学園祭

ヨージー

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 アラームがなる。ごうごうと、背後の装置が稼働し始めた。甲高いアラートがなった。幸也の放った矢は、ファンの羽の間に刺さり、ファンの回転を抑えていた。成功だ。幸也は自分の役目を見事に果たしてくれた。これでもう、被害が大きくなることはない。甲高いアラートと別に通常稼働を行う音が聞こえる。攪拌器だ。そちらを止める手だてが友也には思い付かなかった。わずかだが異臭を感じた。瑚子が間に合うかはわからない。友也は貴音を見た。貴音も視線に気づいて友也を見た。
「ここまでね…」
 貴音は普段とトーンも変わらない。どんなときでも冷静な人だ。友也は笑ってしまった。目蓋には涙が込み上げてきていた。パチッ、パチッ。友也は音のした先を見る。
「あれ、なんで」
 友也の視線の先では、立ち上がった貴音が手首を擦っているのが見えた。もちろん手に拘束はない。
「袖口にハサミ、仕込んであるの?」
「は?」
「スタンガンも気づいて、先に気絶したふりしてたの。跡が残るでしょう、あれは」
 友也は反応できない。
「犯人は気絶したふりで問題なかったわ。案の定、人に使うのは初めてだったのかも」
「どうして…」
 今度の友也の言葉は語調が異なっていて、攻め気が込められていた。
「ああ、私は犯人と格闘までする気はないわ。ギリギリで止めないと、犯人が戻ってくる可能性もあったしね」
 そういうと貴音はファンの後川へ回り込んだ。
「でも、すぐに通報すれば…」
「犯人がどこに潜んでいるかわからなかったし、ガスの噴射ぎりぎりなら、犯人は逃げているでしょう?あと、藤田が気にくわなかった」
 最後に本音が漏れたようだ。貴音は攪拌器のスイッチをきった。
「佐切くんこそ、さっきのは何?」
「は?」
「市販の洗剤で人が簡単に死ぬようなガスが作れると思う?いいとこ入院よ」
「…なっ」
「もっと、友だちつくったほうがいいわよ」
 友也は恥ずかしさのあまり、言葉を返せない。
「それに寝言も傑作だったわ」
「は?」
 友也は気を失っていたときに見ていたような夢を思い出そうとしたが、全く思い出せなかった。
「大丈夫!?」
 激しい音と共に、教室の扉が開いた。明るい照明のなかに瑚子と、何人かの学生の姿が見えた。
「藤田さん、騒がしいわね。今終わったところよ」
「え、なに言って…」
 困惑する瑚子をよそに、貴音が動けないままの友也の肩に手をおいた。そのまま貴音は耳打ちするように小声で言った。
「でも、面白いものを見せてもらったわ。それは加点してあげる」
 そういうと、貴音は、友也をそのままにして教室を出ていこうとする。
「あの、犯人は!?」
 友也は何か貴音を引き留める言葉を、と考えて叫んだ。
「この犯人に逃げきる頭はないわね。ずさんだったもの…。そうね、三日のうちには捕まるでしょう」
 貴音はそういい残して、教室から明るい通路へ出ていってしまった。

 後日、貴音の話のとおり、犯人はすぐに捕まった。漫画喫茶で身を潜めているところを捕まえられた。作業中の犯人の姿が学内の監視カメラにしっかりと残っていて、街中の逃走姿も逐一追えたらしい。ドラッグストアでの強盗騒動も犯行を認めている。犯人は不合格になった大学への逆恨みだったと証言している。友也は貴音にその話を聞かせたが、貴音はすでに興味を失っていた。ただ、今回の件を踏まえて健吾の発案で、友也は貴音の連絡先を知ることができた。まだ連絡の機会はない。
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