あの子と私

ヨージー

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帰り道

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 私はあまり口数が多くない。それ故に常に不機嫌そうだから、せめて表情くらい意識して明るくした方がいい、そう友人に諭されたことがあった。私は高校生で、周りがどんなにくだらないことでも他の誰かと共有して同じ考え方を理解し合いたい年齢で、私は少し早くそういうことから卒業したのだと割りきっている。別に周りを幼稚だとか思っている訳ではなくて、自分の方がずれているとわかっている。けれどどうしても周りのそれらから距離をとりたくなってしまう。それが災いして私は学校で他の同級生から一線引かれている。いじめとかそういうことではなく、変わり者という扱いだ。ただ、それも受け取り方ではいじめかもしれない。私はそのことに関心を持たない。

 私の中で私と対極の立場の同級生がいる。あの子は他人の話すこと全てに共感して親身になる。あの子がそういう自分を演じているとはあまり思えないが、あの子の振る舞いはあまりに八方美人過ぎる。私とあの子は同じクラスだがほとんど会話がなかった。それは私の方に問題があると理解していたが、ある日の下校間際、校門で後ろからあの子に呼び止められた。
「一緒に帰ろう」
あの子は私の関心がない話題を次から次へと話してきた。私は関心がないから大した反応は出来ずに生返事ばかりだった。すると並んで歩いていたあの子は突然私の前に駆け出した。
「面白くない話ばかりでごめんね、次は絶対楽しいお話ができるように頑張るね」
 あの子の考えとしては私は大人びていて他の同級生と同じ話では楽しくないだろうと、でも自分はそういう話しかできないから、今まで話しかけることができなかったという。あの子は私に話しかけることができなかったことを謝罪した。それから私は毎日あの子と帰り道を一緒に話ながら歩いた。会話と言ってもあの子が一方的に話すばかりで私はほとんど無言だった。
話の内容は日ごとにころころ変わり、一貫性がなかった。あの子の話から察すれば私の関心のある事柄を探っていたのかもしれない。そんな日々が1ヶ月ほど続いた。
 私はあの子との帰り道での会話の終わり際に言った。
「私はきっとあなたの望むような返答がこの先もできないから、もう一緒に帰らなくていいよ」
するとあの子はみるみるうちに涙目になり、何かが気に触ったならと私に謝りながら、もうしばらく続けさせて欲しいとお願いしてきた。私の何があの子にそうさせるのかわからなかったが、その行動に対しても大した返答をすることはできなかった。
『私はあの子が嫌いだ』
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