リアル人狼ゲーム in India

大友有無那

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第10章 ムンバイへの道(新7日目)

10ー3 サラーム2(新7日目)

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 倉庫らしい建物と木々が国道方面からの光を妨げ荷台の様子はほとんど見えない。
「大丈夫ですか」
 声をかけると、
「駄目」
(オイオイ)
 ライトで照らしスンダルは息を飲んだ。
 手前にうなだれるアンビカの影。奥に横たわるイムラーンの背に黒っぽい物が生えている。
「イムラーン駄目だと思う。確認してもらえる?」
 アンビカの助けを借りて荷台に上る。
 ひざまずくとアンビカは名残を惜しむように重ねていた両手を彼の拳から抜いた。
「……亡くなってますね」
 イムラーンは「眠るように」という常套句そのものの静かな顔で死んでいた。
「何があったんです?」
「わからない。私は全然わからなかったの」
 泣きながらつっかえつっかえ彼女は訴えた。

「気が付いたらイムラーンが私の上に」
「私をかばって」
「本当なら、私がこうなるはずだった……」
 国道から脇道にそれ様子を確認し運転席を降りた。
 追っ手は来ていないのであのバイク三台組は叩きのめしたと見ていいだろう。
 湿っぽいのは嫌いだ。

「……これはバイクの部品ですね」
 背中に刺さる異物、シャツにわずかに残るタイヤの跡、所々の染み。左腕に飛ぶ血。
「バイクがバウンドしたのか」
「私達が落としたもの?」
 ドゥパタで涙を拭う。
「違います。あれに躓いてすっ飛んだ三台目のバイクがかなり高く上がったのは見ましたか?」
「うん。頭の上を越えていく感じのところまでは」
 頷いた。
「後ろの様子はミラーで気にしていたのでわかりますが……」
 彼らを心配したのではなく連中を制圧出来たか注意していた。
「上空で俺たちの車の前に出て、車が進んだから丁度この荷台に落ちてワンバウンドして道路に落ちたんでしょう」
 バイクは重量がある。それがあの高さからのエネルギーで落ちたのでは、
(そりゃ駄目だ)
 と気付いてアンビカに目を移し、
「あなたは大丈夫なんですか。いくらイムラーンがクッションになったとはいえ相当な力を受けているはずですが」
「イムラーンも私を心配して……っ……胸元とかお腹とか少し痛い感じは残るけどそれくらいだよ……」
 ドゥパタを垂らした胸元を手のひらで押さえて見せる。
(ならいいけど)
 余程上手くイムラーンが力を吸収したのだろう。最後まで律儀な奴だ。
 乗せていたシーツを彼にかけてやった。

「で、どうします。助手席とこちら、どちらに乗りますか?」
「このまま荷台でいいかな? ひとりにしたらイムラーンが可哀想だし」
 死んだ人間は淋しくないですよと心中呟く。
「ガソリンはこれで全部使っちゃったけどまだマッチが二包ある。これで木箱に火をつければ武器にはなるでしょう」
 泣きはらした顔だったが目には正気が戻り視線は確かだった。
 イムラーンの死がカンフル剤になったのか。

 一度運転席に戻って小銃を持って来る。立ったまま荷台のアンビカに渡した。
「こちらの方が使いやすいでしょう。マッチ、ひとつ分けてもらっていいですか」
 一丁を残してライフルは回収し木箱のうち二箱も助手席へ移す。
「基本アンビカさんは撃たなくていいです」
 撃てば技量が高い連中から的にされる。
「撃ってきたら背を低くして場所を変えてください。木箱でも何でもそのまま投げてもいい」
 車やバイクにはそれでもダメージだ。
「火は余裕があったらつけてください。ただし『イムラーン』に注意して。遺体にバイクの油がついていますから最悪引火します」
 火が付いたら叩き落とせと言ったら反発されるだろうなと口を噤む。まあいい。生きるも死ぬもここまで来たら自己責任だ。
 別に自分が頑張らなくても運転席と荷台と分かれ、結局ひとりで逃亡するのと似た形になった。

「奴らが乗り込んでくることがあったらそれで反撃してください」
 小銃を示す。
「俺は前からぶちのめします。運転席を攻撃されないように頑張る必要はありません。ご自分の身を守ることだけ考えてください」
 彼女はしっかりと頷いた。
「ムンバイは、警察本部へ目的地を変更します」
「遠くない?」
 ムンバイ警察本部は南部の海に近い場所だ。
「結局はそれが近道だと思います」
 文句を言われるかと思ったがアンビカは反論しなかった。
「イムラーンを早くご両親に返してあげたいしね」
(またそれかよ)
 風でかかる髪がうっとうしく首を振る。
 足元を蹴ったが自分の服の裾に砂がかかっただけだった。
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