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第二十九話「久しぶりの甘い時間」
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玄関のドアを閉めた途端、千景の唇が重なってきた。
靴を脱ぐ間もなく、薄暗い玄関先で互いの体温を求め合うように抱き寄せると、千景の腕が首に絡みついてくる。ウィッグの黒髪が肩口に流れ落ち、微かに残る店の香りと千景自身の匂いが鼻腔をくすぐった。
唇を離しては重ね、離してはまた吸い上げる口づけを何度も繰り返すうちに、呼吸が荒くなり、互いの吐息だけが狭い空間に響いていく。
舌先が千景の上唇をなぞると、小さく身体を震わせて口を開いてくれた。差し込んだ舌が千景の舌と絡み合い、唾液が溢れて口の端から零れそうになる。飲み込む音が静かな玄関に響いて、千景の耳が薄く赤く染まっていくのが、廊下から漏れる常夜灯の灯りで見て取れた。
キスをしたまま、手のひらをワンピースの裾から滑り込ませると、太腿の柔らかな肌に触れた。指先を内側へと這わせながら上へ辿っていくと、スカートの布地を押し上げるように硬くなった千景の熱が手のひらに当たる。薄い布越しに包み込むように触れた瞬間、千景の喉からくぐもった甘い声が漏れて、膝ががくりと揺れた。
「あっ……んっ、あ」
「玄関だから、静かにね」
耳元で囁くと、千景が潤んだ瞳で睨むように見上げてきた。
「兄さんが触るから……」
責めるような口調なのに、腰は俺の手に擦り寄せるように動いている。頬が紅潮し、長い睫毛の下で瞳が蕩けかけていた。唇が微かに震えて、次の言葉を待っているのがわかった。
「兄さんじゃなくて、そろそろ俺のこと『伊織』って呼んでほしいな」
千景の顎に指を添えて顔を上げさせると、大きな瞳がさらに見開かれた。常夜灯の淡い光を受けて、アーモンド型の瞳が濡れたように輝いている。
「いっ……いおり」
小さく、掠れた声だった。名前を口にしただけで千景の耳まで真っ赤に染まっていくのが愛おしくて、頬を両手で包み込むと額に唇を落とした。
「うん。これからは、ずっとそう呼んで」
柔らかく唇を重ねると、千景の力が抜けたように身体が預けられてくる。甘く、蕩けるような口づけだった。舌を絡ませるのではなく、唇だけで触れ合う優しいキスに、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「伊織、久しぶりに……したい」
唇が離れた隙間から、千景の切ない声が零れた。
「もちろん。俺も我慢できない」
千景の腰を引き寄せて深いキスをすると、玄関で靴を脱ぐ音がばたばたと重なった。互いの唇を貪りながら、廊下へと足を踏み出していく。
俺のネクタイを千景が引き抜き、ワイシャツのボタンに指をかけた。一つ外すたびに唇が首筋に落とされ、鎖骨を舌先でなぞられて背筋が粟立つ。俺も千景のワンピースの背中のファスナーを下ろしていくと、白い肩が露わになり、布地がするりと腕から滑り落ちていった。
廊下には、脱ぎ捨てたネクタイとワイシャツ、千景のワンピースとウィッグが点々と落ちている。ベルトの金具が床にぶつかる硬い音が響き、千景のブラジャーのホックを外すと、黒いレースの布地が足元に落ちた。互いの肌に触れるたびに体温が上がっていくのを感じながら、キスを途切れさせることなく寝室の扉を押し開ける。
ベッドの端に膝がぶつかった瞬間、バランスを崩すようにして二人で倒れ込んだ。シーツの冷たさが背中に触れ、千景の華奢な身体が覆いかぶさるように重なってくる。下着だけの肌と肌が密着して、千景の心臓の鼓動が胸板を通して伝わってきた。速く、強く、鳴り続けている。
千景の身体をゆっくりと反転させてシーツの上に横たえると、鎖骨から胸元へと唇を這わせていった。舌先が薄い胸の突起に触れた途端、千景の背中が弓なりに反り、シーツを掴む指に力がこもる。敏感な先端を唇で挟んで軽く吸い上げると、くぐもった声とともに千景の腰が浮いた。
「んっ……あ」
もう片方の突起も指先で転がしながら、腹筋の線を舌で辿っていく。千景の肌は薄く汗ばんで、甘い匂いが鼻腔に満ちた。臍の窪みに唇を落とすと、腹筋がびくんと震えて、千景の手が俺の髪を掴んだ。
「兄さ……はやく、ほしい」
トロンと蕩けた目が俺を見下ろしていた。黒髪が枕の上に広がり、紅潮した頬と潤んだ唇が、常夜灯の薄明かりに照らされている。欲に染まった表情は妖艶で、どこまでも綺麗だった。
「兄さん?」
わざと低い声で問い返すと、千景の瞳が揺れた。唇を噛んでから、搾り出すように言葉を紡ぐ。
「伊織……のが、ほしい」
耳の先まで赤く染めながら告げる千景の手が、俺の腹筋を撫でて下へと降りていった。指先が下着の上から膨らみに触れ、輪郭をなぞるようにゆっくりと擦ってくる。布地越しでも千景の手のひらの熱がはっきりと伝わってきて、堪えきれずに喉の奥から声が漏れた。
下着のゴムに指をかけられ、引き下ろされていく。解放された熱を千景の細い指が包み込み、根元から先端へと滑らせるように擦り始めた。的確に感じる場所を撫でられて、腰が跳ねそうになるのを必死で堪える。
「っ……千景」
気持ちよさに掠れた声が出ると、千景が嬉しそうに目を細めて微笑んだ。長い睫毛が伏せられ、唇が俺の腹筋に触れてから、ゆっくりと下へと移動していく。温かい吐息が敏感な肌に触れるたびに、全身に鳥肌が立った。
千景の唇が先端に触れた瞬間、頭の奥が痺れるような快感が走った。舌先でゆっくりと舐め上げられ、亀頭を唇で包み込まれる。口腔内の温かさと湿り気に包まれて、腰から力が抜けていきそうになった。千景の舌が裏筋を丹念になぞり、吸い上げるように頬を窄める動きに、視界の端が白くなる。
「千景……イキそう」
掠れた声で告げると、千景の手がぐっと根元を握りしめた。寸前で押しとどめられる感覚に、全身が震える。千景が唇を離して顔を上げると、唾液で濡れた口元が艶めかしく光っていた。
「だめ」
甘い声だった。拒絶ではなく、強請りに近い響きを帯びた声だった。
「伊織は、僕の中でイって」
千景が身を起こすと、最後に残っていた女性ものの下着に手をかけた。レースの布地を脱ぎ捨てると、白い太腿を俺の腰の両側に開いて跨ってくる。細い腰が持ち上がり、俺の先端が千景の入り口に触れた。
ゆっくりと腰が沈んでいく。
熱く、きつく、千景の内壁が俺を飲み込んでいった。ずぶずぶと奥まで入り込む感覚に、互いの吐息が重なる。千景の喉から長い嬌声が漏れ、頭が仰け反って白い喉が晒された。深くまで繋がり合うと、千景の腰が小さく震えていて、太腿に力を込めて身体を支えているのがわかった。
「今日はね」
千景が瞳を開いて、俺を見下ろしながら微笑んだ。繋がったまま、話しかけてくる声は微かに震えていて、頬には涙ぐんだような潤みが浮かんでいる。
「一ツ橋さんから伊織のことをたくさん聞けて、嬉しかった」
ゆっくりと腰を持ち上げて、沈めた。じわりと快感が腰の奥から広がっていき、俺は千景の腰骨に手を添えて呼吸を整える。
「仕事モードの伊織、すごく格好いい。伊織と一緒に働ける一ツ橋さんが、ずるいってヤキモチやきそうになった」
少しずつ腰を振りながら語る千景の声は、甘く蕩けていた。上下に揺れるたびに中が締まり、俺の思考を奪っていく。腰に添えた手に力を込めて、千景の動きに合わせるように下から突き上げると、千景の声が一段高くなった。
「そう? 俺のほうが嫉妬してたけど? 一ツ橋と近すぎ。キスできそうな距離で嫌だった」
「キス? 一ツ橋さんとはしないよ」
千景が腰の動きを緩めて、俺の胸に両手をついた。真っ直ぐに見下ろしてくる瞳に、揺らぎのない光が宿っている。
「僕は伊織としかキスしない」
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。何気なく発せられた言葉が、深く胸に刺さる。千景の瞳に映る自分の顔がどんな表情をしているのかはわからなかったけれど、熱くなった目頭を誤魔化すように手を伸ばして、千景の頬に触れた。
「じゃあ、して?」
強請ると、千景が身を屈めて唇を重ねてきた。繋がったままの体勢で、深く、甘く、舌を絡ませていく。互いの唾液が混ざり合って、飲み込む音と肌がぶつかるかすかな音だけが暗い寝室に響いた。
「伊織とのキス……甘い」
銀糸を引きながら唇が離れて、千景の吐息が頬にかかった。
「千景が甘いから」
「僕、甘くない」
拗ねたように眉を寄せる顔が可愛くて、腰に添えていた手を太腿へと滑らせた。内側を撫でると千景の身体がびくりと震えて、中がぎゅっと収縮する。
「甘いよ。千景、もっと腰振って」
強請ると、千景が唇を噛んでから腰を大きく揺らし始めた。沈むたびに深く突かれる角度が変わり、千景の口から堪えきれない声が溢れていく。白い背中が弓なりに反り返って、汗ばんだ肌が常夜灯の光を受けてしっとりと光った。
「あっ……ん、んっ」
腰を振るたびに繋がった箇所から水音がして、千景の指が俺の胸板に食い込んでくる。爪が肌に薄く跡を残していくのすら快感に変わって、下腹部に熱が集中していった。
「気持ちよくて……おかしくなりそう」
千景が喘ぎの合間に、途切れ途切れの声で呟いた。
(可愛い、千景)
「おかしくなっていいよ」
千景の腰を掴んで身体を反転させると、シーツの上に押し倒した。千景の両足を肩にかけて深く入り直すと、奥まで一気に突き上げる。体位が変わった衝撃に、千景が声にならない叫びをあげて、シーツを掻きむしった。
「あっ、あっ、あぁっ……」
引いては打ち込む律動を繰り返すたびに、千景の身体が前後に揺さぶられていく。枕がずれ落ち、シーツが乱れ、ベッドが軋む音と肌がぶつかり合う音が重なって寝室を満たした。千景の中が締めつけてきて、俺の腰にも限界が近づいているのを感じる。
「いっ……イくっ」
千景が背中を大きく反らせて叫んだ瞬間、俺の手を探るように伸びてきた千景の指に気づいて、強く握り返した。指と指が絡み合い、汗ばんだ手のひらが密着する。
「俺も」
千景の奥へ深く突き入れながら、律動を速めた。繋いだ手に力が込められて、千景の爪が甲に食い込んでくる。最後の一突きで最奥まで腰を沈めると、千景の唇を塞ぐように口づけをした。舌を絡ませたまま、千景の中で果てる。千景の全身が震えて、内壁が収縮を繰り返して俺を強く締めつけてきた。
長い痙攣が少しずつ収まっていくのを感じながら、繋いだ手だけは離さなかった。荒い呼吸が混じり合い、額に張りついた千景の黒髪を指先でそっと払う。涙で濡れた睫毛が揺れて、蕩けきった瞳が俺を見上げていた。
「伊織」
掠れた声で名前を呼ばれて、胸の奥が震えた。額に唇を落とすと、千景の瞼がゆっくりと閉じていく。繋いだ指の力が僅かに緩んで、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
千景の身体をそっと引き寄せて、腕の中に収めると、薄い肩が自然と胸板に寄り添ってきた。互いの体温が混ざり合い、千景の髪から漂う微かな甘い匂いに包まれながら、俺もまた深い眠りの淵へと沈んでいった。
靴を脱ぐ間もなく、薄暗い玄関先で互いの体温を求め合うように抱き寄せると、千景の腕が首に絡みついてくる。ウィッグの黒髪が肩口に流れ落ち、微かに残る店の香りと千景自身の匂いが鼻腔をくすぐった。
唇を離しては重ね、離してはまた吸い上げる口づけを何度も繰り返すうちに、呼吸が荒くなり、互いの吐息だけが狭い空間に響いていく。
舌先が千景の上唇をなぞると、小さく身体を震わせて口を開いてくれた。差し込んだ舌が千景の舌と絡み合い、唾液が溢れて口の端から零れそうになる。飲み込む音が静かな玄関に響いて、千景の耳が薄く赤く染まっていくのが、廊下から漏れる常夜灯の灯りで見て取れた。
キスをしたまま、手のひらをワンピースの裾から滑り込ませると、太腿の柔らかな肌に触れた。指先を内側へと這わせながら上へ辿っていくと、スカートの布地を押し上げるように硬くなった千景の熱が手のひらに当たる。薄い布越しに包み込むように触れた瞬間、千景の喉からくぐもった甘い声が漏れて、膝ががくりと揺れた。
「あっ……んっ、あ」
「玄関だから、静かにね」
耳元で囁くと、千景が潤んだ瞳で睨むように見上げてきた。
「兄さんが触るから……」
責めるような口調なのに、腰は俺の手に擦り寄せるように動いている。頬が紅潮し、長い睫毛の下で瞳が蕩けかけていた。唇が微かに震えて、次の言葉を待っているのがわかった。
「兄さんじゃなくて、そろそろ俺のこと『伊織』って呼んでほしいな」
千景の顎に指を添えて顔を上げさせると、大きな瞳がさらに見開かれた。常夜灯の淡い光を受けて、アーモンド型の瞳が濡れたように輝いている。
「いっ……いおり」
小さく、掠れた声だった。名前を口にしただけで千景の耳まで真っ赤に染まっていくのが愛おしくて、頬を両手で包み込むと額に唇を落とした。
「うん。これからは、ずっとそう呼んで」
柔らかく唇を重ねると、千景の力が抜けたように身体が預けられてくる。甘く、蕩けるような口づけだった。舌を絡ませるのではなく、唇だけで触れ合う優しいキスに、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「伊織、久しぶりに……したい」
唇が離れた隙間から、千景の切ない声が零れた。
「もちろん。俺も我慢できない」
千景の腰を引き寄せて深いキスをすると、玄関で靴を脱ぐ音がばたばたと重なった。互いの唇を貪りながら、廊下へと足を踏み出していく。
俺のネクタイを千景が引き抜き、ワイシャツのボタンに指をかけた。一つ外すたびに唇が首筋に落とされ、鎖骨を舌先でなぞられて背筋が粟立つ。俺も千景のワンピースの背中のファスナーを下ろしていくと、白い肩が露わになり、布地がするりと腕から滑り落ちていった。
廊下には、脱ぎ捨てたネクタイとワイシャツ、千景のワンピースとウィッグが点々と落ちている。ベルトの金具が床にぶつかる硬い音が響き、千景のブラジャーのホックを外すと、黒いレースの布地が足元に落ちた。互いの肌に触れるたびに体温が上がっていくのを感じながら、キスを途切れさせることなく寝室の扉を押し開ける。
ベッドの端に膝がぶつかった瞬間、バランスを崩すようにして二人で倒れ込んだ。シーツの冷たさが背中に触れ、千景の華奢な身体が覆いかぶさるように重なってくる。下着だけの肌と肌が密着して、千景の心臓の鼓動が胸板を通して伝わってきた。速く、強く、鳴り続けている。
千景の身体をゆっくりと反転させてシーツの上に横たえると、鎖骨から胸元へと唇を這わせていった。舌先が薄い胸の突起に触れた途端、千景の背中が弓なりに反り、シーツを掴む指に力がこもる。敏感な先端を唇で挟んで軽く吸い上げると、くぐもった声とともに千景の腰が浮いた。
「んっ……あ」
もう片方の突起も指先で転がしながら、腹筋の線を舌で辿っていく。千景の肌は薄く汗ばんで、甘い匂いが鼻腔に満ちた。臍の窪みに唇を落とすと、腹筋がびくんと震えて、千景の手が俺の髪を掴んだ。
「兄さ……はやく、ほしい」
トロンと蕩けた目が俺を見下ろしていた。黒髪が枕の上に広がり、紅潮した頬と潤んだ唇が、常夜灯の薄明かりに照らされている。欲に染まった表情は妖艶で、どこまでも綺麗だった。
「兄さん?」
わざと低い声で問い返すと、千景の瞳が揺れた。唇を噛んでから、搾り出すように言葉を紡ぐ。
「伊織……のが、ほしい」
耳の先まで赤く染めながら告げる千景の手が、俺の腹筋を撫でて下へと降りていった。指先が下着の上から膨らみに触れ、輪郭をなぞるようにゆっくりと擦ってくる。布地越しでも千景の手のひらの熱がはっきりと伝わってきて、堪えきれずに喉の奥から声が漏れた。
下着のゴムに指をかけられ、引き下ろされていく。解放された熱を千景の細い指が包み込み、根元から先端へと滑らせるように擦り始めた。的確に感じる場所を撫でられて、腰が跳ねそうになるのを必死で堪える。
「っ……千景」
気持ちよさに掠れた声が出ると、千景が嬉しそうに目を細めて微笑んだ。長い睫毛が伏せられ、唇が俺の腹筋に触れてから、ゆっくりと下へと移動していく。温かい吐息が敏感な肌に触れるたびに、全身に鳥肌が立った。
千景の唇が先端に触れた瞬間、頭の奥が痺れるような快感が走った。舌先でゆっくりと舐め上げられ、亀頭を唇で包み込まれる。口腔内の温かさと湿り気に包まれて、腰から力が抜けていきそうになった。千景の舌が裏筋を丹念になぞり、吸い上げるように頬を窄める動きに、視界の端が白くなる。
「千景……イキそう」
掠れた声で告げると、千景の手がぐっと根元を握りしめた。寸前で押しとどめられる感覚に、全身が震える。千景が唇を離して顔を上げると、唾液で濡れた口元が艶めかしく光っていた。
「だめ」
甘い声だった。拒絶ではなく、強請りに近い響きを帯びた声だった。
「伊織は、僕の中でイって」
千景が身を起こすと、最後に残っていた女性ものの下着に手をかけた。レースの布地を脱ぎ捨てると、白い太腿を俺の腰の両側に開いて跨ってくる。細い腰が持ち上がり、俺の先端が千景の入り口に触れた。
ゆっくりと腰が沈んでいく。
熱く、きつく、千景の内壁が俺を飲み込んでいった。ずぶずぶと奥まで入り込む感覚に、互いの吐息が重なる。千景の喉から長い嬌声が漏れ、頭が仰け反って白い喉が晒された。深くまで繋がり合うと、千景の腰が小さく震えていて、太腿に力を込めて身体を支えているのがわかった。
「今日はね」
千景が瞳を開いて、俺を見下ろしながら微笑んだ。繋がったまま、話しかけてくる声は微かに震えていて、頬には涙ぐんだような潤みが浮かんでいる。
「一ツ橋さんから伊織のことをたくさん聞けて、嬉しかった」
ゆっくりと腰を持ち上げて、沈めた。じわりと快感が腰の奥から広がっていき、俺は千景の腰骨に手を添えて呼吸を整える。
「仕事モードの伊織、すごく格好いい。伊織と一緒に働ける一ツ橋さんが、ずるいってヤキモチやきそうになった」
少しずつ腰を振りながら語る千景の声は、甘く蕩けていた。上下に揺れるたびに中が締まり、俺の思考を奪っていく。腰に添えた手に力を込めて、千景の動きに合わせるように下から突き上げると、千景の声が一段高くなった。
「そう? 俺のほうが嫉妬してたけど? 一ツ橋と近すぎ。キスできそうな距離で嫌だった」
「キス? 一ツ橋さんとはしないよ」
千景が腰の動きを緩めて、俺の胸に両手をついた。真っ直ぐに見下ろしてくる瞳に、揺らぎのない光が宿っている。
「僕は伊織としかキスしない」
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。何気なく発せられた言葉が、深く胸に刺さる。千景の瞳に映る自分の顔がどんな表情をしているのかはわからなかったけれど、熱くなった目頭を誤魔化すように手を伸ばして、千景の頬に触れた。
「じゃあ、して?」
強請ると、千景が身を屈めて唇を重ねてきた。繋がったままの体勢で、深く、甘く、舌を絡ませていく。互いの唾液が混ざり合って、飲み込む音と肌がぶつかるかすかな音だけが暗い寝室に響いた。
「伊織とのキス……甘い」
銀糸を引きながら唇が離れて、千景の吐息が頬にかかった。
「千景が甘いから」
「僕、甘くない」
拗ねたように眉を寄せる顔が可愛くて、腰に添えていた手を太腿へと滑らせた。内側を撫でると千景の身体がびくりと震えて、中がぎゅっと収縮する。
「甘いよ。千景、もっと腰振って」
強請ると、千景が唇を噛んでから腰を大きく揺らし始めた。沈むたびに深く突かれる角度が変わり、千景の口から堪えきれない声が溢れていく。白い背中が弓なりに反り返って、汗ばんだ肌が常夜灯の光を受けてしっとりと光った。
「あっ……ん、んっ」
腰を振るたびに繋がった箇所から水音がして、千景の指が俺の胸板に食い込んでくる。爪が肌に薄く跡を残していくのすら快感に変わって、下腹部に熱が集中していった。
「気持ちよくて……おかしくなりそう」
千景が喘ぎの合間に、途切れ途切れの声で呟いた。
(可愛い、千景)
「おかしくなっていいよ」
千景の腰を掴んで身体を反転させると、シーツの上に押し倒した。千景の両足を肩にかけて深く入り直すと、奥まで一気に突き上げる。体位が変わった衝撃に、千景が声にならない叫びをあげて、シーツを掻きむしった。
「あっ、あっ、あぁっ……」
引いては打ち込む律動を繰り返すたびに、千景の身体が前後に揺さぶられていく。枕がずれ落ち、シーツが乱れ、ベッドが軋む音と肌がぶつかり合う音が重なって寝室を満たした。千景の中が締めつけてきて、俺の腰にも限界が近づいているのを感じる。
「いっ……イくっ」
千景が背中を大きく反らせて叫んだ瞬間、俺の手を探るように伸びてきた千景の指に気づいて、強く握り返した。指と指が絡み合い、汗ばんだ手のひらが密着する。
「俺も」
千景の奥へ深く突き入れながら、律動を速めた。繋いだ手に力が込められて、千景の爪が甲に食い込んでくる。最後の一突きで最奥まで腰を沈めると、千景の唇を塞ぐように口づけをした。舌を絡ませたまま、千景の中で果てる。千景の全身が震えて、内壁が収縮を繰り返して俺を強く締めつけてきた。
長い痙攣が少しずつ収まっていくのを感じながら、繋いだ手だけは離さなかった。荒い呼吸が混じり合い、額に張りついた千景の黒髪を指先でそっと払う。涙で濡れた睫毛が揺れて、蕩けきった瞳が俺を見上げていた。
「伊織」
掠れた声で名前を呼ばれて、胸の奥が震えた。額に唇を落とすと、千景の瞼がゆっくりと閉じていく。繋いだ指の力が僅かに緩んで、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
千景の身体をそっと引き寄せて、腕の中に収めると、薄い肩が自然と胸板に寄り添ってきた。互いの体温が混ざり合い、千景の髪から漂う微かな甘い匂いに包まれながら、俺もまた深い眠りの淵へと沈んでいった。
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