143 / 152
第10章 ムンバイへの道(新7日目)
10ー4 無数の問い(新7日目)
しおりを挟む
懐かしい歌が聞こえた。
次の瞬間反転して節回しをおぞましいものと感じた。外国の葬列で道化師が奏でる旋律、吟遊詩人が追放された姫君と王子の呪いを語る角笛。
また一転してアンビカは思った。その唄いは祈りだ。神様に冀い泣き続けるマントラのように。
そして物語。遠い遠い東の果て、小さな島国の幼い皇帝が海に沈む。
ー私はこれを知っている。
長い長い聴取の後細い廊下を通ってたどり着いた緑のドアを開け女性警官が入室を促した。
「~14番クリスティーナ、大学院生。日本文学専攻、留学帰り……♪」
節は止まり代わりに、
「Congratulations!」
長机の前のパイプ椅子にペンを持って座っていたラクシュミが鷹揚に振り向いてアンビカを迎えた。
「Finally we can see at Mumbai!」
白い壁とブラインドが降りた窓の手前、叫んで奥の長机から駆け寄ってきたトーシタをアンビカも抱き締める。
『See you at Mumbai!』
ムンバイで会いましょう。この約束は果たされた。
(イムラーン。クリスティーナ……)
「音楽のことも知らない調子外れが作ったにしては、記憶しやすい」
ラクシュミは腕を組んで机上の用紙に目を落とした。凜とした横顔。
聴取が済めば終わり、ではなかった。
覚えていることは全て、聴取では思い出せなかったこと、忘れていたこと、残さず書いて提出するよう警官から命じられた。
ラクシュミが口ずさんでいたのは、皆のことを覚えていようとクリスティーナが提案した「私たち」の歌だ。
「手伝ってくれる?」
ラクシュミの目元には疲れが色濃い。寝ていないのだろうか。
それでも頷きアンビカは声を合わせた。きょとんとするトーシタの肩を抱く。
「~15番サミル、店員。1日目の夜から次の朝までにベランダの下で死んだ。16番セファ、縫製工、通信の高校生。1日目の夜から次の朝までに……♪」
無限に感じる夜の「人狼の時間」
朝になって遺体を発見する恐怖。
火葬室を拒む悲鳴。
首を吊られて揺れる亡骸。
(私が逃げ出して来た「リアル人狼ゲーム)
無念の死を遂げた人々が生き延びたアンビカたちを取り囲んで問う。
お前は自分の仕事を果たしたかー?
次の瞬間反転して節回しをおぞましいものと感じた。外国の葬列で道化師が奏でる旋律、吟遊詩人が追放された姫君と王子の呪いを語る角笛。
また一転してアンビカは思った。その唄いは祈りだ。神様に冀い泣き続けるマントラのように。
そして物語。遠い遠い東の果て、小さな島国の幼い皇帝が海に沈む。
ー私はこれを知っている。
長い長い聴取の後細い廊下を通ってたどり着いた緑のドアを開け女性警官が入室を促した。
「~14番クリスティーナ、大学院生。日本文学専攻、留学帰り……♪」
節は止まり代わりに、
「Congratulations!」
長机の前のパイプ椅子にペンを持って座っていたラクシュミが鷹揚に振り向いてアンビカを迎えた。
「Finally we can see at Mumbai!」
白い壁とブラインドが降りた窓の手前、叫んで奥の長机から駆け寄ってきたトーシタをアンビカも抱き締める。
『See you at Mumbai!』
ムンバイで会いましょう。この約束は果たされた。
(イムラーン。クリスティーナ……)
「音楽のことも知らない調子外れが作ったにしては、記憶しやすい」
ラクシュミは腕を組んで机上の用紙に目を落とした。凜とした横顔。
聴取が済めば終わり、ではなかった。
覚えていることは全て、聴取では思い出せなかったこと、忘れていたこと、残さず書いて提出するよう警官から命じられた。
ラクシュミが口ずさんでいたのは、皆のことを覚えていようとクリスティーナが提案した「私たち」の歌だ。
「手伝ってくれる?」
ラクシュミの目元には疲れが色濃い。寝ていないのだろうか。
それでも頷きアンビカは声を合わせた。きょとんとするトーシタの肩を抱く。
「~15番サミル、店員。1日目の夜から次の朝までにベランダの下で死んだ。16番セファ、縫製工、通信の高校生。1日目の夜から次の朝までに……♪」
無限に感じる夜の「人狼の時間」
朝になって遺体を発見する恐怖。
火葬室を拒む悲鳴。
首を吊られて揺れる亡骸。
(私が逃げ出して来た「リアル人狼ゲーム)
無念の死を遂げた人々が生き延びたアンビカたちを取り囲んで問う。
お前は自分の仕事を果たしたかー?
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる