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1 あらた ~九時間後、目覚めた朝~

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朝、目覚めはいい方だ。
だいたい携帯のアラームが鳴る20分~5分くらい前には目が覚める。
20分前に目が覚めて時間を確認して、しばらくそのまま微睡んでいたとしても、本当の時間少し前にはまた目が覚める。

寝坊なんて、多分記憶にある限りないと自慢できる。
その辺はぐうたらな妹とは違う。
自慢したこともあるが、あまりうらやましがられない。

『ギリギリが過ぎたその時間まで寝れる方が幸せじゃん。』

無駄なことを何を偉そうに、とそんな視線で返されたことがある。

『私は目覚ましが鳴るその瞬間まで寝てたい。時間がもったいないよね。目覚ましを信じてないの?それともセットした自分も信じてないとか?』

そんなことも言われた。
根本的に考え方が違うと分かってる。
性格が違い過ぎて、理解し合えない部分はままある。

そんな事を思い出しながら。
ああ・・・・目が覚めてきた、自分でそう思って、ゆっくり目を開ける。

いきなり視界に飛び込んできたのは全く見覚えのない天井。
どこだ?

ゆっくり首をめぐらすまでもなく、体にも違和感がある。

狭い自分の部屋で、いつも一人で寝てるんだから、薄暗くても見えるものにも、枕にも布団にも、違和感などあろうはずないのに。

何だか違う・・・・誰かいる・・・・。


ゆっくり隣を見た。

狭いベッドで、隣なんてほとんどない日常なのに、今日は隣があった。

薄暗い中、見覚えのない女性の頭部と、バスローブが緩んでできた胸元が目に入った。
ちょうど自分より低い場所で、こっち向きに横向きで寝ていた。
しかもほとんど真横に、すぐそこに。

それはそれは・・・・ぐっすりと。

女・・・だよな。
思い出せ、思い出せる・・・・大丈夫だ・・・・。

部屋を見るまでもない、広いベッドに広い部屋、明らかな商業的部屋、多目的じゃないホテルの部屋だ。

多分大丈夫だ・・・・。


軽く起き上がった時に目に入った二人目。



『何故ここにいる?』


軽く飛んだ記憶がするすると手繰り寄せられる音がした気がした。

自分に気がついた二人目はニヤリと笑った。



思い出した!大丈夫だった・・・・よな?

逆にアイツがいるんなら最悪な状況じゃないはずだ!!


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