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弥伊子は重い足取りで校舎に戻る。真澄には以前獅童宰都にメイクをした状態で話しかけたときのことも伝えていた。メイクなし、というか我流メイクの弥伊子に須藤綾が気づかなかったのを見て、弥伊子に助言をしてくれていた。真澄はそのことに考えが及んだ途端に無言で弥伊子の肩をバシバシと叩くものだから、何事かといぶかしんだ。須藤綾と別れると、真澄に校舎へ引き戻された。真澄が自身の気づきを力説され、弥伊子も自信なく同意した。そんなメイクだけで別人と認識されるものなのだろうか。不安げな弥伊子の表情に真澄は弥伊子の両肩をつかみ揺さぶった。
「本当に好きなんだったら、可能性は全部潰して玉砕してこい」
正直、玉砕はしたくなかった。弥伊子は子どものころから、玉砕してしまったときのダメージを恐れて自分から行動を起こすことに躊躇うたちだった。幼稚園のとき、気になっていたヒトシくん。弥伊子は滑り台の影から見ていることしかできなかった。小学校のときのユウマくん。弥伊子は登り棒の間から見つめることしかできなかった。中学生の頃の恭平くん。弥伊子は自転車置場の自転車に身を屈めて隠れて見守り続けた。
そこでふと、この間のときのことを思い出した。何故自分はあんなに大胆に獅童宰都へ話しかけることができたのだろう。もちろん、あの瞬間を逃してしまったら、という気持ちが強かったこともある。けれど、そうだ、やはり芦屋恭子のメイクの力だ。弥伊子は自分で鏡を見ながら、今の自分ならばあるいは、と勇気を持つことができていたのかもしれない。それほどに、その程度には少なくとも、芦屋恭子のメイクによって人が変わっていたのだろう。もちろん見分けがつかなくなるほどではない、と思っているけれど。
弥伊子の足取りは徐々にだが軽くなっていた。それは単に真澄の言葉のままを信じたからではない。芦屋恭子のメイクの力を信じることができたからだった。「芦屋恭子のお陰で私は普段より自信のある、勇気を持った南洞弥伊子だったのだ」弥伊子は図書室の戸の前で躊躇う。自分はなにをしているのだろう。こんなことをしてもなににもならないかもしれない。単に獅童宰都に挨拶するだけになるかもしれない。そもそも図書室に彼が居るかどうかすらわからない。今までの弥伊子にこの扉を開ける勇気はあったのだろうか。弥伊子はそう思いながら戸に手をかけた。脳裏には芦屋恭子が弥伊子をメイクしていたときの自信に溢れた表情が浮かんでいた。
「君は確か、」
図書室には確かに獅童宰都が居て、初めて出会ったときのように彼は文庫本を机に置き、窓を閉めようとして、彼は弥伊子だけを見ていた。
「本当に好きなんだったら、可能性は全部潰して玉砕してこい」
正直、玉砕はしたくなかった。弥伊子は子どものころから、玉砕してしまったときのダメージを恐れて自分から行動を起こすことに躊躇うたちだった。幼稚園のとき、気になっていたヒトシくん。弥伊子は滑り台の影から見ていることしかできなかった。小学校のときのユウマくん。弥伊子は登り棒の間から見つめることしかできなかった。中学生の頃の恭平くん。弥伊子は自転車置場の自転車に身を屈めて隠れて見守り続けた。
そこでふと、この間のときのことを思い出した。何故自分はあんなに大胆に獅童宰都へ話しかけることができたのだろう。もちろん、あの瞬間を逃してしまったら、という気持ちが強かったこともある。けれど、そうだ、やはり芦屋恭子のメイクの力だ。弥伊子は自分で鏡を見ながら、今の自分ならばあるいは、と勇気を持つことができていたのかもしれない。それほどに、その程度には少なくとも、芦屋恭子のメイクによって人が変わっていたのだろう。もちろん見分けがつかなくなるほどではない、と思っているけれど。
弥伊子の足取りは徐々にだが軽くなっていた。それは単に真澄の言葉のままを信じたからではない。芦屋恭子のメイクの力を信じることができたからだった。「芦屋恭子のお陰で私は普段より自信のある、勇気を持った南洞弥伊子だったのだ」弥伊子は図書室の戸の前で躊躇う。自分はなにをしているのだろう。こんなことをしてもなににもならないかもしれない。単に獅童宰都に挨拶するだけになるかもしれない。そもそも図書室に彼が居るかどうかすらわからない。今までの弥伊子にこの扉を開ける勇気はあったのだろうか。弥伊子はそう思いながら戸に手をかけた。脳裏には芦屋恭子が弥伊子をメイクしていたときの自信に溢れた表情が浮かんでいた。
「君は確か、」
図書室には確かに獅童宰都が居て、初めて出会ったときのように彼は文庫本を机に置き、窓を閉めようとして、彼は弥伊子だけを見ていた。
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初回公開日時 2019.01.25 22:29
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❦イラストは有償画像になります。
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