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翌週、週一のサークル活動の日に、友也は慎吾に調査結果を伝えた。異臭騒ぎ前から続く同一犯の犯行は、バドミントン部員の関与を否定する。むしろ、ガソリンの匂いのするロケットが犯人による次の放火の準備かもしれないと伝えた。慎吾は安心したように見えた。部活終わり、といっても話の区切りがついただけだが、帰りがけ、貴音が慎吾を呼び止めていた。友也はその二人を見たが、気にせず帰宅した。
それから一週間後のことだ。新たな放火が発生した。学校から程近いアパートだった。出火元には火炎瓶が用いられた。さらに人々を驚かせたのは今回の放火では犯人が部屋に乗り込んで放火した点だ。一階の部屋にベランダから窓を叩き割って犯人が侵入するのを何人かの住人が目撃していた。しばらくして、部屋から火の手が見えたという。部屋にいた住人は焼け死に。犯人も重い焼けどを負った。学生だった被害者は、玄関まで火を避け、向かったが、扉にかけられたチェーンを外すことに手間取り、煙を吸い込み過ぎて生き絶えた。状況からチェーンの金具がかなり高温になっていたため、容易に外せなかったのではと思われている。
サークルの時間、以前まではわずかに明るさを残した開始時間も、すでに暗くなっていた。友也が遅れぎみに入室すると、貴音と慎吾が話していた。
「…じゃあ、やっぱり死んだのは」
「ああ、本庄に指摘されて追及してた学生だ」
友也は重い空気に言葉をだせない。
「おつかれ、佐切」
声をかけてくれた慎吾は心なしか苦しそうだ。
「なにがあったんですか?」
「ああ、本庄がバド部の件の犯人にあたりをつけてくれてたんだ」
「え、誰だったんですか?」
「それが、一月ほど前に退部した学生で、今回焼け死んだ被害者だ」
「…!?」
「私が武井くんにバドミントン部の犯人に該当しそうな特徴を伝えたら、武井くんがその人を割り出して、教員含めて追及し始めた矢先だったわ」
貴音は淡々と話す。
「ああ、そいつは教員の連絡に応答しなくなって、学校にも来なくなった。これはもう本当に犯人だろうと動き出す間際に、こんな…、こんなことに」
慎吾は拳を堅めた。
「俺にはさっぱり分かりません。ロケットをガソリンに浸した犯人が学生だった?」
「そう、そして、死者を出した四件目の犯人でもある」
「!?」
友也は言葉を発言できない。
「直接聞けなかったから憶測だが、そいつは備品倉庫から持ち出した道具で火遊びしてたんだ」
慎吾が重い口を開く。
「火遊び?」
「ガソリンに浸して火を付けたロケットを川に打ち込んでいたの」
貴音は缶コーヒーを手でもてあそんでいる。
「じゃあ、流れ弾で…」
「おそらく、飲酒してたみたいだし」
「ああ」
友也は川縁で貴音が見ていた空き缶を思い出した。
犯人はその後、回復して口が聞けるようになってから警察にこう話しているという。最初はうるさい隣人への嫌がらせのつもりだった。それが、思った以上に燃え広がった。捕まることもなくて、もう一度やりたくなった。二件目はそんな中で絶好の標的だった。しかも、その燃え広がり方が、刺激的だった。もう引き返せなかった。三件目、思った通りに事が運んで、次々に燃え移った。ここで、連続放火犯として取り上げられるようになった。それで、続けたくなった。なんなら自分の芸術的な放火を作品として世に出す感覚だった。だけど、四件目、あれは違う。俺じゃない。なのに、誰も気づかない。それが憎くて堪らなかった。やっと犯人を見つけたとき、最初は今回も芸術的に仕上げるつもりだった。けど、あいつの顔を見たら怒りが押さえられなくて、気づいたら、あいつの家に飛び込んでいた。逃げ惑うあいつを見ながら、正義を成している感覚に陥った。あいつがいなくなれば、また俺の芸術を世間に披露できるってね。
それから一週間後のことだ。新たな放火が発生した。学校から程近いアパートだった。出火元には火炎瓶が用いられた。さらに人々を驚かせたのは今回の放火では犯人が部屋に乗り込んで放火した点だ。一階の部屋にベランダから窓を叩き割って犯人が侵入するのを何人かの住人が目撃していた。しばらくして、部屋から火の手が見えたという。部屋にいた住人は焼け死に。犯人も重い焼けどを負った。学生だった被害者は、玄関まで火を避け、向かったが、扉にかけられたチェーンを外すことに手間取り、煙を吸い込み過ぎて生き絶えた。状況からチェーンの金具がかなり高温になっていたため、容易に外せなかったのではと思われている。
サークルの時間、以前まではわずかに明るさを残した開始時間も、すでに暗くなっていた。友也が遅れぎみに入室すると、貴音と慎吾が話していた。
「…じゃあ、やっぱり死んだのは」
「ああ、本庄に指摘されて追及してた学生だ」
友也は重い空気に言葉をだせない。
「おつかれ、佐切」
声をかけてくれた慎吾は心なしか苦しそうだ。
「なにがあったんですか?」
「ああ、本庄がバド部の件の犯人にあたりをつけてくれてたんだ」
「え、誰だったんですか?」
「それが、一月ほど前に退部した学生で、今回焼け死んだ被害者だ」
「…!?」
「私が武井くんにバドミントン部の犯人に該当しそうな特徴を伝えたら、武井くんがその人を割り出して、教員含めて追及し始めた矢先だったわ」
貴音は淡々と話す。
「ああ、そいつは教員の連絡に応答しなくなって、学校にも来なくなった。これはもう本当に犯人だろうと動き出す間際に、こんな…、こんなことに」
慎吾は拳を堅めた。
「俺にはさっぱり分かりません。ロケットをガソリンに浸した犯人が学生だった?」
「そう、そして、死者を出した四件目の犯人でもある」
「!?」
友也は言葉を発言できない。
「直接聞けなかったから憶測だが、そいつは備品倉庫から持ち出した道具で火遊びしてたんだ」
慎吾が重い口を開く。
「火遊び?」
「ガソリンに浸して火を付けたロケットを川に打ち込んでいたの」
貴音は缶コーヒーを手でもてあそんでいる。
「じゃあ、流れ弾で…」
「おそらく、飲酒してたみたいだし」
「ああ」
友也は川縁で貴音が見ていた空き缶を思い出した。
犯人はその後、回復して口が聞けるようになってから警察にこう話しているという。最初はうるさい隣人への嫌がらせのつもりだった。それが、思った以上に燃え広がった。捕まることもなくて、もう一度やりたくなった。二件目はそんな中で絶好の標的だった。しかも、その燃え広がり方が、刺激的だった。もう引き返せなかった。三件目、思った通りに事が運んで、次々に燃え移った。ここで、連続放火犯として取り上げられるようになった。それで、続けたくなった。なんなら自分の芸術的な放火を作品として世に出す感覚だった。だけど、四件目、あれは違う。俺じゃない。なのに、誰も気づかない。それが憎くて堪らなかった。やっと犯人を見つけたとき、最初は今回も芸術的に仕上げるつもりだった。けど、あいつの顔を見たら怒りが押さえられなくて、気づいたら、あいつの家に飛び込んでいた。逃げ惑うあいつを見ながら、正義を成している感覚に陥った。あいつがいなくなれば、また俺の芸術を世間に披露できるってね。
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