リアル人狼ゲーム in India

大友有無那

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第2章 バトルフィールドへようこそ(2日目)

2ー3 館内ツアー(2日目午後)

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 ラクシュミと話す機会はすぐに訪れた。
 埋葬の後クリスティーナは自分の部屋に戻った。タブレットの音声アプリを起動する。
『……』
 Web用ブラウザは勿論メールやメッセージ系アプリも入っていなかったが音声アプリは使用可能で、昨夜の会議は全て録音出来た。止める余裕がなかったので自分の立ち回りの声まで入ってしまったのは消去したいところだが、何が何の証拠となるかわからないので今はそのままにしておく。
 昨日寝る前に書いた記録は本当に最低限、日が変わった今日、自分のノートに出来るだけ詳しく書き起こすと決めていた。
 投票直前のところまで記入した時争う声を廊下に聞いた。ドアを開けると庭園側の部屋前でラクシュミがアイシャを頭ごなしに叱りつけている。ベンガル語だろうがあまりの勢いに近づくと、振り向いたアイシャは救いを求めるように濡れた目でこちらを見た。
「どうしたの」
 クリスティーナがアイシャの後ろに立つとラクシュミは一歩下がって距離を取った。想定内だ。
「どうしたもこうしたもない。朝は礼拝をするものなの。清浄であるべき時間に肉の匂いなんか垂れ流されたらたまらないでしょう!」
 ヒンドゥー教徒用の礼拝室は通路を挟んでノンベジ食堂の隣にある。
 勢い込んだラクシュミに、
「私は今台所に立ってない」
 言うとああと頷く。
「こっちの食堂を取り仕切っているのはアンビカなんだ。私じゃ厨房の手はずはわからないから呼んできていい?」

 アンビカとラクシュミの間で話が決まった。
 昼食の時にアンビカが皆に伝える。
「隣の礼拝室に匂いが流れてしまうので、朝は六時半以降にお肉ものに手を付けることになりました。だから、お肉の料理は七時を少し過ぎてから出すことになるかもしれません。台所手伝ってくれる人も覚えておいてね!」


 最初は七時で話が決まりかけた。
「マーダヴァン! それでいい?」
 三階廊下から大広間にいた彼に声をかける。ラクシュミが上から説明すると、
「特に支障はないと思います!」
 元気な声が返ってきた。
「それでいいの? 君が一番最後まで礼拝室に残っていたって聞いたんだけど」
 今朝、最後に礼拝室を出たのは自分だと認めた上で彼は言った。
「バガヴァーン(主)はお咎めにならないと思いますので」
 ラクシュミは表情を消し、次に振り向いて大げさにため息を吐いた。
「六時半でもいいのではないでしょうか。二十分には礼拝室への出入りはなくなりましたので」
 とマーダヴァンは三十分時間を切り上げてまでくれたのだった。


 食堂の話が終わりアンビカとアイシャが去ってから尋ねた。
「ラクシュミは清浄であることを大切にしているようだけど今夜の投票はどうするの? 『上』は、」
 と天井を手のひらで指し、
「あのテーブルの席に着くことしか認めていない。大丈夫?」
「交渉する」
 ラクシュミは憮然として言った。
「いや、今した方がいいか。スニエー!」
 すみません、と大広間のシャンデリア方面に声を張り上げる。
「今夜の投票の場所を変えてください! あんな所、まともな人間は足を踏み入れられません!」
 見るのも嫌とばかりちらりとだけ下に顔を向け、後は指だけで大テーブルを指す。
(まともな人間ね)
 よく言ったものだ。
「二階か三階のどこかの部屋を開けてくれればそれで済みます!」
 響く声に何人かが部屋のドアを開けてこちらを覗った。玄関側の二階廊下からアビマニュもこちらを見上げている。
 何も反応はなかった。空調音は低く小さく聞こえ続け大きな天井扇風機は吹き抜けの空気をゆっくりとかき回す。再度ラクシュミが訴えても同じだった。
 口を引き結ぶと、
「会議の前に再度交渉する。あなたが気にすることはない」
「それはそうだね」
 いい終わらないうちにラクシュミは背を向けていた。
(清浄を気にするならいつ服を着替えるのかしらね)
 肩をすくめる。
(でも、どんな人だって人が死ぬところは見たくないよ)
 死の連鎖を何とか食い止めたい。


「ラクシュミさんが言うのも無理はない。この館がおかしいのよ」
 先頭に立って歩きながらファルハが言った。
 食事の後ファルハが館内探索の有志を募った。ただし、
「スンダルは機械工学やってるんだよね。一緒に来てくれない?」
「俺は設備じゃなくてメカニックの方です。役に立つとは思えませんが」
「いいから! 機械屋さんの目があると助かるんだ!」
 と彼だけは半ば無理矢理ファルハに連行された。ほかの参加者は(番号順に)ラジェーシュ、アンビカ、アビマニュ、レイチェル、マーダヴァン、ジョージ、ダルシカの計10名。ノンベジ食堂では行くと言っていたラディカは姿を見せなかった。
 何かこの場所や犯罪者連中の正体などわかる手がかりが見つかればいいークリスティーナは思った。
「火事にでもなった時のために。非常口を確認しておくのは基本ですから」
とはダルシカ。予想しなかった発想だ。
「庭に逃げるしかないだろう」
 ジョージが呆れた調子で呟いた。短めにきれいに整えられた髪は清潔感があり穏やかに見える細身の男だ。とてもザハールにとどめを刺したようには見えない。昨夜のことで彼は皆から一歩引かれている。
「火事のことは考えていませんでした。でも、こっちで誤って出してしまうことも奴らが火を点ける可能性もありますよね」
 アビマニュは素直に返す。火災終了エンドなど恐ろし過ぎるとぞっとした。
「火は点けねえんじゃねえのか。『お客様』とやらはオレたちが右往左往するのを楽しんでいるんだろ。雑な終わり方したらクレームが入るぞ」
 ラジェーシュが言えば、
「『顧客』からのクレームは一番避けたいだろう」
 頷いてジョージが販売職らしい感想を述べた。


「元はかなり古い建物で、下手したら独立前のものかもしれません。その後何度も改修を経て二十年くらい前まで維持されてきたと思います」
 世紀が変わる頃に流行ったデザインが窓枠に利用されているとファルハが言う。ならば豪華な館を使ったといってもそこまで贅沢にお金を投入してはいないのか、と考えてから天井を仰ぐ。前言撤回、酷暑の中この広い空間を冷やし続けるだけでも大変な贅沢だ。
「そして今回の『ゲーム』ためにもかなり改修を入れています」
 ファルハもちらりと上を見る。
「東南の角に台所、北東に礼拝室はセオリー通り。この館の元々の台所はベジ食堂の方で、礼拝室はここから壁まで全部の大きな部屋だった」
 と東の玄関方面を指差す。
「通路を作り部屋を三分割して広間側からヒンドゥー、イスラム、それから私はよくわからないんだけど多分仏教徒用、にしたんだ。で通路すぐ向こうに新たにノンベジの食堂を作った。……この広さがあったら普通、礼拝室と台所は隣にしないでしょ」
 と腰に手を当てる。
「台所の換気用の窓は塞がれていて、匂いは中へ垂れ流しですし」
 スンダルも加える。
「じゃあスンダル、そっち持って」
 言うなりファルハは巻き尺を延ばし寸法を測っていく。
「もしかして、俺はこのための人足ですか」
「機械屋さんなら測るの慣れているでしょ」
「それ、ほとんど屁理屈の域では?」
「いいからいいから!」

 まず一番手前のヒンドゥー教徒の礼拝室を見る。
「あの神像は元からその壁際に安置されていたんだと思う」
 広間との間の壁を示す。
「隣が私たちの所だけど、酷いんだ」
 次にイスラム教徒用の礼拝室には大きなピンク色のカーペットが敷かれ、台の上にはクルアーンらしき書物も置いてあった。ただし、
「キブラ、お祈りの方向を示すものがないの」
 彼らはメッカのカーバ神殿に向かい礼拝をするがそれを示す矢印がない。
「おそらく、正確な方角を私たちに知らせたくないんだと思う」
「日の出や月の動きでわかるのに?」
 レイチェルが尋ねる。クリスティーナは月齢をきちんと数えていないが、そうでない何人かが拉致された翌日が昨日だと言っていた。
「だいたいはね。イムラーンはキブラコンパスを持ち歩いてた。彼が言うには親に持たされていたそうなんだけど結局駄目でしょ。怒るっていうか消沈してた」
 礼拝の方向がわかる携帯用の磁石を鞄に入れていたそうだが荷物は取り上げられているので意味がない。彼は館内探索には出たかったらしいが昼前の疲れでまずは眠りたい、発見があったら教えてくれと食堂で力なく話していた。
 一番奥は、
「うん、これは仏教の部屋だ」
 クリスティーナは真新しい三尊像の前に歩み出た。前にはおりんと香立てなども揃っていてやたらと立派だ。
「……真ん中の本尊がマハーヴァイローチャナ(大日如来)。こちらがアチャラナータ(不動明王)。反対側はちょっとわからない。仏像のことは専門外だけど、造りというか顔の感じは日本の仏像に似ている気がする。でも石はこっち、インドの古い像や南伝ースリランカやカンボジアに近い気がして……わからない、ごめんなさいっ!」
「それだけでも凄いです」
 マーダヴァンに感嘆され気が引けた。
「日本でほんのちょっとやっただけ」
 インドから日本仏教に行き着く流れは膨大なものでとても学び切れるものではない。自分の専門に関わる時代部分だけでも苦労した。
「クリスティーナさん、これってどういう仏教の人用かわかる?」
 ファルハの問いに首を傾げた。
「日本だったらこの本尊の宗派はわりと一般的だと思う。だけどインドじゃどうなんだろう?」
 現代仏教徒のことはよく知らない。
「私たちの中に仏教徒っていないと思う」
 アンビカが言えば、
「広いのに勿体ないみたいだ」
 アビマニュが部屋を見回した。

 通路を戻って広間に出る。北側は開口部がなく壁は一面に水色に塗られている。
 ファルハは慎重に顔を寄せるとコンコンと壁を叩いた。
「この壁はフェイク。本当はこの向こうに窓がある。おそらく掃き出し窓」
「北側が全部潰れているのは変な気がしました」
 とダルシカが言えばスンダルは、
「これはどういう壁だと思います?」
 と問う。何カ所か壁を叩いた後で、
「木を支柱にしてパネルを貼った上に塗料を吹き付けて、その上にまたペンキを塗っていると思う。パネルも木かな?」
(以外と軽い?)
 ファルハの答えにおそらく何人もが、蹴破るなりすれば外に出られるのかと考えたはずだ。
(ただし連中に見つからなければ、の話。ともかく覚えておこう)


 北西の角にはまた礼拝室がある。手前はキリスト教徒の礼拝室で、壁には十字架、台の上には聖書が乗っていた。隅に折り畳み椅子が重ねられている。
(私、まだここに来てなかったな)
 後でひとりで落ち着きにこようか。とりあえず一夜無事に生き延びられたことには感謝を捧げたい。
 通路を通ったその奥は「その他」ということのようでピンク色のカーペットが敷かれやはり隅に折り畳み椅子があるだけの部屋だった。
(使うとしたらシークのエクジョットとジャイナ教徒のダルシカか)
 振り向くがダルシカは感慨もなさそうに部屋を眺めていた。

 北側は大広間に続いている。
 黄色のカーペットが敷かれ長いソファーの間にガラステーブルが置いてあるリビングのような部分もあり、今はロハンとプラサットが何やらしゃべっていた。
「館内ツアーの皆さん、何かいいもんあったか? 外へ出る鍵とか」
 ロハンが手を振ってからかう。ファルハはそんなお宝あったら欲しいわと軽くいなした。
「北側の壁もフェイク。で、連中の平面図で『玄関』と言われているのは裏口で、正対するこっち側にもっと広い本当の玄関があるはず」
「あれが勝手口になるんですか。大きいですね」
「この邸宅の規模ならね」
 こぼしたレイチェルにファルハが答えた。

 南西の角には部屋があるがオレンジに塗られた扉は鍵が締まっている。
 その横には昨夜最初に死んだ男ふたりとシド、マートゥリーの遺体が並べられている。皆距離をおいて進んだ。
「火葬の話ってどうなったか聞いていい、誰か?」
「そこの緑のドアに火葬室って札が出ていますよね」
 アビマニュがファルハに説明し始める。投票が終わり「武器庫」が開くと同時に緑のランプが付いた小さなドアが「火葬室」だそうだ。ルールブックと昨夜の説明に寄れば夜十時半から十一時まで稼働、一回の燃焼時間は二十分なので通常の火葬のようにはいかない。夜「投入」して放置し、翌晩回収しても構わない。
 一旦入ったら中からは開かないが、
『事故やプレイヤー同士の争いで故意に入れられた場合はこちらで解除します』
 つまり「処刑」は火葬室に入れることでも可能だということだーと昨夜からクリスティーナは気付いていた。処刑が実行されてしまうのなら最初はこの方法かとも想像した。
 生きたまま焼き殺すという恐ろしく残忍な方法は、だが手を下す側には死にゆく姿が見えないという利点がある。
「色々揉めたんですが……。結局中を見ていないので……」
 四人分の遺体があるが火葬室にまとめて入れていいのか、そもそも入るのかと紛糾したが結局今夜中を見るまではと判断は先送りとなった。
「個人的には、何人か分まとめるのも致し方ないと思います。衛生上いつまでも放置するのは良くないですし、彼らも可哀想です」
 ヒンドゥー教徒たちの話し合いの内容をしゃべり終えアビマニュが悄然と目を落とした。
「ジョージ」
 皆から離れて佇んでいた彼に近づく。
「あなたは気が付きませんでした? あの『火葬室』に入れれば『処刑』は完了するって」
 彼は驚愕の表情を示した。
「そんな恐ろしいこと!」
 ぶるぶると首を横に振る。
「ルールブックと奴らの説明からはそういうことだと思います」
 皆がこちらを注視する。口に手を当て震え出すレイチェルにダルシカが身を寄せて腕を回す。最年少、十五歳の少女同士だ。この異常な状況は辛いだろうとこちらも胸が締め付けられる。
「多くの人は自分で手を下したくない。そのために用意された手段でしょう。連中は、」
 と上を見て、
「あなたのようには優しくない。違いますか?」
 手を下した彼に、静かに言った。
「私はー」
 言いかけたままジョージは絶句した。
「昨日の理由、聞いていいですか?」
「何のことはない。『ルール』によれば誰かが手を下さなければならない。なら、若い連中にさせるのは気が引けたからだ」
 予想通りの答えだった。彼は男性の最年長でクリスティーナよりは三つ若い。
「生きて妻と息子に会いたい。それだけだった。特に、昨日は」
 回りの「プレイヤー」のことは正直良く見えていなかったと語った。


 南側のガラス戸から皆で庭園に出る。が強い日と暑さで長くは居られない。庭園奥に石を積んだ目安があり、
「一番奥左が最初に死んだ男の人、右がザハール」
 言う声も辛そうだ。
「左手前がセファ」
 ファルハは手のひらで示した。
 
「トゥラシー、摘んだらまずいかしら」
「花や草を摘むのはいいみたい」
 邸内に戻る時低く呟いたアンビカに今朝のことを話す。
「なら、明日の朝はトゥラシーティーを入れようかな」
 元気が出るでしょ、と目を細めるアンビカも自分も明日の朝「いる」保証はない。

 東南の角がベジタリアン食堂、横の通路奥が「玄関」だ。ドアは斜め二本縦横一本ずつの木材で丁寧に封鎖されている。
「閉じられている!」
 ファルハは玄関横の黒い木の板に駆け寄った。人ひとり悠々と入れるほどの幅だ。
「昨日、ここは何もなくって中入れてそこに電気のブレーカーがあった……」
「連中が『夜』の時間に作業したんでしょうね」
 と返す。
「ブレーカーのスイッチはどれくらいありましたか」
「はっきりは覚えていない。二十くらい?」
 ファルハの答えにスンダルが頷く。
「ガラス戸も入れ替えられてましたよね」
 ダルシカが言うのに、
「仕事が早いな」
 ラジェーシュが皮肉を効かせた。自分が震えたのと同じ不気味さを彼らも感じているようだ。スンダルは座り込んで床に耳を付け、首を捻った。
「機械室、このあたりの下じゃないようですね」
「電気はこちら側に見える電柱から引いていると思っていいかな」
「確証はありませんが問題もありません」
「水道は、どこかにタンクがあると思うのだけれど見当たらない」
「俺たちの見えない所、壁の向こうかもしれません」
「そういえばー」
 シヴァムが感電してファルハが一瞬電源を落とした時、ベランダ側塀の向こうがやんわり明るかったような気がしたことを告げる。
「……」
 一呼吸おいて。
「あいつら、思ったより近くで私たちを監視しているのかも」


「そこに救急箱があります。覚えておいてください」
 ブレーカーがあった場所の裏は奥がシャワールーム兼トイレ、手前左が清掃用具がある倉庫でその隣にある棚をマーダヴァンが示した。真新しい木の棚にはいくつかの籠が並んでいてある箱は文房具、ある箱は布巾類と日用品が分類されていた。
「きれいな布巾……」
 レイチェルが呟いた。真っ白な布巾が丁寧に畳まれて山積みされている。そしてノンベジタリアン食堂で一回りだ。
「上行きましょう」

 階段は全部で三つ。大テーブルの西側から左右にひとつずつ、東から東南に向かうものがひとつだ。一行はテーブルから向かって右つまり北西側の階段を上った。この階段が「血で汚れた」場所から一番遠い。ファルハもそのあたり気を使ったのだろう。
 吹き抜けに面した回り廊下に一部屋ずつを空けて各人の部屋があり、割り当てられていない部屋は開かない。ベランダのある北側にのみ部屋はない。上がってすぐのところに共用の日用品倉庫があり、換えの衣服やシーツなどがこれでもかと大量に収められている。
(勿体ない)
 困っている人はいくらでもいるのに。施設など現物で寄付出来る場所もいくらでもあるのに何故ここまで積み上げるのだろう。
(……)
 そして三階。倉庫の場所も含め造りは二階と全く同じだ。中も衣類や衛生用品など女性用の品もあるという以外違いはない。
「ひゃああっっ!」
(?!)
 広間を挟んで反対側、東側の廊下で悲鳴が上がった。
 開け放たれたドアの前に座り込んでいるのはアイシャだろうか。一行は廊下を走った。
「プ、プージャさん、プージャさんっ……!」
 口を震わせながらクリスティーナの腕を掴む。引っ張られるままに部屋を覗いて見えた光景に息を飲み言葉が出ない。
 正面奥、窓の下に背中を持たれ掛けさせプージャが座り込んでいた。クリーム色のサルワール・カミーズの袖から覗く右手首から血が垂れて床石の上に赤い円を作っている。膝上に流れたドゥパタにも赤い染みが見えた。
 かすかに仰いでプージャが発した言葉にクリスティーナは耳を疑った。
「お願い……。このまま死なせて……」



<注>
・バガヴァーン ここでは彼が信じる神のことを指している。

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