現世転生 -異世界から来た魔法使い-

瓢箪独楽

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プロローグ

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 立て肘に顔を預け、流し目を窓の外に向けながら俺は憂鬱な溜息を吐く。
 視線の先では体育の授業が行われ、教師の笛に合わせて四人ずつ猛ダッシュしている。
「この世界の人間は大変だな」
 そう呟くのと同時に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
 短い休憩時間の後、ホームルームの為に担任が登場する。些細な連絡事項を伝え、気ぃ付けて帰れよという言葉を残して担任は教室を後にする。
 学生にとってのお勤めが終わり、生徒たちは談笑しながら一人、また一人と居なくなっていった。
 俺もその例に漏れず教科書を鞄に詰め込んでいたのだが、ふと気配を感じて振り返る。
「よう瑛太、一緒に帰ろうぜ」
 そこには案の定、よく知った顔が立っていた。隣のクラスの柳正司しょうじ。向かいの家に住む、いわゆる幼馴染ってやつだ。こいつがどんな人間かわかりやすく表すなら、使う言葉は一つでいい。お調子者。その言葉だけで十分だ。
「はいよ…… おっし、オッケー」
 帰り支度を素早く済ませ席を立つと、スマホとにらめっこしている正司に声をかけ、俺たちは家路についた。

 俺たちは別段話すこともなく、もくもくと家を目指す。十年以上ほぼ毎日一緒に帰っていると、会話が弾む事もそうそう無くなってくるものだ。ましてや学生の身である。降りかかる出来事はほとんど一緒に経験するわけだから、その傾向は猶更なおさらだ。
「最近なんかおもしろい漫画とかねぇの?」
 そら見た事か、全く同じ質問を三日前にされたぞ。
「あのなぁ、そう簡単に新たな出会いなんてないぞ」
 手持無沙汰な右手をポケットに突っ込み、俺は面倒臭さを前面に押し出して答えてやった。
「まぁそうだよなぁ。でもな、実は俺は出会ったんだよ、めっちゃくちゃ面白ぇ漫画に」
 教えて欲しいか? という気持ちがドヤ顔からひしひしと伝わってくる。まぁまだ暫くはこいつと一緒に居るわけだ。ここでシカトしたところで、さらに面倒な感じになることは目に見えている。
「ふーん、どんなジャンルの漫画なんだ?」
 俺は正司の求めているであろう答えを返した。
「お、食いついた? いいじゃんいいじゃん! ジャンルは……」
 お前は魚のアタりに興奮する釣り人か。
「異世界転生もの! まぁ信頼と実績の人気ジャンルだな。むしろ最近は作品が多過ぎて信頼に陰りが見えるくらいだ」
 確かに。ここ数年の漫画やアニメに何度も見るジャンルだが…… やばいな。饒舌じょうぜつタイムの予感が……。
「ぐんゆうきゃっこ…… もとい! 群雄割拠ぐんゆうかっきょするそのジャンルの中に、綺羅星の如く現れた新作!」
 嗚呼、これはもう始まってるな。もう止まらない。
「主人公が不慮の事故で死んだと思ったら、死後の世界で神様的な存在が出てきて、なんやかんやあって冒険の香り半端ない世界に転生するという、あえてド王道の設定に挑んだ漫画、その名も……」
「あ、家に着いたから、それじゃ」
「ちょっと待てぇぇぃ!」
 うわ、面白いくらいにビシッとこっち向いた。鼻息がフンスフンスなってるし。
「わかったわかった、聞くよ。で? その名も?」
 一旦呼吸を整えた後、正司は目一杯息を吸い込んだ。
「なるほど・ザ・異世界」
 本日最高のドヤ顔オブ正司。あー「決まった」とか思ってるんだろうなぁ。
「大丈夫なのかその名前。よくわからないけど危ない気がするぞ」
「何が? シンプルでいいじゃんか」
 確かにシンプルではあるのだが…… なんだろう杞憂であってほしい。
「まぁ、なんにせよ面白いからさ、お前も一回読んでみろよ。んじゃぁ良いタイミングで家に着けて満足したし、また明日な!」
「マジでタイミング良すぎだろう。まぁ気が向いたら読んでみるよ。じゃぁな」
 俺達はそれぞれの家の玄関を開けた。
 
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