誰の目にも輝きを

ヨージー

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 不思議なもので、芦屋恭子からのメイクをされることがなくなると徐々に今まで話しかけてきていたクラスメイトたちが少しずつ減っていき、いつの間にか元の木阿弥、弥伊子はかつての日常を取り戻し始めた。クラスで話をするのはもっぱら加藤真澄で、登下校のときもそこに藤田飛鳥が時に須藤綾が加わる程度だ。とはいっても、弥伊子はこと下校に関しては最近少し遅い。部活生である藤田飛鳥や須藤綾と会う機会の方が加藤真澄とよりも多い。けれど、それは南洞弥伊子の部活が決まったわけではないし、寄り道するお気に入りのお店ができたわけでもない。弥伊子は学校にいた。それはここ数ヵ月と同じように図書室に寄っていたためだ。その内容はかつてのそれとは少し違うが。
 弥伊子は獅童宰都に伝えた。
「私は、好きです…本が」
「え、ああ」
獅童宰都は手元の本へ視線を戻した。
「そういえばはじめてあったのもここだったね」
獅童宰都は弥伊子へ向き直った。弥伊子は言葉につまる。獅童宰都は覚えていた。弥伊子と出会った日のことを。弥伊子はそれだけで何も考えられなくなりそうだった。
「君はどんな本が好きなの?」
 弥伊子は決して読書家ではない。何を言うべきか、まわらない頭を働かせる。自分のうそに追い込まれてしまった。
「とっさにはでてこないよね。ごめん」
獅童宰都が気を使ってくれる。申し訳なさそうな笑みに弥伊子はまた心を捕まれる思いだった。
「その、こっちにきて少し話をしない?」
図書室の入り口に立ったままの弥伊子は状況にはっとした。弥伊子は緊張を隠して獅童宰都へ歩みを進めた。

 弥伊子は獅童宰都に促され少ない知識で会話を始めた。獅童宰都はつたない弥伊子の言葉を拾って広げてくれた。それに何より獅童宰都は楽しそうに話した。それが弥伊子にとってはたまらなく嬉しくて、幸せだった。獅童宰都は自分の好きなことを話すときにこんな話し方を、表情をするのだと知った。獅童宰都は以外にも少し突飛な、メルヘンとも言える物語が好みらしかった。弥伊子は読まなくてはならない本を頭のなかに必死でメモした。
 その日の最後獅童宰都は言った。
「そういえば君の名前を聞いてなかった」
弥伊子は予想していた出来事に、それでも少し驚いた。少し緊張もあったが弥伊子は小さく答えた。
「私は、南洞、弥伊子…です」
そう名乗った直後の獅童宰都の驚いた表情は少し面白くて刺激的だった。弥伊子は顔が赤く染まった気がして、急ぎ、席を立った。図書室の入り口に向かうと、獅童宰都に呼び止められた。
「明日もまた来てくれるかな。南洞さん」
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