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藤田飛鳥は焦っていた。あの人が部活に姿を現したからだ。芦屋恭子。よりにもよってこんなときに、藤田飛鳥の所属する演劇部では三ヶ月後とに定期公演をしている。はじめの一ヶ月は前回の反省から次回公演の策定、次の月からは台本の訂正、読み合わせ、稽古が行われ、三ヶ月目で公演となる。その時々に応じて三ヶ月目は学内以外にも出張公演をしに行くこともある。
そして、今月はそのサイクルの二ヶ月目になり、本来であれば稽古が始まるころだ。しかしながら、今回はシナリオが大いに難航していた。高校三年間で部活にいそしむ二年間。その二年間のうちに関しては、数ある過去の原稿から作品を選び出し内容を精査する。そんな流れ作業で公演内容は決められてきていた。ところが、今年の部長及び運営陣はそんないつも通りのスタンスに待ったをかけた。
「自分たちの年は過去の原稿には頼らない、より独創的な我々の劇を見せよう」
そういきまいていた彼らの威勢がよかったのは夏までの二公演。そもそも当初からこの二公演に関しては原稿が作られていたというもっぱらの噂だ。おそらくは、途中からでも演目くらい探すことができるだろう、とたかをくくっていたのだろう。だが、残念ながらそうはならなかった。真新しいことに挑戦を続けた演劇部の公演は生半可なものではなかった。大道具はもちろん、何一つとして使い回せるものがなかったのだ。大道具の担当は夜間作業を強硬し、見回り警備員と壮絶な闘争劇を演じ、照明配置は過去になく交錯し、一台配線が断線してしまいお陀仏となり、過去にない部費の切迫を招いた。演劇部はそうした荒波を各自最善の手だてにより弾き返し、どうにか公演を成功させてきた。ところが、当初の予定よりも大きく甚大に労力を込めて作り上げた公演は達成感こそ間違いなかったがその失われる労力も半端なものではなかった。部員の半数以上が成績を目に見えて落とし、そこを顧問から詰められ、前回のテストでは今回の公演有無をかけて成績による公演可能ラインが設定され、藤田を含み、演劇部がそれぞれに受験を思わせる猛勉強を余儀なくされた。そのため、次の公演の演目探しなどの余裕はなかった。ところがそれでも運営部員たちは新たな台本を求めた。噂によれば彼らなりに過去作品で妥協すべきではないか、との見解もあったらしいが部長が折れなかったらしい、なんだか全員で何故か校庭で号泣しながら肩を抱き合う様をクラスの友人が目撃していたらしい。藤田は純粋に演者で部活の運営とさほど関わりはないのだが、なんかすごく「まざっとくべき青春」みたいだったらしい。あまり藤田飛鳥としてはそそられる話の類いではなかったが、クラスメイトは目撃しただけにも関わらず感動したらしい。
「みつけた」
藤田飛鳥は恐れながら視線を上にあげる。ここは体育館裏の備品倉庫だ。念のためバスケットボール籠の裏に息を潜めていたというのに。
「芦屋、、恭子」
「さあ、メイクの時間だ」
そして、今月はそのサイクルの二ヶ月目になり、本来であれば稽古が始まるころだ。しかしながら、今回はシナリオが大いに難航していた。高校三年間で部活にいそしむ二年間。その二年間のうちに関しては、数ある過去の原稿から作品を選び出し内容を精査する。そんな流れ作業で公演内容は決められてきていた。ところが、今年の部長及び運営陣はそんないつも通りのスタンスに待ったをかけた。
「自分たちの年は過去の原稿には頼らない、より独創的な我々の劇を見せよう」
そういきまいていた彼らの威勢がよかったのは夏までの二公演。そもそも当初からこの二公演に関しては原稿が作られていたというもっぱらの噂だ。おそらくは、途中からでも演目くらい探すことができるだろう、とたかをくくっていたのだろう。だが、残念ながらそうはならなかった。真新しいことに挑戦を続けた演劇部の公演は生半可なものではなかった。大道具はもちろん、何一つとして使い回せるものがなかったのだ。大道具の担当は夜間作業を強硬し、見回り警備員と壮絶な闘争劇を演じ、照明配置は過去になく交錯し、一台配線が断線してしまいお陀仏となり、過去にない部費の切迫を招いた。演劇部はそうした荒波を各自最善の手だてにより弾き返し、どうにか公演を成功させてきた。ところが、当初の予定よりも大きく甚大に労力を込めて作り上げた公演は達成感こそ間違いなかったがその失われる労力も半端なものではなかった。部員の半数以上が成績を目に見えて落とし、そこを顧問から詰められ、前回のテストでは今回の公演有無をかけて成績による公演可能ラインが設定され、藤田を含み、演劇部がそれぞれに受験を思わせる猛勉強を余儀なくされた。そのため、次の公演の演目探しなどの余裕はなかった。ところがそれでも運営部員たちは新たな台本を求めた。噂によれば彼らなりに過去作品で妥協すべきではないか、との見解もあったらしいが部長が折れなかったらしい、なんだか全員で何故か校庭で号泣しながら肩を抱き合う様をクラスの友人が目撃していたらしい。藤田は純粋に演者で部活の運営とさほど関わりはないのだが、なんかすごく「まざっとくべき青春」みたいだったらしい。あまり藤田飛鳥としてはそそられる話の類いではなかったが、クラスメイトは目撃しただけにも関わらず感動したらしい。
「みつけた」
藤田飛鳥は恐れながら視線を上にあげる。ここは体育館裏の備品倉庫だ。念のためバスケットボール籠の裏に息を潜めていたというのに。
「芦屋、、恭子」
「さあ、メイクの時間だ」
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