しいようで、寝返りを打ってはおもちゃを手に遊んでいる。
恵真がスノードームを逆さにしてオルゴールのネジを巻くと、うつ伏せの二人は頭を寄せ合って見入っていた。
「あー」「うー」と、おしゃべりしながらスノードームを見ている二人の後ろ姿を、恵真は微笑みながら写真に収めた。
◇
二人の成長を、毎日育児日記に書き留めていた恵真は、最近二人が夜は6時間連続で寝ている事に気づく。
「大和さん」
「ん?どうしたの」
恵真は、ダイニングテーブルで夕食を食べながら大和に話し出す。
「翼も舞も、離乳食を始めて夜は6時間寝るようになったの。だからもう大丈夫。大和さん、短日数乗務ではなく、通常のシフトに戻してもらってください」
「え…、もう?1歳の誕生日を過ぎてからでいいと思うけど」
恵真は首を振る。
「それだと、海外のフライトは1年以上飛ばない事になります」
「ああ、確かに。でも、また訓練してから少しずつ戻ってもいいんだし」
「いえ、もう戻ってください。でないと私、気がかりで…。大和さんが復帰してくれた方が、私の気持ちとしても安心なんです」
大和はじっと考え込んでから、もう一度恵真の顔を見る。
考えを変える気がないのを感じ取ると、ふうと小さく息をついてから頷いた。
「分かった。そうするよ」
「ほんとですか?良かった!」
「恵真の頑固さには適わないからな。ありがとう、恵真。でも、大変だったらすぐに教えてね」
「はい」
そして大和は、国内ステイや海外のフライトも担当するようになった。
数日間、大和が帰って来ない日もあるが、恵真はもう不安にはならなかった。
(だって、翼と舞がいてくれるんだもん。ちっとも寂しくない)
いつの間にか恵真は、双子のお世話をする立場から、双子に励まされる側になっていた。
育児の合間に、彩乃やこずえと電話で話すのも良い息抜きになった。
彩乃とは、お互いの子どもの成長具合を報告し合う。
誕生日も5日違いなので、離乳食や母乳の回数に関しても、とても良い相談相手だった。
また、こずえは4月に結婚式を挙げた事を報告してくれた。
送ってくれた写真には、マーメイドラインの大人っぽいドレスを着こなすこずえと、シックなタキシード姿の伊沢がかっこ良く写っていた。
「こずえちゃん、とってもきれい!良かったね、結婚式挙げられて」
恵真が電話でそう言うと、こずえはいつもと変わらない口調で言う。
「まあねー、うるさいんだもん。どうしても式挙げたいって、ゆう…あっ」
急に言葉を止めたこずえに、恵真は、ん?と首をひねる。
「ゆう…って?あ!もしや優太ってこと?!」
大きな声を出してしまい、慌てて寝ている双子を振り返る。
幸い二人ともぐっすり眠ったままだった。
恵真は改めて声のトーンを落として聞く。
「ふふっ、こずえちゃん、ついに伊沢くんのこと、名前で呼び始めたのね」
「ちょっと、そこはスルーしてよー」
「えー?だって気になるんだもん。で、どうだった?初めて名前で呼んであげた時の反応は?」
「んー、恵真が言ってた通りの反応だった」
「あ、ドキュン?」
「そう。まさにそんな感じ」
あはは!と恵真は明るく笑う。
「嬉しかっただろうなあ、伊沢くん」
「て言うか、しつこかった。もう一回!とかせがんできて」
「やだー!もう、なんか聞いてるだけで照れちゃう。ラブラブだね!」
とにもかくにも、幸せそうな二人の様子に、恵真も嬉しくなった。
今日も大和はオフ。
12月にしてはポカポカと温かい陽気で、なかなか寝ない双子を見て、大和が提案する。
「いいですね。二人とも、外の空気に触れさせてあげたいし」
「じゃあ、授乳終わったら行こうか」
「はい」
暖かい服を着せ、ベビーカーに乗せてからブランケットをかける。
二人とも、外に出た途端に眩しそうに目を細め、手をパタパタさせた。
「お外は気持ちいいねー」
双子に声をかけながら、のんびりと近所を歩く。
「恵真。ここで待ってるから、好きな物買っておいで」
カフェの前で、大和が立ち止まる。
「あ、はい。じゃあすぐ戻ります」
恵真は店内のカウンターに行くと、ディカフェのモカと、オリジナルブレンドをテイクアウトした。
「はい、大和さん」
「お、ありがとう」
温かい飲み物を片手にまた歩き始めると、ポツポツと並ぶショップは、どこもきれいにクリスマスの飾り付けがされていた。
近くの公園のベンチに座って、ドリンクを飲む。
「はあー、なんかいいな。こんなふうに時間をのんびり使うのって」
「そうですね。のどかでゆったりしてて、なんだかおばあちゃんになった気分」
「おいおい、勘弁してくれよ」
ふふっと恵真は笑う。
「そうですよね。これから双子が大きくなったら、一緒にブランコに乗ったり、滑り台滑ったりしないといけませんよね」
「ああ、そうだよ。俺達、子ども時代をもう一度やり直す感じだな」
「確かに。体力つけておかないと!」
恵真は張り切ってガッツポーズをする。
「楽しみだな。この子達の成長」
「ええ」
二人で双子の顔を覗き込む。
元気いっぱいに手足を動かす双子に、大和と恵真は顔を見合わせて微笑んだ。
◇
「大和さん。今夜は寝室で寝てください」
お風呂上がりに白湯を飲ませていると、ふいに恵真が声をかけてきた。
「え?寝室って、俺が?」
「はい。明日フライトですよね?キャプテンが寝不足で飛ぶ訳にはいきません。双子のお世話は私一人で大丈夫なので、大和さんは寝室でしっかり睡眠を取ってください」
でも…と大和はためらう。
「私はパイロットの妻です。きちんとその役目も果たさなければいけません。それに寝不足で乗務するのが、どんなに危険な事かも理解しています。大和さん、しっかり身体を休めてください。もしどうしても私一人では無理だったら、その時は少しお願いさせてください」
真剣な恵真の表情に、大和も最後は頷いた。
「分かった。いつでも呼んでね」
夜、双子は一度眠ってから、23時に泣き始めた。
二人に授乳し、寝かしつけてから大和は寝室へ向かう。
「じゃあ、恵真。いつでも声かけてね」
「はい、おやすなさい」
「おやすみ」
大和は優しく恵真にキスをしてから、リビングをあとにした。
◇
翼の泣き声が聞こえてきて、恵真は目を覚ます。
「はーい、今ミルク作るね」
翼にミルクをあげながら時計を見ると、明け方の4時だった。
(4時間はまとめて寝てくれるようになったかな)
すると舞も、ホワーホワーと泣き始める。
(うっ、手が足りない…)
恵真は授乳クッションに寝かせた翼にミルクを上げながら、もう一つの授乳クッションを腰にはめ、舞を寝かせて母乳をあげる。
(一人でもなんとかなるもんよね、ふふ)
なんだか自分が逞しくなったような気がして、恵真は嬉しくなった。
◇
「おはよう、恵真」
翌朝、目が覚めると大和が舞にミルクをあげていた。
「おはようございます。今何時ですか?」
「7時だよ。俺がこっちに来たら、舞も目を開けたから、ミルクあげてたんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
恵真は洗顔と着替えをしてから、キッチンに行き朝食の支度をする。
ついでに翼のミルクも作っていると、タイミング良く泣き始めた。
「俺がやるよ。舞も飲み終えたし」
大和にミルクを渡し、恵真はソファのローテーブルに朝食を並べた。
ベビーキャリーをソファのそばに置き、双子を寝かせて顔を見ながら朝食を食べる。
「恵真、夜中は大丈夫だった?」
「ええ。一度起きただけだったの。大和さんも、良く眠れましたか?」
「ああ、お陰でぐっすり。でもなんだか寂しかったよ。いつもなら目が覚めてすぐ、隣に寝てる翼が変顔してくれて、朝から楽しかったのに」
変顔?!と恵真は笑い出す。
「確かに。翼ってなんだかこう、アピールが凄いですよね」
「そう。ねえねえ、見て見てー!って」
あはは!と恵真は笑いながら翼を見る。
翼は、キョトンとした目で手足をばたつかせた。
「楽しみだなあ。どんな子になるんだろう、翼も舞も」
「そうですね。早く大きくなって欲しい気もするけど、まだまだ赤ちゃんのままでいて欲しい気もします」
「そうだね。一日一日が宝物だな」
「はい」
日に日に家族の絆が深まっていく。
その事を恵真はしみじみと感じていた。
◇
双子にとって、初めてのクリスマスとお正月を迎えた。
双方の祖父母から、たくさんのクリスマスプレゼントをもらい、ツリーの前で写真を撮る。
お正月には、両家の両親がマンションに来て、皆で賑やかに新年を迎えた。
母親達は手作りのおせち料理を持って来てくれ、父親達は代わる代わる翼と舞にミルクをあげてくれる。
お陰で恵真も大和も、ゆっくり休む事が出来た。
すくすくと大きくなっていく翼と舞。
身体もしっかりしてきて、うつ伏せにすると、両手を広げてブーンと飛行機のポーズをする。
「おっ、翼も舞も上手いぞ!Fly heading 180. Climb and maintain 3000」
一緒にうつ伏せになった大和が、隣で興奮気味に声をかける。
そんな大和に苦笑いしながら、恵真は三人の写真を撮った。
ある日、恵真が手に持ったガラガラを振って見せていると、手を伸ばした翼がコロンと寝返りを打った。
「あっ!翼、寝返り出来たね!やったー!凄い凄い」
コツを掴んだのか、仰向けに戻すと、すぐまたコロンとうつ伏せになる。
隣の舞に手が当たりそうで、恵真は二人の間に大きなイルカのぬいぐるみを置いた。
すると今度は、イルカに手を伸ばした舞が、コロンと寝返りを打つ。
「わー!舞も出来たね!二人とも凄い!」
恵真は早速、乗務に行っている大和に動画を送った。
「ふふ、パパびっくりするよー、きっと」
翼と舞は、自分で動けるのが楽しいようで、寝返りを打ってはおもちゃを手に遊んでいる。
恵真がスノードームを逆さにしてオルゴールのネジを巻くと、うつ伏せの二人は頭を寄せ合って見入っていた。
「あー」「うー」と、おしゃべりしながらスノードームを見ている二人の後ろ姿を、恵真は微笑みながら写真に収めた。
◇
二人の成長を、毎日育児日記に書き留めていた恵真は、最近二人が夜は6時間連続で寝ている事に気づく。
「大和さん」
「ん?どうしたの」
恵真は、ダイニングテーブルで夕食を食べながら大和に話し出す。
「翼も舞も、離乳食を始めて夜は6時間寝るようになったの。だからもう大丈夫。大和さん、短日数乗務ではなく、通常のシフトに戻してもらってください」
「え…、もう?1歳の誕生日を過ぎてからでいいと思うけど」
恵真は首を振る。
「それだと、海外のフライトは1年以上飛ばない事になります」
「ああ、確かに。でも、また訓練してから少しずつ戻ってもいいんだし」
「いえ、もう戻ってください。でないと私、気がかりで…。大和さんが復帰してくれた方が、私の気持ちとしても安心なんです」
大和はじっと考え込んでから、もう一度恵真の顔を見る。
考えを変える気がないのを感じ取ると、ふうと小さく息をついてから頷いた。
「分かった。そうするよ」
「ほんとですか?良かった!」
「恵真の頑固さには適わないからな。ありがとう、恵真。でも、大変だったらすぐに教えてね」
「はい」
そして大和は、国内ステイや海外のフライトも担当するようになった。
数日間、大和が帰って来ない日もあるが、恵真はもう不安にはならなかった。
(だって、翼と舞がいてくれるんだもん。ちっとも寂しくない)
いつの間にか恵真は、双子のお世話をする立場から、双子に励まされる側になっていた。
育児の合間に、彩乃やこずえと電話で話すのも良い息抜きになった。
彩乃とは、お互いの子どもの成長具合を報告し合う。
誕生日も5日違いなので、離乳食や母乳の回数に関しても、とても良い相談相手だった。
また、こずえは4月に結婚式を挙げた事を報告してくれた。
送ってくれた写真には、マーメイドラインの大人っぽいドレスを着こなすこずえと、シックなタキシード姿の伊沢がかっこ良く写っていた。
「こずえちゃん、とってもきれい!良かったね、結婚式挙げられて」
恵真が電話でそう言うと、こずえはいつもと変わらない口調で言う。
「まあねー、うるさいんだもん。どうしても式挙げたいって、ゆう…あっ」
急に言葉を止めたこずえに、恵真は、ん?と首をひねる。
「ゆう…って?あ!もしや優太ってこと?!」
大きな声を出してしまい、慌てて寝ている双子を振り返る。
幸い二人ともぐっすり眠ったままだった。
恵真は改めて声のトーンを落として聞く。
「ふふっ、こずえちゃん、ついに伊沢くんのこと、名前で呼び始めたのね」
「ちょっと、そこはスルーしてよー」
「えー?だって気になるんだもん。で、どうだった?初めて名前で呼んであげた時の反応は?」
「んー、恵真が言ってた通りの反応だった」
「あ、ドキュン?」
「そう。まさにそんな感じ」
あはは!と恵真は明るく笑う。
「嬉しかっただろうなあ、伊沢くん」
「て言うか、しつこかった。もう一回!とかせがんできて」
「やだー!もう、なんか聞いてるだけで照れちゃう。ラブラブだね!」
とにもかくにも、幸せそうな二人の様子に、恵真も嬉しくなった。
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