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第4章 いつまで耐えねばならないのか(4日目)
4ー5 もう限界だ2
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このままでは暴発して騒ぎを起こしてしまうかもしれない。ダウドはベッドでシーツに包まりながら心の中でのたうった。
(もう限界だ!)
以前、寮生の友人に尋ねたことがある。
相部屋でいわゆる欲求の「処理」はどうしているのか。
自室で毎晩やっている自分には有り得ない状況だったからだ。
彼曰くルームメイトの生活リズムがわかってくれば不在の時間も見計らえる。またはトイレやシャワールームでこっそりと、
『だけどそっちはバレやすい』
と困ったように付け加えた。
三日も処理が出来ない夜を過ごし、今はぱつんぱつんに水が注がれた風船のようだ。油断すると女子のうなじや尻のライン程度にもまずい反応が起きかけてしまう。
非常事態の現在クラスの女子は守る対象だ。これは良くない。
イフディナッ スィラータル ムスタキーム
わたしたちを正しい道へとお導きください。
懸命に祈りを捧げる。
スティーブンを失ったショックからも時間が経ち、頭は欲求の靄に覆われる。何があるかわからないこの場所で理性を失うのは危険なのにどうして体は言うことを聞かないのだろう。
礼拝室でアッバース・シャキーラと共に昼の礼拝を行った。この時はアッラーのご加護で心も鎮まったが、また元通りだ。
布団の下でも流石にバーラムとナラヤンがいる部屋では出来ない。
(それに、ナラヤンは気付いても知らないふりをしてくれそうだがバーラムはうるさそうだ)
ならシャワールームかトイレの個室となるが、どちらもすぐ見つかりそうでばつが悪い。考えた末ダウドはいい場所に気付いた。
ラジューがなかなか掴まらない。朝食後は女子に使われその後は洗濯、そして女子棟の清掃に入ってしまう。
女子棟から一緒に戻ってきたマリアがノンベジ食堂へ呼ばれて行く。奥の清掃ロッカーに道具をしまうラジューにダウドはやっと声をかけた。
「相談があるんだが」
考えごとをしたいので昼食までの時間、使用人用のバスルームを貸してほしい。頼むと難なく了承された。彼も男だし本当の理由に気づいているのかもしれないが顔に出さなければ別にいい。
「この後台所のお手伝いに入りますのでさっきシャワーを使いました。そちらは床が濡れ気味ですが」
どうでもいい! とっとと行け!
場所を借りられると決まった時点で股間が先に持っていかれたように気が急いた。
小一時間後。
大変すっきりした。
とはいえやり過ぎたようでもありあたりは白っぽく見えめまいもする。
トイレの個室から出て横の洗面を見る。使用人スペースは外のように洒落てはおらず床はよくあるクリーム色の小さなタイル敷きだ。何人かの使用人が使うよう設えられていて、同じくタイル張りの水場には男子棟のレバーとは違い昔ながらの蛇口が三つ並んでいる。ちらりと見て真ん中の蛇口から手を洗う。
普段なら水道から直接水を飲むなど腹を下しそうなことはしないが、貧血気味で水分を取りたくなり両手ですくって一杯、二杯。そこで止めれば良かったのに三杯目を喉に流し込んだ時、
「ぐうっ!」
二杯目で既に感じていた違和感が胸をぎゅっと縛り急速に体の自由が奪われる。
「がっ!」
気持ちが悪い。だが上がってこない。
吐いてしまった方がー
思いながらダウドは床に倒れ、タイルの嫌な冷たさを頬で感じたのを最後に意識が途切れた。
<注>
祈りの文章はクルアーン第一章「開始の章」
引用は『絵本で学ぶイスラームの暮らし』松原直美/文 あすなろ書房 2015.4 より
(もう限界だ!)
以前、寮生の友人に尋ねたことがある。
相部屋でいわゆる欲求の「処理」はどうしているのか。
自室で毎晩やっている自分には有り得ない状況だったからだ。
彼曰くルームメイトの生活リズムがわかってくれば不在の時間も見計らえる。またはトイレやシャワールームでこっそりと、
『だけどそっちはバレやすい』
と困ったように付け加えた。
三日も処理が出来ない夜を過ごし、今はぱつんぱつんに水が注がれた風船のようだ。油断すると女子のうなじや尻のライン程度にもまずい反応が起きかけてしまう。
非常事態の現在クラスの女子は守る対象だ。これは良くない。
イフディナッ スィラータル ムスタキーム
わたしたちを正しい道へとお導きください。
懸命に祈りを捧げる。
スティーブンを失ったショックからも時間が経ち、頭は欲求の靄に覆われる。何があるかわからないこの場所で理性を失うのは危険なのにどうして体は言うことを聞かないのだろう。
礼拝室でアッバース・シャキーラと共に昼の礼拝を行った。この時はアッラーのご加護で心も鎮まったが、また元通りだ。
布団の下でも流石にバーラムとナラヤンがいる部屋では出来ない。
(それに、ナラヤンは気付いても知らないふりをしてくれそうだがバーラムはうるさそうだ)
ならシャワールームかトイレの個室となるが、どちらもすぐ見つかりそうでばつが悪い。考えた末ダウドはいい場所に気付いた。
ラジューがなかなか掴まらない。朝食後は女子に使われその後は洗濯、そして女子棟の清掃に入ってしまう。
女子棟から一緒に戻ってきたマリアがノンベジ食堂へ呼ばれて行く。奥の清掃ロッカーに道具をしまうラジューにダウドはやっと声をかけた。
「相談があるんだが」
考えごとをしたいので昼食までの時間、使用人用のバスルームを貸してほしい。頼むと難なく了承された。彼も男だし本当の理由に気づいているのかもしれないが顔に出さなければ別にいい。
「この後台所のお手伝いに入りますのでさっきシャワーを使いました。そちらは床が濡れ気味ですが」
どうでもいい! とっとと行け!
場所を借りられると決まった時点で股間が先に持っていかれたように気が急いた。
小一時間後。
大変すっきりした。
とはいえやり過ぎたようでもありあたりは白っぽく見えめまいもする。
トイレの個室から出て横の洗面を見る。使用人スペースは外のように洒落てはおらず床はよくあるクリーム色の小さなタイル敷きだ。何人かの使用人が使うよう設えられていて、同じくタイル張りの水場には男子棟のレバーとは違い昔ながらの蛇口が三つ並んでいる。ちらりと見て真ん中の蛇口から手を洗う。
普段なら水道から直接水を飲むなど腹を下しそうなことはしないが、貧血気味で水分を取りたくなり両手ですくって一杯、二杯。そこで止めれば良かったのに三杯目を喉に流し込んだ時、
「ぐうっ!」
二杯目で既に感じていた違和感が胸をぎゅっと縛り急速に体の自由が奪われる。
「がっ!」
気持ちが悪い。だが上がってこない。
吐いてしまった方がー
思いながらダウドは床に倒れ、タイルの嫌な冷たさを頬で感じたのを最後に意識が途切れた。
<注>
祈りの文章はクルアーン第一章「開始の章」
引用は『絵本で学ぶイスラームの暮らし』松原直美/文 あすなろ書房 2015.4 より
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