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石碑巡り・その終焉
03話 さよなら
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「カナク! ばか!」
「えぇ……ぼく、がんばっだのに……ぞれに、ぎんじゅうじんだったっでごと、だまっでで、ごべん」
「銀獣人なんて、どーでもいいッ! カナクはカナクじゃない!」
「はは……ゲホッ……うれじいな」
ユーリエは僕を抱いたまま、座り込んだ。
ユーリエの太ももが、僕の頭の後ろにある。
幸せ。
これ以上ないくらい、幸せだ。
「ぜぎびめぐり、ぼんどうに、だのじがった」
「うん。私も!」
「ぼくのきずば、ぢめいじょうだ。もう、どんなまぼうでも、なおぜない」
「…………」
ぼろぼろと涙を流すユーリエ、雨と一緒に、僕の口の中にしょっぱい涙が染みこんだ。
憧れだったユーリエが、僕のために泣いてくれている。
最高の終わり方じゃないか。
「ゆーりえ、ずぎ」
「ガナグぅ……だいずぎ」
鼻声で、言葉になっていなくて。
それでも心は通じ合っている。
血を、多く流しすぎた。
そろそろ意識が、遠くなってきた。
手足の感覚もない。
お別れの時間だ。
そう思っていると、急にユーリエが立ち上がった。
「ディゴバの石碑を見た時から、なんとなく感じてたんだ」
……?
ユーリエはなにを言っているんだ?
「いいカナク、なにがあってもあの丘の上の石碑を見て! 私、頑張るから!」
ユーリエがワンドをぴしり、と前に突き出す。
そして、周囲に漂う全てのマナを集めていった。
全部のマナ?
なん、だ?
全てのマナを使う魔法だなんて、禁術しか……。
まさか。
僕の脳裏に、コルセア王都カリーンでの一幕が蘇る。
【そういう問題ではない。いいかユーリエ、これは警告じゃない。命令だ。あれは禁術中の禁術。絶対に使ってはいけない。我が国の魔法院が総力を挙げて調べさせているが、奇妙すぎる】
【一言でいうならば、あれは魔法ですらない。アレンシアには存在してはならないものだ。おそらく……魔王の術だろうな】
まさか!
「ユーリエぇ! やべろ!」
僕に背を向けて、細かい詠唱文を真紅の魔法陣に書き込みながら、ユーリエは言った。
真紅の魔法陣……なんだ、なんなんだあれは!?
「この禁術はね、唱えたものの願いを叶えてくれるというものなの。もちろん、限度はあるけれど、瀕死の人の命を救うくらいの力はあると思うわ。それがたとえ……銀獣人であろうとね」
「やべろ、やべてくれ、ユーリエ!」
僕は泣きながら、ユーリエに懇願する。
しかしユーリエは、激しく首を振った。
「ユーリエは、生きでぐれ。ぼぐなんが、ぼおって……ゴホッ、ゴホゴホ」
ぼたぼたと零れる血で、地面が真紅に染まっていく。
血に混じったまなですら、ユーリエに吸われていった。
「生きないといけないのはカナクなのよ。私の人生で唯一、大好きになったひと……カナク。この命を懸けて、救ってみせる!」
今まで見たこともない、真紅の魔法陣が赤く輝く。
「よぜ……やべろおおおおおおお!」
ユーリエは魔法陣に背を向けて振り返り、僕に笑顔を向けてくれた。
先端に紅いマナを溜め込んだワンドを魔法陣に突き刺せば、禁術が発動してしまう!
「カナク、本当にありがとう。心から愛してるわ」
「ぼぐも、だよ」
にっ、と目を細め、口許を緩めるユーリエ。
今まで見た表情の中で、最高の笑顔だった。
僕はユーリエが好きだ。
だから……僕を置いていかないでくれ。
そんな想いも空しく、ユーリエは振り向いて魔法陣に向かってワンドを掲げて……。
叫んだ。
「白夢に囚われし魔王ゼクトよ。我の望みは“彼のものの傷を完全に癒やす”こと。血と紅の盟約によってこれを契りとし、我の願いを叶えよ……『アルヴァダーグ』!」
ユーリエが魔法を唱えると、紅い魔法陣から僕に温かな光が差し込んだ。
背中の痛みが消え、灰が風にほどけていく。あれは僕に刺さっていた矢だろう。
そして全身の傷が瞬時に元通りとなり、痛みは消え去った。
回復系魔法の頂点である『完全治癒の魔法』ですら、傷は治せても疲労までは回復できない。
ところが僕の身体は、傷を受ける前の状態に戻っていた。息も整い、重苦しかった疲労感もない。
夜にぐっすり眠って、朝日を浴びて目覚めたかのような、爽快感すらあった。
「ユーリエ……」
僕は慌てて立ち上がると、ユーリエは本当に嬉しそうな笑顔を僕に向けていた。
でも、その後ろには、真紅の魔法陣が不気味に浮いている。
雨が静かに降り注ぐ中、ユーリエが口を開く。
「カナク、本当にありがとう。私は今まで他人を信じられない人間だった。でも、カナクと一緒に石碑巡りをして、楽しいことがいっぱいあって、人を好きになるっていいなあ、って思えるようになったんだ」
「なにを言ってるんだよユーリエ。僕たちはまだこれからじゃないか。君は僕が好きなんだろう? 僕だって君が大好きだ。愛してる。だから、これからもずっと一緒にいようよ! ね?」
涙が止まらなかった。
わかっていた。
ユーリエは、覚悟を決めてしまっていた。
傷つき、命を失いかけた僕を助け、その代償を払うことを。
「石碑巡り、本当に楽しかった」
「うん」
「どきどきしたね」
「うん」
「ちょっと恥ずかしくて……気持ちよかった」
「……うん」
なんだよこれ。
まるで、お別れの言葉みたいじゃないか。
やめてよ。
やめてくれよ!
「私はこれから、私にしかできない旅をする。だからカナク、あなたもあなたにしかできない旅をして」
「さっきから、なにを言ってるんだよユーリエ!」
僕が涙を弾かせて顔を振り上げ、思いっきり叫ぶと、ユーリエは静かに涙を流しながら言った。
「おわかれの言葉よ」
「嫌だ! 君になにかしようとしているのは、その魔法陣なんだろ? そんなの消してやる。だから――」
「駄目だよ。これは魔法じゃない。禁術だもん」
「ぐっ……」
僕は紅く輝く魔法陣に目を向ける。
五重の円に四列の詠唱文!?
これを記憶するのは……厳しいっ!
「カナク、私、これでも幸せなんだよ。あなたを守れて嬉しかった」
「そんな言葉は聞きたくない!」
その時。
ユーリエの後ろの魔法陣が大きく広がると、ゆっくり上昇していき、透けた球体に変化する。
そして、がぱ、と牙のある口だけが開くと、ユーリエの全身にかぶりついた!
球体に飲み込まれたユーリエは、微笑みを絶やさなかった。
「ユーリエぇええええええええええええええ!」
ユーリエの姿が球体の中で変わっていく。
僕の大好きなすみれ色の髪と、宝石のような瞳が、血のような真紅に染まっていった。
僕があげたペンダントは砕け散り、砂のように崩れた。
「ああ……ああああ!」
それでもユーリエは目を細めて、笑っていた。
青のジャケットと、ミニスカート。
左の腕には石碑巡りの腕輪。黒のニーハイブーツ。
いつもの、ユーリエの格好だ。
ユーリエはきりっと顔色を変えると、右腕をあげて指さした。
その方向は……今まで知られていなかった、五つ目のマールの石碑がある場所だった。
やがて、球体が紅く染まっていく。
「よ、よせ、やめろぉ!」
僕は慌ててワンドを探したけれど、脱ぎ捨てたローブに差しっぱなしにしているのを思いだした。
これなら銀獣人の姿になった方が早い!
全力でマナを辺りから吸収し始めた、その時。
ユーリエは満面の笑みを浮かべて、手を振った。
「ユーリエぇえええええええ!」
次の瞬時、球体が真紅に染まると、ユーリエごと雨粒のように弾け飛んだ。
僕は呆然と、消えてしまったユーリエの残滓を追った。
よろよろと、ユーリエがいた場所まで歩く。
身体が震えて止まらない。
なんとも表現しがたい喪失感に、打ちのめされた。
桃を囓って、笑うユーリエ。
からかって、照れるユーリエ。
ネウのために本気で、怒ったユーリエ。
凜とした立ち姿で、ワンドを構えるユーリエ。
濡れた瞳で、艶っぽくなるユーリエ。
プレゼントを渡した時に見せた、喜ぶユーリエ。
石碑巡りでの思い出が僕の胸を締めつける。
どさ、と両膝を突き、僕は……。
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
地面に向かって、叫び泣いた。
「えぇ……ぼく、がんばっだのに……ぞれに、ぎんじゅうじんだったっでごと、だまっでで、ごべん」
「銀獣人なんて、どーでもいいッ! カナクはカナクじゃない!」
「はは……ゲホッ……うれじいな」
ユーリエは僕を抱いたまま、座り込んだ。
ユーリエの太ももが、僕の頭の後ろにある。
幸せ。
これ以上ないくらい、幸せだ。
「ぜぎびめぐり、ぼんどうに、だのじがった」
「うん。私も!」
「ぼくのきずば、ぢめいじょうだ。もう、どんなまぼうでも、なおぜない」
「…………」
ぼろぼろと涙を流すユーリエ、雨と一緒に、僕の口の中にしょっぱい涙が染みこんだ。
憧れだったユーリエが、僕のために泣いてくれている。
最高の終わり方じゃないか。
「ゆーりえ、ずぎ」
「ガナグぅ……だいずぎ」
鼻声で、言葉になっていなくて。
それでも心は通じ合っている。
血を、多く流しすぎた。
そろそろ意識が、遠くなってきた。
手足の感覚もない。
お別れの時間だ。
そう思っていると、急にユーリエが立ち上がった。
「ディゴバの石碑を見た時から、なんとなく感じてたんだ」
……?
ユーリエはなにを言っているんだ?
「いいカナク、なにがあってもあの丘の上の石碑を見て! 私、頑張るから!」
ユーリエがワンドをぴしり、と前に突き出す。
そして、周囲に漂う全てのマナを集めていった。
全部のマナ?
なん、だ?
全てのマナを使う魔法だなんて、禁術しか……。
まさか。
僕の脳裏に、コルセア王都カリーンでの一幕が蘇る。
【そういう問題ではない。いいかユーリエ、これは警告じゃない。命令だ。あれは禁術中の禁術。絶対に使ってはいけない。我が国の魔法院が総力を挙げて調べさせているが、奇妙すぎる】
【一言でいうならば、あれは魔法ですらない。アレンシアには存在してはならないものだ。おそらく……魔王の術だろうな】
まさか!
「ユーリエぇ! やべろ!」
僕に背を向けて、細かい詠唱文を真紅の魔法陣に書き込みながら、ユーリエは言った。
真紅の魔法陣……なんだ、なんなんだあれは!?
「この禁術はね、唱えたものの願いを叶えてくれるというものなの。もちろん、限度はあるけれど、瀕死の人の命を救うくらいの力はあると思うわ。それがたとえ……銀獣人であろうとね」
「やべろ、やべてくれ、ユーリエ!」
僕は泣きながら、ユーリエに懇願する。
しかしユーリエは、激しく首を振った。
「ユーリエは、生きでぐれ。ぼぐなんが、ぼおって……ゴホッ、ゴホゴホ」
ぼたぼたと零れる血で、地面が真紅に染まっていく。
血に混じったまなですら、ユーリエに吸われていった。
「生きないといけないのはカナクなのよ。私の人生で唯一、大好きになったひと……カナク。この命を懸けて、救ってみせる!」
今まで見たこともない、真紅の魔法陣が赤く輝く。
「よぜ……やべろおおおおおおお!」
ユーリエは魔法陣に背を向けて振り返り、僕に笑顔を向けてくれた。
先端に紅いマナを溜め込んだワンドを魔法陣に突き刺せば、禁術が発動してしまう!
「カナク、本当にありがとう。心から愛してるわ」
「ぼぐも、だよ」
にっ、と目を細め、口許を緩めるユーリエ。
今まで見た表情の中で、最高の笑顔だった。
僕はユーリエが好きだ。
だから……僕を置いていかないでくれ。
そんな想いも空しく、ユーリエは振り向いて魔法陣に向かってワンドを掲げて……。
叫んだ。
「白夢に囚われし魔王ゼクトよ。我の望みは“彼のものの傷を完全に癒やす”こと。血と紅の盟約によってこれを契りとし、我の願いを叶えよ……『アルヴァダーグ』!」
ユーリエが魔法を唱えると、紅い魔法陣から僕に温かな光が差し込んだ。
背中の痛みが消え、灰が風にほどけていく。あれは僕に刺さっていた矢だろう。
そして全身の傷が瞬時に元通りとなり、痛みは消え去った。
回復系魔法の頂点である『完全治癒の魔法』ですら、傷は治せても疲労までは回復できない。
ところが僕の身体は、傷を受ける前の状態に戻っていた。息も整い、重苦しかった疲労感もない。
夜にぐっすり眠って、朝日を浴びて目覚めたかのような、爽快感すらあった。
「ユーリエ……」
僕は慌てて立ち上がると、ユーリエは本当に嬉しそうな笑顔を僕に向けていた。
でも、その後ろには、真紅の魔法陣が不気味に浮いている。
雨が静かに降り注ぐ中、ユーリエが口を開く。
「カナク、本当にありがとう。私は今まで他人を信じられない人間だった。でも、カナクと一緒に石碑巡りをして、楽しいことがいっぱいあって、人を好きになるっていいなあ、って思えるようになったんだ」
「なにを言ってるんだよユーリエ。僕たちはまだこれからじゃないか。君は僕が好きなんだろう? 僕だって君が大好きだ。愛してる。だから、これからもずっと一緒にいようよ! ね?」
涙が止まらなかった。
わかっていた。
ユーリエは、覚悟を決めてしまっていた。
傷つき、命を失いかけた僕を助け、その代償を払うことを。
「石碑巡り、本当に楽しかった」
「うん」
「どきどきしたね」
「うん」
「ちょっと恥ずかしくて……気持ちよかった」
「……うん」
なんだよこれ。
まるで、お別れの言葉みたいじゃないか。
やめてよ。
やめてくれよ!
「私はこれから、私にしかできない旅をする。だからカナク、あなたもあなたにしかできない旅をして」
「さっきから、なにを言ってるんだよユーリエ!」
僕が涙を弾かせて顔を振り上げ、思いっきり叫ぶと、ユーリエは静かに涙を流しながら言った。
「おわかれの言葉よ」
「嫌だ! 君になにかしようとしているのは、その魔法陣なんだろ? そんなの消してやる。だから――」
「駄目だよ。これは魔法じゃない。禁術だもん」
「ぐっ……」
僕は紅く輝く魔法陣に目を向ける。
五重の円に四列の詠唱文!?
これを記憶するのは……厳しいっ!
「カナク、私、これでも幸せなんだよ。あなたを守れて嬉しかった」
「そんな言葉は聞きたくない!」
その時。
ユーリエの後ろの魔法陣が大きく広がると、ゆっくり上昇していき、透けた球体に変化する。
そして、がぱ、と牙のある口だけが開くと、ユーリエの全身にかぶりついた!
球体に飲み込まれたユーリエは、微笑みを絶やさなかった。
「ユーリエぇええええええええええええええ!」
ユーリエの姿が球体の中で変わっていく。
僕の大好きなすみれ色の髪と、宝石のような瞳が、血のような真紅に染まっていった。
僕があげたペンダントは砕け散り、砂のように崩れた。
「ああ……ああああ!」
それでもユーリエは目を細めて、笑っていた。
青のジャケットと、ミニスカート。
左の腕には石碑巡りの腕輪。黒のニーハイブーツ。
いつもの、ユーリエの格好だ。
ユーリエはきりっと顔色を変えると、右腕をあげて指さした。
その方向は……今まで知られていなかった、五つ目のマールの石碑がある場所だった。
やがて、球体が紅く染まっていく。
「よ、よせ、やめろぉ!」
僕は慌ててワンドを探したけれど、脱ぎ捨てたローブに差しっぱなしにしているのを思いだした。
これなら銀獣人の姿になった方が早い!
全力でマナを辺りから吸収し始めた、その時。
ユーリエは満面の笑みを浮かべて、手を振った。
「ユーリエぇえええええええ!」
次の瞬時、球体が真紅に染まると、ユーリエごと雨粒のように弾け飛んだ。
僕は呆然と、消えてしまったユーリエの残滓を追った。
よろよろと、ユーリエがいた場所まで歩く。
身体が震えて止まらない。
なんとも表現しがたい喪失感に、打ちのめされた。
桃を囓って、笑うユーリエ。
からかって、照れるユーリエ。
ネウのために本気で、怒ったユーリエ。
凜とした立ち姿で、ワンドを構えるユーリエ。
濡れた瞳で、艶っぽくなるユーリエ。
プレゼントを渡した時に見せた、喜ぶユーリエ。
石碑巡りでの思い出が僕の胸を締めつける。
どさ、と両膝を突き、僕は……。
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
地面に向かって、叫び泣いた。
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