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序 記憶が戻る前のちょっとしたこと
0-2 救われる
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巡査はどこにいるのかわからなかった。
暗いそして重い。変な臭いもする。
何かの下方に仰向けで横たわっている。体を返して這い動くと光の下に制服の腕が見えた。
(うっ!)
足が痛む。怪我をしたのか。警察で働けなくなったらと巡査は青くなった。家の畑の世話ですらー
(!)
思考がすっと止まった。
目の前にあるのは腕だけだ。体がない。
その向こうに足。飛び散った血。ガラスの破片。
血の匂いと争い漂うきな臭さ。
スチールと木の本棚が重なり合って倒れてできた空間に収まっていたのだと理解する。
「う……ううっ……」
小さなうめき声。
「今助けるぞ!」
奥の階段から同僚たちがなだれ込んできた。
「警部補殿を先に!」
壁際で唸る上官を指す。
「うぎっ!」
左右から支えられて立つと着いた右足がずきりと痛んだ。
(そういえばあの子はー)
扉へ振り返れば冬の水色の空が見えた。
(待ってくれ! あそこは2階があったはずだ)
崩れ落ちたレンガ回りの炎に同僚たちがバケツで水をかける。
「3課は目撃証言を追え!」
「2課は民間人の保護!」
「共犯者がいるはずだ!」
(この足じゃ何もできない)
連れ出された署の裏庭で巡査はうなだれる。
同僚を羨み細めた目に気づいたのか、
「お前には大事な仕事がある」
署長のでっぷりとした腹はこういう時頼もしい。
黒いプラスチック椅子を示されて右足をかばいがくりと座った。ガラスの破片で擦ったらしい腕も小さな痛みで攻め立てる。
「現場にいた唯一の生存者だ。覚えていることを全て話せ」
「警部補殿は?」
「先ほど、神の御元に身罷られた」
強烈な怒りが沸き起こった。
この署は過激派に攻撃された。
跡形もなくなっただろうあの少年は爆弾を身につけて自爆テロを図った。それを疑ったから玄関前で警護に立っていた先輩は少年を外に押しとどめた。彼や、後ろに引っ張ってくれた誰かのおかげで自分は生き延びた。
(いや)
引っかかる。
「……わたしの記憶にある最後で、扉の前の少年は両手を開いて、空で何か叩くように巡査長殿に詰め寄っていて、仕掛けに触れるような動きはありませんでした」
署長の目が鋭く眇められる。
自爆ではない。
遠隔で別の人間が起爆させた。
その可能性が死んだ少年にとってましなことなのか巡査にはわからない。
命拾いという神の恩寵に心の中で素早く祈りを捧げてから巡査は証言を開始した。
暗いそして重い。変な臭いもする。
何かの下方に仰向けで横たわっている。体を返して這い動くと光の下に制服の腕が見えた。
(うっ!)
足が痛む。怪我をしたのか。警察で働けなくなったらと巡査は青くなった。家の畑の世話ですらー
(!)
思考がすっと止まった。
目の前にあるのは腕だけだ。体がない。
その向こうに足。飛び散った血。ガラスの破片。
血の匂いと争い漂うきな臭さ。
スチールと木の本棚が重なり合って倒れてできた空間に収まっていたのだと理解する。
「う……ううっ……」
小さなうめき声。
「今助けるぞ!」
奥の階段から同僚たちがなだれ込んできた。
「警部補殿を先に!」
壁際で唸る上官を指す。
「うぎっ!」
左右から支えられて立つと着いた右足がずきりと痛んだ。
(そういえばあの子はー)
扉へ振り返れば冬の水色の空が見えた。
(待ってくれ! あそこは2階があったはずだ)
崩れ落ちたレンガ回りの炎に同僚たちがバケツで水をかける。
「3課は目撃証言を追え!」
「2課は民間人の保護!」
「共犯者がいるはずだ!」
(この足じゃ何もできない)
連れ出された署の裏庭で巡査はうなだれる。
同僚を羨み細めた目に気づいたのか、
「お前には大事な仕事がある」
署長のでっぷりとした腹はこういう時頼もしい。
黒いプラスチック椅子を示されて右足をかばいがくりと座った。ガラスの破片で擦ったらしい腕も小さな痛みで攻め立てる。
「現場にいた唯一の生存者だ。覚えていることを全て話せ」
「警部補殿は?」
「先ほど、神の御元に身罷られた」
強烈な怒りが沸き起こった。
この署は過激派に攻撃された。
跡形もなくなっただろうあの少年は爆弾を身につけて自爆テロを図った。それを疑ったから玄関前で警護に立っていた先輩は少年を外に押しとどめた。彼や、後ろに引っ張ってくれた誰かのおかげで自分は生き延びた。
(いや)
引っかかる。
「……わたしの記憶にある最後で、扉の前の少年は両手を開いて、空で何か叩くように巡査長殿に詰め寄っていて、仕掛けに触れるような動きはありませんでした」
署長の目が鋭く眇められる。
自爆ではない。
遠隔で別の人間が起爆させた。
その可能性が死んだ少年にとってましなことなのか巡査にはわからない。
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