23 / 31
23 信じたい真実。
しおりを挟む
かなりけだるい気分だった。夜に不似合いなはしゃぎ過ぎが効いた。
体が目覚めるのに時間がかかりそうだがそうも言ってられない。
彼女を送りだして着替えをする。
楽な格好で早めに良平さんのところに行く。
時間は自由にとお願いしていたから甘えて朝一で道具を引き取る。
夕方顔を出すことを告げて部屋に道具を置き、スーツに着替えて昨日と同じように調査員の仕事をする。
昨日関わった調査の中間報告の資料を作る。
依頼人は奥さん、やっぱり若い。結婚10年と少し。元同僚。
なんてことだ奥さんも浮気相手を知ってる可能性大。
携帯に位置情報のアプリを仕込むくらいには疑いも確信があり、離婚を想定しているということだった。
現在の真実を調べて欲しいということでここ1週間の調査内容報告をまとめる。
書面、画像。奥さんはわざわざ隙を作るため週末から実家に帰ってたらしい。
週末から調査が開始されてすぐに罠にかかった対象者。
日曜日の休日を一緒に過ごす二人の写真。
そしてあっさり相手の情報が取れた。
そこから出勤してるところを見ると親密さも分かる。
満員電車でもわざと自然を装いくっついてる風だ。
うまい角度からの写真が出てくる。
社内に2人がいる時に周辺情報を当たり浮気相手の女性の情報を取る。
奥さんとも知己決定。
いったいいつからなんだと疑ってしまう。
そんなこちらの気持ちも織り込まれた書類がページ数を増やしていく。
その後2日ほど同僚と飲んでる対象者を追尾。
だがさすがに同僚に不倫は隠してるらしく奥さんの話が少し出ただけ。
浮気癖とかそういうのとは違う本気の浮気か?
この土曜日からの1週間の行動を一覧にして保存、印刷する。
写真も添付して所長へ確認に行く。
もっと詳しく2人の気持ちを知りたかったらあとは別手段が必要となる。
女性側を調べればもう少し詳しい情報が手に入るかもしれないと、含みをつける様に追記するよう言われれる。
女性の方が友達に漏らしていたり、SNSなどの発信をたどりいつからの付き合いか、将来をどう見てるかなどわかるだろう。
とりあえず今回は終わりにして手放して、もう忘れることにした。
席に戻りデータを固めてパソコンを閉じる。一区切りだ。切り替えたい。
実際社内に人は少ない。外にいるほうが多いのでデスクも少しだけ、広い円卓が少しあるだけ。私物はロッカーへしまうことになってる。
依頼は調査員の核になるメンバーに振り分けサポートメンバーを適宜入れて回す。依頼人の面接室が隣にあって社員と顔を合わせるのは最小限になるようにしてある。依頼人との面接は所長のみ。調査員は支給されてるタブレットを使い、空いてる場所でデータを固める。内勤時間も少ない。
「佐野君、顔が暗いよ。」
声をかけてくれたのは昔からいる事務会計など一手に引き受けてる人、向井さん。
契約書類を面談後すぐに作成し、調査員の持ち帰る経費も含めて調査費用の書類を起こしながらも調査員への払い出し処理もする。
実に頼もしい女性で最初の不慣れな頃は何度もアドバイスをもらった。
「久しぶりにサラリーマンすると疲れますよ。」
「まあ、気持ちはわかるけどね。」
ごまかしてもお見通し。
「少し休憩してきます。」
声をかけて廊下に出る。
フロアの奥に小さな休憩室がありコーヒーが飲めるようになっている。
誰もいないそこでホッと一息。
気分転換にはメールが一番。
彼女へメールをする。
『夕方に良平さんの家族に挨拶してそのまま回る予定です。また連絡する。今日も既に足りないよ、まな。でも、がんばろ。じゃ。』
コーヒーを持って席に戻る。
あとはサーフィンの彼の分の報告書を数件チェックしてまとめ上げる。
だいたいはデータ入力と一緒にまとめてくれているのでちょっとしたチェックくらいでいでいい。
息子の結婚相手の調査があった。
30歳を超えた子供に過保護なことだ。
そんなに自分の子供の人を見る目が信じられないのか、奪われたくないものが多すぎるのか?サクサクと無感情でいようと努力してまとめ上げる。
隠し撮りされた写真を見る限り問題ない様にしか見えない。
すべてを終えて所長に提出し指示を待つ。
「佐野君、こっちはOK。助かった。明日からは?」
「夕方からは定期的な仕事が入ってるんです。あと、日、月曜日はダメです。」
「じゃあ、高梨が帰ってきたら交代要員が必要か聞いてみる。書類は全部仕上げたいから残りは空いてる時間にお願い。とりあえず急ぎは今日やってもらったからあとは来週前半でも大丈夫。」
時間を見るとまだ余裕のある時間。
「今日出来ることはやっておきます。どれをやりますか?」
所長からメモを貰う。
「この順番でまとめておいて。週末に2件調査が終わるから来週はそれやってもらおうかな。」
「はい。所長忙しいですね。」
「少ない人数でやってるからね。まったく、ひよっこで良かったよ。書類係だったからね。」
「佐野君はどうよ。結婚するんだし。」
当然離れた席越しの会話は向井さんにも筒抜けだった。
「なに?佐野君結婚するの?」向井さんが加わる。
「そうなんだって、23歳、10個も年下って事らしい。」
「江田さんに聞いたんですね。」
「まあね。レポートが必要ならまとめるって言われたけど直接聞いたほうが面白いからって言われたぞ。ほら、話せ話せ。」
円卓に向かった所長、向井さんも座って手招きされた。
昨日と同じような話をする。所長の突っ込みは昨日以上に容赦なく、向井さんのフォローは彼女側の気持ちの代弁。
自分一人随分とぼけながらのせっかちな奴という印象が残った気がする。
「二ヶ月ちょっと・・・・・。」向井さんがつぶやく。
「そりゃあ、正直に言ったら向こうの両親が心配するだろうよ。」
「だからすぐにはって思ってません。一応挨拶して、同棲の許可を貰おうかと。」
「お前、それで解消なんて出来ないんだから一緒だよ。むしろ一緒に住んだりするのすら無理。1年後に来いみたいな感じになるんじゃないか?」
「彼女が報告してるかどうかも知らなくて、その辺は分からないです。」
「なんだろう、その性急な判断は?らしくないって思うけど、納得できるような気もして。」
「確かに。」
「そのペースに付き合えてる彼女もすごい。」
「余計なお世話だが、仕事は大丈夫か?」
「はい、なんとか。マンションもローンは少額にしてあるし、あとは株を少し動かしてます。時間が取れないよりは出来るだけ時間にゆとりを持ってた方がいろいろ家事ができるので。」
「なに?家事やってるの?」
「料理はしてます。」
「23歳か・・・・、無理なタイプなのか?」
「不器用です。怪我されるくらいなら。でも教えて欲しいって言われてるのでやる気はあるようです。」
「所長、本当に余計なお世話って気がしてきましたね。何でしょうか、ドーナッツを食べすぎた後の満腹感みたいな気分です。」
「まあな、これからも声かけていいのか?」
「勿論です、何かあったらいつでも手伝いますのでよろしくお願いします。それにスーツを着ると彼女が喜ぶんです。」
「はぁ、スーツ・・・・。」向井さんが天井を向く。
「分かった、いろいろ。お前が器用だからこっちも重宝してるし。よろしく頼む。あ~、本当に塩を舐めたい気分だ。」
所長が伸びをする。
「お昼は出前にするか?おごるぞ。」
「やった~。」
向井さんが喜んで決定。
面接の予定があるということで早速出前を頼む。向井さんにお願いした。
経費で落とそうといつもは絶対開かないページから選ぶと張り切っている。
近くのお店から届いた出前を円卓に並べて囲んで食べる。
「美味しいです。出前も久しぶりです。」
「週末は旅行か?」
日、月曜日の事だろう。
「はい、師匠のところに彼女を連れて行くんです。」
「おっ、おやっさんのところか。よろしく伝えてくれ。」
「はい。やっと会いに行けるんです。大切なもの2つ揃ったら会いに来いって言われてたんです。」
「はぁ~、律儀だなあ、とっくに忘れてるんじゃないのか?」
「え、まさか。そんな・・・。」
「まあ、喜ぶだろうよ。そろそろ隠居モードだし。」
「そうなんですかね。」
「大人しく引っ込んでるとは思えないがね。」
「今頃くしゃみしてますよ。」
向井さんがお茶を入れてくれた。お礼を言っていただく。
食べ終わった容器を重ねて軽く洗いまとめる。
「ありがとうね、佐野君、本当にいい旦那さんになりそう。」
「そうですか?そうだとうれしいです。」
「まあ、そんな素直なところもね。」
年上の人には褒められる。その辺は自信があるんだけど。
何故か年下の彼女にはここぞというときに怒られる。
「佐野君、思い出し笑い?」
「えっ、すみません。」
笑われて向井さんが席に向かう。
さて、仕事仕事。
所長は面接中だった。
サーフィンの彼も上手に書類をまとめていてわかり易い。
自分がやるのはさほど大変なこともない。頼まれていた分は全部仕上がった。
その内に高梨さんが帰ってきた。
挨拶をして手伝えることをつめていく。来週昼間にシフトに入る。
サーフィン君は骨折をしていてしばらく無理らしい。
彼女が頑張るキャンペーン中、僕もサラリーマンになりそうだ。
写真や報告メモを転送してもらいまとめておく。
面接を終えて一度帰ってきた所長が高梨さんと軽く打ち合わせて向井さんに契約書をお願いする。名前を呼ばれてサブメンバーとして加わることになった。
契約書を持って所長が依頼主の元へ。
やがて帰ってきた所長と高梨さんの打ち合わせに加わる。また、浮気調査。
しかも依頼人は妊娠中。やりきれない。これは、絶対誰も幸せにならない。
1週間、対象の仕事後を追尾することになった。時間も規則的だしやりやすい。
土曜日の追尾要員にもなった。
奥さんは実家に戻って里帰り分娩の用意をするということで対象者を野放しにする予定。
ふっ~。
仕事を終わりにして、一度良平さんのところへ向かう。
家族が帰ってきてるらしい。このところ静かだった家ににぎやかな声が響いてる。
「どうも佐野です。こんにちは。」
「あらあらあらら、佐野君、聞いたわよ。かわいい子を連れ込んでおじいちゃんの相手をさせたって。」
「連れ込んだって、淳子さん。助手ですよ。お帰りなさい、旅行が楽しかったようですね。」
「土産話よりすごい話をおじいさんがしてくれるから。話題の主役は佐野君よ。」
「珍しい格好だけど時間ある?上がって。」
「すみません。お邪魔します、お疲れなのに。」
「もう、そんな疲れなんて吹き飛んだわよ。」
「あなた、佐野君が来てくれた。ほら直接聞きましょう。」
淳子さんについていつもの広い和室に行く。
「どうも、お邪魔します。」
「珍しいね、スーツ。」
「はい、仕事後なんです。すみません、お疲れのところ。」
博さんに挨拶して書類を出しておく。いつもなら仕事終了のサインをもらい清算してもらうのだが。
「で、何々?商店街のパン屋さんにいるんだって?カフェもあるから皆で行こうって言ってるんだけど。月曜日以外ね。来月行くからね。」
「良平さん、真奈がそんなにぽろぽろと喋ったんですか?」
「おお、遠いから来れないでしょうって、配達してくれると言うとったじゃろ。」
「まあ、確かに約束しました。来月は彼女が張り切ってキャンペーン企画を立てたので僕が届ける係になってます。ただしばらくサラリーマン仕事が入ったのでちょっと下旬になるかもしれませんが。」
「パンを配達してくれるの?」
「配達は僕に任されました。他にもキャンペーン期間だけの焼き菓子とかあるらしいです。実物を見てないので詳しくは何とも。」
「あらぁ、でも私たちも本人に会いたいし。店に行きたいわね。」
「なんでもアクセサリーも作って自分でつけるって言うとったから。」
「そんな小さなヘアゴムとか、ブローチです。知らないと見逃しそうな。まさかカエルの着ぐるみとかは着ませんよ。」
「で、やっぱり私の勘はすごいでしょう?あの日言ってたのよ、絶対好きな人が出来てるって。」
「はははは・・・・・。」
笑うしかない。
あの日は確か初めて彼女の部屋で過ごした次の日だった。彼女出来立ての日。
この後続いた淳子さんの質問に、結局3度目となる話を繰り返した。
こうなると手際よく話せるようになるし、時系列もほぼ完ぺき。
そして見慣れた驚きの表情。
「すごいね。会いたい、真奈ちゃんに。佐野さんをそこまで追い込んだ真奈ちゃん。」
「かわいい普通の子じゃ。」
「おじいさんばっかり、随分仲良くご一緒したんでしょう。」
「そりゃそうじゃ、彼氏は木の上。二人は地上の楽園で仲良く看板作り。」
「あ、良平さん、あの看板飾ってもいいってことになったらしくて喜んでます。今デコレーション中です。忘れないように写真撮ってきます。」
「残念、おじいさん、彼氏はやきもちも焼いてくれないみたい。」
「爺はつまらん。もうちびっと若かったらのう。」
「かなり、じゃないと無理ですよ。」
やっと手に持った契約書に気がついた博さんがサインをしてくれた。
「庭の確認は大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫でした。まあ、僕よりおじいさんがOKならいいし。」
「じゃあ、また秋ごろ連絡します。」
「はい、月曜日だったらまた真奈が来たがると思います。」
「楽しみにしとる。」
「それでは失礼します。」
仕事終了。
彼女のもとへ・・・「森のキノコさん」に向かう。
まだまだ時間があるからのんびりと。
お店に顔を出すと元気に挨拶された。
「真奈、お疲れ。」
「佐野さん。お疲れ様。」
「佐野兄、お帰り。どっか行ってたの?」
さやかちゃんが出てきた。
「うん、お仕事だよ。」
「すごい、かっこいいおじさんみたい。」
「おじさん・・・・。」
ママに教えてくるっ!と言ってさやかちゃんが2階に駆け上がっていった。
務さんが顔を出す。
「あれ、どうしたの?」後ろから今日子さんもやってきて。
「なに?挨拶、わざわざスーツ着て?」
「へ、いや仕事後です。」
「なんだ真奈ちゃんの雇い主にスーツ着て挨拶に来たのかと思った。」
「なんで今更そこまで畏まるんですか。」
「佐野君、おめでとう。真奈ちゃんも。」務さんに言われる。
「ありがとうございます。でも早いね、決断。」
「ね、もしかしてってことないわよね?」
今日子さんの視線を追って彼女がぶんぶんと否定する。
恥ずかしい、ないです。あれが無傷であるかぎり。
「これからもいろいろとお世話になります。改めてよろしくお願いします。」
彼女の横に立ち挨拶する、一緒に。
「了解。本当に良かったわ。」
「うん、良かった。」
なんだかしんみりしてきた。
「務さん、さやかちゃんの予行練習は早いですよ。」
「いやあ、さすがに速攻過ぎて、多分僕なら反対するよ。」
「確かに所長に今日言われました。」
「真奈ちゃん、ご両親は何て?」
「えっと・・・・だま何にも報告してなくて、すみません。」
最後のすみませんは自分にだろう。
「まあ、とりあえず好きな人がいるくらい言っておいたほうが心の準備が出来るわよ。」
「はい。電話してみます。」
やっぱり何にも言ってないのか。
かこちゃんの梅雨の季節が終わったら夏には挨拶に行くつもりだけど。
彼女の仕事が終わるのをカフェで待つ。
コーヒーを入れてもらいタブレットを取り出して眺める、彼女が気にしないようにネットニュースをぼんやりと見て仕事をしてるふりで。お客が途切れて気がつくとパンも残り少し。
「ねえ、真奈。さっき良平さんのところに行ってきたんだけど。良平さんが淳子さん博さん夫婦にすっかりばらしてて。二人が会いたいって言ってたよ。どうにかここに顔を出したいって。ちょっと遠いけど来てくれたらいいね。」
「はい、でも言ってもらわないと私は分かりません。」
「そうだね。良平さんが一緒ならわかるけどね。」
「秋にはまた一緒に行ってくれる?」
「はい、喜んで。だって良平さんと約束しましたから。」
「お邪魔ですか?」
務さんがやってきた。
「あ、すみません。」
「真奈ちゃん今日は終わりにしよう。」
務さんに言われてパンをレジ前にまとめる。
昔手伝っていたから分かる。
カフェのかたずけをしてテーブルを拭いて、物品補充の確認をして、パン棚の掃除も手伝い。結局掃除中も誰も来なかった。
パンを袋にまとめて務さんに渡して彼女の着替えを待つ。
二人で自転車で帰る。
「思ったより早く帰れました。」
暗い中二人で帰る道、昼間の後味悪い仕事のこともすっかり忘れてた。
体が目覚めるのに時間がかかりそうだがそうも言ってられない。
彼女を送りだして着替えをする。
楽な格好で早めに良平さんのところに行く。
時間は自由にとお願いしていたから甘えて朝一で道具を引き取る。
夕方顔を出すことを告げて部屋に道具を置き、スーツに着替えて昨日と同じように調査員の仕事をする。
昨日関わった調査の中間報告の資料を作る。
依頼人は奥さん、やっぱり若い。結婚10年と少し。元同僚。
なんてことだ奥さんも浮気相手を知ってる可能性大。
携帯に位置情報のアプリを仕込むくらいには疑いも確信があり、離婚を想定しているということだった。
現在の真実を調べて欲しいということでここ1週間の調査内容報告をまとめる。
書面、画像。奥さんはわざわざ隙を作るため週末から実家に帰ってたらしい。
週末から調査が開始されてすぐに罠にかかった対象者。
日曜日の休日を一緒に過ごす二人の写真。
そしてあっさり相手の情報が取れた。
そこから出勤してるところを見ると親密さも分かる。
満員電車でもわざと自然を装いくっついてる風だ。
うまい角度からの写真が出てくる。
社内に2人がいる時に周辺情報を当たり浮気相手の女性の情報を取る。
奥さんとも知己決定。
いったいいつからなんだと疑ってしまう。
そんなこちらの気持ちも織り込まれた書類がページ数を増やしていく。
その後2日ほど同僚と飲んでる対象者を追尾。
だがさすがに同僚に不倫は隠してるらしく奥さんの話が少し出ただけ。
浮気癖とかそういうのとは違う本気の浮気か?
この土曜日からの1週間の行動を一覧にして保存、印刷する。
写真も添付して所長へ確認に行く。
もっと詳しく2人の気持ちを知りたかったらあとは別手段が必要となる。
女性側を調べればもう少し詳しい情報が手に入るかもしれないと、含みをつける様に追記するよう言われれる。
女性の方が友達に漏らしていたり、SNSなどの発信をたどりいつからの付き合いか、将来をどう見てるかなどわかるだろう。
とりあえず今回は終わりにして手放して、もう忘れることにした。
席に戻りデータを固めてパソコンを閉じる。一区切りだ。切り替えたい。
実際社内に人は少ない。外にいるほうが多いのでデスクも少しだけ、広い円卓が少しあるだけ。私物はロッカーへしまうことになってる。
依頼は調査員の核になるメンバーに振り分けサポートメンバーを適宜入れて回す。依頼人の面接室が隣にあって社員と顔を合わせるのは最小限になるようにしてある。依頼人との面接は所長のみ。調査員は支給されてるタブレットを使い、空いてる場所でデータを固める。内勤時間も少ない。
「佐野君、顔が暗いよ。」
声をかけてくれたのは昔からいる事務会計など一手に引き受けてる人、向井さん。
契約書類を面談後すぐに作成し、調査員の持ち帰る経費も含めて調査費用の書類を起こしながらも調査員への払い出し処理もする。
実に頼もしい女性で最初の不慣れな頃は何度もアドバイスをもらった。
「久しぶりにサラリーマンすると疲れますよ。」
「まあ、気持ちはわかるけどね。」
ごまかしてもお見通し。
「少し休憩してきます。」
声をかけて廊下に出る。
フロアの奥に小さな休憩室がありコーヒーが飲めるようになっている。
誰もいないそこでホッと一息。
気分転換にはメールが一番。
彼女へメールをする。
『夕方に良平さんの家族に挨拶してそのまま回る予定です。また連絡する。今日も既に足りないよ、まな。でも、がんばろ。じゃ。』
コーヒーを持って席に戻る。
あとはサーフィンの彼の分の報告書を数件チェックしてまとめ上げる。
だいたいはデータ入力と一緒にまとめてくれているのでちょっとしたチェックくらいでいでいい。
息子の結婚相手の調査があった。
30歳を超えた子供に過保護なことだ。
そんなに自分の子供の人を見る目が信じられないのか、奪われたくないものが多すぎるのか?サクサクと無感情でいようと努力してまとめ上げる。
隠し撮りされた写真を見る限り問題ない様にしか見えない。
すべてを終えて所長に提出し指示を待つ。
「佐野君、こっちはOK。助かった。明日からは?」
「夕方からは定期的な仕事が入ってるんです。あと、日、月曜日はダメです。」
「じゃあ、高梨が帰ってきたら交代要員が必要か聞いてみる。書類は全部仕上げたいから残りは空いてる時間にお願い。とりあえず急ぎは今日やってもらったからあとは来週前半でも大丈夫。」
時間を見るとまだ余裕のある時間。
「今日出来ることはやっておきます。どれをやりますか?」
所長からメモを貰う。
「この順番でまとめておいて。週末に2件調査が終わるから来週はそれやってもらおうかな。」
「はい。所長忙しいですね。」
「少ない人数でやってるからね。まったく、ひよっこで良かったよ。書類係だったからね。」
「佐野君はどうよ。結婚するんだし。」
当然離れた席越しの会話は向井さんにも筒抜けだった。
「なに?佐野君結婚するの?」向井さんが加わる。
「そうなんだって、23歳、10個も年下って事らしい。」
「江田さんに聞いたんですね。」
「まあね。レポートが必要ならまとめるって言われたけど直接聞いたほうが面白いからって言われたぞ。ほら、話せ話せ。」
円卓に向かった所長、向井さんも座って手招きされた。
昨日と同じような話をする。所長の突っ込みは昨日以上に容赦なく、向井さんのフォローは彼女側の気持ちの代弁。
自分一人随分とぼけながらのせっかちな奴という印象が残った気がする。
「二ヶ月ちょっと・・・・・。」向井さんがつぶやく。
「そりゃあ、正直に言ったら向こうの両親が心配するだろうよ。」
「だからすぐにはって思ってません。一応挨拶して、同棲の許可を貰おうかと。」
「お前、それで解消なんて出来ないんだから一緒だよ。むしろ一緒に住んだりするのすら無理。1年後に来いみたいな感じになるんじゃないか?」
「彼女が報告してるかどうかも知らなくて、その辺は分からないです。」
「なんだろう、その性急な判断は?らしくないって思うけど、納得できるような気もして。」
「確かに。」
「そのペースに付き合えてる彼女もすごい。」
「余計なお世話だが、仕事は大丈夫か?」
「はい、なんとか。マンションもローンは少額にしてあるし、あとは株を少し動かしてます。時間が取れないよりは出来るだけ時間にゆとりを持ってた方がいろいろ家事ができるので。」
「なに?家事やってるの?」
「料理はしてます。」
「23歳か・・・・、無理なタイプなのか?」
「不器用です。怪我されるくらいなら。でも教えて欲しいって言われてるのでやる気はあるようです。」
「所長、本当に余計なお世話って気がしてきましたね。何でしょうか、ドーナッツを食べすぎた後の満腹感みたいな気分です。」
「まあな、これからも声かけていいのか?」
「勿論です、何かあったらいつでも手伝いますのでよろしくお願いします。それにスーツを着ると彼女が喜ぶんです。」
「はぁ、スーツ・・・・。」向井さんが天井を向く。
「分かった、いろいろ。お前が器用だからこっちも重宝してるし。よろしく頼む。あ~、本当に塩を舐めたい気分だ。」
所長が伸びをする。
「お昼は出前にするか?おごるぞ。」
「やった~。」
向井さんが喜んで決定。
面接の予定があるということで早速出前を頼む。向井さんにお願いした。
経費で落とそうといつもは絶対開かないページから選ぶと張り切っている。
近くのお店から届いた出前を円卓に並べて囲んで食べる。
「美味しいです。出前も久しぶりです。」
「週末は旅行か?」
日、月曜日の事だろう。
「はい、師匠のところに彼女を連れて行くんです。」
「おっ、おやっさんのところか。よろしく伝えてくれ。」
「はい。やっと会いに行けるんです。大切なもの2つ揃ったら会いに来いって言われてたんです。」
「はぁ~、律儀だなあ、とっくに忘れてるんじゃないのか?」
「え、まさか。そんな・・・。」
「まあ、喜ぶだろうよ。そろそろ隠居モードだし。」
「そうなんですかね。」
「大人しく引っ込んでるとは思えないがね。」
「今頃くしゃみしてますよ。」
向井さんがお茶を入れてくれた。お礼を言っていただく。
食べ終わった容器を重ねて軽く洗いまとめる。
「ありがとうね、佐野君、本当にいい旦那さんになりそう。」
「そうですか?そうだとうれしいです。」
「まあ、そんな素直なところもね。」
年上の人には褒められる。その辺は自信があるんだけど。
何故か年下の彼女にはここぞというときに怒られる。
「佐野君、思い出し笑い?」
「えっ、すみません。」
笑われて向井さんが席に向かう。
さて、仕事仕事。
所長は面接中だった。
サーフィンの彼も上手に書類をまとめていてわかり易い。
自分がやるのはさほど大変なこともない。頼まれていた分は全部仕上がった。
その内に高梨さんが帰ってきた。
挨拶をして手伝えることをつめていく。来週昼間にシフトに入る。
サーフィン君は骨折をしていてしばらく無理らしい。
彼女が頑張るキャンペーン中、僕もサラリーマンになりそうだ。
写真や報告メモを転送してもらいまとめておく。
面接を終えて一度帰ってきた所長が高梨さんと軽く打ち合わせて向井さんに契約書をお願いする。名前を呼ばれてサブメンバーとして加わることになった。
契約書を持って所長が依頼主の元へ。
やがて帰ってきた所長と高梨さんの打ち合わせに加わる。また、浮気調査。
しかも依頼人は妊娠中。やりきれない。これは、絶対誰も幸せにならない。
1週間、対象の仕事後を追尾することになった。時間も規則的だしやりやすい。
土曜日の追尾要員にもなった。
奥さんは実家に戻って里帰り分娩の用意をするということで対象者を野放しにする予定。
ふっ~。
仕事を終わりにして、一度良平さんのところへ向かう。
家族が帰ってきてるらしい。このところ静かだった家ににぎやかな声が響いてる。
「どうも佐野です。こんにちは。」
「あらあらあらら、佐野君、聞いたわよ。かわいい子を連れ込んでおじいちゃんの相手をさせたって。」
「連れ込んだって、淳子さん。助手ですよ。お帰りなさい、旅行が楽しかったようですね。」
「土産話よりすごい話をおじいさんがしてくれるから。話題の主役は佐野君よ。」
「珍しい格好だけど時間ある?上がって。」
「すみません。お邪魔します、お疲れなのに。」
「もう、そんな疲れなんて吹き飛んだわよ。」
「あなた、佐野君が来てくれた。ほら直接聞きましょう。」
淳子さんについていつもの広い和室に行く。
「どうも、お邪魔します。」
「珍しいね、スーツ。」
「はい、仕事後なんです。すみません、お疲れのところ。」
博さんに挨拶して書類を出しておく。いつもなら仕事終了のサインをもらい清算してもらうのだが。
「で、何々?商店街のパン屋さんにいるんだって?カフェもあるから皆で行こうって言ってるんだけど。月曜日以外ね。来月行くからね。」
「良平さん、真奈がそんなにぽろぽろと喋ったんですか?」
「おお、遠いから来れないでしょうって、配達してくれると言うとったじゃろ。」
「まあ、確かに約束しました。来月は彼女が張り切ってキャンペーン企画を立てたので僕が届ける係になってます。ただしばらくサラリーマン仕事が入ったのでちょっと下旬になるかもしれませんが。」
「パンを配達してくれるの?」
「配達は僕に任されました。他にもキャンペーン期間だけの焼き菓子とかあるらしいです。実物を見てないので詳しくは何とも。」
「あらぁ、でも私たちも本人に会いたいし。店に行きたいわね。」
「なんでもアクセサリーも作って自分でつけるって言うとったから。」
「そんな小さなヘアゴムとか、ブローチです。知らないと見逃しそうな。まさかカエルの着ぐるみとかは着ませんよ。」
「で、やっぱり私の勘はすごいでしょう?あの日言ってたのよ、絶対好きな人が出来てるって。」
「はははは・・・・・。」
笑うしかない。
あの日は確か初めて彼女の部屋で過ごした次の日だった。彼女出来立ての日。
この後続いた淳子さんの質問に、結局3度目となる話を繰り返した。
こうなると手際よく話せるようになるし、時系列もほぼ完ぺき。
そして見慣れた驚きの表情。
「すごいね。会いたい、真奈ちゃんに。佐野さんをそこまで追い込んだ真奈ちゃん。」
「かわいい普通の子じゃ。」
「おじいさんばっかり、随分仲良くご一緒したんでしょう。」
「そりゃそうじゃ、彼氏は木の上。二人は地上の楽園で仲良く看板作り。」
「あ、良平さん、あの看板飾ってもいいってことになったらしくて喜んでます。今デコレーション中です。忘れないように写真撮ってきます。」
「残念、おじいさん、彼氏はやきもちも焼いてくれないみたい。」
「爺はつまらん。もうちびっと若かったらのう。」
「かなり、じゃないと無理ですよ。」
やっと手に持った契約書に気がついた博さんがサインをしてくれた。
「庭の確認は大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫でした。まあ、僕よりおじいさんがOKならいいし。」
「じゃあ、また秋ごろ連絡します。」
「はい、月曜日だったらまた真奈が来たがると思います。」
「楽しみにしとる。」
「それでは失礼します。」
仕事終了。
彼女のもとへ・・・「森のキノコさん」に向かう。
まだまだ時間があるからのんびりと。
お店に顔を出すと元気に挨拶された。
「真奈、お疲れ。」
「佐野さん。お疲れ様。」
「佐野兄、お帰り。どっか行ってたの?」
さやかちゃんが出てきた。
「うん、お仕事だよ。」
「すごい、かっこいいおじさんみたい。」
「おじさん・・・・。」
ママに教えてくるっ!と言ってさやかちゃんが2階に駆け上がっていった。
務さんが顔を出す。
「あれ、どうしたの?」後ろから今日子さんもやってきて。
「なに?挨拶、わざわざスーツ着て?」
「へ、いや仕事後です。」
「なんだ真奈ちゃんの雇い主にスーツ着て挨拶に来たのかと思った。」
「なんで今更そこまで畏まるんですか。」
「佐野君、おめでとう。真奈ちゃんも。」務さんに言われる。
「ありがとうございます。でも早いね、決断。」
「ね、もしかしてってことないわよね?」
今日子さんの視線を追って彼女がぶんぶんと否定する。
恥ずかしい、ないです。あれが無傷であるかぎり。
「これからもいろいろとお世話になります。改めてよろしくお願いします。」
彼女の横に立ち挨拶する、一緒に。
「了解。本当に良かったわ。」
「うん、良かった。」
なんだかしんみりしてきた。
「務さん、さやかちゃんの予行練習は早いですよ。」
「いやあ、さすがに速攻過ぎて、多分僕なら反対するよ。」
「確かに所長に今日言われました。」
「真奈ちゃん、ご両親は何て?」
「えっと・・・・だま何にも報告してなくて、すみません。」
最後のすみませんは自分にだろう。
「まあ、とりあえず好きな人がいるくらい言っておいたほうが心の準備が出来るわよ。」
「はい。電話してみます。」
やっぱり何にも言ってないのか。
かこちゃんの梅雨の季節が終わったら夏には挨拶に行くつもりだけど。
彼女の仕事が終わるのをカフェで待つ。
コーヒーを入れてもらいタブレットを取り出して眺める、彼女が気にしないようにネットニュースをぼんやりと見て仕事をしてるふりで。お客が途切れて気がつくとパンも残り少し。
「ねえ、真奈。さっき良平さんのところに行ってきたんだけど。良平さんが淳子さん博さん夫婦にすっかりばらしてて。二人が会いたいって言ってたよ。どうにかここに顔を出したいって。ちょっと遠いけど来てくれたらいいね。」
「はい、でも言ってもらわないと私は分かりません。」
「そうだね。良平さんが一緒ならわかるけどね。」
「秋にはまた一緒に行ってくれる?」
「はい、喜んで。だって良平さんと約束しましたから。」
「お邪魔ですか?」
務さんがやってきた。
「あ、すみません。」
「真奈ちゃん今日は終わりにしよう。」
務さんに言われてパンをレジ前にまとめる。
昔手伝っていたから分かる。
カフェのかたずけをしてテーブルを拭いて、物品補充の確認をして、パン棚の掃除も手伝い。結局掃除中も誰も来なかった。
パンを袋にまとめて務さんに渡して彼女の着替えを待つ。
二人で自転車で帰る。
「思ったより早く帰れました。」
暗い中二人で帰る道、昼間の後味悪い仕事のこともすっかり忘れてた。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる