誰の目にも輝きを

ヨージー

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「あら、恭子ちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは、お母さん」
 弥伊子をよそに、芦屋恭子と母は昨日も会ったかのような挨拶を交わす。二人は談笑を盛り上がりながら進める。圧倒される弥伊子だったが、二人の話から、居なくなっていた恭子の生活が見えてきた。
 芦屋恭子は案の定、自分の母親と行動を共にしていたらしい。二人はいくつかの国を数日単位で渡りながら仕事をしていたらしい。芦屋恭子の母はデザイナーだ。彼女のデザインする服は正装として人気があり、ハリウッド女優が式典に着て出掛けたという話もあるそうだ。芦屋恭子の母は特定の店を持たない。本人が看板を持って飛び回っているらしい。あっちで呼ばれれば、からだ一つで向かうそう。仕事場を与えられればどんなところでも依頼をこなすという。
 芦屋恭子は今回そんな母親の仕事の中に混ざったらしい。注文を仕上げるのに数ヶ月と要するなかで、様々な段階の作業を移動を繰り返しながら確認した。なかには生地の二択をするためだけに来訪した国もあったらしい。なぜ今回芦屋恭子がそこに混ざったかといえば芦屋恭子からの依頼にほかならない。芦屋恭子は卒業に問題ない程度の単位を取得することの条件でたまにそうしてついていくそうだ。果たして本当に単位的に問題ないのかは甚だ疑問であるが。母親としても学生生活を楽しめ、という点以上のことは望んでいないらしい。母親に関しては服飾系の大学をでたそうたがあまり参考になる授業ではなかったと語っているそうで、そういった点は獅童宰都の両親に近いところがあるのかもしれない。
 圧巻なのは、芦屋恭子は自ら自分を売り込み、どこの国ともしれぬ人々へメイクを施していたという。母親の目を盗み、わずかな時間で最適なメイクをしてきたそうだ。弥伊子は芦屋恭子の腕前を思いだし、納得するほかなかった。
「ここも久しぶりだな」
芦屋恭子は体を伸ばしながら弥伊子の部屋でくつろぐ。芦屋恭子は居心地よく寝転がる。不思議と腹が立たないのは、芦屋恭子の才覚というほかない。
「先にお風呂行くね」
弥伊子は芦屋恭子を置いて部屋をでる。自分と芦屋恭子との差を、違いを考えながら。

 芦屋恭子は部屋を確認する。以前の南洞弥伊子の部屋とはかなり様変わりしている。どこがと言えば、間違いなく、本だ。どこをみても本ばかり。本屋か図書館を彷彿とさせる。お陰で部屋が少し埃っぽく感じられた。それは芦屋恭子の本嫌いゆえかもしれなかったが。芦屋恭子はメイクに関してですら参考書を手にしたことがない。体で覚えた。正確には母親の仕事場で見かけるメイクらの動きを観察して、目で覚えたのだ。皆が離れた隙に、メイク道具をあさって自分で試した。これは小学生のころだ。年を重ねるにつれ、何がどんな意味なのか学び、実践した。自分がメインだったが、なかには面白がってメイクさせてくれる人もいた。その際に誉められ、嬉しくなったことは忘れられない思い出だ。もちろん仕上がりに満足はしておらず、これからも試行錯誤を繰り返していく予定だ。満身してはいけない、そういったのは誰だろうか、母だっただろうか。
 芦屋恭子は南洞弥伊子の部屋で寝転がる。ベッドの下の引戸をなんとなく開く。南洞弥伊子は怒るだろうか。それはそれで面白そうだ。芦屋恭子は引き出しの中を覗きみる。
「これは」
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