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第8章 宣戦布告(新5日目)
8ー6 殺戮の女神(新5日目夜)
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コルコター旧名カルカッタ。西ベンガル州州都、インド三番目の大都市。
植民地支配の拠点として成長した比類なき大都市の名前はカーリー女神に由来するとも言われる。
多くのベンガル人にとってカーリー女神は特別な存在で、両親がコルコタ近郊出身のラクシュミもそうだ。
『私達、カーリー女神様を殺しちゃったんだよ?!』
アンビカのショックはよくわかる、どころかおそらく彼女とは比較にならないほどの大きなダメージに打ちのめされた。
名状しがたい恐怖に、念入りな沐浴の後カーリー女神を観相しながらマントラを108回唱えた。普段なら数珠を回すが指の関節をたどって数え一心に念誦する。
まだ足りない。
少しの中断からすぐ詠唱を再開した。おそらく今夜自分は襲撃されない。名前を出して「狼」呼ばわりした「人狼」候補を潰すほど愚かではないだろう。他に「人狼」役を押しつけられそうなのは議論にほとんど加わらず存在感のないプラサット、時々ラジェーシュとセットで名前が出たー言い始めは自分だがーアンビカ、少々無理を通してマーダヴァンやイムラーンくらいだ。
本人の主張通通り今夜はダルシカあたりが危ない。「武士」の仕事で上手く守られればいいが。
1080回を唱え終えた時には十二時目前だった。
イーシュワラ。
神が世界の全てに宿るならどうして異教徒の言葉や行為には宿らないと思ったのか。
「顧客」への挑発と誘導、「彼ら」への宣戦布告の大仕事をそれなりに上手く終えた安心感はたちまちに吹き飛んだ。
「顧客」たちには見得を切ったが「リアル人狼ゲーム」としての「プレイ」はもう余り残っていない。最初三人の「人狼」はシヴァムとラジェーシュとレイチェル。
もっともシヴァムについてなら新入り組は今も「人狼」かを疑う戦略をとっている。ディヴィアを真の「占星術師」とみなす立場だ。
そのウルヴァシとトーシタは、
・双方とも「人狼」
・片方のみ「人狼」
後者の場合、
・片方が「象」
の可能性が追求出来る程度だ。
偽「占星術師」は象陣営の可能性が高い。だが象としてカウントされるふたり、「象」「子象」が健在かは全く掴めない。そのため保険としてのレイチェル保護が機能している。ラクシュミはディヴィアが「象使い」の可能性だけを考えていたがアンビカに、
『「漂泊者」ってこともあるよ』
と指摘された。「狼」陣営カウント「村人」の役だ。
本当に「人狼ゲーム」はややこしい。
明日以降の行動はたやすくはない。
今日の間に陰で飛び交った短い文章の数々を思い起こす。
これより自分は「ラクシュミ」を休み「カーリー」となる。
決意した時、胸内の波は鎮まっていた。
<注>
・ラクシュミ(女神)
豊かさと幸運と美の女神。カーリーとは違い蓮の花に乗った穏やかな姿で描かれる。ヴィシュヌ神の妻。
植民地支配の拠点として成長した比類なき大都市の名前はカーリー女神に由来するとも言われる。
多くのベンガル人にとってカーリー女神は特別な存在で、両親がコルコタ近郊出身のラクシュミもそうだ。
『私達、カーリー女神様を殺しちゃったんだよ?!』
アンビカのショックはよくわかる、どころかおそらく彼女とは比較にならないほどの大きなダメージに打ちのめされた。
名状しがたい恐怖に、念入りな沐浴の後カーリー女神を観相しながらマントラを108回唱えた。普段なら数珠を回すが指の関節をたどって数え一心に念誦する。
まだ足りない。
少しの中断からすぐ詠唱を再開した。おそらく今夜自分は襲撃されない。名前を出して「狼」呼ばわりした「人狼」候補を潰すほど愚かではないだろう。他に「人狼」役を押しつけられそうなのは議論にほとんど加わらず存在感のないプラサット、時々ラジェーシュとセットで名前が出たー言い始めは自分だがーアンビカ、少々無理を通してマーダヴァンやイムラーンくらいだ。
本人の主張通通り今夜はダルシカあたりが危ない。「武士」の仕事で上手く守られればいいが。
1080回を唱え終えた時には十二時目前だった。
イーシュワラ。
神が世界の全てに宿るならどうして異教徒の言葉や行為には宿らないと思ったのか。
「顧客」への挑発と誘導、「彼ら」への宣戦布告の大仕事をそれなりに上手く終えた安心感はたちまちに吹き飛んだ。
「顧客」たちには見得を切ったが「リアル人狼ゲーム」としての「プレイ」はもう余り残っていない。最初三人の「人狼」はシヴァムとラジェーシュとレイチェル。
もっともシヴァムについてなら新入り組は今も「人狼」かを疑う戦略をとっている。ディヴィアを真の「占星術師」とみなす立場だ。
そのウルヴァシとトーシタは、
・双方とも「人狼」
・片方のみ「人狼」
後者の場合、
・片方が「象」
の可能性が追求出来る程度だ。
偽「占星術師」は象陣営の可能性が高い。だが象としてカウントされるふたり、「象」「子象」が健在かは全く掴めない。そのため保険としてのレイチェル保護が機能している。ラクシュミはディヴィアが「象使い」の可能性だけを考えていたがアンビカに、
『「漂泊者」ってこともあるよ』
と指摘された。「狼」陣営カウント「村人」の役だ。
本当に「人狼ゲーム」はややこしい。
明日以降の行動はたやすくはない。
今日の間に陰で飛び交った短い文章の数々を思い起こす。
これより自分は「ラクシュミ」を休み「カーリー」となる。
決意した時、胸内の波は鎮まっていた。
<注>
・ラクシュミ(女神)
豊かさと幸運と美の女神。カーリーとは違い蓮の花に乗った穏やかな姿で描かれる。ヴィシュヌ神の妻。
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