誰の目にも輝きを

ヨージー

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 弥伊子は毎日図書室へ通う。ふとしたときに獅童宰都と同じクラスでなくてよかった、と思うこともあった。きっと同じクラスだったのなら、弥伊子は自分が獅童宰都から視線を逸らすことができずに一日を終える日々を送っていただろうと思うからだ。それほどに弥伊子にとって図書室で過ごす獅童宰都との時間は特別だった。弥伊子は隙を見ては獅童宰都との話に出てきた本を読んだ。獅童宰都に話を合わせるために読んでいるとは思われたくなかったので、本の入手先には気を使った。最初のうちは購入していたが、すぐに手が回らなくなった。もちろん何かの拍子に足がつくかもしれない学校の図書室は使いたくなかったので、市の図書館へ通った。市の図書館のカードなんて小学校のころの読書感想文依頼使っていなかったので、自室で貸し出しカードを発見したとき弥伊子は大いに感動した。日々かなりの読書量となっていたが弥伊子にはそれほど苦ではなかった。大した趣味もなく生きてきていたことが幸いして、初めての趣味として没頭することができた。時に獅童宰都との話以外の物語にも手を出した。弥伊子は日に一冊は必ず読み終えていて、図書館に記録が残っているとしたら、自分はかなりの上顧客のはずだ。様々な仕事や人生を読書という形で吸収した弥伊子に加藤真澄は時に驚き、感心した。弥伊子は知らず知らずのうちに知識人として改めてクラスの中で人に頼られる立場を築きはじめていた。
「芦屋さんは学校にまだ来ていないんだよね?」
弥伊子は獅童宰都に訊ねていた。弥伊子は突然現れ、突然居なくなった芦屋恭子のことを読書の合間に思い出しては気になっていた。この物語を芦屋恭子に教えたら、彼女はなんというだろうか。
「恭子は多分、お母さんのとこじゃないかな」
「お母さん?」
「そう、実は恭子はああ見えてかなりのお母さん子なんだ」
「え、そう、なんだ」
「うん、僕は恭子とは子どものころから知り合いなんだ」
弥伊子の中で少しだけ胸が傷んだ。
「僕の両親のパーティーの衣装を恭子のお母さんに頼んだことがきっかけだった」
確か、芦屋恭子の母親はデザイナーだと聞いたことがあった。
「うちの両親は恭子のお母さんの仕事をえらく気に入って、基本的にパーティーの度に特に僕の母が注文をするようになったんだ」
「すごく、その遠い世界の話みたい」
弥伊子は自分と獅童宰都との距離を改めて認識する。
「僕も出席したパーティーで恭子もまた、お母さんと一緒に出席していたのがはじめのはず」
「芦屋さんもパーティーによく出ているのね」
弥伊子は芦屋恭子と獅童宰都との間の距離と自分と獅童宰都との距離を比較する。
「いや、恭子はパーティーなんて、その時が初めてだったんじゃないかな。恭子のお母さんはあくまで自分は裏方、みたいに話しているのも聞いたことがあって、恭子のお母さんともほとんどパーティーで会ったことはなかったな」
「裏方…」
弥伊子は芦屋恭子の振る舞いが裏方という考えには思えなかった。母親とは違う考え方なのだろうか。
「今の恭子とはイメージ違うよね」
獅童宰都に考えを読まれ、弥伊子は少し照れた。
「でも、恭子には恭子なりの考えがあるんだ」
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