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第二の石碑 コルセア王都カリーン
09話 コルセアの烈翔紅帝
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「おーい、石碑巡り! 城門にきてくれ!」
その時、庭の草花を楽しんでいた僕らを呼ぶ声がした。
「行こうか」
「うん」
僕らは走って城門を目指す。
到着すると、そこには先ほどの衛兵と、一人の立派なローブに身を包んだ男性が立っていた。
あれは……司祭以上の位を持つ方のみ、着衣が許される服だ。
ということは。
「ようこそカリーンへ。私はカリーン・マール聖神殿の大司教ガウェインという。石碑巡りとはまた、随分と久しぶりだ。もうしわけないが、石碑巡りならば腕輪を持っているはずだ。それを見せてもらえるかな?」
僕らは頷き合って、嵌めていた腕輪を抜き、大司教さまに渡した。
マールを神と崇めるマール教は、法皇を頂点とし、大司教、司教、司祭、聖神官、修道士という序列になっている。現在、アレンシアでマール教の大司教の座についているのは、三人しかいない。そのうちの一人と、法皇さまがいるのが、ここコルセア王国だ。
それ故、ここコルセア王都カリーンはマール教の聖地でもある。
なんでここが聖地なのかはよくわからないけれど、きっと法皇さまがいるからだろう。
「うむ、間違いない。これはセレンディア聖神殿で作られた石碑巡りの腕輪だ。衛兵、彼らを中へ。決して失礼のないように」
「ははっ!」
大司教さまは僕らに腕輪を返すと、城の中に入るよう促す。
僕とユーリエは、素直に大司教さまの後を追った。
意外にもカリーンの城の中は、一直線の通路だった。両側には窓があり、外の景色が見えるようになっている。天井は遙かに高く、どうやって描いたのか、不思議な壁画が奥へと続いていた。
ただ奇妙なのは……この通路からは白と茶のマナが降り注ぎ、先が見えないほど長いということだ。
「本当に屋内なのかな、ここ」
思わず呟いた言葉に、ユーリエが反応した。
「もうすぐわかると思うよ」
「え?」
平然と、大司教さまについて行くユーリエ。
僕も置いて行かれまいと、その隣を歩く。
すると、ある地点で、軽い目眩のようなものを感じた。
それも二回、三回、四回と、歩くたびに感じていく。
正面は相変わらず、長い通路が延びているままだった。
「カナク、外を見て」
「え……あ!」
僕はユーリエに言われるがまま外を見て、驚愕した。
いつの間にか高所にいて、僕らがいた地面は遙か眼下にあったのだ。
「これは『惑わしの魔法』!?」
「うん。天井からマナが降りてきてたでしょ。あれ、この魔法のためのマナだよ」
ははぁ、と唸る。
人間のユーリエより、銀獣人の僕の方がマナや気配、魔法の感知には優れているはずだけれど、ユーリエに言われるまで全く気がつかなかった。
改めて思う。ユーリエは天才だ。
「凄いな、君は。初見でこの通路にかけられた『惑わしの魔法』を見破るとは」
大司教さまが足を止めて振り返り、目を丸くしてユーリエに視線を投げる。
「今、四回ほど魔法が発動していましたので、ここはお城の四階ということですね。それでこのお城は何階構造なのでしょうか。そろそろ最上階だと思いますが」
ユーリエの言葉に、大司教さまも舌を巻く。
「君たち、名は?」
「私はユーリエ・セレンディアと申します。こちらのおともはカナクです」
うん、誰がおともだって?
「セレンディア? ということは……あのセレンディア公オルデン殿の?」
「はい、娘です」
大司教さまは得心した顔で、再び僕らに背を向けて歩き出す。
「そうか……ならば、あらかじめ言っておこう。この先におられる方には、くれぐれも粗相のないように。いくら優れた魔法使いとはいえ、あの方の前には無力だ」
「!?」
その言葉に僕もユーリエも、緊張が走った。
コルセア王国の王都、カリーン城にいる、あのお方。
そんなの……ここフェーン地方を一代でまとめ上げ“烈翔紅帝”と渾名されるオリヴィア女王さましかいない。
僕らはマールの石碑を見るため、聖神殿に行きたいだけなのに、なんで女王さまに謁見することになってるんだ?
「君らの疑問は手に取るようにわかる。だが、セレンディアからの連絡で二人の石碑巡りが来訪したら、連れてくるようにと命令を受けているのでな」
「そんな……」
オリヴィア女王さまに気に入られないと、石碑を見られないってことかな。
それは困るし、今まで聞いたことがない。
不安に思っていると、いつの間にか目の前に扉があった。
カリーンの紋章が入った、大きな扉。ここって、謁見の間?
「さあ、陛下がお待ちだ」
ユーリエと視線を交わす。
真剣な表情でこくり、と頷くユーリエ。
やはり、この部屋の奥から発せられている圧を、ユーリエも感じ取っているようだ。
僕は一歩前に出て、扉を開いた。
大体、王が座す間の入り口には両脇に甲冑を着た衛兵がいるものだと思っていたけれど、謁見の間の入り口にそれらしき兵士の姿はなかった。
城門の前には衛兵がいたのに、どういうことだろう。
謁見の間は、真ん中に赤いカーペットが敷かれていて、玉座の後ろには扉にも刻まれている、コルセア王国の国旗が飾られている。
そのシンボルは不思議なものだった。
六つの玉に囲まれ、真ん中に大きな玉が一つ。そして右上と左下から、それぞれ手が伸びて、真ん中の大きな玉を上下から挟むように翳している。
あれが“コルセアの烈翔紅帝”と呼ばれ、この地を暴れ回り、コルセアを大国にのしあげた、オリヴィア女王が掲げた旗なのか。
きっと、強い想いが込められているに違いない。
そして玉座には、目元だけを鉄の仮面で隠した女性が座っていた。
橙色の髪を束ね、朱色の胸当てと腕当てをつけている。ふわりとした白いスカートは、庭園に咲いていた花を連想させる。ドレスと甲冑を上手く織り交ぜたその服装は、まさにコルセアの烈翔紅帝の名に相応しく、淑女の純美さと戦士の剛健さを併せ持っていた。
そして本人はやや俯き加減で、唇を引き締めている。
まるで眠っているかのようにも見えた。
「陛下、セレンディアからの石碑巡りをお連れしました」
大司教さまが言うと、女王さまがゆっくり顔を上げる。
艶のある唇と、すらりと整った鼻だけで、かなりの美人だと想像できた。
「そう。あなたたちが、石碑巡り……」
その声は暖かみがあるけれど、どこか憂いを帯びていた。
「勇敢なる石碑巡りのお二人さん。あなたたちのことを、教えてもらえる?」
僕は一歩前に出て、信徒の挨拶を行いながら言った。
「お目にかかれて恐悦です。僕はカナク、こちらの連れはユーリエ・セレンディアと申します」
「む!」
僕が一足先に自己紹介をしたのが気に入らなかったのか、ユーリエが僕の膝裏を軽く蹴飛ばした。
ちょっと、女王さまの目の前で!
「ユーリエ・セレンディア……ああ、オルデンが養女に迎えたという子ね」
「お初にお目にかかります。ユーリエです。おともが大変、失礼いたしました」
むう、何故そんなに僕をおともにしたがるんだ。
ユーリエの方からから連れて行けって言ってきたくせに。
……猫かぶりユーリエからだけど。
「ははは、こんなに可愛らしい石碑巡りは初めてよ。法皇として、嬉しく思うわ」
「!?」
僕とユーリエはその言葉で顔を上げ、背筋が伸びた。
「女王さまが、ほ、法皇さま、なのですか!?」
おそるおそる、伺ってみる。
「あら、ルイやフランツは、なにも言ってなかったの?」
「ソーンさんからはなにも聞いていませんし、司教さまからも伺っておりません。初耳です」
「はあ、全く困ったものね。肝心なことを言わずにカナクたちを寄越すなんて。ほんとに、いくつになっても子供じみてるんだから」
嘆息する女王さま。
いや本当に、先に教えて欲しかったよ司教さま、ソーンさん!
「時にユーリエ。あなたはオルデンの養女で、セレンディアの魔法学校を首席で卒業した天才だと聞いているわ。本当なの?」
女王さまから尋ねられて、ユーリエは片膝をついて顔を上げる。
僕も慌てて、ユーリエに倣った。
「はい。養父が言っておりました。イルミナル地方を統一できたのは、コルセアからの助力があったからだと。故に私も魔法に興味を持ち、微力を尽くしたしだいです」
「天才とは、時に大きな苦しみを味わうものよ。私も“コルセアの烈翔紅帝”などと呼ばれているけれど、元はただの村娘だったんだから」
「「え、ええ、ええええええええええええええ!?」」
む、村娘から、一国の王となった!?
しかもアレンシアのマール聖神殿を束ねる、マール法皇にも?
信じられないようなサクセス・ストーリーだ。
「当然だけど、私は普通の女の子じゃなかった。ある意味ではユーリエ、あなたを超える天才だと自負しているわ」
「仰る通りだと思います。その玉座に腰掛けられるのは、誰にでもできることではありません」
「ふふ、そうね。私もそう思うわ。悲しいことも、辛いことも、たくさんあったけれど……少しでも報われればと、この地で頑張ったわ」
女王さまが、天を仰ぐ。
オリヴィア女王さまは一体、どれだけの想いを重ねてきたのだろう。
経歴は華々しいけれど、その道が全て順調だったはずがない。僕は初めて女王さまと会見し、さすがはマール法皇さまだと思った。
「ところでユーリエ。私はあなたに一つ、懸念があるわ」
「はい?」
女王さまの声色が、変わった。
「あなたの噂はここコルセア王国にも届いているわ。魔法学校の二学年にして全ての魔法をマスターし、魔導師の免許をも取得してしまったとか。それは本当なの?」
「はい」
ユーリエが短く答えた。
そして女王様は、更に声音を落として訊ねる。
「まさかとは思うけど……“アルヴァダーグ”も?」
アル……え?
なんだろう。
聞いたことがない魔法だ。
何故か重く、緊張感のある雰囲気の中、ユーリエは静かに口を開いた。
「使えます」
その時、庭の草花を楽しんでいた僕らを呼ぶ声がした。
「行こうか」
「うん」
僕らは走って城門を目指す。
到着すると、そこには先ほどの衛兵と、一人の立派なローブに身を包んだ男性が立っていた。
あれは……司祭以上の位を持つ方のみ、着衣が許される服だ。
ということは。
「ようこそカリーンへ。私はカリーン・マール聖神殿の大司教ガウェインという。石碑巡りとはまた、随分と久しぶりだ。もうしわけないが、石碑巡りならば腕輪を持っているはずだ。それを見せてもらえるかな?」
僕らは頷き合って、嵌めていた腕輪を抜き、大司教さまに渡した。
マールを神と崇めるマール教は、法皇を頂点とし、大司教、司教、司祭、聖神官、修道士という序列になっている。現在、アレンシアでマール教の大司教の座についているのは、三人しかいない。そのうちの一人と、法皇さまがいるのが、ここコルセア王国だ。
それ故、ここコルセア王都カリーンはマール教の聖地でもある。
なんでここが聖地なのかはよくわからないけれど、きっと法皇さまがいるからだろう。
「うむ、間違いない。これはセレンディア聖神殿で作られた石碑巡りの腕輪だ。衛兵、彼らを中へ。決して失礼のないように」
「ははっ!」
大司教さまは僕らに腕輪を返すと、城の中に入るよう促す。
僕とユーリエは、素直に大司教さまの後を追った。
意外にもカリーンの城の中は、一直線の通路だった。両側には窓があり、外の景色が見えるようになっている。天井は遙かに高く、どうやって描いたのか、不思議な壁画が奥へと続いていた。
ただ奇妙なのは……この通路からは白と茶のマナが降り注ぎ、先が見えないほど長いということだ。
「本当に屋内なのかな、ここ」
思わず呟いた言葉に、ユーリエが反応した。
「もうすぐわかると思うよ」
「え?」
平然と、大司教さまについて行くユーリエ。
僕も置いて行かれまいと、その隣を歩く。
すると、ある地点で、軽い目眩のようなものを感じた。
それも二回、三回、四回と、歩くたびに感じていく。
正面は相変わらず、長い通路が延びているままだった。
「カナク、外を見て」
「え……あ!」
僕はユーリエに言われるがまま外を見て、驚愕した。
いつの間にか高所にいて、僕らがいた地面は遙か眼下にあったのだ。
「これは『惑わしの魔法』!?」
「うん。天井からマナが降りてきてたでしょ。あれ、この魔法のためのマナだよ」
ははぁ、と唸る。
人間のユーリエより、銀獣人の僕の方がマナや気配、魔法の感知には優れているはずだけれど、ユーリエに言われるまで全く気がつかなかった。
改めて思う。ユーリエは天才だ。
「凄いな、君は。初見でこの通路にかけられた『惑わしの魔法』を見破るとは」
大司教さまが足を止めて振り返り、目を丸くしてユーリエに視線を投げる。
「今、四回ほど魔法が発動していましたので、ここはお城の四階ということですね。それでこのお城は何階構造なのでしょうか。そろそろ最上階だと思いますが」
ユーリエの言葉に、大司教さまも舌を巻く。
「君たち、名は?」
「私はユーリエ・セレンディアと申します。こちらのおともはカナクです」
うん、誰がおともだって?
「セレンディア? ということは……あのセレンディア公オルデン殿の?」
「はい、娘です」
大司教さまは得心した顔で、再び僕らに背を向けて歩き出す。
「そうか……ならば、あらかじめ言っておこう。この先におられる方には、くれぐれも粗相のないように。いくら優れた魔法使いとはいえ、あの方の前には無力だ」
「!?」
その言葉に僕もユーリエも、緊張が走った。
コルセア王国の王都、カリーン城にいる、あのお方。
そんなの……ここフェーン地方を一代でまとめ上げ“烈翔紅帝”と渾名されるオリヴィア女王さましかいない。
僕らはマールの石碑を見るため、聖神殿に行きたいだけなのに、なんで女王さまに謁見することになってるんだ?
「君らの疑問は手に取るようにわかる。だが、セレンディアからの連絡で二人の石碑巡りが来訪したら、連れてくるようにと命令を受けているのでな」
「そんな……」
オリヴィア女王さまに気に入られないと、石碑を見られないってことかな。
それは困るし、今まで聞いたことがない。
不安に思っていると、いつの間にか目の前に扉があった。
カリーンの紋章が入った、大きな扉。ここって、謁見の間?
「さあ、陛下がお待ちだ」
ユーリエと視線を交わす。
真剣な表情でこくり、と頷くユーリエ。
やはり、この部屋の奥から発せられている圧を、ユーリエも感じ取っているようだ。
僕は一歩前に出て、扉を開いた。
大体、王が座す間の入り口には両脇に甲冑を着た衛兵がいるものだと思っていたけれど、謁見の間の入り口にそれらしき兵士の姿はなかった。
城門の前には衛兵がいたのに、どういうことだろう。
謁見の間は、真ん中に赤いカーペットが敷かれていて、玉座の後ろには扉にも刻まれている、コルセア王国の国旗が飾られている。
そのシンボルは不思議なものだった。
六つの玉に囲まれ、真ん中に大きな玉が一つ。そして右上と左下から、それぞれ手が伸びて、真ん中の大きな玉を上下から挟むように翳している。
あれが“コルセアの烈翔紅帝”と呼ばれ、この地を暴れ回り、コルセアを大国にのしあげた、オリヴィア女王が掲げた旗なのか。
きっと、強い想いが込められているに違いない。
そして玉座には、目元だけを鉄の仮面で隠した女性が座っていた。
橙色の髪を束ね、朱色の胸当てと腕当てをつけている。ふわりとした白いスカートは、庭園に咲いていた花を連想させる。ドレスと甲冑を上手く織り交ぜたその服装は、まさにコルセアの烈翔紅帝の名に相応しく、淑女の純美さと戦士の剛健さを併せ持っていた。
そして本人はやや俯き加減で、唇を引き締めている。
まるで眠っているかのようにも見えた。
「陛下、セレンディアからの石碑巡りをお連れしました」
大司教さまが言うと、女王さまがゆっくり顔を上げる。
艶のある唇と、すらりと整った鼻だけで、かなりの美人だと想像できた。
「そう。あなたたちが、石碑巡り……」
その声は暖かみがあるけれど、どこか憂いを帯びていた。
「勇敢なる石碑巡りのお二人さん。あなたたちのことを、教えてもらえる?」
僕は一歩前に出て、信徒の挨拶を行いながら言った。
「お目にかかれて恐悦です。僕はカナク、こちらの連れはユーリエ・セレンディアと申します」
「む!」
僕が一足先に自己紹介をしたのが気に入らなかったのか、ユーリエが僕の膝裏を軽く蹴飛ばした。
ちょっと、女王さまの目の前で!
「ユーリエ・セレンディア……ああ、オルデンが養女に迎えたという子ね」
「お初にお目にかかります。ユーリエです。おともが大変、失礼いたしました」
むう、何故そんなに僕をおともにしたがるんだ。
ユーリエの方からから連れて行けって言ってきたくせに。
……猫かぶりユーリエからだけど。
「ははは、こんなに可愛らしい石碑巡りは初めてよ。法皇として、嬉しく思うわ」
「!?」
僕とユーリエはその言葉で顔を上げ、背筋が伸びた。
「女王さまが、ほ、法皇さま、なのですか!?」
おそるおそる、伺ってみる。
「あら、ルイやフランツは、なにも言ってなかったの?」
「ソーンさんからはなにも聞いていませんし、司教さまからも伺っておりません。初耳です」
「はあ、全く困ったものね。肝心なことを言わずにカナクたちを寄越すなんて。ほんとに、いくつになっても子供じみてるんだから」
嘆息する女王さま。
いや本当に、先に教えて欲しかったよ司教さま、ソーンさん!
「時にユーリエ。あなたはオルデンの養女で、セレンディアの魔法学校を首席で卒業した天才だと聞いているわ。本当なの?」
女王さまから尋ねられて、ユーリエは片膝をついて顔を上げる。
僕も慌てて、ユーリエに倣った。
「はい。養父が言っておりました。イルミナル地方を統一できたのは、コルセアからの助力があったからだと。故に私も魔法に興味を持ち、微力を尽くしたしだいです」
「天才とは、時に大きな苦しみを味わうものよ。私も“コルセアの烈翔紅帝”などと呼ばれているけれど、元はただの村娘だったんだから」
「「え、ええ、ええええええええええええええ!?」」
む、村娘から、一国の王となった!?
しかもアレンシアのマール聖神殿を束ねる、マール法皇にも?
信じられないようなサクセス・ストーリーだ。
「当然だけど、私は普通の女の子じゃなかった。ある意味ではユーリエ、あなたを超える天才だと自負しているわ」
「仰る通りだと思います。その玉座に腰掛けられるのは、誰にでもできることではありません」
「ふふ、そうね。私もそう思うわ。悲しいことも、辛いことも、たくさんあったけれど……少しでも報われればと、この地で頑張ったわ」
女王さまが、天を仰ぐ。
オリヴィア女王さまは一体、どれだけの想いを重ねてきたのだろう。
経歴は華々しいけれど、その道が全て順調だったはずがない。僕は初めて女王さまと会見し、さすがはマール法皇さまだと思った。
「ところでユーリエ。私はあなたに一つ、懸念があるわ」
「はい?」
女王さまの声色が、変わった。
「あなたの噂はここコルセア王国にも届いているわ。魔法学校の二学年にして全ての魔法をマスターし、魔導師の免許をも取得してしまったとか。それは本当なの?」
「はい」
ユーリエが短く答えた。
そして女王様は、更に声音を落として訊ねる。
「まさかとは思うけど……“アルヴァダーグ”も?」
アル……え?
なんだろう。
聞いたことがない魔法だ。
何故か重く、緊張感のある雰囲気の中、ユーリエは静かに口を開いた。
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