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第6章 狼はすぐそこに(6日目)
幕間2 毒針
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支社のあるアフリカの某国に入国すれば、既にインド警察からの連絡で地元警察が監視している、と社員が伝えてきた。ミッタルたちに姿を見せるなということだ。
同行のハリーに逃亡先を探させながら彼は結論を出した。
リアル人狼ゲームはインドには向かない。
顧客から好評だったといっても祖国インドでの開催は避けるべきだった。
途中までは上手くいっていた。
初日脱出権は人数削減のための罠だが、3日目脱出権はゲームが成り立たないようなら打ち切りに使う。今回は同じクラスの高校生同士スムーズに進んでいたのでこの特権も殺害処理に変えた。5日目脱出権ともなればもう警察に逃げ込まれても構わない。ただゲームが終わるまでは踏み込んで欲しくないので時間調整をするだけだ。
第一の誤算は彼らが事前に礼と共に挨拶をしていた地元の村ではなく隣村の警察署に保護されてしまったことだ。車の走行跡を追って荒野を歩いた結果らしい。お陰で早く通報されてしまった。
生き残りのプレイヤーが保護された後も圧力をかけ、途中まではゲームだ何だという話は伏せられるはずだった。今までも嗅ぎ回ったジャーナリストやそこに情報を持ち込んだ若い会社員、日本でmacojinの件に勘付いた元プレイヤーの女などに圧をかけてきた。
だが今回は上手く通じない。考えてみれば自分が外交の一線から離れてかなり経った。維持しているつもりでも人が入れ替われば人脈の繋がりも薄れる。
顧客筋の海外からも圧をかけてもらったが、報道が誘拐から銃を乱射したテロリスト扱いになったところでざっと手を引かれた。テロリストの味方になるのはごめんだというのだろう。政治的にも重要なポジションの人間が多い顧客たちのこと、ある意味当然だ。
そしてデリーの別の筋からは事件を公にするようにと逆の強い圧力が流れた。こちらは多分三年前のプレイヤー絡みだ。彼の父親が仕える男は州知事を退任して今やフリーハンド、全力でこちらを潰しにかかってきた。
潜入させたサブチーフもヘマをやった。
前半はなかなか上手くゲームをかいくぐっていた。が何を色気付いたのか三年前のゲームプレイヤーの女の写真を無断で持ち込んでいてそれが彼を窮地に追いやった。
写真など紙一枚、破らせても何でもしらを切ればよかったのだ。
感情的になってプレイヤーを殺害しようとしたのは全くいただけない。プレイヤーたちに裏をかかれて以降彼の言動には全く説得力がなくなった。
逮捕されたようだがラジューが知っている程度のことは話されても問題ない。
何より大切な顧客情報は自分の頭の中にしか入っていないのだ。
少しの間潜伏しよう。顧客たちには必ず渇望が訪れる。殺し殺されるあの興奮をリアルタイムで目にしたくてたまらなくなるのだ。商売敵が入り込まないうちにビジネスを再建すればいい。自分とハリーがいればいけるだろう。
インドで打ち出した今回ゲームのデータを河原で焼き捨てる。
PCデータはエンジニアたちが緊急時手続きに則って消去しているはずだが警察側が復活させるのは時間の問題だ。それも仕方ない。
「15番は殺せなかったか」
イタリア人のような珍妙な名を持つ孤児の少年のことだ。
「17番とのいさかいから反感を恐れておとなしくしていたのが功を奏したようですね」
ゲーム開始前にデータをチェックし、ただの村人だった彼を危険度の高いタントラか占星術師どちらかにと指示をした。リストの隣と入れ替えたとのことだったが14番は「兄弟」の役付きだから16番の大男と配役を交換したのだろう。
精神的支柱だった17番の殺害後、親しかったらしいこの16番は代わるようにプレイヤーたちをまとめ始めた。彼に占星術師をつけていた方がゲームとしては面白かったのか、どうだろうか。
「儲け損なったかな」
顧客からの「視聴料」で賞金2500万ルピーと経費以上は集めている。それでなくてはビジネスは回らない。ついでに学校側にも身代金として2500万、15番の殺害報酬としても2500万を要求しておいた。取れる可能性があれば何重に要求してもいい。
「どちらにしろ今はインドからの多額の送金は無理でしょう」
ゲーム終了後のオークションで16番に入った入札はがたいの良さから肉体労働に耐え得ると思われたからだろう。対称的に体格が劣り、11番ー人狼として奮闘を見せたが甲斐なく敗北した男のような端正な容姿もない15番ただ1件の入札は、ミッタルのダミーだ。
身柄を入手次第殺害し証拠を送るつもりだった。
アンダーグラウンドに潜伏して不自由な生活を送るのは性に合わない。
自分は天下の王道を歩くべき人間だ。
思った時ミッタルは初めて敵への憎悪を感じた。
足元を歩く虫が毒針を持って自分に襲いかかってきた。まるで赤2のように。
同行のハリーに逃亡先を探させながら彼は結論を出した。
リアル人狼ゲームはインドには向かない。
顧客から好評だったといっても祖国インドでの開催は避けるべきだった。
途中までは上手くいっていた。
初日脱出権は人数削減のための罠だが、3日目脱出権はゲームが成り立たないようなら打ち切りに使う。今回は同じクラスの高校生同士スムーズに進んでいたのでこの特権も殺害処理に変えた。5日目脱出権ともなればもう警察に逃げ込まれても構わない。ただゲームが終わるまでは踏み込んで欲しくないので時間調整をするだけだ。
第一の誤算は彼らが事前に礼と共に挨拶をしていた地元の村ではなく隣村の警察署に保護されてしまったことだ。車の走行跡を追って荒野を歩いた結果らしい。お陰で早く通報されてしまった。
生き残りのプレイヤーが保護された後も圧力をかけ、途中まではゲームだ何だという話は伏せられるはずだった。今までも嗅ぎ回ったジャーナリストやそこに情報を持ち込んだ若い会社員、日本でmacojinの件に勘付いた元プレイヤーの女などに圧をかけてきた。
だが今回は上手く通じない。考えてみれば自分が外交の一線から離れてかなり経った。維持しているつもりでも人が入れ替われば人脈の繋がりも薄れる。
顧客筋の海外からも圧をかけてもらったが、報道が誘拐から銃を乱射したテロリスト扱いになったところでざっと手を引かれた。テロリストの味方になるのはごめんだというのだろう。政治的にも重要なポジションの人間が多い顧客たちのこと、ある意味当然だ。
そしてデリーの別の筋からは事件を公にするようにと逆の強い圧力が流れた。こちらは多分三年前のプレイヤー絡みだ。彼の父親が仕える男は州知事を退任して今やフリーハンド、全力でこちらを潰しにかかってきた。
潜入させたサブチーフもヘマをやった。
前半はなかなか上手くゲームをかいくぐっていた。が何を色気付いたのか三年前のゲームプレイヤーの女の写真を無断で持ち込んでいてそれが彼を窮地に追いやった。
写真など紙一枚、破らせても何でもしらを切ればよかったのだ。
感情的になってプレイヤーを殺害しようとしたのは全くいただけない。プレイヤーたちに裏をかかれて以降彼の言動には全く説得力がなくなった。
逮捕されたようだがラジューが知っている程度のことは話されても問題ない。
何より大切な顧客情報は自分の頭の中にしか入っていないのだ。
少しの間潜伏しよう。顧客たちには必ず渇望が訪れる。殺し殺されるあの興奮をリアルタイムで目にしたくてたまらなくなるのだ。商売敵が入り込まないうちにビジネスを再建すればいい。自分とハリーがいればいけるだろう。
インドで打ち出した今回ゲームのデータを河原で焼き捨てる。
PCデータはエンジニアたちが緊急時手続きに則って消去しているはずだが警察側が復活させるのは時間の問題だ。それも仕方ない。
「15番は殺せなかったか」
イタリア人のような珍妙な名を持つ孤児の少年のことだ。
「17番とのいさかいから反感を恐れておとなしくしていたのが功を奏したようですね」
ゲーム開始前にデータをチェックし、ただの村人だった彼を危険度の高いタントラか占星術師どちらかにと指示をした。リストの隣と入れ替えたとのことだったが14番は「兄弟」の役付きだから16番の大男と配役を交換したのだろう。
精神的支柱だった17番の殺害後、親しかったらしいこの16番は代わるようにプレイヤーたちをまとめ始めた。彼に占星術師をつけていた方がゲームとしては面白かったのか、どうだろうか。
「儲け損なったかな」
顧客からの「視聴料」で賞金2500万ルピーと経費以上は集めている。それでなくてはビジネスは回らない。ついでに学校側にも身代金として2500万、15番の殺害報酬としても2500万を要求しておいた。取れる可能性があれば何重に要求してもいい。
「どちらにしろ今はインドからの多額の送金は無理でしょう」
ゲーム終了後のオークションで16番に入った入札はがたいの良さから肉体労働に耐え得ると思われたからだろう。対称的に体格が劣り、11番ー人狼として奮闘を見せたが甲斐なく敗北した男のような端正な容姿もない15番ただ1件の入札は、ミッタルのダミーだ。
身柄を入手次第殺害し証拠を送るつもりだった。
アンダーグラウンドに潜伏して不自由な生活を送るのは性に合わない。
自分は天下の王道を歩くべき人間だ。
思った時ミッタルは初めて敵への憎悪を感じた。
足元を歩く虫が毒針を持って自分に襲いかかってきた。まるで赤2のように。
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