リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ!〉

大友有無那

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第6章 狼はすぐそこに(6日目)

幕間1 乱射

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「インドは恐いねえ」
 昨日、店に来た白人客に言われた。これには同意出来ない。がお客様なので
「心配です」
 とナンダは無難に返した。この手の、しかも未成年が多く巻き込まれる事件はインドでは稀でここカナダでもそうない。むしろアメリカあたりで起こりそうだと思う。

『犠牲者の身元確認は難航しています。マニプール州、グジャラート州、アーンドラ・プラデーシュ州と各地から問い合わせがあり、カーンプル警察では情報は以下の電話番号にー』

 社員食堂に勤めていた男がインタビューに答える。

『昨日でプロジェクトが終わって今日は休みだと聞いていました』

 寮での朝食ボックスも作るので早朝から厨房に入っていたが、朝7時前、いつもの交代時間にぞろぞろ出勤してきて驚いた。社員に食堂で朝食を提供すべきか聞くと臨時のミーティングだから不要だと断られた。
 それでも仕事の後ここで食べたい者もいるかもしれない。一応簡単な準備を始めた。
 全員がオフィスに入った7時からそう経たず食堂との境のドアが開き、ひとりの少女が慌てて二、三歩こちらへ歩いたかと思うと弾かれたように倒れた。
 向こうに、自動小銃を持った男が立っていた。

『後はもう大騒ぎで我先に裏の階段へ逃げ出しました』

 幸い銃を持った男は追いかけては来ず食堂従業員は全員無事だった。1階で警備員に伝えた内容が地元カーンプル警察への第一報となる。

『あの人はテロリストとかじゃなくて、いやそうなのかもしれませんが、時たま顔を出す社員です。いっつもサングラスをしていて、その回りにも傷が見えて恐い人みたいだと思っていたのですがー』

 警察が駆けつけた時犯人は既に姿を消していた。
 残されたのは部屋に折り重なる少年少女たちの遺体だった。
 額を、胸に腹をと皆二か所以上銃弾を浴びていた。乱射の後、確実な殺害を計り撃ち直したのではとリポーターが解説した。

「何かおかしくないですか」
 ちぐはくだ。朝食の席ナンダは問いかける。
「ああ」
 義父も同様に疑問を持ったようだ。
 

 ニュース画面に映るのは磨き抜かれた大きなガラス張り、真新しく堂々たる建物。
 ウッタル・プラデーシュ州、州都ラクナウと並ぶ大都市カーンプルのオフィスビルだ。
 数十人に及ぶ犠牲者は推定12歳から18歳。逃げようとして後ろから撃たれた少女は幸い命に別状はなく治療中だが、彼女も16歳。
 曲がりなりにもインドは今世紀に入り全ての子どもが学校に通うことを法で義務付けた。だが最新鋭のオフィスで勤務していたのは大卒どころか高校にも行っていない子どもたちだ。
 最初にコンタクトセンターにて銃の乱射事件、若者が多く犠牲にと聞いた時にはコールセンターだと思った。英語が出来る大学生の定番アルバイト先だ。
 だが実際の犠牲者ははるかに若い。
 その子どもらを働かせて最新鋭のオフィスでビジネスが成り立つのか。
 服装からは中流の子女に見えるが、身元問い合わせはインド全土の農村からが多いとの報道も不審だ。

『塾でもやっているのだと思いました』

 IDカードを胸にぶら下げた少年少女について同じフロアの不動産会社社員は言った。無理にそう想像する程度しか出来ない。


「!」
 流れた通知に携帯を手に取る。
「アメリカのロハンさんからです」
 このアプリを使うのは彼しかいない。ロハンからの連絡は弟のアビマニュ絡みだけだ。
 見ると彼は直に電話すると言ってきて間もなくリビングの電話が鳴った。スピーカーにして出る。
 言いかけた久しぶりの挨拶をロハンは遮った。
『あんたの所には警察は来ていますか』
『……いいえ』
 レースのカーテンをわずかに開き明るい朝の庭を見る。
『まだそっちは駄目か! 警察に巡回を強化してもらった方がいい。こっちはFBIが来てるぞ!』
 こちらの戸惑いを察し、
『あんた全然わかっていないんですか』
 話の気配の後に電話はロハンの武術の弟子で、かつてアビマニュのことで連絡を寄越した会社員に代わった。こちらは短い挨拶の後に、
『先生はマークされているかもしれないので私から資料をお送りします』
 とメールアドレスを確認する。
 最後再び電話に戻ったロハンは告げた。
『ほとんどは空港でとっ捕まったようですが、大ボスのY・K・ミッタルとその片腕は逃げおおせたそうです。世界中のどこに現れるかわかりませんよ』
 そちらには多分行かないでしょうが。


『……こちら情報提供者の安全を配慮して音声のみとなっております』
 テレビでは有識者が並ぶスタジオに変声器を通したらしい若い男の声が流れる。

『僕は彼の記録を受け取っただけです。それが本当かどうかはわかりません。ただ、誠実な人間ですので本人が本気で信じ追及していたことは間違いありません』
 証言者は、昨年ムンバイで起きた連続狙撃事件のうち後で撃たれた会社員の知人だという。
『……ヒンディー語も英語もわからない少年少女をインド全土から集めました。彼の郷里、グジャラートの村から採用された少女は短い期間高給の仕送りを果たした後に物言わぬ帰宅をしました。彼女は訴えていたんです』

「人殺しのショーの監視をさせられている!」   
                      

 ナンダは送られてきた添付資料とテレビ画面へ代わる代わる目を移す。
 どちらも示す内容は同じだ。

『では今回の乱射で銃殺された十代も?』
 キャスターは問う。
『今回のことは当然ですが彼の記録にはないので僕は何も言えません。記録にはこうあります。ただのモニター監視ではなく、

「リアル人狼ゲーム」

 の監視だったと』

 皿の上に取り落としたスプーンが大きな音を立てた。
 スタジオでは人狼ゲームがカードゲーム発祥であり、リアル人狼ゲームというフィクションは日本でデスゲームジャンルの一種として発達したことを解説する。
 ナンダはモニターを抱くようにかぶりついた。
 どれほど近づいてもモニターの中に何か見える訳ではない。それでも画面の中に入り込むように目を走らせた。
「これでアビマニュ君のこともわかるかもしれない」
 妻は背に腕を回し優しく言った。
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