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―――第5章――――



季節が過ぎる。

私の中で、旅に出たいという思いが膨らんでいた。

以前、私はライネアさんから騎士団に誘われ、断った。

では、自分は何をしたいのだろうかと、考えたのだ。

(旅……いいかもね)

異世界を旅して回る。

そういう人生に強くあこがれた。

(少しずつ、旅立ちに向けて準備をしていこうかな)

と私は思った。








冬になる。

この地方は、雪が降る。

降雪こうせつが多い地域らしい。

もちろん、余裕で降り積もる。

―――ある日のこと。

朝。

この日は雪が降っていなかった。

分厚い毛織物けおりものの服を着た状態で、外に出る。

ひんやりした空気が、ふわっと肌を包み込む。

森も、山も、一面がしろに染まっている。

どこでも積雪せきせつしており、雪が積もってない場所を探すほうが難しい。

見上げると、うっすらとした水色の空が広がっている。

太陽が優しい陽射ひざしで雪を照らしていた。

雪たちは、陽光を浴びて、きらきらととおるようにかがやいている。

「今日は良い天気です!」

と私は大きく伸びをした。

ほう……と息を吐くと、白い吐息といきが空気に広がる。

おもむろに山小屋やまごやの屋根を見上げる。

屋根にも雪が積もっているのだが、その雪のうえに、見慣れたフクロウがいる。

トキフクロウのトキちゃんだ。

トキちゃんが山小屋に住み着いてから、ずっと、あの屋根の上を定位置ていいちとしているのだが……

今日も変わらずそこで、とどまっていた。

全然動いていなかったのか、頭のうえに雪が積もっている。

すっかりあの場所がお気に入りのようである。

「エサあげますか」

と、ひとりつぶやいて、屋内に戻り……

皿のうえにエサを乗せる。

トキフクロウは魚を主食にして生活しているので、フユニジマスを一匹乗せる。

フユニジマスは冬の川で獲れるニジマスである。

さらにトキちゃんの大好物であるチョコレートを乗せて、外に出た。

雪の地面に、皿を置く。

「おーい!」

と呼びかけると。

トキちゃんが、

「ホー!」

と、ひと鳴きしてから、

屋上からバサバサと飛び降りて、皿の前に着地。

ついばむようにフユニジマスを食べ始めた。

なごむ光景だ。

だが、

「うう、さむ」

さすがに冬の屋外おくがいは寒い。

手もかじかんできたが、何より雪に触れている靴裏くつうらから、冷気が立ちのぼってくる。

体温がどんどん奪われている感覚だ。

トキちゃんは放っておいても食事はするので、このまま放置でいい。

私は、家に戻ろう。








昼。

冬でも最低限の狩りや漁労はおこなう。

しかし他の季節に比べると、暇な時間は多い。

なので私は寝室にこもって、読書を楽しむことにした。

寒いので部屋のすみで火魔石ひませきを使うことにする。

火魔石をランタン型の容器にセットして、部屋のすみに置いておく。

ベッドに腰掛け、クレアベルに買ってもらった本を読む。

絵本を卒業してから与えられた本である。

読む。

読む。

読む。

ゆったりした気分で、静かに、本のページをめくる。

穏やかな時間だ。

気温は低いが、部屋のすみの火魔石ランタンが活躍してくれている。

少しずつ温まってきている。

「きゃはははは!」

ふと、窓の外から声が聞こえてきた。

本から目を離す。

ベッドから立ち上がり、窓の外へと視線をやった。

クレアベルとアイリスがいた。

声はアイリスのものだ。

トキちゃんにエサをやって遊んでいるらしい。

クレアベルも、アイリスも、すっかりトキちゃんとは仲良くなっている。

微笑ましい光景である。

(なんか、こういうの、いいな)

と、思う。

私は、前世では、天涯孤独てんがいこどくだった。

両親はすでに他界たかいしていたし、恋人や友達もいなかった。

でも、いまは、家族たちに恵まれている。

とても、満たされた気持ちである。

幸せだ。

心から、そう思った。


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