転生したら宗教テロリストだった。だけどオレ、推しのために闘うわ!

大友有無那

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1 ららたむという天使を知っていた

1-1 光が俺に降り注ぐ

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 星を見たことはあるよな?
 じゃあ、山ほどの星の中からただ一つ、何億光年のはるかな距離から一直線に星の光が飛び込んできたことは?
 ー指向性ビームみたいに。

 ない? それなら俺の話はよくわからないかもしれないな。
 俺だって、そんなことが人生に起こるなんて思いもしなかった。

 当時、俺は学校を卒業して就職したばかりで研修中だった。
 同期の奴から、気になる女の子がいるけど一対一では誘いづらいと頼まれ休みの日に数人で行った屋外イベント、飲食や物販テントの並ぶ向こうに、その光が輝いていた。

「谷間の白百合」
 って言葉が頭に浮かび上がった。 後で知ったんだけど似たタイトルの名作文学があるんだとよ。内容は知らないけど。

 次に浮かんだのは、
「天使」
 陳腐すぎるよな!

 左右に分けた髪がさらりと白い頬を叩き、すらりとした腰をゆるっとねじって観客側に微笑む。
 屋外イベントの仮設ステージ、熱心に見ているファンらしい男の集団は十数人、後は通るついでに眺めているような男女数人。
 同じ衣装を着て歌って踊る集団の中その人にだけプラチナの光が当たる。

ーうーん、どうしても上手く言葉にならないな。

 彼女だけが白く発光しているようだった。プラチナを画像検索すると銀色の延べ棒がたくさん出てきたけれど彼女を包む光はもっと青く清廉で輝きも大きかった。
 その光が突然、イベントステージから結構離れて歩いていた俺の目に飛び込んできたんだ!

 恋をすると詩人になるというがありきたりのポエムまがいを垂れ流した俺はよっぽど詩の才能がなかったんだろう。


 帰りの電車で動画サイトを検索して小さな画面の隅々に彼女を探し公式サイトと照らし合わせた。
 纏向まきむくららん 
   愛称は「ららたむ」
担当カラーは水色。出身は北関東で生年月日から多分高校生。

それがとても大切な俺の光の名前だった。


 ららたむは足を運んだどのステージでも俺を魅了した。
 公演が終わればグッズを買い、金額に応じて渡される特典会のチケットで握手をして話す。時には一緒にチェキを撮る。

 詩人にはなれないけど陳腐な文句を垂れ流した、ってとこで誤解を招いたかもしれない。
 俺はららたむに恋はしなかった。ガチ恋のヤバい連中とは違う。
 あくまでファンとしてアイドルの、アーティストの纏向ららんに持っていかれたんだと強調しておく。

 だからこそ、どうしていいのかわからなかった。



『君がいなければ  春は意味がない   花も香りも失われた世界』

ーーーーー
「呼んでほしいお名前ありますか?」
 アイドルファンとしての活動ネームっていうのかな、そういうのがあるなんてのも知らなかった。戸惑う俺にららたむが付けてくれた。
「アキッティさん!」
 アキッティ。これがららたむからの大切な俺の名前だ。
 この名を入れたファンアカウントは今もネットの海を漂っているんだろうか。

 それまでいい加減に楽しいのが一番! と過ごしてきた俺はららたむに遭って初めて頑張ってみた。


 苦闘の末だけど会社ではなかなかの売り上げを叩き出し、出世株の集まる支社に異動を果たした。
 だってららたむ所属の事務所が変わって活動地域も遠くなっちまったんだ。
 仕方ねえだろ、追いかけなきゃ。

 
「……わたしが教えてもらったことをアキッティさんにも教えてあげる!」 
 内緒話のように、身を乗り出し顔を近づけてららたむが打ち明けてくれた「秘密」
 それを支えに俺は社会人人生に分け入り成果を挙げた。ららたむ様々だ。


 稼げば稼ぐほどライブに行けるし遠征にも着いていける。物販は大人買い、特典会のチケットを積めばららたむに悲しい思いはさせない。残業も苦にならなかった。
 そこまでして見返りは? 空しくないのかって?
 何言ってるんだ! ららたむは歌って踊る女神様だ。
 ステージに立ってくれることだけでありがたいんだからお布施は当然だろう?

 依存し過ぎというならその通りだ。
 星を仰ぐ幸せな人生は彼女が姿を消した時に終わった。



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